開発協力トピックス4
スポーツ・フォー・トゥモロー(Sport for Tomorrow)を通じた日本の開発途上国へのスポーツ支援

2020年、待ちに待った東京オリンピック・パラリンピック競技大会(「2020年東京大会」)がついに開催されます。この白書をご覧になっている皆さんは、なぜ開発協力白書と2020年東京大会との間に関係があるのか疑問に思われるかもしれません。実は日本政府は、2020年東京大会に向け、開発途上国のスポーツ選手の練習や育成をサポートするなど、2014年から2020年までの7年間で、100以上の国・地域、1000万人以上を対象に、スポーツを通じた国際貢献事業を推進しています。それがスポーツ・フォー・トゥモロー(SFT:Sport for Tomorrow)です。本事業では、世界のよりよい未来を目指し、スポーツの価値を伝え、オリンピック・パラリンピック・ムーブメントをあらゆる世代の人々に広げていく取組として、主に以下のような支援が行われています。
①スポーツを通じた国際協力および交流(スポーツ関連施設の整備・器材供与、スポーツ指導者・選手の派遣・招へい、スポーツ分野での技術協力、スポーツ分野での日本文化紹介・人材育成支援、学校体育カリキュラム策定支援、スポーツイベント開催支援のための専門家派遣、パラリンピック参加国・地域数の拡大に向けた支援など)
②国際スポーツ人材育成拠点の構築(スポーツ教育を行う大学院修士課程や短期プログラムへの留学生の受入れ)
③国際的なアンチ・ドーピング推進体制の強化支援(アンチ・ドーピングが遅れている国への教育・研修パッケージの開発・導入支援など)
具体的な事例として、アフリカの南スーダンにおける取組を紹介します。
60以上の民族が混在し、内戦状態が長期化している南スーダンでは、国民の交流、友好と結束を促し、市民レベルから平和と社会的結束を後押しすべく、2016年から同国の文化・青年・スポーツ省が「国民結束の日」スポーツ大会を開催しています。日本は、JICAを通じて同スポーツ大会の開催、運営面で支援してきました。
2019年の第4回スポーツ大会は、南スーダンの首都ジュバにおいて、1月26日から2月3日の9日間にわたって行われました。「平和と社会的結束」をスローガンに、300人以上の選手が、サッカー(男子)、バレーボール(女子)、陸上(男子・女子)といった競技に参加しました。
本大会の開会式と閉会式では、全国から集まった参加者が、平和や結束への思いを込めたメッセージを掲げて入場行進し、また大会期間中は部族・出身が異なる人たちが交流を深め合いました。大会を通して、若者たちの平和や結束に向けた姿勢が育まれ、参加した選手たちからは、それぞれの地元に戻ってからも、スポーツを通じた平和構築活動に取り組みたいとの声が多く聞かれました。
南スーダン国民の相互信頼や結束を高め、融和促進に貢献しているこの大会の成果により、日本のスポーツを通じた平和促進活動支援の意義が評価され、第4回大会では、国連機関や他国政府、民間企業など、12の国・機関・団体が大会の趣旨に賛同して、資金や物資調達などの支援を行いました。このように、スポーツを通じた信頼構築や平和への啓発活動は、さらなる広がりを見せています。
さらに、こうしたスポーツ大会の実施が実を結び、大会に参加した陸上男子400mハードルのアクーン選手をはじめとする以下の4名の選手が、東京オリンピック・パラリンピックへの出場候補選手として、群馬県前橋市の協力のもとで事前キャンプを実施しています。
①Mr. Akoon Joseph Akoon Akoon(アクーン選手):オリンピック陸上男子(400mハードル)
②Mr. Kutjang Michael Machiek Ting(マイケル選手):パラリンピック陸上男子(100m)
③Mr. Guem Abraham Majok Matet(アブラハム選手):オリンピック陸上男子(1500m)
④Ms. Moris Lucia William Karlo(ルシア選手):オリンピック陸上女子(100m)
アクーン選手は第4回大会に出場し、その他3名の選手は第1回、第2回大会に出場しました。

第4回スポーツ大会での女子バレーボール競技(写真:JICA)

第4回スポーツ大会で活躍するアクーン選手(左手前のゼッケン番号059)(写真:JICA)
このSFTですが、2020年までに100以上の国・地域、1,000万人以上の人々にスポーツの価値とオリンピック・パラリンピック・ムーブメントを広げるという目標を予定より早く達成することができました。今後も日本は、スポーツを通じて、選手の育成やスポーツ大会の実施、スポーツ施設の整備や器材供与などを通じて、途上国の平和や安定に貢献するよう、一層努力していきます。