2017年版開発協力白書 日本の国際協力

第2節 法整備支援

国際社会における法の支配の強化を進めていく上では、法制度の整備が未だ不十分な開発途上国において、立法や制度整備およびその理解と定着に向けた取組に対する支援を通じて、グッドガバナンスに基づく開発途上国の自助努力を支援するとともに、持続的成長のために不可欠な基盤作りを支援することも重要です。

開発途上国において、その経済成長や人権の保障、貧困削減といった目標を達成し、人々が安心して豊かに暮らせるようにするためには、力による支配が横行することなく、国民の意思を反映した合理的なルールが、公平かつ適正に執行・管理・運用されることを確保しなければなりません。日本は、明治維新以来、欧米の法・司法制度を日本の文化や風土、既存の制度と調和させながら取り入れてきた経験を活かして、それぞれの開発途上国のニーズや課題に合わせた法制度・司法制度の整備・改善に向けた支援に取り組んできています。

日本は、2013年5月に改訂された「法制度整備支援に関する政府基本方針」に基づき、アジアの8か国(インドネシア、ベトナム、ミャンマー、モンゴル、カンボジア、ラオス、ウズベキスタン、バングラデシュ)を重点対象国として、各国で息の長い法制度整備支援を展開しています。たとえば、カンボジアでは、内戦終結後、人材不足のため自力で法制度の整備ができない状況だった中、同国の民法および民事訴訟法をはじめとする法令が整備され、適切に運用されることを目指し、1999年から法令起草支援のほか、法曹人材育成や普及活動を支援し、約20の民事関連法令の成立に寄与しました。法の支配を通じた民主主義の定着には一定時間がかかることから、成立した法令が正しく運用・定着して、国民の権利が保障されるよう、継続的に支援に取り組んでいます。

また、アフリカ諸国に対しても、コートジボワールに司法アドバイザーを派遣し、市民へ法情報の提供を行うコールセンターの設置や、同国を含む西アフリカ周辺8か国の刑事司法関係者を対象に、同国において刑事司法研修を実施するなどの支援を行っています。

日本が法制度整備支援を含むガバナンスの分野において行ってきた支援の額は、2005年から2014年までの10年間で、約27億ドルに上ります。今後も、基礎法の整備や運用支援、法執行機関や法曹の能力強化支援などに加えて、知的財産法制度の整備運用支援等を通じた投資環境の整備も積極的に進め、相手国の自由な社会経済活動や社会の安定に資する法制度の確立に寄与するのみならず、日本企業をはじめとする各国企業が現地で事業を展開するためのビジネス環境を整備することで、国際社会の安定と繁栄のために取り組んでいきます。

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