第2章 開発協力大綱の下での一年を振り返る

ラオス・ビエンチャン市内の病院で医院長と院内を視察するJICA母子保健専門家リーダーの園田美和さん(右端)が現場の看護師から聞き取りを行っている(写真:久野真一/ JICA)
第1節 開発協力大綱とは?
開発協力大綱は、日本の開発協力政策における最上位の政策文書として、政府開発援助(ODA)大綱を12年ぶりに改定する形で、2015年2月に策定、閣議決定したものです。2016年は改定後2年目の年として、新たな大綱の下で開発協力政策を実施してきました。
1954年以降、60年以上にわたり、日本はODAをはじめとする開発協力を推進し、国際社会の平和と安定および繁栄に貢献してきました。近年、グローバル化等に伴い開発課題が多様化・複雑化・広範化し、地域紛争、大量の難民、頻発するテロ、地球温暖化など、国際社会が取り組むべき課題は山積しています。また、ODA以外の公的・民間資金や政府以外の様々なアクター(主体)の役割が増大し、これらの連携が重要性を増しています。さらに、開発を持続可能かつ効果的なものとするため、先進国の取組のみならず、先進国と開発途上国の協働が不可欠になっています。
この新たな時代に、日本は平和国家としての歩みを堅持しつつ、国際協調主義に基づく積極的平和主義の一環として開発協力を位置付け、ODAを重要な外交政策手段として戦略的に活用すべく具体的に取り組んでいます。こうした認識の下、改定された開発協力大綱は、国家安全保障戦略や日本再興戦略をはじめとする日本の基本政策とも整合的なものとなっています。
開発協力の目的は、国際社会の平和と安定および繁栄の確保により一層積極的に貢献することにあります。また、これを通じて日本の平和と安全の維持、さらなる繁栄の実現、安定性および透明性が高く見通しのつきやすい国際環境の実現、普遍的価値に基づく国際秩序の維持・擁護といった日本の中長期的な国益に寄与することです。これにより、国際社会と日本がWin-Winの関係を構築していくことができます。開発協力大綱はこの点を明確にしつつ、ODAを、開発に役立つ様々な活動を推進するための原動力と位置付け、以下の基本方針に基づき、重点課題に積極的に取り組むこととしています。

2016年、日本はG7議長国として、G7伊勢志摩サミットやTICAD(ティカッド) Ⅵ、ASEAN(アセアン)関連首脳会議、「難民及び移民に関する国連サミット」などの場で、国際社会が直面する課題に対応するためのイニシアティブを具体的に打ち出し、議論をリードしてきました。同年12月に策定された持続可能な開発目標(SDGs)実施指針に基づき、SDGsの達成に率先して取り組むことも重要です。日本は、開発協力大綱の下、ODAを積極的かつ戦略的に活用しながら、こうした取組を今後とも着実に実施していく考えです。