2017年版開発協力白書 日本の国際協力

第3節 「質の高いインフラ」整備の推進

2018年1月、ミャンマー・ヤンゴンのティラワ経済特区を視察する河野外務大臣。

2018年1月、ミャンマー・ヤンゴンのティラワ経済特区を視察する河野外務大臣。

こうしたインフラを整備する際には、インフラ作り自体を目的とするのではなく、インフラの整備を通じて、社会的弱者を含めてそこに暮らす人々の生活の改善につなげるとともに、国内・域内の経済活動を刺激し、各国の「質の高い成長」を支えるものでなくてはいけません。日本は、こうした考えから「質の高いインフラ」の整備を推進し、その国際スタンダード化に取り組んでいます。「質の高いインフラ」の具体的な要素としては、2016年の伊勢志摩サミットで、①ライフサイクルコストから見た経済性および安全性、②現地雇用および技術移転、③社会・環境面への配慮、④被援助国の財務健全性をはじめとする経済・開発戦略との整合性、⑤民間部門を含む効果的な資金動員の確保の5点が重要な要素としてまとめられました。これらに加え、インフラが、透明で公正な調達手続を通じて、誰でも利用できるように開かれた形で整備・運営されることが不可欠です。

また、インド太平洋地域をはじめ、世界には膨大なインフラ需要が存在し、質のみならず資金量の確保も重要です。日本は、この資金ギャップを埋めるため、2015年5月、安倍総理大臣から「質の高いインフラパートナーシップ」を発表し、アジア開発銀行(ADB)と連携し、今後5年間で、約1,100億ドルの「質の高いインフラ投資」をアジア地域で行うとともに、有償資金協力の制度改善を通じて、アジア地域のインフラ需要に対して一層魅力あるファイナンスを提供するべく取り組んでいくこととしました。また、2016年5月には、安倍総理大臣から、「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」を発表し、アジアのみならず、世界全体のインフラ需要に対し、官民合わせて約2,000億ドルの資金等を供給することとしました。また、制度改善を一層進めるとともに、支援を実施するJICA等政府機関の体制強化を進めることもあわせて発表しました。日本は、2017年4月に「第1回アジア国際経済フォーラム」をOECDと共催し、9月に国連とEUとともに、「質の高いインフラ投資に関する国連総会ハイレベル・サイドイベント」を開催し、「質の高いインフラ」を国際的に普及させる努力を行っています。今後とも、OECD等の国際機関や関係各国とも協力し、質の高いインフラ整備を通じた質の高い成長を促進していく考えです。

2017年9月、ニューヨークの国連本部において、日本、EUおよび国連の共催で開催された「質の高いインフラ投資の推進に関するサイドイベント」で発言する河野外務大臣。

2017年9月、ニューヨークの国連本部において、日本、EUおよび国連の共催で開催された「質の高いインフラ投資の推進に関するサイドイベント」で発言する河野外務大臣。

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