2017年版開発協力白書 日本の国際協力

(4)資源・エネルギーへのアクセス確保

世界で電気にアクセスできない人々は約13億人(世界の人口の18%に相当)、特に、サブサハラ・アフリカでは、人口の約6割(約6億3,000万人)に上るといわれています。また、サブサハラ・アフリカでは、人口の7割以上が調理用のエネルギーを木質燃料(木炭、薪など)に依存しており注30、それに伴う屋内空気汚染は、若年死亡の要因の一つにもなっています注31。電気やガスなどのエネルギー・サービスの欠如は、産業の発達を遅らせ、雇用機会を失わせ、貧困をより一層深め、医療サービスや教育を受ける機会を制限するといった問題につながります。今後、世界のエネルギー需要はアジアをはじめとする新興国や開発途上国を中心にますます増えることが予想されており、エネルギーの安定的な供給や環境への適切な配慮が欠かせません。

< 日本の取組 >

日本は、開発途上国の持続可能な開発およびエネルギーを確保するため、近代的なエネルギー供給を可能にするサービスを提供し、産業育成のための電力の安定供給に取り組んでいます。また、日本は省エネルギー設備や再生可能エネルギー(水力、太陽光、太陽熱、風力、地熱など)を活用した発電施設など、環境に配慮したインフラ(経済社会基盤)整備を支援しています。

世界のエネルギー情勢に大きな変化が起きていることを踏まえ、2017年7月、外務省は、日本が今後のエネルギー・資源外交において目指すビジョンと、その実現に向けた戦略をまとめた「日本のエネルギー・資源外交-未来のためのグローバル・ビジョン」を発表しました。具体的には、日本は日本へのエネルギー・資源の安定供給確保を第一命題としつつ、グローバルな課題の解決へ貢献し、資源国との相互利益を強化していくことが日本のエネルギー安全保障にもつながるとの考えに基づき、①外交におけるエネルギー・資源問題への戦略的取組の強化、②多様なニーズに解決策を提示できるエネルギー・資源外交の重層的な展開、③エネルギー・資源分野における「日本らしさ」の定着・浸透に向けた取組の「3つの柱」を中心に取り組むことを表明しました。

特に2つ目の柱に取り組む上では、国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による支援に加え、日本のODAを資源・エネルギー分野で積極的に活用していくことが重要です。また、国際的な取組として、G7の枠組みで2014年に発足した「G7複雑な契約交渉の支援強化(コネックス)イニシアティブ」では、G7各国は開発途上国における天然資源に関する契約を交渉する能力を強化し、さらにはSDGsの達成に貢献することを目指しています。

また、日本は、採取産業透明性イニシアティブ(EITI)を積極的に支援しています。EITIは、石油・ガス・鉱物資源等の開発において、資金の流れの透明性を高めるための多国間協力の枠組みです。採取企業は資源産出国政府へ支払った金額を、その政府は受け取った金額をEITIに報告し、資金の流れを透明化します。52の資源産出国と日本を含む多数の支援国、採取企業やNGOが参加し、腐敗や紛争を予防し、成長と貧困削減につながる責任ある資源開発を促進することを目指しています。

●パキスタン

産業セクターにおけるエネルギー管理プロジェクト
技術協力プロジェクト(2015年3月~2016年12月)

工場技術者に高圧エアの管理方法を指導する様子。(写真:平山良夫/(株)テクノソフト)

工場技術者に高圧エアの管理方法を指導する様子。(写真:平山良夫/(株)テクノソフト)

パキスタンでは、計画停電注1が行われるなど、一般的に電力不足等のエネルギー問題が大きな課題となっています。しかしながら、パキスタンでは省エネルギー対策に対する意識が低く、取組を指導する専門家も不足していました。

日本は、「産業セクターにおけるエネルギー管理プロジェクト」を通じ、パキスタンの中小企業庁(SMEDA)注2をカウンターパート機関として、特にエネルギー消費が大きい鋳造業・自動車部品製造業を対象に工場10社をモデルとして選定し、日本人専門家による省エネ技術指導を行い、パキスタンの製造業が実行可能なエネルギー管理効率モデルの構築を支援しました。

日本人専門家の改善提案にしたがって省エネ活動に取り組んだ結果、プロジェクト期間中に、モデル企業合計で年間約123万kWh(1,320万円相当)の消費エネルギーを削減することができました。このことはプロジェクト成果普及セミナーや現地紙において紹介され、これまで省エネ活動に接する機会のなかった企業に対しても省エネ活動の有効性を広めることができました。

プロジェクト終了後もSMEDAは、省エネ診断を継続して行っており、製造業界においても省エネルギー活動がコスト削減につながるという意識が生まれ、自社の省エネルギー診断を求める企業が増えるなど、自立的な活動が展開されています。

注1 電力不足が予測される場合に、大規模な停電を回避するために、電力会社が事前に日時・地域などを定めて(計画的に)電力の供給を一時停止すること。
注2 Small and Medium Enterprises Development Authority


  1. 注30 : (出典)World Energy Outlook Special Report 2016
  2. 注31 : (出典)国際エネルギー機関(IEA)「2015年世界エネルギー展望」(2012年時点の推定)、国際エネルギー機関(IEA)「アフリカエネルギー展望(2015)」
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