2022年版開発協力白書 日本の国際協力

(3)多大な影響を受けるいわゆる「グローバル・サウス」への支援

ウクライナの穀物貯蔵能力を拡大する支援として、FAO経由で支援物資がウクライナ西部リヴィウ州に届いたときの様子(写真:FAO)

ウクライナの穀物貯蔵能力を拡大する支援として、FAO経由で支援物資がウクライナ西部リヴィウ州に届いたときの様子(写真:FAO)

ウクライナ産小麦がWFPを通じて食料危機にあるソマリアに向けて輸送される様子(写真:Ukrainian Sea Ports Authority)

ウクライナ産小麦がWFPを通じて食料危機にあるソマリアに向けて輸送される様子(写真:Ukrainian Sea Ports Authority)

ウクライナ産小麦がソマリアに到着し、日章旗等マークの付いた袋に詰められている様子(写真:© WFP/Jamal Ali)

ウクライナ産小麦がソマリアに到着し、日章旗等マークの付いた袋に詰められている様子(写真:© WFP/Jamal Ali)

G7エルマウ・サミットのウクライナ情勢を議題としたセッションに参加する岸田総理大臣(2022年6月27日)(写真:内閣広報室)

G7エルマウ・サミットのウクライナ情勢を議題としたセッションに参加する岸田総理大臣(2022年6月27日)(写真:内閣広報室)

TICAD 8で共同議長を務める林外務大臣(2022年8月27日)

TICAD 8で共同議長を務める林外務大臣(2022年8月27日)

ロシアによるウクライナ侵略という国際秩序の根幹を揺るがす事態の影響は世界的に広がっており、とりわけ、既に多くの困難に直面している開発途上国の経済・社会に新たな打撃を与えています。

3月、G7首脳会合に参加した岸田総理大臣は、ロシアの侵略がエネルギーや食料の価格高騰に拍車をかけていることに懸念を表し、影響を受けている国々への支援の必要性と、エネルギー安全保障や食料安全保障の確保に向け行動することの重要性に言及しました。5月には、ドイツ・ベルリンで開催され、鈴木外務副大臣(当時)が出席したG7開発大臣会合において、「ロシアのウクライナに対する侵略戦争の世界的影響及びウクライナ、影響を受けた周辺国とグローバル・サウス諸国に対するG7の包括的支援に関するG7開発大臣声明」が発出されました。

ウクライナ情勢の影響を受けたグローバルな食料安全保障への対応として、6月、ドイツ主催の「グローバルな食料安全保障に向けた結束のためのベルリン閣僚会合」に出席した林外務大臣は、G7を含む主要ドナー国、食料危機の影響を受ける国、国際機関等の出席者を前に、ロシアのウクライナ侵略により食料危機が一層深刻化するイエメンやスリランカに対して、WFPを通じた緊急人道支援を行っていること、FAOを通じてウクライナ農業支援を行っていることを紹介しました。そして、さらなる支援を検討していることを述べ、日本が、影響を受ける国に寄り添った支援を行っていく旨を述べました。

6月、ドイツで開催されたG7エルマウ・サミットにおいて、岸田総理大臣は、現実に食料危機に直面している国々がある中、具体的な支援を通じて連帯を示すことが重要である旨を強調し、グローバルな食料危機への対応として、主にアフリカ・中東向けの食料支援等に、計約2億ドルの支援注8を新たに表明しました。7月にはこれを具現化するものとして、食料不足に直面する国々への食料支援および生産能力強化支援、中東・アフリカ諸国に対する緊急食料支援およびウクライナからの穀物輸出促進支援を、二国間支援や国連機関および日本のNGOを通じて実施することを決定しました。

さらに8月、チュニジアで開催されたTICAD 8において、岸田総理大臣は、アフリカにおいて食料危機がこれまで以上に深刻になっていることを指摘しました。そして日本が、アフリカにおける中長期的な食料生産能力の強化に向け、アフリカ開発銀行の緊急食糧生産ファシリティとの約3億ドルの協調融資を行うことを表明しました。また、「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)」(「国際協力の現場から4」を参照)や、「小規模農家向け市場志向型農業振興(SHEP)」などの取組を通じた、アフリカ自身の穀物生産能力の強化や小規模農家の所得向上を目指す支援を継続し、今後さらに、計20万人の農業分野の人材を育成することを表明しました。

11月にインドネシアで開催されたG20バリ・サミットにおいても、岸田総理大臣は、食料・エネルギー安全保障を確保するために、緊急の対応が必要であることを強調しました。そして、これまでに実施してきているロシアによるウクライナ侵略に起因するグローバルな食料危機への日本の取組を説明するとともに、食料・エネルギー価格の高騰等により深刻な影響を受けるアジア、アフリカ、中東等の国々への食料支援を含む緊急支援を一段と強化する考えである旨を述べました。また、その一例として、日本は、9月の国連総会でゼレンスキー・ウクライナ大統領がエチオピアとソマリアに対するウクライナ産小麦の無償提供を表明したことを受け、1,400万ドルの緊急無償資金協力を決定し、WFPを通じて、ウクライナ政府から無償で提供されたウクライナ産の小麦をオデーサ港からソマリアへ輸送し、現場での配布を行っています。

ロシア・ウクライナ情勢が長期化する中、その影響は拡大し、支援ニーズも拡大しています。日本は、平和で安定した国際秩序を維持・強化するための施策として、ウクライナおよび周辺国支援のみならず、アジア、太平洋島嶼(しょ)国、中東、アフリカなどの途上国向け支援等の取組を進めています。


  1. 注8 : 「(2)ウクライナの安定と復興のための支援」に記載のFAO経由1,700万ドルの支援を含む。
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