(2)連帯と共創に向けた政策の実施状況とこれからのODAの方向性
■オファー型協力
新しい開発協力大綱では、開発協力のより効果的かつ戦略的な実施のための進化したアプローチの一つに「共創を実現するための連帯」を掲げています。民間企業、諸外国・国際機関、日本のNGOや地方自治体、大学・研究機関や知日派・親日派人材、在外日系人等、様々な主体を巻き込み、それぞれが互いの強みを持ち寄り、対話・協働することにより新たな解決策を共に創り上げていくことを目指しています(多様なパートナーとの連帯については第Ⅴ部1を参照)。
開発途上国のニーズが、経済成長だけでなく社会課題の解決にシフトする中、日本企業の有する課題解決力はますます重要となっています。こうした中で例えば、日本企業が投資するかどうか悩むときに、無償資金協力や技術協力といったODAでの投資環境整備が、企業の海外進出への「呼び水」となる効果があります。民間資金の動員につながるODAを打ち出し、結果として、民間企業の投資にもつながる形で開発効果を最大化するよう取り組めば、相手国の社会課題解決と同時に、日本の経済成長にも資することが期待されます。
日本のODAの強みは、開発途上国との対等なパートナーシップの下、インフラや機材などのハード面にだけではなく、相手国の事情を考慮した人材育成などソフト面にも力を入れ、有償、無償、技術協力のメニューをきめ細かく組み合わせて、対話を通じて自立的な発展を促してきたことです。開発協力を取り巻く現状は、開発途上国が著しい経済成長を遂げたこともあり、一部の国では、グリーン・トランスフォーメーション(GX)やデジタル・トランスフォーメーション(DX)といった日本社会と共通の課題に直面するようにもなっています。そのような中、与える・もらう関係ではなく、対等なパートナーとして、同じ目線で社会課題の解決に取り組む「共創」という考え方が重要性を増しています。
改定された開発協力大綱では、こうした強みを発展させる形でオファー型協力を打ち出し、推進しています。オファー型協力は、日本の強みをいかした協力メニューを提案し、相手国と一緒に事業内容を創り上げるのが大きな特徴です。
具体的には、戦略文書の策定を通じ、取り組む分野を選定し、各分野における目標を達成するためのアプローチを公表することで、案件実施の予見可能性を高め、民間企業、国際機関等の様々な主体の積極的参画を促し、多様な協力を組み合わせることで、開発効果の最大化を図っていきます。
2023年12月に、オファー型協力の第1号案件をカンボジアで開始したのを皮切りに、フィジーでも、オファー型協力を進めていくことに合意しています。また、ラオスに対するオファー型協力も検討されています(オファー型協力の実施状況については第Ⅴ部2(2)を参照)。
■民間資金動員
開発途上国側から見ると、海外から入ってくる資金フローの内容は年々変化してきています。90年代はODAが最大でしたが、2000年代以降、ODAに比して、海外直接投資や、出稼ぎによる海外送金による資金フローが大きく増加しています。2022年には海外直接投資がODAの約2.5倍、海外送金が約2.8倍と、民間資金フローがODAを大きく上回っています注8。開発途上国への資金流入において民間資金が大きな割合を占めるようになり、ODAの位置付けが相対化される中で、援助よりもビジネスを呼び込むことにより高い関心を示す国も少なからずあり、多様なアクターが連携して開発に取り組む必要性も高まっています。すなわち、ODAだけで開発途上国の開発課題を解決するアプローチにはもはや限界があると言えます。
開発途上国にとっての民間資金の重要性は拡大しており、利潤追求に加えて社会課題解決にも資する投資の在り方として、特に、環境、社会、ガバナンス課題の解決を目的としたサステナブルファイナンスの重要性が、これまで以上に高まっています。この動きに連動するODAの在り方について議論すべく、2024年3月には、上川外務大臣(当時)の下に、開発のための新しい資金動員に関する有識者会議が立ち上げられ、3月から5月にかけて議論が行われました。開発のための新しい資金動員においてODAが触媒として果たしうる役割を含め、7月には同有識者会議がまとめた提言注9が上川外務大臣(当時)に提出されました(「開発協力トピックス」も参照)。
提言では、ODAとサステナブルファイナンスは、ともに未来志向の「課題解決型の資金」であり、現在の経済社会が内包する課題解決に貢献することで、より良い経済社会の構築を目指すという共通項を有しているとしています。また、民間では取りえないリスクをODAで取りながら、官民双方の連携を強化することで、世界の経済社会のより良い将来のために協働できる潜在性を有していると指摘し、ODAを触媒として、多様な主体が連携し、民間企業・投資家などが、自身が経済合理性に基づく投資を行うことで、結果的に開発途上国の開発へとつながっていくような「エコシステム」が作られ、成長していくことが重要との考えが示されました。さらに、具体的な方策として、例えば、JICAのリスクテイク機能の拡充のために、開発途上国における事業に対して保証を提供することや、開発途上国の事業者が発行するグリーン債やソーシャル債を購入することが提案されています。これらの提言を受け、ODA制度の見直しに向けた検討を重ねていきます。
- 注8 : 「世界開発報告(WDR)2023: 移民・難民・社会」(World Development Report 2023: Migrants, Refugees, Societies)https://www.worldbank.org/en/publication/wdr2023
- 注9 : 提言書「サステナブルな未来への貢献と成長の好循環の創造に向けて」https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/100697332.pdf
