第2節 インド太平洋を介した連結性の強化
被援助国と他の国・地域を連結し、モノやヒトの流れを一層活発にすることで経済圏を拡大し、日本を含む地域全体の経済発展に寄与すべく、日本は、アジアを中心に港湾、空港、鉄道、道路等の質の高いインフラ整備による連結性の強化に長年取り組んできました。こうした連結性強化のためのインフラ整備を進めるに当たって、①インフラ整備による「物理的連結性」の強化にとどまらず、②通関円滑化等の「制度的連結性」と、③人材育成、人材交流等の「人的連結性」の強化をあわせて進めることで、ヒト・モノの流れを一層活性化するとともに、技術移転や雇用創出等を通じた「質の高い成長」を実現することが、日本の質の高いインフラ整備の特徴です。

2017年8月、フィリピン・マニラにおいて、第10回日メコン外相会議が開催され、河野太郎外務大臣が議長を務めた。
東南アジアにおける連結性強化の取組の中核が、南部経済回廊と東西経済回廊の開発です。これら回廊の開発に当たっては、道路や橋梁(きょうりょう)といった交通インフラのみならず、日本の技術を活用した通関システムの導入や道路維持能力強化のための技術協力も実施しています。二つの回廊の開発は、回廊上の各地域を南シナ海とインド洋に結ぶことで、この地域から海外への輸出を促進するとともに、日本をはじめとする海外からの直接投資を促進し、メコン地域の格差是正にも貢献しています。これに加えて海上輸送の物流機能を強化するための港湾整備も重要であり、2017年には、インドネシアのパティンバン新港の建設やカンボジア唯一の大水深港であるシハヌークビル港の新コンテナターミナルの整備を支援することを決定しました。
また、インドでは、デリー・ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC)やチェンナイ・ベンガルール産業回廊構想(CBIC)等の広域経済開発を進めています。また、2017年9月に安倍総理大臣がインドを訪問した際には、日本の新幹線システムを活用するムンバイ・アーメダバード間高速鉄道やインド北東部地域における道路網整備等のための円借款の供与を行うなど、同地域内の連結性の向上に貢献しています。さらに、スリランカでは、1980年代からコロンボ港の整備支援を実施してきたほか、2017年4月に、ウィクラマシンハ首相が訪日した際には、係留地として優れた条件を有するトリンコマリー港向けに港湾整備関連機材を無償資金協力により供与することを決定しました。バングラデシュにおいても、ベンガル湾産業成長地帯(BIG-B)構想に基づき、経済インフラ整備、投資環境整備、連結性の向上に向けた協力を行っています。

2016年11月、神戸市内の鉄道車両製造専門工場で、新幹線車両等を視察した安倍総理大臣とインドのモディ首相。(写真提供:内閣広報室)
アフリカでは、インド洋に面する主要な良港であるケニアのモンバサ港とモザンビークのナカラ港の港湾整備や周辺回廊の道路や橋梁の整備等を進めており、それぞれ、ウガンダ、ルワンダや、マラウイ、ザンビア等の内陸国をインド洋につなぐ重要な役割を担っています。2017年7月には、モンバサ港の周辺道路の第二期工事を円借款で支援することを決定しました。
