2016年版開発協力白書 日本の国際協力

第6節 国際協力事業関係者の安全確保

JICAの職員・専門家・ボランティアのみならず、コンサルタント、施工業者やNGOを含めた様々な国際協力事業関係者が活動している開発途上国の治安状況は複雑で、国ごとに状況が異なるのみならず、日々刻々と変化しています。

2016年7月のダッカ襲撃テロ事件により、JICAプロジェクトに従事する日本人のコンサルタント関係者が犠牲になったことを受け、外務省およびJICAは、国際協力事業関係者の安全対策を再検証し、新たな安全対策を策定するため、外務大臣の下に「国際協力事業安全対策会議」を設置しました。外務省およびJICAが多くの関係省庁と共に、また、政府関係機関、企業、NGO、地域情勢や危機管理の専門家の協力も得て、8月末日に新たな安全対策(最終報告)を公表しました。この最終報告では、最近の国際情勢を踏まえ、「安全はもはやタダではない」こと、組織のトップ自らが主導して安全対策を講じる必要があることを認識し、JICA関係者にとどまらず、必ずしも態勢の強くない中小企業をはじめ、より広範囲の国際協力事業関係者・NGOの安全を確保するため、①「国際協力事業安全対策会議」を常設化し、安全対策の着実な実施と関係者間の緊密な情報共有を図ること、②在外公館・JICA在外事務所の安全対策機材の増強や現地当局の治安能力構築支援を行うこと、③事業関係者やNGOによる事業経費への安全対策経費の計上を促進し、制度の活用、改善に加え、現地政府への働きかけ等を行うこと、④外務省では審議官級職員、JICAでは役員をそれぞれ安全対策担当として指名することなど、様々な分野で具体的な措置を講じることとしました。

最終報告の公表以降、外務省およびJICAは新たな安全対策を着実に実施してきました。たとえば、治安に関する情報収集の強化、現地治安関係当局との関係強化等、早急に対応可能なものにつき在外公館およびJICA在外事務所に指示しました。また、外務省国際協力局およびJICAにおいて、安全対策担当の幹部を指名するなど、安全対策の抜本的改革のための態勢強化を図りました。このほか、脅威情報等を関係者に共有するための国別の協議を開催してきたほか、事業関係者・NGO等に対し、在留届・「たびレジ」の登録促進の周知徹底を行いました。さらに、事業関係者・NGO等の幅広い関係者向けに、JICAによる安全対策研修およびテロ対策研修を開催しているほか、現地での安全対策セミナーや会議の開催、緊急連絡訓練等を実施してきました。

事業関係者・NGO等の安全対策が重要であることは、開発協力大綱でも強調されており、ODA事業を進める大前提と考えています。政府として、安全対策の着実な実施にしっかりと取り組んでいきます。

2016年7月12日、外務省で開催された、国際協力事業安全対策会議第1回会合の様子

2016年7月12日、外務省で開催された、国際協力事業安全対策会議第1回会合の様子

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