開発協力トピックス3
持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた日本政府の取組
~世界でリーダーシップを発揮し、国内での認知度を向上させた2019年~
持続可能な開発目標(SDGs)とは、2030年までに、持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標であり、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されています。SDGsは、経済、社会、および環境の3つの側面を不可分のものとして調和させる統合的取組であり、先進国と開発途上国がともに取り組むべき普遍的な目標です。SDGsには17のゴールと169のターゲットが定められており、「誰一人取り残さない」という理念を謳(うた)っています。これは、日本が国際社会で主導してきた「人間の安全保障」の考え方が反映されたものであり、日本は国を挙げてSDGsを積極的に推進しています。
日本は、2015年9月の国連サミットでの採択後、SDGsを推進するため、まず、国内の基盤整備を行いました。具体的には、2016年5月、安倍総理大臣を本部長とし、全閣僚を構成員とする「SDGs推進本部」を立ち上げ、政府が一丸となって国内外でSDGsに取り組む体制を整えました。同推進本部のもと、民間セクター、市民社会、有識者、国際機関、各種団体を含む幅広いステークホルダーからなる「SDGs推進円卓会議」での議論などを経て、日本のSDGs達成に向けた国家戦略である「SDGs実施指針」や、具体的な施策を盛り込んだ「SDGsアクションプラン」を策定してきました。2019年12月に開催されたSDGs推進本部第8回会合では、過去4年間の取組や国際社会の最新の潮流を踏まえて「SDGs実施指針」を改定し、「SDGsアクションプラン2020」のもと、①ビジネスとイノベーション、②地方創生、③次世代・女性のエンパワーメントを3本柱として、SDGs達成に資する取組をより加速させていく決意を新たにしました。
2019年6月のG20大阪サミットでは、大阪首脳宣言において、自由貿易の推進やイノベーションを通じた世界の経済成長の牽引(けんいん)と格差への対処、環境・地球規模課題への貢献などを含むSDGsの主要課題について、G20首脳のコミットメントを再確認したほか、日本はG20議長国として、SDGsの達成を念頭に、質の高いインフラ、防災、海洋プラスチックごみ、気候変動、女性、保健、教育の7分野において、議論を主導しました。さらに、同年8月に横浜で開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)においても、成果文書として採択された「横浜宣言2019」の実施行動を示す「横浜行動計画2019」の中で、日本国内の中小企業・SDGsビジネスのアフリカ展開を推進することや、SDGs達成のための科学技術イノベーション(STI for SDGs)を活用する旨を盛り込むなど、日本はSDGs達成のための取組を牽引しています(STI for SDGsについて、詳細は「(10)SDGs達成のための科学技術イノベーション」を参照)。こうした取組を受けて、2019年9月に国連において開催された「SDGサミット2019」では、安倍総理大臣が、過去4年間のSDGs推進の実績を共有した上で、オールジャパンでSDGsを推進してきたことを紹介しました。
また日本は、国内外におけるSDGsの認知度向上に向けた広報活動にも力を入れています。たとえば、優れた取組を行う企業・団体などを表彰する「ジャパンSDGsアワード」を実施しているほか、全国各地での講演、雑誌への寄稿、運輸業界やエンターテイメント業界、各種メディアと連携した様々な形での広報・啓発活動、ホームページ*1やSNS*2による発信などを積極的に行っています。


国連において開催された「SDGサミット2019」でスピーチする安倍総理大臣(2019年9月)
ここ数年、環境対応や企業統治(ガバナンス)に優れた企業を選別して投資する「ESG投資*3」が世界的に活発化していることに伴い、その潮流に可能性を見いだした日本の経済界がSDGsの推進を積極的に牽引していることもあり、日本国内でも急速にSDGsの概念が浸透してきています。ある調査によれば、今や国民の約4人に1人が認知しているといわれるほどになりました。さらに、2020年度以降、全面実施される新学習指導要領の前文および総則において「持続可能な社会の創り手」の育成が掲げられたことを踏まえ、「持続可能な開発のための教育(ESD)」の取組が教育現場で広がりつつあります。ESDは、課題の解決に向けて主体的に考え、行動する持続可能な社会の創り手の育成を通じて、SDGsのすべてのゴールの達成に寄与するものです。これにより、子どもたちが学校生活の中でSDGsの理念や考え方を学ぶ機会がますます増え、若い世代やその親の世代の間でSDGsの重要性に対する意識がさらに高まることや、若い世代が、2030年やさらにその先を見据えて持続可能な未来を創ることが期待されます。

阪急阪神ホールディングス株式会社がSDGsの推進・啓発を目的に、SDGsのロゴを車体にペイントし、阪急神戸線や宝塚線などで運行している「SDGsトレイン」(写真:阪急阪神ホールディングス)

外務省とハローキティ(株式会社サンリオ)がコラボし、YouTubeで公開した持続可能な開発目標(SDGs)の推進動画
*1 社会に広がるSDGsに関連した取組を幅広く紹介することを目的に運営されている「JAPAN SDGs Action Platform」についての外務省ホームページ https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/index.html
*2 外務省のSDGs Twitter https://twitter.com/sdgs_mofa_japan
*3 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもの。