2 実績から見た主要ドナーの政府開発援助概要
いかなる協力がODAに該当するのか、それをどのように報告するかについては、OECD開発援助委員会(DAC)が国際的なルールを定めています。DACが定めるルールでは、ODAは、(ⅰ)公的機関またはその実施機関によって供与される、(ⅱ)開発途上国の経済開発や福祉の向上を主目的とする、(ⅲ)譲許的性格を有する(政府貸付等の場合、貸付条件(金利、償還期間等)が受取国にとって有利に設定されている)、の3要件を満たすものとされています。
このように、DAC諸国はDACが定めるルールに基づいて開発協力を行っていますが、主要ドナーが実施するODAの内容は国によって異なっています。ここでは、主にG7諸国を中心としたDACドナーの援助概要について2022年の実績を参考に概説します。
■主要ドナーの支援実績
2022年のDAC諸国のODA供与額(贈与相当額計上方式(GE方式))は、約2,106億6,000万ドルでした。国別実績(GE方式、DAC諸国における構成比)では、1位が米国(約605億2,200万ドル、28.7%)、2位がドイツ(約356億4,000万ドル、16.9%)、3位が日本(約175億万ドル、8.3%)、4位がフランス(約160億1,400万ドル、7.6%)、5位が英国(約157億6,200万ドル、7.5%)、6位がカナダ(約78億3,600万ドル、3.7%)、7位がイタリア(約66億4,600万ドル、3.2%)、8位オランダ(約64億7,000万ドル、3.1%)、9位スウェーデン(約54億5,800万ドル、2.6%)とG7諸国が上位を占めています注6。
■主要ドナーの支援分野
2022年の実績では、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダは、教育、保健、上下水道等の社会インフラ分野への支援を重点的に行っています。また、米国はODA全体の30%以上を人道支援等の緊急援助、食糧援助に充てています。一方、道路や橋、鉄道、通信、電力等の経済インフラ分野については、日本が最も多く44.4%を、次いでフランスが28.8%をそれぞれ配分しています。日本の協力に占める経済インフラ分野での支援が大きいのは、自らの戦後の復興経験からも、開発途上国の持続的な経済成長を通じた貧困削減等の達成のためには、まず経済インフラを整え、自助努力を後押しすることが不可欠と考えているからです(図表Ⅱ-7)。

■主要ドナーの支援地域
日本はアジア地域を中心に支援している(2022年の支出総額(以下同)の約56.0%)のに対し(図表Ⅱ-2)、米国、英国、フランス、ドイツおよびイタリアはサブサハラ・アフリカ向け支援が1位(それぞれ24.2%、12.4%、30.9%、14.1%、13.8%)、カナダは欧州向け支援が1位(32.0%)となっています注7。また、地域別で見た主要DAC諸国からの支援実績の割合では、米国は中東・北アフリカ(25.4%)、サブサハラ・アフリカ(38.6%)、中南米(28.6%)、および欧州(47.6%)で1位となっています。大洋州ではオーストラリアが総供与額の51.9%を支援しています。このように、各国による支援重点地域は、地理的近接性や歴史的経緯等による影響も受けています(図表Ⅱ-8)。

■援助形態別の実績
援助形態別に見ると、2022年のDAC諸国全体のODA実績のうち、贈与が約85.5%(二国間無償注8:約55.2%、二国間技術協力:約8.5%、国際機関向け贈与:約21.7%)、政府貸付等が約14.5%(二国間:約14.0%、国際機関向け:約0.5%)となっており、日本とフランス、カナダを除く主要DAC諸国実績上位10か国は、そのほとんどを贈与(二国間無償、二国間技術協力、国際機関向け贈与)の形態で実施しています(図表Ⅱ-9)。
日本のODAに占める有償資金協力(円借款等)の割合が多いのは、開発を与えられたものとしてではなく、開発途上国自身の事業として取り組む意識を高めることが、効果的な開発協力のために重要との考えに基づき、開発途上国の人々自らによる経済成長への努力を支援することを目的としているためです。開発途上国側から見れば、自らが借りたお金で国の社会や経済の発展を目指した事業を行うことになり、それだけに一生懸命に事業に取り組むことにつながります。円借款事業が終了した後も、開発途上国の人々が自らによって事業を持続・発展的に行えるようになることを目指した協力を行っている点は、自助努力を重視する日本ならではの支援といえます。

- 注6 : OECDデータベース(OECD.Stat)(2023年12月)。
- 注7 : OECDデータベース(OECD.Stat)(2023年12月)。
- 注8 : 二国間無償は、図表Ⅱ-1無償資金協力、債務救済、国際機関等経由を指す。