(4)資源・エネルギーへのアクセス確保
世界で電気にアクセスできない人々は約13億人(世界の人口の18%に相当)、特に、サブサハラ・アフリカでは、人口の約6割(約6億3,000万人)に上るといわれています。また、サブサハラ・アフリカでは、人口の7割以上が調理用のエネルギーを木質燃料(木炭、薪など)に依存しており〈注117〉、それに伴う屋内空気汚染は、若年死亡の要因の一つにもなっています。〈注118〉電気やガスなどのエネルギー・サービスの欠如は、産業の発達を遅らせ、雇用機会を失わせ、貧困をより一層進ませ、医療サービスや教育を受ける機会を制限するといった問題につながります。今後、世界のエネルギー需要はアジアをはじめとする新興国や開発途上国を中心にますます増えることが予想されており、エネルギーの安定的な供給や環境への適切な配慮が欠かせません。
< 日本の取組 >
日本は、開発途上国の持続可能な開発およびエネルギーを確保するため、近代的なエネルギー供給を可能にするサービスを提供し、産業育成のための電力の安定供給に取り組んでいます。また、省エネルギー設備や再生可能エネルギー(水力、太陽光、太陽熱、風力、地熱など)を活用した発電施設など、環境に配慮したインフラ(経済社会基盤)整備を支援しています。
2016年5月に日本が議長国を務めたG7伊勢志摩サミットでは伊勢志摩首脳宣言において、エネルギー技術におけるイノベーションの支援、クリーンなエネルギーおよびエネルギー効率の奨励へのさらなる投資、また、エネルギー投資の促進において主導的役割を果たすことにコミットしました。また、同年11月に日本が議長国として東京にて開催した「エネルギー憲章会議第27回会合」において、適切で継続的なエネルギー投資の促進と質の高いインフラ投資の推進の重要性を確認した「エネルギー憲章に関する東京宣言」を発出しました。

東ティモール・ディリ近郊の東ティモール国立大学工学部の太陽光発電施設にて、工学部の教官に対し施設・機材の説明をする亀山展和専門家(中央)(写真:高橋敦)

2016年1月、アラブ首長国連邦・アブダビで開催された、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)第6回総会の議長を務める山田前外務大臣政務官
資源国に対しては、その国が資源開発によって外貨を獲得し、自立的に発展できるよう、鉱山周辺のインフラ整備など、資源国のニーズに応じた支援を行っています。日本はこうした支援を通じて、開発途上の資源国との互恵的な関係の強化を図り、また、企業による資源の開発、生産や輸送を促進し、エネルギー・鉱物資源の安定供給の確保に努めます。国際協力銀行(JBIC)〈注119〉、日本貿易保険(NEXI)〈注120〉、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)〈注121〉による支援に加え、日本のODAを資源・エネルギー分野で積極的に活用していくことが重要です。また、国際的な取組として、G7の枠組みで2014年に発足した「G7複雑な契約交渉の支援強化(コネックス)〈注122〉イニシアティブ」では、開発途上国における天然資源に関する契約を交渉する能力を強化し、さらには持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献することを目指しています。2016年5月のG7伊勢志摩サミットにおいては、議長国である日本の主導の下、G7が資源国への支援を行う際の指針として「コネックス持続可能な開発に向けた基本指針」が策定されました。この取組を踏まえ、9月には東京で国際会合を開催し、能力構築と透明性向上を中心にコネックスの今後の取組の可能性について議論を行いました。
また、日本は、採取産業透明性イニシアティブ(EITI)〈注123〉を積極的に支援しています。EITIは、石油・ガス・鉱物資源等の開発において、資金の流れの透明性を高めるための多国間協力の枠組みです。採取企業が資源産出国政府へ支払った金額を、その政府は受け取った金額をEITIに報告し、資金の流れを透明化します。51の資源産出国と日本を含む多数の支援国、採取企業やNGOが参加し、腐敗や紛争を予防し、成長と貧困削減につながる責任ある資源開発を促進することを目指しています。
- 注117 : (出典)World Energy Outlook Special Report 2016
- 注118 : (出典)国際エネルギー機関(IEA)「2015年世界エネルギー展望」(2012年時点の推定)、国際エネルギー機関(IEA)「アフリカエネルギー展望(2015)」
- 注119 : 国際協力銀行 JBIC:Japan Bank for International Cooperation
- 注120 : 日本貿易保険 NEXI:Nippon Export and Investment Insurance
- 注121 : 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 JOGMEC:Japan Oil, Gas and Metals National Corporation
- 注122 : 複雑な契約交渉の支援強化 コネックス(CONNEX):Strengthening Assistance for Complex Contract Negotiations
- 注123 : 採取産業透明性イニシアティブ EITI:Extractive Industries Transparency Initiative