第 Ⅲ 部 2017年の開発協力

ルワンダ南部県ムハンガ郡のムハンガ教員養成校で授業を行う青年海外協力隊員の三浦和樹さん。(写真:三浦真希)

ミャンマーの新ヤンゴン総合病院で医療機器保守管理体制構築を支援する岩井久蔵シニア海外ボランティア。実際に機器を分解しながら構造について理解を深める。(写真:久野真一/JICA)
第1章 実績から見た日本の政府開発援助
2016年、日本の政府開発援助(ODA)の支出総額は約168億779万ドル(約1兆8,287億円)で、政府貸付の回収額を差し引いた支出純額注1は約104億1,680万ドル(約1兆1,334億円)で、いずれも世界第4位の実績でした。注2
< 実績の分析 >
2016年の日本のODA実績(支出総額ドルベース)は、前年(2015年)に比べ約11.8%増で、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC(ダック))加盟国における順位は、米国、ドイツ、および英国に次いで第4位となりました。また、支出純額ドルベースの実績でも約13.2%増で、順位も、米国、ドイツ、英国に次ぎ第4位となりました(総額、純額いずれも前年と同順位)。
円ベースでのODA実績は、支出総額0.6%増、支出純額1.8%増といずれも前年とほぼ同水準でしたが、為替レートが円高ドル安方向に推移したため、ドルベースでは支出総額、支出純額のいずれも前年に比べ10%を超える増となっています。
その内訳は、支出総額では二国間ODAが全体の約80.0%、国際機関に対するODAが約20.0%、支出純額では、二国間ODAが全体の約67.7%、国際機関に対するODAが約32.3%です。二国間ODAは、日本と被援助国との関係強化に貢献することが期待されます。また、国際機関に対するODAでは、「日本の顔」も見える形で専門的知識や政治的中立性を持った国際機関を支えることを通じて、直接日本政府が行う援助が届きにくい国・地域への支援も可能になります。日本は、これらの支援を柔軟に使い分けるとともに相互の連携を図り、適切に援助が供与されるよう努力しています。
無償資金協力は、開発途上地域の開発を主たる目的として同地域の政府等に対して行われる無償の資金供与による協力です。また、無償資金協力は大きな災害が発生したときなどに開発途上国や国際社会のニーズに迅速かつ機動的に対応することができ、国際社会の安定確保や日本のリーダーシップを発揮できる大きな政策的効果があります。技術協力は、日本の知識・技術・経験を活かし、開発途上地域における経済社会開発の担い手となる人材の育成を行う協力であり、開発途上国の技術水準の向上、制度や組織の確立や整備などに役立ちます。また、技術協力は“人と人との接触”を通じて実現され、人の往来が基本となる援助形態であるため、両国国民レベルでの相互理解に果たす役割は大きいといえます。有償資金協力(政府貸付等)は、大規模な支援を行いやすく、開発途上国の経済社会開発に不可欠なインフラ建設等の支援に効果的です。
以上の援助手法別に見ると、二国間ODAでは、無償資金協力として計上された実績が約28億695万ドル(約3,054億円)で、ODA支出総額の実績全体の約16.7%となっています。うち、国際機関を通じた贈与は、約15億9,882万ドル(約1,740億円)で全体の約9.5%です。技術協力は約27億7,570万ドル(約3,020億円)で、全体の約16.5%を占めています。政府貸付等については、貸付実行額は約78億5,680万ドル(約8,548億円)で、ODAの支出総額全体の約46.7%を占めています。貸付実行額から回収額を差し引いた純額は、約14億6,581万ドル(約1,595億円)となっています。
- 注1 : 支出総額(グロス)と支出純額(ネット)の関係は次のとおり。
支出純額=支出総額-回収額(被援助国から援助供与国への貸付の返済額)
援助実績の国際比較においては、通常支出純額が用いられている。 - 注2 : 卒業国向け援助を除く。「卒業国を含む」実績値について、詳しくは図表IV-13をご覧ください。

地域別の二国間ODAは次のとおりです。支出総額(支出純額)(構成比)の順。
(以下の実績値は、卒業国向け援助を含む。)
◆アジア:約70億3,779万ドル(約17億8,761万ドル)(52.3%)
◆中東・北アフリカ:約19億4,469万ドル(約12億8,786万ドル)(14.5%)
◆サブサハラ・アフリカ:約14億9,007万ドル(約13億8,868万ドル)(11.1%)
◆中南米:約4億2,894万ドル(約8,239万ドル)(3.2%)
◆大洋州:約1億8,077万ドル(約1億6,297万ドル)(1.3%)
◆欧州:約4億206万ドル(約3億3,606万ドル)(3.0%)
◆複数地域にまたがる援助:約19億6,644万ドル(約19億6,644万ドル)(14.6%)




