2021年版開発協力白書 日本の国際協力

第Ⅰ部 日本の新型コロナウイルス感染症対策支援

第24回日ASEAN首脳会議において、岸田総理大臣から日本のASEAN地域に対する新型コロナウイルス感染症対策支援を紹介(2021年10月27日)(写真:内閣広報室)

第24回日ASEAN首脳会議において、岸田総理大臣から日本のASEAN地域に対する新型コロナウイルス感染症対策支援を紹介(2021年10月27日)(写真:内閣広報室)

1 日本の新型コロナウイルス感染症対策支援

ベトナムのチン首相と会談した岸田総理大臣。チン首相からは、ベトナムに対する日本のワクチン供与に対する謝意が述べられ、新型コロナ対策において日本と連携を強化していきたい旨発言があった。(2021年11月24日)(写真:内閣広報室)

ベトナムのチン首相と会談した岸田総理大臣。チン首相からは、ベトナムに対する日本のワクチン供与に対する謝意が述べられ、新型コロナ対策において日本と連携を強化していきたい旨発言があった。(2021年11月24日)(写真:内閣広報室)

日パラグアイ外相会談では、林外務大臣から、日本はコロナ禍で必要とされる医療体制強化のための機材供与をしており、引き続き、インフラ整備を含め、パラグアイの経済社会開発のため協力していく考えである旨を伝えた(2021年11月22日)

日パラグアイ外相会談では、林外務大臣から、日本はコロナ禍で必要とされる医療体制強化のための機材供与をしており、引き続き、インフラ整備を含め、パラグアイの経済社会開発のため協力していく考えである旨を伝えた(2021年11月22日)

2021年も新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染拡大が世界全体に大きな影響をもたらしました。新型コロナ危機は人間の安全保障に直結する国際社会共通の課題であり、国際社会が一体となって取り組む必要があります。2021年12月までに、日本は、二国間および国際機関経由で、総額約4,300億円(約39億ドル)の資金協力を実施しました。また、2020年から2年間で最大7,000億円(約64億ドル)の新型コロナ危機対応緊急支援円借款を設立し円借款を供与しています。

2022年中頃までには全ての国の人口の70%にワクチンを接種するという世界保健機関(WHO)の目標を達成するためには、ワクチンの供給のみならず、その開発、生産、輸送、接種等のための包括的な支援やワクチンへの信頼を高めることが不可欠です。

日本は、「誰の健康も取り残さない」との理念の下、一人でも多くの命を守るため、COVAXファシリティ(COVID-19 Vaccine Global Access Facility)解説を通じた支援やワクチンの現物供与を行うとともに、ワクチンを確実に接種現場まで届けるためのコールド・チェーン注1整備等を行う「ラスト・ワン・マイル注2支援」を進めてきました。また、感染症に対するレジリエンス(対応能力)を高めるためには、開発途上国の保健・医療体制の強化が重要との考えから、酸素濃縮器や人工呼吸器をはじめとする保健・医療機材の供与を実施しています。さらには、財政状況が厳しくなった途上国に対し、緊急の円借款を実施し、経済財政支援を行っています。

(1)命を守るワクチン支援

感染症危機を克服するためには、開発途上国の医療体制の整備・強化や適切な医療サービスへのアクセスが不可欠です。特に、世界のあらゆる国・地域において、安全性、有効性および品質が保証されたワクチンへの公平なアクセスを確保する必要があります。日本は、二国間で、また国連機関・国際機関、主要ドナー等との連携を通じ、様々な支援を実施しています。

ア ワクチンを巡る国際会議とワクチン供与に関する日本の取組
COVAXワクチン・サミット(2021年6月)(写真:Gaviワクチンアライアンス)

COVAXワクチン・サミット(2021年6月)(写真:Gaviワクチンアライアンス)

バングラデシュでの新型コロナワクチン引渡式の様子(2021年8月)

バングラデシュでの新型コロナワクチン引渡式の様子(2021年8月)

キリバスでワクチン到着を迎えるテマリ・ライン島・フェニックス島開発担当大臣(写真:UNICEF)

キリバスでワクチン到着を迎えるテマリ・ライン島・フェニックス島開発担当大臣(写真:UNICEF)

2021年も、様々な国際会議において、ワクチンの供給支援を含む新型コロナ危機への対応についての議論が行われました。

6月、日本はCOVAXワクチン・サミット(AMC増資首脳会合)をGavi(ガビ)ワクチンアライアンス解説と共催し(テレビ会議)、共同議長として、各国政府や民間セクターに対し、資金提供を働きかけました。その結果、同サミットにおいて、2021年末までに全世界で「18億回、開発途上国の人口30%分」のワクチンを供給するために必要とされる資金調達目標83億ドルを大きく上回る96億ドルを確保しました。また、日本は、COVAXの途上国向け支援枠組(Advance Market Commitment:AMC)解説に対し、8億ドルを追加拠出することを表明しました。これにより、日本によるCOVAXへの財政支援は、既に拠出した2億ドルに加え計10億ドルになりました。さらに、各国・地域に対し日本国内で製造したワクチンを3,000万回を目処とし供与する旨も表明しました。

6月のG7コーンウォール・サミットにおいては、菅総理大臣(当時)が保健に関するセッションのリード・スピーカーの一人として議論を主導しました。G7は、ACTアクセラレータ注3への支持を再確認し、G7として少なくとも8億7,000万回分のワクチンを2022年にかけて現物供与することや、資金および現物供与を通じて10億回分に相当する支援を行うことにコミットしました。G7各国からはCOVAXワクチン・サミットの成功裏の開催への歓迎が示されました。

その後も、9月に米国主催で開催された「新型コロナ・サミット」および同月の第76回国連総会においても、日本は、ワクチン供与を含む日本の新型コロナ対策支援について世界に発信しました。10月のG20ローマ・サミットにおいては、岸田総理大臣から、2022年中頃までには全ての国の人口の70%に新型コロナに対するワクチンを接種するという目標を支持する旨述べました。

さらに、12月に日本が開催した東京栄養サミット2021においても、岸田総理大臣から、特に喫緊(きっきん)のワクチン需要があるアフリカに対し、国際機関などと調整の上、今後、日本として1,000万回分を目処としてワクチン供与を行う旨を表明しました(東京栄養サミット2021については、「開発協力トピックス」を参照)。

なお、日本は、2021年6月以降2022年2月末までに、26か国・地域に対し約4,200万回分のワクチンを供与しました(直接供与:インドネシア、タイ、台湾、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシアに約2,500万回分、COVAXファシリティを通じた供与:東南アジア、南西アジア、中央アジア、太平洋島嶼(とうしょ)国、中南米、中東およびアフリカの19か国に約1,700万回分)。また、COVAXファシリティを通じたワクチン供与のために必要な輸送経費等の一部を、国連プロジェクト・サービス機関(UNOPS)を通じ支援しました。日本からのワクチンが届いた各国・地域では、テレビや新聞等の主要メディアで大きく報じられ、ワクチン供与に対する謝意が表明されました。

イ 一人ひとりにワクチンを届ける「ラスト・ワン・マイル支援」
フィリピンで行なわれた「ラスト・ワン・マイル支援」引渡式で冷蔵庫が供与されている様子(2021年11月)

フィリピンで行なわれた「ラスト・ワン・マイル支援」引渡式で冷蔵庫が供与されている様子(2021年11月)

ラオスでの新型コロナ・ワクチン引渡式の様子(2021年8月5日)(写真:UNICEF Laos/2021/AKarki)

ラオスでの新型コロナ・ワクチン引渡式の様子(2021年8月5日)(写真:UNICEF Laos/2021/AKarki)

開発途上国では、供与されたワクチンをいかに適切な方法で各地域のワクチン接種場所まで運搬するかが大きな課題となっていました。ワクチンを接種現場まで迅速かつ確実に届けるためには、コールド・チェーン注4等の物流網の整備が不可欠です。

日本は、JICAおよび国連児童基金(UNICEF)との連携により、途上国でワクチンを一人ひとりに届けるための支援を迅速に実施しました。JICAは長年にわたる医療供給網整備支援の経験および実績を活かし、日本製の保冷設備や、運搬用車両、検査機材等の供与等を通じ、途上国のワクチン接種体制の強化に貢献しています。この「ラスト・ワン・マイル支援」として、2021年12月末までに、東南アジア、南西アジア、太平洋島嶼国、中南米、アフリカ等の59か国・地域に総額137億円の無償資金協力を行いました(UNICEFでの日本人職員の活躍について、「コロナ禍の世界の現場で活躍する国際機関日本人職員」も参照)。

ウ ワクチン支援のための日米豪印連携

インド太平洋地域においては、2021年3月、日本、米国、オーストラリアおよびインドの4か国首脳が参加する初の日米豪印首脳テレビ会議が開催され、日米豪印ワクチン・パートナーシップを立ち上げました。2021年9月に米国ワシントンで開催された第2回日米豪印首脳会合においても、4か国は、ワクチン供与や資金拠出を通じて、インド太平洋地域における、安全性、有効性、品質が保証されたワクチンへの公平なアクセスの確保に向け大きな役割を果たしていることを確認し、ワクチンの生産拡大、インド太平洋地域への供給を含め、新型コロナ対策において引き続き協力していくことで一致しました。


  1. 注1 : 低温を保ったまま、製品を目的地まで配送する仕組み。これにより、ワクチンなどの医療品の品質を保つことができる。
  2. 注2 : Last one mile。物流・通信サービス等の分野において、モノまたはサービス提供のための最終拠点から利用者や消費者にモノまたはサービスが届くまでの最後の区間のこと。
  3. 注3 : 新型コロナのワクチン、治療薬および診断の開発・生産・公平なアクセスを加速化させるための国際的な枠組み。WHO他が提案し、新型コロナウイルス・グローバル対応サミット(2021年5月、EU主催)において日本、EU、イタリア、英国、スペイン、ドイツ、ノルウェーおよびフランスが共同提案国となって発足。
  4. 注4 : 注1を参照。
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