第2節 新たな取組:人道と開発と平和の連携

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と国際協力機構(JICA)が連携し、シリア難民と受入れコミュニティを支援(ヨルダン)。(写真:JICA)
このように「人道と開発の連携」は有効に機能してきました。しかし、これはあくまで人道危機が発生した後のアプローチです。紛争が発生した後の対応のみならず、人道危機の要因である紛争の発生・再発を予防することにも重点を置いて、平時からの国づくり、社会安定化といった、紛争の根本原因への対処がますます重要となっています。これを実現するため、「人道と開発の連携」に平和の要素を追加し、「人道と開発と平和の連携」の考え方を重視していく考えです。
具体的には、紛争直後は前述の「人道と開発の連携」の考え方に基づき支援を実施しますが、人道危機が収束し、難民・国内避難民が故郷に帰還できる状況になった段階で、「平和構築や紛争再発を予防する支援」や「貧困削減・経済開発支援」を継ぎ目なく展開します。これには、DDR(武装解除、動員解除、社会復帰)支援、法・司法制度整備、公共安全分野、地雷不発弾除去、平和構築人材育成などが考えられます。これらの分野での支援は、日本がアジアにおいて取り組んできた経験の蓄積を活用し得ると考えています。
たとえば、南スーダン難民が多く流入しているウガンダにおいては、日本は、難民への食料提供などの人道支援に加え、難民の自立や受入れコミュニティを支援すべく、国際機関を通じて、稲作研修や職業訓練を行い、JICAも連携して技術協力を実施しています。これは、難民と難民キャンプ周辺地域の住民の共存を目指すとともに、将来、難民が母国に帰還してスムーズに生活を立ち上げられることも視野に入れた取組であり、平和構築や紛争の再発予防に役立つことが期待されます。
日本は、平和の持続を達成するため、日本の強みであるODAを戦略的かつ積極的に活用し、各国の事情に応じてこうした取組を進めていきます。このようにして、最も脆弱(ぜいじゃく)な人々を含め「誰一人取り残さない」社会の実現を目指す、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に最大限の貢献を行っていく考えです。