開発協力トピックス5
ODA広報
~ODAをもっと身近に感じてもらうために~
●開発協力の情報発信
2022年に実施した内閣府世論調査注1では、「今後の開発協力のあり方」について、回答者の84%が「積極的に進めるべきだ」または「現在程度でよい」と回答し、開発協力に対して前向きな評価が示されました。こうした前向きな日本国内の世論の背景には、持続可能な開発目標(SDGs)に対する意識の高まりのほか、ロシアによるウクライナ侵略など国際社会が複合的危機に直面する中、災害や感染症など世界的な課題に対して各国が協力して助け合う必要がある、開発協力はエネルギー資源などの安定供給の確保に資する、国際社会での日本への信頼を高める必要がある、そして開発協力は日本の外交政策を戦略的に進める上での重要な手段であるという理解が広がったことなどが挙げられます。
本コラムでは、こうした開発協力の意義についての外務省による情報発信・政策広報の試みをいくつか紹介します。
●開発協力大綱の改定とODAの意義の発信
2015年の策定時からの大きな情勢の変化を背景に、2023年6月、8年ぶりに開発協力大綱を改定しました。これに伴い、ODAの意義や成果について幅広い国民に発信する観点から、ODAによる日本への裨(ひ)益を意識した資料を新たに作成し、ODAホームページに「日本の開発協力の意義」として掲載注2しました。また、ODAメールマガジンにも日本への裨益事例をまとめたシリーズとして「海洋を通じた結びつき」、「日本企業の海外展開支援」、「ODAによる国際社会での信頼向上、それによる日本への裨益」をテーマに3回に分けて配信注3しています。
10月から12月にかけて、特に若い世代向けの情報発信として、ジャパン・プラットフォーム(JPF)注4のオンライン動画共有サービスYouTube上の広報番組に、外務省国際協力局の日下部(くさかべ)NGO担当大使が出演し、現役大学生との対談番組(11回シリーズ)注5を通じて、日本の開発協力の意義や取組等について発信しました。

日本の開発協力の意義

若い世代向けの情報発信として、外務省の日下部NGO担当大使(右から3人目)が現役大学生との対談番組に出演(写真:JPF)
●テレビドラマ・ドキュメンタリー
外務省は、幅広い層に届くよう、知名度の高い出演者を活用した広報コンテンツの制作にも取り組んでいます。
その一つとして、吉本興業株式会社の協力を得てタレントで作家の又吉(またよし)直樹氏をナビゲーターとし、外務省国際協力局や国際協力の現場を舞台としたテレビドラマ「ファーストステップシリーズ」があります。2023年には、度重なる自然災害で培ってきた日本の経験・知見をいかした防災協力をテーマとし、2015年第3回国連防災会議(仙台)にて日本が提唱し、防災分野における世界標準語となった「より良い復興(Build Back Better)」をキーワードに、登場人物の成長を描いた物語(ファーストステップ2 世界をつなぐ勇気の言葉)注6を制作しました。なお、2022年には、ODAを通じて日本から世界に広まった母子健康手帳をテーマに、親子の愛情や登場人物の成長を描いた物語(ファーストステップ 世界をつなぐ愛のしるし)注7を制作し、それぞれ放映・発信しています。

テレビドラマ第一弾「ファーストステップ 世界をつなぐ愛のしるし」
主人公の吉沢みづき(右)が母子手帳をリエンに手渡す場面

外務省国際協力局や開発協力の現場を舞台にしたテレビドラマ第二弾「ファーストステップ2 世界をつなぐ勇気の言葉」
また、フリーアナウンサーの中野美奈子氏をナビゲーターとして、ロシアによるウクライナ侵略をはじめ、世界秩序を揺るがす事態が世界で発生している中、「紛争や混乱に揺れる国で活躍する日本人女性」と題したドキュメンタリー動画注8を制作しました。外交的にも重要な「女性・平和・安全保障(WPS: Women, Peace and Security)」を念頭に、NGOの分野では、南スーダンをはじめ内戦などの危機にある国に対して、紛争地で争いが起きる前に防ぐための取組、政府機関(JICA国際緊急援助隊)の分野では、モルドバのウクライナ避難民支援でも使用された、フィリピン生まれ、日本育ちの国際標準カルテMDS(Minimum Data Set)の活用、国際機関の分野では、アフガニスタンにおける女性や貧困層の人道支援の取組を題材とし、女性に焦点を当てた躍動感のある動画を制作しています。

ドキュメンタリー動画「紛争や混乱に揺れる国で活躍する日本人女性」
●グローバルフェスタJAPAN2023
2023年9月30日および10月1日に国際協力イベント「グローバルフェスタJAPAN2023」を開催し、前年を上回る約3万9,000人の参加を得ました。32回目となる今回は、「世界をつくる国際協力。仲間は多い方がいい!」をテーマに、より良い世界をつくるため、国際協力に参加する仲間が増えていくことを願い、前年より30ほど参加団体を増やし、国際協力に携わるNGO、国際機関、企業、大学や在京大使館など130を超える団体による展示や活動報告、物販を始め、多彩なゲストが登壇するステージプログラムや体験ワークショップなどを行いました。
外務省は、オープニングセレモニーを始めとし、普段あまりODAと接点のない中小企業の海外展開に向けたODAの活用をテーマとしたステージプログラムや、社会起業家、スタートアップ関係者を招き、社会課題解決に向けた若者の挑戦をテーマとしたパネルディスカッション、そして「紛争や混乱に揺れる国で活躍をする日本人女性」をテーマとしたドキュメンタリー動画の制作発表を実施しました。また、恒例となる外務省フォトコンテストの授賞式も行いました注9。「世界の仲間と未来をつくる」をテーマにした今回のコンテストには、「愛・友情・成長」を感じる作品が多く寄せられ、家族愛、友情、未来に残したい自然の風景など心温まる作品を中心とした過去最多となる422点もの応募の中から、受賞作品を選びました。このほかのプログラムとして、池上彰(いけがみあきら)氏と増田ユリヤ氏による「国際社会の中で見つけたODAを分かりやすく解説!」と題する特別授業を行ったほか、サブステージのプログラムでは、外務省国際機関人事センターによる国際機関キャリアセミナー、外務省国際協力局民間援助連携室とNGO団体の関係者が参加した国際協力NGOの活動報告を行いました。結果は、ODAホームページの開催報告注10をご覧ください。

グローバルフェスタ2023オープニングセレモニーで挨拶する穂坂外務大臣政務官

グローバルフェスタステージプログラム「若者たちと語ろうODA!社会課題の解決に向けた若者の挑戦」のステージの様子

日本駐在の大使館、国際機関等の展示が行われたロビーギャラリーの様子。外務省も出展し、世界で役立つ日本のODAをわかりやすく伝えた。
●ODAメールマガジン、ODA広報X(旧ツイッター)
外務省ではODAメールマガジンを月1回発行し、ホームページにも掲載しています。また、SNSのX(旧ツイッター)でも、ODAについての情報を発信しています。2023年12月時点で、メールマガジンの登録者数は約2万人、Xのフォロワーは1.2万人を超えています。


外務省/ODA X

ODAメールマガジン
注1 2022年10月から11月、内閣府が調査機関に委託し、日本全国の18歳以上の日本国籍を有する3,000人を対象に郵送法で令和4年度外交に関する世論調査が行われた(内閣府世論調査
https://survey.gov-online.go.jp/r04/r04-gaiko/index.html)。
注2 日本の開発協力の意義
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/oda/page24_000194.html
注3 第465回~第467回 ODAメールマガジン世界と日本を豊かにするODA(日本への裨益の事例1~3)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/mail/bn.html
注4 用語解説を参照。
注5 JPF広報番組 外務省x現役大学生 第38回~第48回
https://www.youtube.com/@milakarma
注6 ファーストステップ2 世界をつなぐ勇気の言葉
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sanka/page22_001633.html
注7 ファーストステップ 世界をつなぐ愛のしるし
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sanka/page22_001443.html
注8 紛争や混乱に揺れる国で活躍する日本人女性
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sanka/pagew_000001_00029.html
注9 外務省フォトコンテスト「世界の仲間と未来をつくる」開催報告
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/press/event/page23_001395.html
フォトコンテストの応募写真は、写真特集(1)も参照。
注10 グローバルフェスタJAPAN2023開催報告
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/press/event/page22_001739.html