2023年版開発協力白書 日本の国際協力

(4)自然災害時の人道支援

トルコ地震被災地での救助チームによる救助活動の様子(写真:JICA)

トルコ地震被災地での救助チームによる救助活動の様子(写真:JICA)

近年、気候変動の影響もあり、短時間・局所的といった異常な集中豪雨の発生頻度は世界的に増加しており、洪水や土砂災害による被害も激甚化・頻発化の傾向にあります。開発途上国では、経済・社会基盤が脆(ぜい)弱であるため、災害により大きな被害を受ける国が多くあり、国際社会からの支援が求められています。

日本は、海外で大規模な災害が発生した場合、被災国政府または国際機関の要請に応じ、直ちに緊急援助を行える体制を整えています。協力体制には、人的援助、物的援助、資金援助があり、災害の規模や被災国等からの要請内容に基づき、いずれかまたは複数を組み合わせた協力を行っています。

●日本の取組

緊急援助物資のダマスカス空港(シリア)到着時の様子

緊急援助物資のダマスカス空港(シリア)到着時の様子

トルコ地震被災地で手術前の処置を行う医療チーム(写真:JICA)

トルコ地震被災地で手術前の処置を行う医療チーム(写真:JICA)

人的援助として国際緊急援助隊があり、(ⅰ)救助チーム、(ⅱ)医療チーム、(ⅲ)感染症対策チーム、(ⅳ)専門家チーム(災害の応急対策と復旧活動に関する専門的な助言・指導を行う)、(ⅴ)自衛隊部隊(特に必要があると認められる場合に医療活動や援助関連の物資や人員の輸送を行う)を、個別に、または組み合わせて派遣します。

物的援助としては、緊急援助物資の供与を行っています。日本は海外3か所の倉庫に、被災者の当面の生活に必要なテントや毛布などを備蓄しており、災害が発生したときには速やかに被災国に供与できる体制にあります。

資金援助として、日本は、海外における自然災害や紛争の被災者、難民・避難民等を救援することを目的として、被災国政府や被災地で緊急援助を行う国際機関などに対し、緊急無償資金協力を行っています。

2023年には、2月にトルコ南東部で発生した地震被害に対し、日本は、発災直後から緊急救助支援活動に取り組みました。トルコおよびシリアに対しJICAを通じて緊急援助物資を迅速に供与するとともに、トルコに救助チーム、医療チーム、専門家チームを派遣し、行方不明者の捜索・救助活動や医療活動等を実施し、地震により被害を受けた建物およびインフラの状況を確認し、復旧・復興に向けた技術的助言等を行いました。また、医療チーム用資機材を自衛隊機で迅速に現地に輸送したほか、北大西洋条約機構(NATO)との調整・協力を通じて、パキスタンに所在していたテント等の災害救援物資約89.5トンをトルコへ輸送しました。加えて、トルコに対し、国際機関を通じた850万ドルの緊急無償資金協力のほか、無償資金協力(50億円)や借款(800億円)の供与、日本の知見をいかした技術協力を通じて、復旧・復興に向けた支援を実施しています(トルコにおけるこれまでの防災への取組については「国際協力の現場から2」を参照)。

このほかにも、2023年3月、フィリピン中部のミンドロ島沖で転覆・沈没した小型タンカーからの油流出被害に際し、国際緊急援助隊・専門家チームを派遣しました。9月には、モロッコ中部で発生した震災やリビア東部における洪水被害に対して緊急無償資金協力を実施したほか、9か国注51に対して緊急援助物資を供与しました。

日本のNGOも、ODAを活用した被災者支援を行っており、また国際機関などが緊急援助活動を実施する際のパートナーとして、日本のNGOが活躍することも少なくありません。ジャパン・プラットフォーム(JPF)注52は自然災害や紛争によって発生した被災者および難民・避難民等への人道支援を行っており、JPFの加盟NGOは、モロッコ(地震)、アフガニスタン(地震)、パキスタン(洪水)、ウクライナ(紛争)など、現地政府の援助がなかなか届かない地域で、現地のニーズに対応した様々な支援を実施しています(実績などは第Ⅴ部1(3)を参照)。

自然災害の多い日本とASEAN諸国にとって、災害対応は共通の課題です。日本は、2011年に設立されたASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)を支援し、その能力強化等に貢献してきました。2023年も引き続き、緊急物資を迅速に被災国へ輸送するASEAN緊急災害ロジスティック・システム(DELSA)の構築および同システムを活用した支援や、被災状況の緊急評価等を行うASEAN緊急対応評価チーム(ERAT)やASEAN各国防災機関の幹部候補職員を対象とした人材育成を行っています。


  1. 注51 : アフガニスタン、イラン、シリア、チリ、トルコ、バヌアツ、マラウイ、モザンビーク、リビアの9か国。
  2. 注52 : 用語解説を参照。
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