2021年版開発協力白書 日本の国際協力

(3)新興ドナーや民間主体による「途上国支援」の増加

近年、DAC諸国に加え、DACに参加していない中国、インド、インドネシア、サウジアラビア、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、トルコ、南アフリカ等の新興ドナーや民間の財団などによる開発途上国支援が増加しています。DACの統計で集計されているだけでも、2019年の非DAC諸国(DACに実績報告を行っている国のみ)による支援は計160億ドル以上、NGOによる支援は計450億ドル以上に達しています。

途上国への資金の流れを正確に把握し、限りある開発資金を効果的に活用することは国際社会が連携して開発協力を推進するためには不可欠ですが、非DAC諸国などが実施する途上国支援の内容は、DACが作成・公表する統計ではすべてが明らかにならないのが現状です。また、国際ルール・スタンダードに合致しない不透明かつ不公正な貸付慣行の存在も指摘されています。

こうした情況下、2021年にはG7、G20やOECD等の様々な国際フォーラムにおいて、開発金融の透明性等について議論が行われました。たとえば、6月末に開催されたG20開発大臣会合では、茂木外務大臣(当時)から、G20各国が開発金融に関する国際ルールの遵守(じゅんしゅ)に率先して取り組むべきであり、ODA以外の公的資金の流れを含めて可視化する画期的な取組である「持続可能な開発のための公的総支援(TOSSD:Total Official Support for Sustainable Development)」注17に、できるだけ多くの国が早期に参加できるよう、議論を開始していくことを提起しました。

また、10月に採択されたOECDの今後10年間の基本方針を示す文書である「OECD設立60周年ビジョン・ステートメント」では、「全ての関係者」に対し、透明性と説明責任を向上させるようOECDのスタンダードや慣行の遵守を促進する旨が表明されました。12月に開催されたOECD開発センター注18理事会第7回ハイレベル会合にて採択されたコミュニケにおいても「債務管理の強化や債務の記録・管理システムの統合を通じ、債務の透明性を高めることの重要性を強調する」旨が表明されました。

日本としては、中国等、新興ドナーの途上国支援が国際的な基準や取組と整合的な形で透明性を持って行われるように、引き続き国際社会と連携しながら働きかけていきます(債務問題への取組および諸外国・国際機関との連携も参照)。

図表Ⅰ-10 DAC援助受取国・地域リスト

  1. 注17 : TOSSDは、持続可能な開発に資する公的な資金の流れを幅広く捕捉すべく、2017年以降、DACを中心に検討が開始された新たな統計システム。DACに報告していない新興ドナーからの「援助」や、必ずしも開発を主な目的としていない資金、さらには公的資金の関与によって動員された民間資金も持続可能な開発に資するものであれば対象になり、2020年より、データ報告が開始されている。
  2. 注18 : OECD開発センターとは、様々な開発課題・経済政策に関する調査・研究等を行うOECDの一機関。OECD加盟国だけでなく、中国をはじめとするOECD非加盟の新興ドナーや途上国もメンバーとなっている。
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