開発協力大綱と日本の開発協力
日本の開発協力は、開発協力大綱注1(2023年6月9日閣議決定で改定)をその根幹としています。開発協力大綱は、開発途上国との対等なパートナーシップに基づき、開発途上国の開発課題や人類共通の地球規模課題の解決に共に対処し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の下、平和で安定し、繁栄した国際社会の形成に積極的に貢献すること、日本と世界にとって望ましい国際環境を創出し、信頼に基づく対外関係の維持・強化を図りつつ、日本とその国民の平和と安全を確保し、経済成長を通じてさらなる繁栄を実現するといった日本の国益の実現に貢献すること、という日本の開発協力の目的を明記しています。外交政策上の最も重要な手段の一つとして、これまで以上に政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)を戦略的かつ効果的に活用していくことが求められています(開発協力大綱の改定については、第Ⅰ部1を参照)。
1 開発協力大綱が掲げる基本方針
これらの目的のため、開発協力大綱では「平和と繁栄への貢献」、「新しい時代の『人間の安全保障』」、「開発途上国との対話と協働を通じた社会的価値の共創」、「包摂性、透明性および公正性に基づく国際的なルール・指針の普及と実践の主導」の4つを開発協力の基本方針としています。
2 開発協力大綱が掲げる重点課題
これらの基本方針にのっとり、「新しい時代の『質の高い成長』とそれを通じた貧困撲滅」、「平和・安全・安定な社会の実現、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化」、「複雑化・深刻化する地球規模課題への国際的取組の主導」の3つの重点政策に取り組むこととしています。
日本のODA

●ODAとは?
開発協力とは、「開発途上地域の開発を主たる目的とする政府および政府関係機関による国際協力活動」(開発協力大綱)のことで、そのための公的資金をODAといいます。政府または政府の実施機関はODAによって、平和構築やガバナンス、基本的人権の推進、人道支援等を含む「開発」のため、開発途上地域、国際機関または民間セクターに対し、資金協力や技術の提供を行います。
その対象は、経済協力開発機構(OECD:Organisation for Economic Co-operation and Development)の開発援助委員会(DAC:Development Assistance Committee)が作成するリスト(図表Ⅱ-10を参照)に掲載されています。
●ODAにはどのような種類があるか?
ODAは、贈与と政府貸付等(有償資金協力)に分けることができます。また、開発途上地域を直接支援する二国間援助と、国際機関等に対して拠出・出資する多国間援助があります。
二国間援助における贈与は、開発途上地域に対して無償で提供される協力のことで、日本が実施しているスキームとしては、返済義務を課さず、開発途上地域に社会・経済の開発のために必要な資金を贈与する無償資金協力と、日本の知識・技術・経験をいかし、開発途上地域の社会・経済の開発の担い手となる人材の育成を行う技術協力があります。なお、国際機関に対する拠出・出資のうち、対象国・事業を指定した拠出は、統計上、二国間援助の実績に含まれます(図表Ⅱ-1を参照)。
また、日本が実施する二国間援助の政府貸付等(有償資金協力)には、低金利かつ返済期間の長い緩やかな貸付条件で開発途上地域に必要な資金を貸し付ける借款と、開発途上地域での事業実施を担う民間セクターの法人等に対して融資・出資を行う海外投融資があります。
多国間援助には、国連開発計画(UNDP)、国連児童基金(UNICEF)などの国連機関、国際機関および世界銀行などの国際金融機関等への拠出・出資などがあり、多くは贈与として実施していますが、国際金融機関向けでは近年は政府貸付等(有償資金協力)で実施することもあります。
外務省ホームページ注2ではODAに関する様々な情報を掲載しています。
- 注1 : 開発協力大綱 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/100514690.pdf
- 注2 : ODAに関する情報 https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index.html