3 複雑化・深刻化する地球規模課題への国際的取組の主導
(1)気候変動・環境
気候変動を始めとする地球環境問題は、持続可能な開発目標(SDGs)でも言及されており、近年の異常気象や大規模自然災害の発生も受け、国際社会が連携して取り組むべき一刻を争う重要な課題です。2025年のG7カナナスキス・サミットにおいては、セッション「コミュニティを安全にする」の中で、石破総理大臣(当時)から、山火事に関し、日本でも乾燥や強風によって、より頻繁かつ大規模に山火事が発生している旨述べた上で、日本は消火体制・装備の充実などの対策強化の検討や、気象衛星を活用した山火事の早期の発見・消火に努めており、各国とも連携・協力していきたい旨述べました。
これまでも日本は、こうした環境・気候変動問題の解決に向けて精力的に取り組んできており、生物多様性条約や国連気候変動枠組条約などの主要な国際環境条約の資金メカニズムである地球環境ファシリティ(GEF)用語解説ではトップドナー国の一つとして開発途上国支援も行っています。また、特にASEAN諸国とは、気候変動、汚染、生物多様性の損失という三つの世界的危機に協力して対処していくため、日ASEAN気候環境戦略プログラム(SPACE)に基づく協力を進めており、2025年の第3回日ASEAN環境気候変動閣僚級対話においては、そのさらなる拡大が合意されました。
●日本の取組
■気候変動問題
気候変動問題は、世界のあらゆる国々の持続可能な開発にとっての脅威であるとともに、人類の存在そのものに関わる安全保障上の問題でもあり、先進国のみならず、開発途上国も含めた国際社会の一致した取組の強化が求められています。こうした中、先進国と開発途上国の全てが排出削減に取り組む枠組みとして、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)(2015年)においてパリ協定が採択され、2016年に発効しました。
パリ協定の目標達成に向けて、日本は2020年10月、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。また、2021年4月には、2030年度に温室効果ガス排出量を2013年度比46%削減すること、また50%の高みに向けて努力を続けることを宣言し、同年10月には、これらの目標を反映した「国が決定する貢献(NDC)」注57および「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を国連に提出しました。さらに、2025年2月には、世界全体での1.5℃目標と整合的で、2050年ネット・ゼロの実現に向けた直線的な経路にある野心的な目標として、2035年度、2040年度において、温室効果ガスを2013年度からそれぞれ60%、73%削減することを目指す、新たな日本のNDCを国連気候変動枠組条約事務局へ提出しました。
2021年6月のG7コーンウォール・サミットでは、2021年から2025年までの5年間における官民合わせて6.5兆円相当の支援を表明しました。また、同年のCOP26では、適応分野の支援を倍増し、5年間で1.6兆円相当の適応支援を実施していくことを含め、新たに5年間で官民合わせて最大100億ドルの追加支援を行う用意があることを表明しました。
(国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30))
COP30の閣僚級セッションでスピーチする石原環境大臣(写真:環境省)
2025年11月10日から22日には、COP30がブラジルのベレンで開催され、会期中の閣僚級セッションには石原環境大臣が出席し、ステートメントを行いました。議長国ブラジルがポルトガル語の「ムチラオ(共同作業、協働、共に働く)」をテーマに掲げ、パリ協定の実施の加速と国際協力の進展について議論されました。同会議の成果として、①パリ協定10周年、②交渉から実施への移行、③実施・連帯・国際協力の加速の3点を柱とした上で、緩和や資金などの分野を横断した幅広い内容が盛り込まれた「グローバル・ムチラオ決定」が採択されました。これとは別に、各交渉議題の下では、世界全体での適応に関する目標に関する決定などが採択され、「グローバル・ムチラオ決定」と合わせて「ベレン・ポリティカル・パッケージ」と総称することになりました。
(アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC))
岸田総理大臣(当時)は2022年の施政方針演説において、アジアの脱炭素化を目指すためのプラットフォームとして、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」構想を発表しました。2023年3月には、東南アジア9か国およびオーストラリアの参加を得る形で、第1回AZEC閣僚会合が開催され、AZECが立ち上がりました。AZECでは、脱炭素化・経済成長・エネルギー安全保障の同時実現および多様な道筋によるネット・ゼロ達成に向けた協力を掲げ、2024年10月に開催した第2回AZEC首脳会合では、このAZEC原則を確認するとともに、(ⅰ)アジアの脱炭素化に資する活動を促進するルール形成を含む「AZECソリューション」の推進、(ⅱ)温室効果ガス排出量の多い電力、運輸、産業セクターの脱炭素化を促進するためのイニシアティブ始動、(ⅲ)具体的なプロジェクトの推進、の三つを柱とする「今後10年のためのアクションプラン」に合意しました。2025年10月には、第3回AZEC首脳会合が開催され、AZEC原則の重要性をパートナー国との間で再確認する首脳共同声明と、前年に採択されたアクションプランに基づくこの1年の進捗を確認する付属書「2024-2025年における今後10年のためのアクションプランの進捗」が採択されました。
(緑の気候基金(GCF))
日本は、世界最大の多国間気候基金である緑の気候基金(GCF)を通じた開発途上国支援を行っています。日本は、同基金にこれまでに合計約3,190億円を拠出してきました。さらに、2024年から2027年の第2次増資期間では、日本は第1次増資と同規模の最大1,650億円を拠出する意向を表明しています。GCFでは、2025年9月までに314件の支援事業が承認・実施されており、全体で32億トンの温室効果ガス削減と、適応策支援による14億人への裨(ひ)益が見込まれています。また、日本からは、JICA、株式会社三菱UFJ銀行および株式会社三井住友銀行が、GCFの事業案件を形成する「認証機関」として承認されており、これまでに(株)三菱UFJ銀行による三つの事業と、JICAによる二つの事業が採択されました。
(ロス&ダメージに対応するための基金(FRLD))
2022年のCOP27では、特に脆(ぜい)弱な開発途上国が気候変動の悪影響によって被る損失および損害(ロス&ダメージ)に対処するための新たな資金的措置の一環として「ロス&ダメージに対応するための基金(FRLD)」が設立されました。2025年末までに計7回の理事会が開催され、理事会のホスト国をフィリピンに決定したほか、事務局長の選出、世界銀行への事務局設置のための法的基盤の整備などが進展しました。さらに、2026年から2年間の予定で早期支援スキーム(「バルバドス実施モダリティ」)の実施が決定され、COP30に併せて支援案件の申請が開始されました。日本は同基金に対し、2024年に13.7億円、2025年に6.95億円を拠出したほか、理事会の一員として、同基金の適切な運用に向けた議論に積極的に貢献しています。
(二国間支援)
東ティモールの持続的な森林管理および農地管理を目指す技術協力プロジェクトにおいて、苗畑設置の実施研修を行う様子(写真:JICA)
二国間支援の具体例として、日本はサモアにおいて、無償資金協力を通じて建設を支援した太平洋気候変動センターに対し、気候変動対策の専門家を派遣しています。日本は同センターを通じて気候変動に脆弱な太平洋島嶼(しょ)国の人材育成に努めています。本支援を行うことにより、気候変動解決策の実施能力が向上し、大洋州14か国の1,000万人を超える人々に広く裨益することが期待されます。また、国連開発計画(UNDP)と連携して、サモア、パプアニューギニア、バヌアツおよび東ティモールにおける再生可能エネルギーへの転換を支援しています。
アフリカは、気候変動の影響に対して特に脆弱な地域です。近年では、干ばつ、洪水、熱帯サイクロンなどの自然災害も増加傾向にあり、食料・栄養安全保障、保健などを含む人間の安全保障を脅かしています。こうした背景もあり、2025年8月に開催されたTICAD 9で首脳宣言として採択された「TICAD 9横浜宣言」でも、気候資金がアフリカ諸国の適応、緩和および低炭素で気候に対して強靭(じん)な開発への移行の支援を進める上で重要な役割を果たすことが指摘されました。
また、開発途上国における気候変動対策支援の一つとして、開発途上国を始めとする世界のパートナー国と協力してパートナー国に脱炭素技術導入の対策をしていく「二国間クレジット制度(JCM)」用語解説を推進しています。これにより、パートナー国の温室効果ガスの排出削減に貢献することで、その成果の一部をクレジットとして取得し、日本の削減目標達成にも活用できます。日本は2013年にモンゴルとの間で初めてJCM実施に係る協力覚書に署名したことを皮切りに、2025年8月にはインドとの間で協力覚書に署名し、2025年末までに31か国との間でJCMを構築しました。2013年のJCM開始から2025年末までで、省エネルギーや再生可能エネルギーなどに関する290件のプロジェクトを実施しており、世界全体での温室効果ガスの排出削減に寄与しています。
日本は引き続き、パリ協定の目指す脱炭素社会の実現に向けて、国際社会を主導していきます。
■生物多様性の損失
近年、人類の活動の範囲、規模、種類の拡大により、生物の生息環境の悪化、生態系の破壊などの生物多様性の損失に対する懸念が深刻になってきています。日本は、生物多様性分野の取組を重視しており、開発途上国の能力開発を支援するため、生物多様性条約用語解説第10回締約国会合(COP10)で立ち上げた生物多様性日本基金注58や、2022年12月に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」を実施するためのGBF基金にも拠出しています。
2024年10月には、生物多様性条約第16回締約国会議(CBD-COP16)がコロンビア・カリにおいて開催されました。日本としては、GBFに示された「自然を回復軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させるための緊急の行動をとる」という2030年ミッション、「自然と共生する世界」という2050年ビジョンに向けて、「生物多様性国家戦略2023-2030」を基に引き続き貢献していきます。
また、近年、野生動植物の違法取引が深刻化し、国際テロ組織の資金源の一つになっていることが、国際社会で問題視されています。日本は、ワシントン条約関連会合での議論に積極的に貢献するとともに、同条約が実施するプロジェクトへの拠出などを通じて、国際社会と協力してこの問題の解決に取り組んでいます。密猟を含めた野生動植物の違法な取引対策へのコミットメントの一環として、ゾウの密猟および違法な象牙取引への対策活動を長年支援しています。具体的には、ゾウの生息国における研修、識別マニュアルの作成、機材・施設供与、ワシントン条約関連法制度に関する能力構築などを支援し、現場レベルでの違法取引対策に係る能力強化に貢献しています。2025年には、セネガルにおいて、MIKE(ゾウ密猟監視)プログラム活動実施の成果をより効率的かつ長期的に創出することを目的とした「西アフリカにおけるMIKE準地域運営委員会会合」の開催を支援し、西アフリカの関係者間で意見交換や経験の共有が行われました。
■海洋環境の保全
タイでの技術協力「東南アジア海域における海洋プラスチック汚染研究の拠点形成」におけるドローンを活用したプラスチック廃棄物実測(写真:JICA)
海洋プラスチックごみ問題は、海洋の生態系、観光、漁業および人の健康への悪影響が懸念されている喫緊の課題として、近年、その対応の重要性が高まっています。2019年のG20大阪サミットで日本が主導した「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」では、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにすることを目指すことが共有されています。同ビジョンの実現に向け、日本は、(ⅰ)廃棄物管理(Management of Wastes)、(ⅱ)海洋ごみの回収(Recovery)、(ⅲ)イノベーション(Innovation)、(ⅳ)能力強化(Empowerment)に焦点を当てた、「マリーン(MARINE)・イニシアティブ」を立ち上げました。日本は、同イニシアティブの下で、世界全体の実効的な海洋プラスチックごみ対策を後押しするため、開発途上国における廃棄物管理に関する能力強化およびインフラ整備などを支援しています。
2024年9月の持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル第6回会合では、日本が、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の提唱国としてプラスチック汚染を終わらせるための具体的な行動をとってきていることを発信しました。
また、2025年6月に開催された第3回国連海洋会議(UNOC3)では、松本外務大臣政務官(当時)から、SDGsの目標14達成に向けて国際社会がさらなる行動を必要とする三つの点として、海洋に関する重要な国際約束への積極的な関与、持続可能な海洋に向けた先進的な取組の開始と普及、持続可能な海洋の実現に向けた他国との協力を強調しました。
日本は、海洋環境保全の分野において、海洋プラスチックごみ対策への支援も行っており、2025年には課題別研修「海洋ごみ対策のための廃棄物管理」を実施しました。さらに、国連環境計画(UNEP)を通じた東南アジア、南アジアおよび太平洋島嶼国への支援として、2025年にはカンボジアおよびパキスタンで中小企業によるプラスチックリサイクルを促進するためのモニタリングおよび能力構築事業を実施したほか、カンボジア、タイ、ベトナム、フィジー、パラオを対象にプラスチック廃棄物管理の強化に向け、現地行政官を含む関係者に対し、同分野における日本の知見の共有などを目的とした研修を実施しました。
さらに、東南アジアでは2018年の日ASEAN首脳会議において表明した、海洋プラスチックごみ対策に関するASEANとの協力拡大の一環として、UNEPを通じた取組に加え、ASEAN諸国における海洋プラスチックごみ削減を中心とする環境保全のための人材育成、啓発および広報活動なども実施しています。2025年には、日・ASEAN統合基金(JAIF)注59を通じて、漁業からの海洋ごみ排出を監視・削減するための能力構築の支援を行っています。さらに、G20大阪サミットでのコミットメントに基づき、各国の専門家と協力の下、データの比較可能性を担保するための漂流マイクロプラスチックのモニタリング手法の調和やデータ集約に取り組んでおり、2024年には、世界中のモニタリングデータを収集するとともに、それを地図上に可視化した図面と併せて提供するデータベース「Atlas of Ocean Microplastic(通称:AOMI)」を公表しました。
■森林・水産資源の保護
インドネシアの熱帯林の強靭化を目指す技術協力プロジェクトにおいて、木質サンプル採取の指導を行う様子(写真:JICA)
森林資源のうち、熱帯林は世界の森林の約半分を占め、気候変動対策や生物多様性保全に関して重要な役割を担っています。日本は、国際熱帯木材機関(ITTO)の本部を横浜に誘致し、これまで40年近くにわたって、同機関を通じて熱帯林の持続可能な経営および合法で持続可能な熱帯木材貿易を支援してきました。日本政府からITTOへの任意拠出により、2025年にはパナマにおいて、森林の監視能力強化とトレーサビリティーシステムの拡張プロジェクト完了に際しての運営委員会が行われるなど、熱帯木材生産国に対する支援が実施されています。
また、水産資源の保全について、日本は、ASEAN地域において、東南アジア漁業開発センター(SEAFDEC)との協力の下、違法・無報告・無規制(IUU)漁業対策に関する研修やワークショップを実施しています。こういった協力を通じIUU漁業による漁獲が水産資源に与える影響を抑えることで、ASEAN諸国にとって基幹産業の一つである漁業の持続可能性および漁業コミュニティの持続可能な発展を後押しすることにつながります。
案件紹介5
パプアニューギニア
持続可能な森林管理による温室効果ガス排出削減への取組
技術協力(2022年4月~2025年4月)
森林伐採モニタリングシステム改善を通じた商業伐採による森林劣化に由来する排出削減プロジェクト
パプアニューギニアは、約35百万ヘクタールの森林を有する世界有数の熱帯林保有国であり、商業伐採による木材生産・輸出は同国の重要な産業となっています。しかし近年、商業伐採や農地開発に伴う森林劣化に由来する温室効果ガス排出量の増加が指摘されています。パプアニューギニアでは、森林公社の職員らによる伐採業者に対する監視業務が十分に機能しておらず、持続可能な森林管理が課題となっていました。
こうした状況を踏まえ、日本は2022年から、森林伐採モニタリングシステムの改善に向けた技術協力を開始しました。本協力では、伐採活動に関する規則や手順の順守、伐採活動後の森林回復、低炭素排出型伐採の推進などに携わる関係者の能力強化を図り、森林劣化による温室効果ガス排出の抑制に取り組んでいます。これまでに、森林公社の伐採モニタリング担当官72名と伐採事業者39名を対象に、伐採規則や手順に関する研修を実施しました。その結果、持続可能な森林管理が促進され、森林劣化に由来する温室効果ガスの排出削減に貢献しました。研修参加者からは「事業者にとって初めての伐採規則研修であり、理解が深まった」、「研修で得た知識を今後の実務にいかし、パプアニューギニアの森林を守りたい」といった声が寄せられています。
森林管理と温室効果ガス排出削減は、気候変動の影響を強く受ける太平洋島嶼(しょ)国にとって喫緊の課題です。日本は今後も、様々な形でパプアニューギニアにおける環境・気候変動対策に協力するとともに、持続的な経済成長を後押ししていきます。
苗木の生育状況を確認する森林公社職員とJICA専門家(写真:JICA)
伐採実施規則に関する研修の様子(写真:JICA)
■環境汚染対策
モーリシャスにおける技術協力「モーリシャス国流出油対応に係る体制能力強化プロジェクト」の一環で、沿岸警備隊に研修を行うJICA専門家(写真:JICA)
開発途上国では、有害な化学物質の規制措置が整備されていないことが多く、環境汚染や健康被害などを引き起こしている例もあります。日本は環境汚染対策に関する多くの知識・経験や技術を蓄積しており、それらを開発途上国の公害問題を解決するために活用しています(カザフスタンにおける持続可能な環境調和的鉱山開発システムの構築の事例は「匠の技術、世界へ」を参照)。
水銀に関する水俣(みなまた)条約外交会議(2013年)で採択された「水銀に関する水俣条約」は、2017年8月に発効しました。日本は、水俣病の経験を経て蓄積した、水銀による環境汚染や健康被害を防ぐための技術やノウハウを世界に積極的に伝え、グローバルな水銀対策においてリーダーシップを発揮しています。ネパールやマレーシアなどに対して条約の批准を支援するための研修などを実施したほか、日本の優れた水銀対策技術の国際展開を推進すべく、インドネシアやベトナムなどで調査を実施しました。また、アジア太平洋水銀モニタリングネットワーク(APMMN)や南アフリカ水銀ネットワーク(SAMNet)と連携して、アジア太平洋地域と南アフリカ地域の技術者向けのモニタリング能力向上支援研修をそれぞれ実施しています。
廃棄物管理分野において、日本は「マリーン・イニシアティブ」に基づき、世界において、廃棄物管理人材を2025年までに1万人育成することとしており、既に2025年3月までに研修などを通じて目標を上回る約3.8万人を育成しています。
また、アフリカにおける廃棄物管理支援のモデルプロジェクトとして、ケニアにおいて、資源回収の効率化等を通じた資源循環を推進しています。本事業で得られた成果や経験は、47か国233都市(2025年10月時点)に拡大した「アフリカのきれいな街プラットフォーム(ACCP)」用語解説を通じ、メンバー国・都市に発信しています。2025年8月に行われたTICAD 9においても、ACCP第4回全体会合を開催しました。同会合に出席した浅尾環境大臣(当時)は、新たに設立した「アフリカ向け廃棄物管理のための事業形成ファンド」を通じた、国際機関との連携促進への期待を述べました。また、福岡方式注60を含む廃棄物管理の技術、ガバナンス、情報、資金動員などの重要性や適切な廃棄物管理の在り方について、活発な意見交換が行われ、アフリカ各国からは同会合開催に係る日本への感謝の意が表されました。
用語解説
- 地球環境ファシリティ(GEF:Global Environment Facility)
- 開発途上国の地球環境保全に資するプロジェクトに対し、主に無償で資金を供与する多国間の資金メカニズム。1991年に設立され、日本を含む186か国が参加(2025年12月時点)。世界銀行が参加国からの拠出金を管理。国際開発金融機関(世界銀行、アジア開発銀行(ADB)ほか)、国連機関(国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)ほか)など18の実施機関を通じ、生物多様性保全、気候変動対策、国際水域汚染防止、土地劣化対策、および化学物質・廃棄物対策の5分野を支援。国連気候変動枠組条約、生物多様性条約、国連砂漠化対処条約、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約、水銀に関する水俣条約、国家管轄権外区域における海洋生物多様性(BBNJ)協定の資金メカニズムに指定されている。
- 二国間クレジット制度(JCM:Joint Crediting Mechanism)
- パリ協定第6条に沿って、日本とパートナー国の企業や政府が技術や資金の面で協力して対策を実行し、得られる温室効果ガス削減・吸収量を、両国の貢献度合いに応じて配分する仕組み。
- 生物多様性条約(CBD:Convention on Biological Diversity)
- 生物多様性に関する地球規模の取組を進めるため、1992年に採択された条約。(1)生物多様性の保全、(2)生物多様性の構成要素の持続可能な利用(生態系・種・遺伝子の各レベルでの多様性を維持しつつ、生物などの資源を将来にわたって利用すること)、(3)遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を目的とする。先進国から開発途上国への経済的および技術的な支援を実施することにより、世界全体で生物多様性の保全とその持続可能な利用に取り組んでいる。
- アフリカのきれいな街プラットフォーム(ACCP:African Clean Cities Platform)
- 2017年に環境省がアフリカの廃棄物に関する知見の共有とSDGsの達成を促進することなどを目的として、JICA、横浜市、UNEPおよび国連人間居住計画(UN-Habitat)と共に設立。アフリカの47か国233都市(2025年10月時点)が加盟しており、全体会合の開催や、各種ガイドライン・教材などの作成、スタディツアーの企画等を実施している。
- 注57 : 締約国は、温室効果ガス排出削減目標やそれを達成するための対策をNDC(National Determined Contribution)として定め、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に提出することになっている。
- 注58 : 開発途上国の能力養成を行うことを目的として、COP10議長国であった日本が生物多様性条約事務局に設置した基金。
- 注59 : ASEAN共同体の設立を目指し、域内格差の是正を中心に統合を進めるASEANの努力を支援するため、2006年に設置された基金。日本は、2005年の日ASEAN首脳会議において総額75億円(約70.1百万ドル)を拠出することを表明し、その後、2013年に「JAIF2.0」に総額1億ドルを拠出した。2023年、日本ASEAN友好協力50周年を機に、新たに「JAIF3.0」を設置し、1億ドルを拠出した。
- 注60 : 準好気性埋立方式の廃棄物最終処分場のことで、1970年代に福岡市と福岡大学の協力により実用化され、日本の廃棄物最終処分場指針の標準構造として採用されている。空気が集排水管を通じて埋立層内に自然に流入することから、好気性が保たれ、浸出水の水質改善や温室効果ガスの発生抑制、埋立地の早期安定化が期待できる。
