開発協力トピックス1
時代に即した開発のための新しい資金動員の在り方
2024年3月から5月にかけて、上川外務大臣(当時)の下で開発のための新しい資金動員に関する有識者会議が全3回開催され、7月には同会議においてまとめられた提言「サステナブルな未来への貢献と成長の好循環の創造に向けて」注1が、同大臣に提出されました。
本コラムでは、同会議の座長である大野泉政策研究大学院大学名誉教授と、同委員金子忠裕株式会社三井住友銀行理事から、有識者会議の議論・提言も踏まえて、今後のODAの展望について寄稿いただきました。
■政策研究大学院大学名誉教授 大野 泉
日本は70年余にわたり、ODAにより、開発途上国の経済発展や人材育成に大きく貢献してきた。戦後、平和国家として再出発した日本が、非軍事的な開発協力を通じて、国際社会で広く信頼を築いてきた点は特筆に値する。
非西洋の後発国だった日本は、開発を「学ぶ側」と「伝える側」の二重の経験をもつ。この経験に基づき、日本の開発協力は相手国の固有性と主体性(オーナーシップ)を尊重し、人間中心のアプローチをとり、現場に寄り添った支援を重視してきた。この姿勢を評価する開発途上国政府・組織や人々は多い。
同時に、国際開発の環境は大きく変化しており、「援助から共創の時代へ」と開発協力の発想転換が求められている。背景には、(1)開発課題が複雑化し、先進国と開発途上国が共に学び合い課題解決に取り組む必要があること、(2)開発途上国への民間資金がODAを上回る規模になり、持続可能な社会構築のために官民が協働するチャンスが広がっていること、(3)ODA卒業国や新興国パートナーとの連携が重要になっていること、(4)少子高齢化により、外国人材との共生を含む国際協力の現場が日本国内にも広がっていること等がある。
特に民間セクターでは、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視したサステナブルファイナンスが拡大している。ODAが触媒となり多様なアクターが連携し、地球規模課題の解決や途上国開発につながる民間投資を促すエコシステム構築が鍵となる。日本の開発協力が、従来の良い点は維持・強化しつつ、「共創」の時代に適した仕組みへモデルチェンジしていくことを期待したい。
■株式会社三井住友銀行理事 金子 忠裕
近年、気候変動の影響が深刻化する中、持続可能な社会への貢献が企業の責務とされ、先進国を中心にサステナブルファイナンスが大幅に増加している。しかし、開発途上国では政情不安や信用力の課題、プロジェクト推進の主体不足等により、民間資金の提供が難しい状況である。気候変動や生物多様性の問題解決には、開発途上国への資金提供と支援が不可欠であり、ODAが果たす役割が重要である。
開発のための新しい資金動員に関する有識者会議では、ODAとサステナブルファイナンスの連携強化により、持続可能な未来のために協働できる可能性について議論された。ODAを触媒として、多様な主体が連携し、民間企業や投資家の投資活動が途上国の開発につながるエコシステムを構築することを目指し、ODAによるリスクテイクの強化などの具体的な提言が行われた。
株式会社三井住友銀行(SMBC)はJICAと共同で「SMBC-JICAサステナブルファイナンスフレームワーク」を策定し、リスクの分散によるリスクテイクの強化を図っている。本枠組みにより、カンボジアでの農業セクターにおける金融アクセスの改善事業や南アフリカでの再生エネルギー等のインフラプロジェクトの導入支援を行った。
今後、ODAとサステナブルファイナンスの連携による具体的なプロジェクト実績を積み重ねることが重要である。日本政府が推進する「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」注2の枠組みなども活用し、オールジャパンで取り組み、持続可能な未来への貢献と日本の成長の好循環、持続可能な社会の実現に向けた具体的なアクションが推進されることを期待している。
注1 提言「サステナブルな未来への貢献と成長の好循環の創造に向けて」https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100697332.pdf
注2 第Ⅲ部3(1)を参照。
