(4)格差是正(脆弱な立場に置かれやすい人々への支援)
SDGsの実施に向けた取組が進められる中、大局的に国家レベルで見ると課題がどこにあるのかを特定して的確に対応することが困難であるという問題が顕在化していますが、「格差の拡大」はその一つです。また、貧困・紛争・感染症・テロ・災害などの様々な課題から生じる影響は、国や地域、女性や子どもなど、個人の置かれた立場によって異なります。こうした状況に対しては、一人ひとりの立場に立った形でのアプローチが有効であり、SDGsの理念である「誰一人取り残さない」社会の実現にとって不可欠といえます。
< 日本の取組 >
●人間の安全保障
このような背景から、日本が重視している理念が「人間の安全保障」です。これは、人間一人ひとりに着目し、人々が恐怖や欠乏から免れ、尊厳を持って生きることができるよう、個人の保護と能力強化を通じて、国・社会づくりを進めるという考え方です。
日本政府は、人間の安全保障の推進のため、①概念の普及と②現場での実践の両面で、様々な取組を実施しています。
①概念の普及について、日本は国際的な有識者委員会である「人間の安全保障委員会」およびその後継となる「人間の安全保障諮問委員会」の設置や、非公式・自由なフォーラムである「人間の安全保障フレンズ」の開催を主導してきました。2012年には、日本が主導して、人間の安全保障の共通理解に関する国連総会決議が全会一致で採択されました。
②現場での実践について、日本は国連における「人間の安全保障基金」の設立(1999年)を主導しました。これまで日本は累計で約453億円を拠出し、90の国・地域で、国連機関が実施する人間の安全保障の確保に資するプロジェクト238件を支援してきました(数字はいずれも2016年12月末時点)。開発協力大綱(2015年閣議決定)でも、人間の安全保障は、日本の開発協力の根本にある指導理念として位置付けられています。

●障害者支援
若者や女性など、社会において弱い立場にある人々、特に障害のある人たちが、社会に参加し、包容されるように、能力強化とコミュニティづくりを促進していくことが重要です。
日本は開発協力において、ODA政策の立案および実施に当たり、障害のある人を含めた社会的弱者の状況に配慮することとしています。障害者施策は福祉、保健・医療、教育、雇用等の多くの分野にわたっており、日本はこれらの分野で積み重ねてきた技術・経験などをODAやNGOの活動などを通じて開発途上国の障害者施策に役立てています。たとえば、鉄道建設、空港建設においてバリアフリー化を図った設計を行ったり、障害のある人のためのリハビリテーション施設や職業訓練施設整備、移動用ミニバスの供与を行ったりするなど、日本は現地の様々なニーズにきめ細かく対応しています。

ボルネオ島農村部の障害者施設の利用者送迎のため日本から供与された車両。
また、日本は開発途上国の障害者支援に携わる組織や人材の能力向上を図るために、JICAを通じて、開発途上国からの研修員の受入れや、理学・作業療法士やソーシャルワーカーをはじめとした専門家、青年海外協力隊の派遣などの幅広い技術協力も行っているところです。
2014年、日本は障害者権利条約を批准しました。同条約は、独立した条項を設けて、締約国は国際協力およびその促進のための措置をとることとしています(第32条)。日本は、今後もODA等を通じて、開発途上国における障害者の権利の向上に貢献していきます。