3 新興ドナーや民間主体による「途上国支援」の増加

G20開発大臣会合に出席する武井外務副大臣(当時)
近年、DACメンバーに加え、DACに参加していない中国、インド、インドネシア、サウジアラビア、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、トルコ、南アフリカ等の新興ドナーや民間の財団などによる開発途上国支援が増加しています。DACに実績報告を行っている非DAC諸国は少ないですが、DACの統計で集計されているだけでも、2022年では、非DAC諸国による支援は計179億ドル以上、DAC諸国および非DAC諸国からの民間資金は計2,310億ドル以上、NGOによる支援は計561億ドルに達しています注9。
2023年9月のSDGサミット2023で採択された政治宣言において、「我々は、SDGsの達成に向けた資金ギャップの著しい拡大を深く懸念し、予測可能で持続可能かつ十分な開発資金をあらゆる資金源から開発途上国に提供することの緊急性を認識する。」旨言及されているように、SDGsの達成に向けて、様々な主体による資金が開発途上国に向けられることが求められています。
開発途上国への資金の流れが多様化する中、その流れを正確に把握し、限りある開発資金を効果的に活用することは国際社会が連携して開発協力を推進するためには不可欠ですが、非DAC諸国などが実施する開発途上国支援の内容は、DACが作成・公表する統計では全てが明らかにならないのが現状です。また、国際ルール・スタンダードに合致しない不透明かつ不公正な貸付慣行の存在も指摘されています。
こうした状況下、2023年も、G7、G20やOECD等の様々な国際フォーラムにおいて、開発金融の透明性等について議論が行われました。2023年に日本が議長国を務めたG7においては、2月に開催されたG7開発担当高官会合の議長総括や4月のG7外相会合コミュニケにおいて、透明で公正な開発金融の慣行を推進することを決意するとともに、既存の原則の実施ギャップに対処するために協働することが確認されました。これらの会合における議論も踏まえ、5月に開催されたG7広島サミットでは、岸田総理大臣が、議長国として議論をリードし、透明で公正な開発金融の促進を呼びかけ、G7広島首脳コミュニケでは、「透明で公正な開発金融を促進し、債務の透明性および持続可能性、公正な審査、選択および質の高いインフラ投資のための貸付慣行といった既存の原則の実施におけるギャップに対処するために協働するとの決意」が確認されました。
G20においては、6月のG20開発大臣会合に武井外務副大臣(当時)が出席し、全ての債権国・債務国が国際ルール・スタンダードを遵守する透明で公正な開発金融を促進することが重要である旨を訴え、同会合の成果文書・議長総括で、「G20は、関連する原則を尊重した開発金融を促進する重要性を再確認する」旨が記載されました。これらの会合における議論も踏まえ、9月に開催されたG20ニューデリー・サミットでは、岸田総理大臣が国際ルール・スタンダードを遵守した透明で公正な開発金融について、より多くの債権国および債務国の間で重要性を共有していく必要があり、G20でも取組を促進すべき旨発言しました。
また、OECDでは、11月のDACハイレベル会合で採択されたコミュニケにおいて、全ての開発協力の提供主体に対し、透明性と説明責任を向上させるよう国際的なスタンダードや慣行を一層遵守するよう求める旨や、借入国と公的・民間の債権者は持続可能ではない債務状況を未然に防止し、解決するために協力しなければならない旨が盛り込まれました。
日本としては、中国等、新興ドナーの開発途上国支援が国際的な基準や取組と整合的な形で透明性を持って行われるように、引き続き国際社会と連携しながら働きかけていきます(第Ⅲ部1(4)および第Ⅴ部1(2)も参照)。

- 注9 : OECDデータベース(OECD.Stat)(2023年12月)。