2023年版開発協力白書 日本の国際協力

はじめに:日本の国際協力の意義

日本は、戦後、当時の先進国や国際機関からの援助を受けながら復興・経済成長を果たし、累計で190か国・地域に対して様々な支援を行ってきました。2022年の日本の政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)実績は、米国、ドイツに次ぐ第3位であり、日本は、国際社会で責任のある国としての役割を果たしています。


現在、世界は、ロシアによるウクライナ侵略や昨今の中東情勢、気候変動や感染症を始めとする地球規模課題など、複合的な危機に直面しています。世界のどこかで起きた危機は、必ずしも「対岸の火事」ではなく、日本にとっても大きな影響を及ぼすことがあります。一国では解決できないこれらの課題に対し、日本が、国際社会の責任ある主要国として役割を果たしていくことは、日本の平和と繁栄に資するものです。また、エネルギーや食料の多くを輸入し、多くの企業が海外での経済活動に関与している日本の状況を踏まえれば、地域の安定化やグローバルな課題に対応するODAは、こうした活動を支えるための不可欠な貢献といえます。


この考えにのっとり、2023年6月に閣議決定した新たな開発協力大綱において、日本は開発協力の目的を、(1)開発途上国との対等なパートナーシップに基づき、開発途上国の開発課題や人類共通の地球規模課題の解決に共に対処し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の下、平和で安定し、繁栄した国際社会の形成に一層積極的に貢献すること、(2)同時に、日本と世界にとって望ましい国際環境を創出し、信頼に基づく対外関係の維持・強化を図りつつ、日本とその国民の平和と安全を確保し、経済成長を通じてさらなる繁栄を実現するといった日本の国益の実現に貢献すること、としています。


また、新たな開発協力大綱では、オファー型協力の強化を打ち出しました。これは外交政策上、戦略的に取り組むべき分野において、ODAを中核としつつ、日本の開発協力の強みをいかした魅力的な協力メニューを積極的に提案し、対話と協働を通じて案件形成を行うものです。これにより、日本と相手国の双方の課題解決と同時に、日本の経済成長にもつなげることを目指していく取組になります。


2024年に70年の節目を迎える開発協力は、現地の人々に喜ばれ、開発途上国との良好な二国間関係の構築や、国際的な場における日本への信頼の向上にも大きく寄与してきました。日本の協力に対する謝意や信頼の表れとして、開発途上国は日本の協力を自国の紙幣や切手のデザインに採用したりしています。また、能登半島地震や東日本大震災等の災害にあたっては、開発途上国を含め世界の国々より、多くのお見舞いや支援が届けられました。日本は、国連加盟国中最多の12回にわたり国連安全保障理事会非常任理事国に選出されていることを始め、国際選挙において、開発途上国を含む世界の国々から多大な支持を得ています。これらは、ODAの戦略的活用を含む外交努力の結実であり、国際社会の日本への信頼と期待の高さといえます。パワーバランスの変化により不確実性を増す国家間競争の時代において、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くためにも、開発途上国を含む各国との関係強化は一層重要になっています。


グローバル化に伴い日本企業の海外進出も増加しています。しかし、開発途上国においては、インフラの未整備や技術系人材の不足、税制・法制度の不透明さなど、ビジネス展開に課題があることも事実です。このような課題の解決や、事業開始に向けた調査・実証事業、日本の技術の活用促進等にもODAは活用されており、これからも日本企業の開発途上国でのビジネス展開を下支えしていきます。


国際社会の相互依存は深まり、一国の努力だけでは解決し得ない地球規模課題は一層深刻化、複雑化しています。世界が抱えている課題を解決することが、日本の平和と安全、そして繁栄につながるものとなるよう、日本はこれからも、ODAを適切かつ透明性をもって活用し、世界の様々な主体と協力しながら、一層戦略的・効果的な開発協力を行っていきます。

野口記念医学研究所がデザインされたガーナの記念切手。日本は、同研究所への支援を通じ、ガーナにおける医学研究分野の人材育成に貢献している。

野口記念医学研究所がデザインされたガーナの記念切手。日本は、同研究所への支援を通じ、ガーナにおける医学研究分野の人材育成に貢献している。

ODAを活用したモロッコにおける太陽光発電システムの実証試験。住友電気工業株式会社が開発した集光型太陽光発電システムの優位性が証明され、モロッコ政府との、より大規模な実証プロジェクトの直接契約につながっている。

ODAを活用したモロッコにおける太陽光発電システムの実証試験。住友電気工業株式会社が開発した集光型太陽光発電システムの優位性が証明され、モロッコ政府との、より大規模な実証プロジェクトの直接契約につながっている。

2023年2月に発生したトルコ南東部を震源とする大地震で、トルコに派遣された日本の国際緊急援助隊(JDR)・医療チームへの感謝のメッセージを掲げるこどもたち(写真:JICA)

2023年2月に発生したトルコ南東部を震源とする大地震で、トルコに派遣された日本の国際緊急援助隊(JDR)・医療チームへの感謝のメッセージを掲げるこどもたち(写真:JICA)

ルーマニア シェルター居住者 ヴァレンチーナ・シェフチェンコさん(写真:GNJP) 「ウクライナのザポリッジャ原子力発電所に近いニコポリから一人で逃げてきました。へルソン州のカホフカ水力発電所ダム決壊の影響も不安ですし、ロシア軍の占領地に義理の妹が残っていることも心配ですが、ルーマニアでは人々が温かく迎えてくれて、シェルターにはシャワーもあり洗濯もできるので安心できます。新年やクリスマスなどをお祝いできるのも嬉しいです。」(特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパン(GNJP)実施の案件。概要についてはウクライナおよび周辺国での日本の取組を参照)

ルーマニア
シェルター居住者 ヴァレンチーナ・シェフチェンコさん(写真:GNJP)
「ウクライナのザポリッジャ原子力発電所に近いニコポリから一人で逃げてきました。へルソン州のカホフカ水力発電所ダム決壊の影響も不安ですし、ロシア軍の占領地に義理の妹が残っていることも心配ですが、ルーマニアでは人々が温かく迎えてくれて、シェルターにはシャワーもあり洗濯もできるので安心できます。新年やクリスマスなどをお祝いできるのも嬉しいです。」(特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパン(GNJP)実施の案件。概要についてはウクライナおよび周辺国での日本の取組を参照)

ドミニカ共和国 JICA帰国研修員 ヤンケル・セナさん(写真中央) 「私はJICA開発大学院連携プログラムの研修員として大分大学医学部に留学し、博士課程を修了しました。同大学の恩師の『一所懸命勉強して、それを皆のために役立てて』という言葉を胸に、がん医療の分野で習得した日本の最先端の知識を自分の国に還元したいと思っています。」

ドミニカ共和国
JICA帰国研修員 ヤンケル・セナさん(写真中央)
「私はJICA開発大学院連携プログラムの研修員として大分大学医学部に留学し、博士課程を修了しました。同大学の恩師の『一所懸命勉強して、それを皆のために役立てて』という言葉を胸に、がん医療の分野で習得した日本の最先端の知識を自分の国に還元したいと思っています。」

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