第3節 気候変動対策とSDGs
気候変動は、環境問題ととらえられがちですが、世界規模の経済発展や安全保障にも大きな影響を及ぼしています。気候変動は水、エネルギー、食料の安定供給等を含め、SDGsの多くの目標と密接に関連し、気候変動対策の着実かつ迅速な実施なくしては、関連する分野のSDGs目標達成も極めて困難です。気候変動対策にかかわる2020年以降の国際的な枠組として採択されたパリ協定は、現在170か国以上が締結していますが、産業革命以降の気温上昇を2℃未満までに抑える2℃目標の下、1.5℃までの抑制を目指して、各国が個別に排出削減目標を策定しています。気候変動対策は、①温室効果ガス(二酸化炭素など)の排出削減と吸収の対策に取り組む緩和策と、②既に起こりつつある気候変動の悪影響の防止・軽減のための備えと新しい気候条件の利用を行う適応策の2つに分けられますが、特に適応策については、その取組や成果を評価する上で冒頭に挙げた気候変動以外のSDGs指標を活用することも有効と考えられます。
パリ協定の規定する2℃目標達成のためには、各国政府のみならず企業、自治体、NGO等の様々な主体の積極的関与が不可欠です。グローバルな企業の間では、気候変動対策によって企業に追加的な費用負担がかかることで国際競争力が損われると考えるのではなく、そうした対策を行うことで社会課題の解決を通じてビジネスを拡大する好機ととらえる動きが広がっています。また、気候変動に関するリスクや機会を企業の財務情報等において開示することにより、より「グリーンな」投資を呼び込む機運は、最近の環境・社会・ガバナンス要素を投資判断に組み込むESG投資の高まりと相まって、世界各地に拡大しています。こうした企業・投資家の積極的姿勢は、気候変動が単なる環境問題ではなく、ビジネスの問題にもなり得ることを示しています。
このようなビジネスの動きも踏まえ、2017年12月にパリで開催された気候変動サミットは、パリ協定採択2周年を記念するとともに、気候資金の重要性を確認し、公的資金および民間資金のグリーン化を図ることなどを目的に開催されました。同会合にパネリストとして参加した河野外務大臣は、先進的な技術力を活かしたイノベーションの力を気候資金のスケールアップに活用することで世界をリードしていくという決意を示し、そのためにも官民パートナーシップを強化していくべきとの考えを表明しました。その取組の1つとしてScience Based Target(SBT)への日本企業の登録支援を表明し、2020年3月までに100社の認定を目指すことを公表しました。
外務省ではまた、気候変動問題に関し新たな政策の方向性を打ち出すことを目的に、気候変動に関する有識者会合の設置や、各国に所在する日本大使館において、対外発信と各種情報収集に取り組む「気候変動専門官」制度を導入するなど、新たな取組を始めています。このような国内外での取組や、企業やその他の主体との連携を通じて、パリ協定を着実に実施していくことは、SDGs達成に向けて不可欠な重要課題です。

2017年12月にパリで開催された気候変動サミットの様子。

同サミットで発言する河野外務大臣。