3 大洋州地域
太平洋島嶼(しょ)国は、日本にとって太平洋で結ばれた友人であり、歴史的にも深いつながりがあります。また、これらの国は広大な排他的経済水域(EEZ)注13を有し、海上輸送の要であるとともに、かつお・まぐろ漁業に必要不可欠な漁場を提供しています。
このように太平洋島嶼国の持続可能な発展は日本にとっても重要であり、日本は長年にわたり、二国間の取組や太平洋・島サミット(PALM)プロセスを通じた協力を進め、太平洋島嶼国との信頼関係を築いてきました。
●日本の取組
草の根・人間の安全保障無償資金協力により、フィジーの脊椎損傷協会へ供与した車椅子用リフト付き車両に乗る利用者
パプアニューギニアで1980年にJICA海外協力隊員の派遣が始まって以来、800人目となる隊員たち(写真:JICA)
草の根・人間の安全保障無償資金協力により、フィジーの脊椎損傷協会へ供与した車椅子用リフト付き車両に乗る利用者
パプアニューギニアで1980年にJICA海外協力隊員の派遣が始まって以来、800人目となる隊員たち(写真:JICA)
太平洋島嶼国は、経済が小規模で特定の産業に依存していること、領土が広い海域にまたがっていること、国際市場への参入が困難なこと、気候変動の影響や自然災害の被害を受けやすいことなど、小島嶼国に特有な共通の課題を抱えています。
日本は、太平洋島嶼国の持続可能な発展のためには、各国の社会・経済的な脆(ぜい)弱性を克服するための協力のみならず、地域全体との連携が不可欠との考えの下、1997年以降、3年ごとに、太平洋島嶼国との首脳会議であるPALMを開催しています。
また、日本は、太平洋島嶼国・地域で構成される地域協力の枠組みである太平洋諸島フォーラム(PIF)注14との協力も進めています。PIFは、2022年に、2050年の太平洋島嶼国地域における政治・経済・社会等のあるべき姿と戦略的方策をまとめた「ブルーパシフィック大陸のための2050年戦略(2050年戦略)」を発表し、日本は一貫してこの戦略に対する強い支持を表明してきました。
2024年7月に東京で開催されたPALM10では、PIFの2050年戦略に定められる7つの分野注15に沿って議論を行い、日本と太平洋島嶼国・地域が共通の課題に取り組みながら、未来に向けて共に歩む関係を確認しました。また、2050年戦略の7つの分野における具体的な取組を共同行動計画で示しました。(PALM10については「開発協力トピックス」を参照)。
例えば、「技術と連結性」はその7つの分野の一つであり、特に連結性の強化やデジタル技術へのアクセスは、特有の課題を抱える太平洋島嶼国地域に重要な経済的および社会的利益をもたらし、持続可能な発展を実現する鍵となります。デジタル連結性の強化の具体例としては、2021年12月に日本、米国、オーストラリア、キリバス、ナウル、ミクロネシア連邦の6か国が連名で発表した、東部ミクロネシア海底ケーブルの日米豪連携支援が挙げられます。このプロジェクトにおいて、日本は、2023年6月にキリバスおよびナウルとの間で無償資金協力に関する書簡の交換を行いました。同月には海底ケーブルの製造・敷設コンポーネントが正式に立ち上がり、2024年6月にはキリバスとの間で、7月にはナウルとの間で無償資金協力の追加贈与の署名が行われるなど、プロジェクトは着実に進展しています。
また、日本と太平洋島嶼国は、太平洋地域の海洋と環境が持続的に管理され、脅威に対する強靭(じん)性を確保できるよう協力を進めてきました。特に、漁業・海洋資源の監視と持続可能な利用、海洋安全保障および海上安全分野における能力構築と機材等の提供、廃棄物管理と汚染削減、違法・無報告・無規制(IUU)漁業対策、太平洋の生物多様性環境と資源の保全といった分野において、共に協力し取り組んでいます。
PALM10の際に行われた各国との首脳会談においても、岸田総理大臣(当時)は、海洋分野において継続的に支援を行うことを述べました。日本はナウルに対しては海難救助、災害救助、領海侵犯や違法漁業取締り能力に資する警備艇の供与、またソロモン諸島に対してはソロモン国立大学「水産業研究センター」の設置を支援するとともに、水産業が重要な収入源となっている太平洋島嶼国のうちバヌアツ、パプアニューギニア、フィジー、マーシャル諸島およびミクロネシア連邦に対しては水産資源量の増減や分布の持続的な確認等を行う漁業調査監視船や水産関連機材を供与するなど、持続可能な発展を後押ししてきています。
人的交流・人材育成は、日本と太平洋島嶼国の「キズナ」の基盤です。太平洋地域には、50年以上前から現在に至るまで、JICA海外協力隊員が4,000人以上派遣されてきました。彼らは、教育、保健、建設、環境、IT、スポーツ、文化等、幅広い分野での社会改善を目指し、太平洋の人々と共に生活し、その国の発展に力を尽くしてきました。また、太平洋島嶼国・地域の若者が日本への理解を深め、将来の人材となるよう、日本は、JENESYS注16による青年招聘(へい)・派遣プログラムや、国費留学制度等の人的交流プログラムを推進しています。
日本は、こうした様々な取組を通じて、強靭で安定かつ繁栄した太平洋島嶼国地域を共に構築していきます。
案件紹介8
ソロモン諸島
ソロモン中・西部における不発弾処理支援計画
草の根・人間の安全保障無償資金協力(2022年3月~2025年3月)
不発弾のない安心・安全な暮らしへ
第二次世界大戦の激戦地となったソロモン諸島には、終戦から80年が経過した現在も多くの不発弾が残存し、毎年数名の犠牲者が発生しています。不発弾は、住民の安全な暮らしを脅かすのみならず、農地活用やインフラ建設の阻害要因にもなり、経済発展の妨げになっています。これまで、オーストラリアや米国を中心とするドナーが、不発弾の回収・処理活動を支援してきましたが、人員や機材の不足から十分に進んでおらず、また、住民が不発弾の知識や発見した際の対処法を十分に習得していないことも課題となっています。
そこで日本は、草の根・人間の安全保障無償資金協力注1を通じて、油圧ショベルカーや不発弾運搬用トラックなど不発弾処理作業のための機材をソロモン国家警察に供与しました。また、本事業の対象地域であるガダルカナル州とウエスタン州の学校生徒や地域住民に対して、不発弾の取扱いや危険性に関する啓発活動の支援を行っています。こうした協力によって、両州合わせて15,634km2の範囲で不発弾処理活動が効率的に進むとともに、地域住民の不発弾に対する理解も徐々に深まってきています。
日本はこのほかにも、ODA以外の取組として、不発弾処理に関する専門知識を有する防衛省・自衛隊が、旧日本軍弾種や一般市民への啓蒙(もう)要領等に関する知見をソロモン国家警察に共有する活動も行っており、相乗効果を目指した能力構築支援を実施しています。
日本は今後も、オーストラリアや米国とも連携しながら、ソロモン諸島での不発弾処理活動を支援していきます。
供与された不発弾除去用の油圧ショベルカー
不発弾に関する啓発ポスター
注1 第Ⅴ部2(2)を参照。
- 注13 : 自国の領海の外側に設定できる経済的な権利が及ぶ水域。
- 注14 : 2024年11月現在、PIF加盟国・地域は、オーストラリア、ニュージーランド、キリバス、クック諸島、サモア、ソロモン諸島、ツバル、トンガ、ナウル、ニウエ、バヌアツ、パプアニューギニア、パラオ、フィジー、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、フランス領ポリネシア、ニューカレドニアの16か国および2地域。
- 注15 : (1)政治的リーダーシップと地域主義、(2)人を中心に据えた開発、(3)平和と安全保障、(4)資源と経済開発、(5)気候変動と災害、(6)海洋と環境、(7)技術と連結性。
- 注16 : 日本とアジア大洋州地域間の人的交流。Japan-East Asia Network of Exchange for Students and Youthsの略称。
