用語集
アンタイド/タイド援助 | アンタイド援助とは、経済協力開発機構(OECD)の定義によれば、「OECD全加盟国および実質的にあらゆる援助受取国からの自由かつ十分な調達が可能であるような贈与または借款」とされている。タイド援助は、これらの調達先が、援助供与国に限定されるなどの条件が付くものを指し、日本語では「ひもつき」援助と訳されることがある。2001年にOECD開発援助委員会(DAC)で後発開発途上国(LDCs)向け援助のアンタイド化勧告が採択され(技術協力と食糧援助を除く、有償資金協力と無償資金協力が対象)、DACメンバー国に適用されている。同勧告の対象国は2008年にLDCs以外の重債務貧困国(HIPCs)に、2018年にその他低所得国(OLICs)およびIDA借入国(IDA-only countries and territories)にも拡大された。 |
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援助協調 | 開発途上国の開発目標の下で様々な援助主体が情報共有を行い、援助の戦略策定やプロジェクト計画・実施などにおいて活動を協調させ、途上国と共に効果的・効率的な開発協力を進めていくこと。案件ごとのドナー同士の連携・調整だけではなく、被援助国の開発政策に沿って、ドナーが共通の戦略や手続きで支援を行う総合的な援助協調が世界各国で進められている。なお、近年、新興国や民間セクター等、開発にかかわる主体が多様化していることから、主に先進国ドナー間の協調を指す「援助協調」に加え、「開発協力のためのパートナーシップ」、「開発協力主体間の連携」等の言葉も使われる。 |
ODAを活用した官民連携 | 民間企業の意見をODAの案件形成の段階から取り入れて、たとえば、基礎インフラはODAで整備し、投資や運営・維持管理は民間で行うといったように、官民で役割分担し、より効率的・効果的な事業の実施を目指すもの。上下水道、空港、高速道路、鉄道などの分野での連携事例がある。JICAが行う民間連携事業としては、調査提案を民間法人から公募し、主に「海外投融資」の活用を前提とした事業の計画策定を支援する「協力準備調査(海外投融資)」がある。また、JICAでは、開発途上国の開発ニーズと中小企業をはじめとする日本企業が有する優れた製品・技術等とのマッチングを目的とする企業提案型の官民連携事業、「中小企業・SDGsビジネス支援事業」も実施している。 |
開発協力大綱 | 開発協力の最上位の政策文書として、開発協力の理念、重点政策、実施の在り方などを定めたもの。1992年6月に策定され、2003年8月に改定された政府開発援助大綱(ODA大綱)を再度改定し、名称を「開発協力大綱」に変え、2015年2月に閣議決定された(詳細は「開発協力大綱(2015年2月閣議決定)」を参照)。 |
技術協力 | 日本の知識・技術・経験を活かし、開発途上国・地域の社会・経済の開発の担い手となる人材の育成を行う協力。 |
研修員受入 | 開発途上国において指導的役割を担うことが期待されている行政官や技術者などに対して、各分野の技術研修、新知識の取得支援あるいは訓練を行うことを目的とする事業。 |
第三国研修 開発途上国が日本の支援のもと、優れた開発経験や知識・技術の移転・普及・定着等を目的に、他の途上国から人員を受け入れて実施する研修。 |
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専門家派遣 | 日本から開発途上国へ専門家を派遣し、相手国の行政官や技術者に必要な技術や知識を伝えるとともに、これらの人々と協働して現地に適合した技術や制度の開発、啓発や普及などを行う事業。 |
第三国専門家派遣 技術協力を効果的に実施するため、協力対象の途上国に他の途上国から専門家を派遣する事業。 |
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機材供与 | 技術協力プロジェクトや専門家の業務に係る技術協力等のために機材を供与すること。 |
技術協力プロジェクト | 「専門家派遣」、「研修員受入」、「機材供与」などを最適な形で組み合わせて開発途上国の関係機関と事業計画の立案、実施を一貫して計画的かつ総合的に実施する技術協力。 |
開発計画調査型技術協力 | 開発途上国の政策立案や公共事業計画策定支援を目的に、調査の実施過程を通じ、相手国担当機関に対し調査・分析手法や計画の策定手法などの技術移転を図るもの。都市開発や運輸交通、主要インフラ分野における開発計画の策定などが主要な例。 |
地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS) | 用語解説を参照。 |
コストシェア技術協力 | ODA卒業国のうち、引き続き日本の支援を必要とする開発課題を有する経済・社会状況が認められる国を対象に行う技術協力。これまでJICAを通じた経済協力によって日本が蓄積してきた経験も活用しながら、日本の質の高い技術・知識・経験を提供し、相手国政府に必要な経費を原則負担させる形で実施することにより、相手国の経済社会開発に寄与し、それらの国と日本との良好な二国間関係の維持および増進を図ることとともに、日本のエネルギー安定確保、本邦企業に有利なビジネス環境の構築・インフラ輸出促進にも貢献することを目的としている技術協力。 |
基礎生活分野/人間の基本的ニーズ(BHN:Basic Human Needs) | 食料、住居、衣服など、人間としての基本的な生活を営む上で必要最低限のもの。保健や教育なども含む。 |
教育2030行動枠組(Education 2030 Framework for Action) | 持続可能な開発目標(SDGs)の策定後、万人のための教育(EFA:Education for All)を継承する、新たな教育支援の枠組みとして、2015年11月に採択された行動枠組み。これにより、すべての人に包摂的で公正な質の高い教育を確保するため国際社会として取り組むこととなった。 |
国別開発協力方針(旧国別援助方針) | ODAの戦略性・効率性・透明性の向上に向けた取組の一環として、被援助国の政治・経済・社会情勢を踏まえ、当該国の開発計画や開発上の課題などを総合的に勘案して策定する日本のODA方針。 |
事業展開計画 | 国別開発協力方針(旧国別援助方針)の別紙として、実施決定から完了までの段階にある個別のODA案件を、国ごとに設定したODAの重点分野・開発課題・協力プログラムに分類して、一覧できるようとりまとめたもの。被援助国および日本の関係者間で共有され、援助の予見可能性を高めることに役立つ資料として、毎年1回更新している。 |
グラント・エレメント | 援助条件の緩やかさを示す指標。借款の利率、返済期間・回数、返済据置期間を反映し、パーセントで表示される。贈与はグラント・エレメント=100%となる。数字が高いほど緩やかさの程度が大きいとされる。 |
経済協力開発機構開発援助委員会(OECD-DAC) | OECDにおいて、開発援助に関する事柄を取り扱う委員会。OECD加盟37か国のうち29か国および欧州連合(EU)からなる。 |
現地ODAタスクフォース | 2003年度から、開発途上国における日本の開発協力を効果的・効率的に実施するため、大使館およびJICAを中心に、JETRO(日本貿易振興機構)、JBIC(国際協力銀行)などの現地事務所を主要な構成メンバーとして立ち上げられたタスクフォース。開発途上国の開発政策と日本の開発協力政策の調和を図り、相手国政府との政策協議や、他ドナーとの援助協調、要望調査を通じた案件形成、実施監理などを行っている。 |
国際協力機構(JICA) | 国際協力事業団を前身とし、2003年10月1日に発足した独立行政法人。日本のODAの主な実施機関。2008年10月、これまで実施してきた技術協力に加え、国際協力銀行(当時)の海外経済協力部門が担当してきた有償資金協力(円借款等)、外務省が実施してきた無償資金協力業務の一部が統合された。これによって、3つの援助手法を一元的に実施する総合的な援助実施機関となった。 |
国際協力銀行(JBIC) | 2008年9月末まで、一般の金融機関と競合しないことを旨としつつ、日本の輸出入等の促進や国際金融秩序の安定への寄与、開発途上地域の経済社会開発などへの寄与を目的として、国際金融等業務および海外経済協力業務(円借款等)を実施してきた機関。2008年10月以降、国際金融等業務は、株式会社日本政策金融公庫に統合され、海外経済協力業務は、国際協力機構に統合された。2012年4月からは、国際金融等業務が日本政策金融公庫から、新たに発足した株式会社国際協力銀行に引き継がれた。 |
国際緊急援助隊 | 海外の地域、特に開発途上にある地域における大規模な自然災害や人為的災害(紛争起因の災害を除く)に対し、被災国政府等の要請に応じ、緊急の援助活動を行う人員を派遣する事業。国際緊急援助隊には、救助チーム、医療チーム、感染症対策チーム、専門家チームおよび自衛隊部隊の5種類がある。 |
国際貧困ライン | 世界銀行が定めている貧困を定義するためのボーダーライン。全ての国の貧困層を同じ基準で測定するため、世界の最貧国数か国の国別貧困ライン(各国において、最低限必要な衣食住が確保できなくなる収入レベル)を共通の通貨価値に換算し、平均したもの。2015年に改定された最新の国際貧困ラインは、1日1.90ドルに設定されている。 |
債務救済 | 開発途上国の国際収支が悪化し、既存の債務の支払いが困難になった場合、支払期限が到来したか、または将来到来する債務の支払いを猶予し、一定期間にわたる分割返済を認めたり(債務繰延:リスケジュール)、これを免除(債務免除または債務削減)したりすること。 |
持続可能な開発のための2030アジェンダ(2030アジェンダ)/ 持続可能な開発目標(SDGs) | 2015年9月に国連総会で採択された、2016年から2030年までの国際開発目標。ミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)の後継として、保健や教育などMDGsの残された課題や、環境問題や格差拡大など新たに顕在化した課題に対応すべく策定された。17のゴールと169のターゲットからなる持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)を掲げている。先進国を含むユニバーサル(普遍的)な目標であり、誰一人取り残さない社会の実現を目指し、経済・社会・環境をめぐる広範な課題に統合的に取り組むこととされている。 |
JICA海外協力隊 | 「ア.JICA海外協力隊(JICAボランティア事業)」を参照。 |
贈与相当額計上方式(GE:Grant Equivalent方式) | 有償資金協力について、贈与に相当する額をODA実績に計上するもの。OECDの開発援助委員会(DAC)が作成する統計において2018年実績から導入された。贈与相当額は、支出額、利率、償還期間などの供与条件を定式にあてはめて算出され、供与条件が緩やかであるほど額が大きくなる。2017年までDAC統計の標準であった純額方式(供与額を全額計上する一方、返済された額はマイナス計上)に比べ、日本の有償資金協力の実態がより正確に評価される計上方式といえる。 |
DACリスト卒業国 | OECD-DACが定める援助受取国・地域のリストから外れた国。日本は、1人当たり所得が一定の水準にあっても特別な脆弱性を抱える小島嶼国等の国々に対する支援を行っていくことが重要との考えから、DACリスト卒業国に対しても必要な協力を実施している。 |
貧困削減戦略文書 | 開発途上国における貧困削減のための改革等の政策努力の説明責任や、途上国と開発パートナーとの連携強化を目的として、当該国のマクロ経済政策や構造改革、成長促進・貧困削減のためのプログラム、資金需要等に関して包括的に記述した文書。世界銀行・国際通貨基金(IMF)により1999年に導入された取組であり、途上国政府のオーナーシップのもと、援助国、国際機関、NGO、民間セクター等のステークホルダーと連携し、3~5年おきに作成されている。重債務貧困国(巨額の借金を抱えている貧困国)が債務削減を受けるための条件として、世銀やIMFによる支援・債務削減の決定に際して参照されている。 |
BOP(Base of the Pyramid)ビジネス | 開発途上国の貧困層を対象にした社会的な課題解決に役立つことが期待されるビジネス。低所得層は約50億人、世界人口の約7割を占めるともいわれ、潜在的な成長市場として注目されている。低所得層を消費、生産、販売などのバリューチェーンに巻き込むことで、持続可能な、現地における様々な社会的課題の解決に役立つことが期待される。 |
平和の定着 | 地域紛争の恒久的な解決のために、紛争が完全に終結する前から支援を行い、地域の安定および平和の萌芽を定着させること。具体的には、①人道・復旧支援の実施、②和平プロセスの促進、③紛争防止支援を3つの柱としている。 |
ミレニアム開発目標(MDGs) | 2001年に策定された、国際社会が直面している困難に対して、国際社会全体が2015年までの達成を目指す8つの目標。目標には、極度の貧困と飢餓の撲滅、初等教育の完全普及、乳幼児死亡率の削減、妊産婦の健康改善、環境の持続可能性確保などがあり、その下には、具体的目標を設定したターゲットや指標などがある。2015年7月、国連はMDGsの最終報告書を公表した。 |
無償資金協力 | 開発途上地域の開発を主たる目的として同地域の政府等に対して行われる無償の資金供与による協力。国際社会のニーズに迅速かつ機動的に対応するための有効な手段であり、国際社会の安定確保や日本のリーダーシップ向上に資する大きな政策的効果がある。 |
施設・機材等調達方式 | 無償資金協力のうち、詳細な調査を伴う施設の建設や機材の調達を行うもの。JICAが実施のために必要な業務を行う。 |
経済社会開発計画 | 外務省が実施のために必要な業務を行う無償資金協力のうち、事業実施への資金供与ではなく物資輸入のための外貨支援を行うもの。調達代理機関を通じて調達を行う。 |
緊急無償資金協力 | 海外における自然災害や紛争の被災者・難民・避難民等を救援することを目的として、被災地で緊急援助活動を行う国際機関・赤十字や被災国政府に対し、緊急に実施される無償資金協力。 |
草の根・人間の安全保障無償資金協力 | 人間の安全保障の理念を踏まえ、開発途上国における経済社会開発を目的とし、草の根レベルの住民に直接貢献する、比較的小規模な事業のために必要な資金を供与する無償資金協力(供与限度額は、原則1、000万円以下)。NGOや地方公共団体などを対象としている。 |
一般文化無償資金協力 | 開発途上国における文化・高等教育振興、文化遺産保全などを目的として機材調達や施設整備などを支援するための無償資金協力。政府機関を対象としている。 |
草の根文化無償資金協力 | 開発途上国における文化・高等教育振興、文化遺産保全などを目的とした草の根レベルの小規模な事業の機材調達や施設整備などを支援するための無償資金協力(供与限度額は、原則1、000万円以下)。NGOや地方公共団体などを対象としている。 |
日本NGO連携無償資金協力 | 日本の国際協力NGOが開発途上国・地域で実施する経済社会開発プロジェクトや、災害等復旧・復興支援プロジェクトなどに対する無償資金協力。 |
食糧援助 | 自国の貧困削減を含む経済社会開発努力を実施している開発途上国に対し、食糧援助規約に関連して行われる食糧援助を実施するために必要な生産物および役務の調達に必要な資金の贈与を行う無償資金協力。 |
有償勘定技術支援 | 円借款または海外投融資による有償資金協力の迅速・円滑な実施もしくは達成、またはその開発効果向上を目的として研修、専門家派遣、調査等をJICA有償資金協力勘定から実施するもの。 |
有償資金協力 | 開発途上地域の開発を主たる目的として資金の供与の条件が開発途上地域にとって重い負担にならないよう、金利、償還期間等について緩やかな条件が付された有償の資金供与による協力。開発途上地域の政府などに対して開発事業の実施に必要な資金、または当該開発途上地域の経済の安定に関する計画の達成に必要な資金を貸し付ける「円借款」と日本国内、または開発途上地域の法人等に対して開発事業に必要な資金を融資・出資する「海外投融資」がある。有償資金協力は、無償資金協力と比較して大規模な支援を行いやすく、途上国の経済社会開発に不可欠なインフラ建設等の支援に効果的である。また、途上国に返済義務を課すことで自助努力を促す効果を持つ。さらに、途上国と長期にわたる貸借関係を設定することにより、その国との中長期にわたる安定的な関係の基礎が構築可能。 |
海外投融資 | JICAが行う有償資金協力の一つで、開発途上国での事業実施を担う民間セクターの法人などに対して、必要な資金を出資・融資するもの。民間企業の途上国での事業は、雇用を創出し経済の活性化につながるが、様々なリスクがあり、高い収益が望めないことも多いため、民間の金融機関から十分な資金が得られないことがある。海外投融資は、そのような事業に出資・融資することにより、途上国の開発を支援している。支援対象分野は、①インフラ・成長加速化、②SDGs(貧困削減、気候変動対策を含む)。(詳細は「国際協力の現場から」および「エ.海外投融資」を参照。) |