(4)防災の主流化と持続可能な都市の実現
気候変動の影響により、災害が頻発化・激甚化し、規模や範囲が大きくなることも懸念される中、災害に対して脆(ぜい)弱な開発途上国では、災害による経済や社会全体への影響が深刻化しています。防災の取組は、貧困撲滅と持続可能な開発の実現に不可欠であり、災害に強い、しなやかな社会を構築し、災害から人々の生命を守るとともに、持続可能な開発を目指す取組が求められています。中でも、あらゆる政策・計画に防災の観点を導入する防災の主流化を推進することが重要となっています。
また、近年、都市の運営に関わる様々な問題が注目されています。例えば、市街地や郊外で排出される大量の廃棄物の処理、大気・水などの汚染、下水・廃棄物処理システムなどのインフラ施設の整備、急激な人口増加とそれに伴う急速な都市化などの問題です。こうした問題に対応し、持続可能な都市の実現に向けて取り組むことが、重要な開発協力課題となっています。
SDGsでは、目標11として、「包摂的で安全かつ強靭(じん)(レジリエント)で持続可能な都市および人間居住の実現」を掲げており、持続可能な都市の実現を含む人間居住の課題解決に向け、国際的な関心が高まっています。
●日本の取組
■防災協力
土砂災害の被災地であるエクアドルのキト市ガスカ区において、初の避難訓練実施後に指導を行うJICA専門家(写真:JICA)
日本は、地震や台風など過去の自然災害の経験で培われた優れた知識や技術を活用し、緊急援助と並んで、防災対策および災害復旧対応において積極的な支援を行っています。2015年の第3回国連防災世界会議において採択された「仙台防災枠組2015-2030」には、防災の主流化、国・地方政府による適切な防災戦略の策定、事前防災投資の重要性、災害後において、被災前よりも強靭なまちづくりを行う「より良い復興(Build Back Better)」、女性のリーダーシップの重要性など、日本の主張が多く取り入れられました。
2025年6月には防災グローバル・プラットフォーム会議がスイス・ジュネーブで開催され、日本が重視する取組として、国土強靭化、民間セクターによる防災投資の推進などについて言及するとともに、大規模災害を踏まえた対策等に関する事例紹介を行いました。また、同年11月にはG20防災閣僚級会議が南アフリカで開催され、G20防災閣僚宣言が採択されました。前年の閣僚宣言に引き続き、同宣言では災害がもたらす不平等解消の重要性が強調されるとともに、仙台防災枠組にのっとった防災投資の促進、防災対策のための資金確保といった課題に協力して取り組む重要性が確認されました。2027年には仙台市で「2027年アジア太平洋防災閣僚級会議(APMCDRR)」が開催され、世界的な防災指針である「仙台防災枠組2015-2030」の推進に関する取組状況や課題などについて議論される予定です。
このほか、日本の呼びかけにより、2015年の国連総会において、11月5日を「世界津波の日」とする決議が採択されました。2025年同日には、国連防災機関(UNDRR)と国連日本政府代表部、その他各国の政府代表部が「世界津波の日」啓発イベントを主催し、仙台市の高校生3名が津波防災分野に関わる取組についてスピーチを行いました。また、2016年から、日本各地で「世界津波の日」高校生サミットがこれまで7回開催されています。2025年11月には、仙台市において第7回会合が開催され、日本の高校生約60人に加え、10か国から30人の計約90人の高校生が参加し、津波対策を始めとする防災・減災について学び、絆(きずな)を深めました。
また、日本は、国連開発計画(UNDP)と緊密に連携し、アジア太平洋地域の津波の発生リスクが高い国を対象とした津波避難計画の策定や、津波避難訓練などを支援する事業を実施しています。2017年の事業開始以降、例えばインドネシアでは携帯電話用アプリ(STEP-A)の導入により各学校の津波対策情報へのアクセスを容易にするとともに、そのアプリを国家災害管理局が開発した災害監視・情報提供用のデジタルツール(InaRISK)とも連携させることで、コミュニティ・国家レベルでの防災の主流化・制度化を推進してきました。2025年末時点までに、24か国約799の学校で津波防災計画の策定・改定、津波教育プログラムを実施し、約22万人の生徒、教師、および自治体やコミュニティの関係者が津波避難訓練に参加しました。
加えて、2016年から毎年、国連訓練調査研究所(UNITAR)広島事務所と協力し、自然災害に脆弱な開発途上国の女性行政官などを対象に、特に津波発生時の女性の役割やリーダーシップに関する人材育成を支援しています。2025年9月から2026年3月にかけて「津波防災に関する女性のリーダーシップ研修」が実施されました。本研修は、災害対応における女性のリーダーシップの育成を目指し、特に、女性が災害の影響を受けやすい現実を踏まえ、女性・平和・安全保障(WPS)の原則を取り入れ、太平洋地域の気候変動や災害リスク軽減において女性を中心的な担い手として位置づけています。同事業には、2025年までに39か国から714人が参加しました。また、UNITARは、2024年11月、太平洋小島嶼(しょ)国14か国から29名を日本へ招聘(へい)し、早期警報システムに関する研修を実施したほか、2025年2月、アジア太平洋地域の18か国から50名の実務者を日本に招き、「自由で開かれたインド太平洋のリーダー育成研修:海洋と人間の安全保障」事業の最終フェーズにあたるワークショップを実施しました。
■持続可能な都市の実現
日本は、防災対策・災害復旧対応や健全な水循環の推進など、人間居住に直結した地球規模課題の解決に向けた取組を進めています。具体的には、日本はその知識と経験をいかし、上下水・廃棄物・エネルギーなどのインフラ整備や、「より良い復興」の考え方を踏まえた防災事業や人材育成などを実施しています。このほか日本は、持続可能な都市開発を推進する国連人間居住計画(UN-Habitat)への支援を通じた取組も進めています。その一例として、UN-Habitat福岡本部(アジア太平洋担当)と連携し、日本が有する防災技術等を開発途上国に導入するための支援などを実施しています。2025年3月には、UN-Habitatや協力団体の活動と連携し、アジア・太平洋地域の持続可能なまちづくりの状況や課題を共有し、日本の産学官市民セクターが貢献できることについて意見交換・議論することを目的に、「アジア・太平洋地域の『持続可能なまちづくり』のための福岡・東京プラットフォーム」が設立されました。
また、2023年7月、日本は、第2回G7都市大臣会合を香川県高松市において開催しました。「持続可能な都市の発展に向けた協働」をテーマに、都市におけるネットゼロ・レジリエンス、インクルーシブ(包摂的)な都市の実現、都市のデジタル化などに取り組む必要があることを確認し、会合の成果を「香川・高松原則」として発表しました。2024年11月に、イタリア・ローマにおいて開催された第3回都市大臣会合では、前年の日本での会合の成果を引き継ぎつつ、対応する課題や共通原則、優良事例が議論されました。成果文書には、新たに「共同行動」が盛り込まれ、G7内外での連携強化を視野に、OECDやUN-Habitatなどとも協調し、住宅・都市開発に関する各国の経験と知識を共有していくことを確認しました。2025年9月に、カナダ・オタワにおいて都市分野の高級実務者会合が開催されました。会合では、G7各国等が都市施策に関する取組を発表するなど議論を深めました。
