2016年版開発協力白書 日本の国際協力

第2節 開発と格差・貧困の是正

G7伊勢志摩サミットにおいて、国内的・国際的に実施を進めることにコミットした2030アジェンダは、2030年までに貧困を撲滅し、世界を持続可能なものに変革するという国際社会の揺るぎない決意を反映し、誰一人置き去りにせず、より平和で、安定した、包括的で、かつ、繁栄する国際社会のための基礎を築くことを目的にしています。

世界における格差の解消、貧困削減、とりわけ絶対的貧困の撲滅は、最も基本的な開発課題であり、この解決のためには開発途上国の自立的発展に向けた経済成長の実現が不可欠です。こうした観点も踏まえ、G7伊勢志摩サミット後の2016年8月27日~ 28日、ケニアの首都ナイロビで開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD(ティカッド)Ⅵ)〈注1〉では、成長の果実が社会全体に行き渡り、誰一人取り残されない「質の高い成長」を目指すべきである旨強調されました。

TICAD Ⅵは、アフリカ自身の要望に応(こた)える形で、20年以上にわたるTICADの歴史上、初のアフリカ開催となりました。TICAD Ⅵでは、2013年のTICAD Ⅴ以降にアフリカで顕在化した諸課題に対応するため、「経済の多角化・産業化を通じた経済構造改革促進」、「質の高い生活のための強靱(きょうじん)な保健システムの促進」、「繁栄の共有のための社会安定化の促進」を優先分野として、日本、アフリカ諸国、パートナー諸国、国際機関、民間セクターおよびNGO等の市民社会が議論を行いました。

TICAD Ⅵの成果文書として採択された「ナイロビ宣言」および付属文書である「ナイロビ実施計画」では、TICADの特徴であるアフリカのオーナーシップと国際社会のパートナーシップという二つの原則、人間の安全保障の尊重、効果的な実施とフォローアップ等の指針を確認しつつ、開発と貧困削減に向けたアフリカ自身の取組である「アジェンダ2063」〈注2〉やSDGs等の国際的な議論も踏まえながら、上記の三つの優先分野における具体的取組が表明されました。

開会セッションにおいて安倍総理大臣は、2016年~ 2018年の3年間で、「ナイロビ宣言」の三つの優先分野に即し、日本の強みである質の高さ(クオリティ)を活かした約1,000万人への人材育成(エンパワーメント)をはじめ、官民総額300億ドル規模の質の高いインフラ整備や保健システム構築、平和と安定の基礎づくり等のアフリカの未来への投資を行う旨発表しました。こうした取組は、G7伊勢志摩サミットの成果(質の高いインフラ投資・保健・女性)を実践する第一歩です。日本の優れた科学技術・イノベーションの力を活かしつつ、着実にその成果を実現するため、今後のTICADプロセスの中で、閣僚級フォローアップ会合等を通じ、今回の首脳会合で表明したアフリカ開発への取組をしっかりと行っていきます。

8月27日から2日間、ケニア・ナイロビにて開催された、第6回アフリカ開発会議(TICAD Ⅵ)の閉会セッション。安倍総理大臣は、ケニヤッタ・ケニア大統領(開催国)、デビー・イトゥノ・チャド共和国大統領(AU議長)と共に共同議長を務めた。(写真:内閣広報室)

8月27日から2日間、ケニア・ナイロビにて開催された、第6回アフリカ開発会議(TICAD Ⅵ)の閉会セッション。安倍総理大臣は、ケニヤッタ・ケニア大統領(開催国)、デビー・イトゥノ・チャド共和国大統領(AU議長)と共に共同議長を務めた。(写真:内閣広報室)


  1. 注1 : 第6回アフリカ開発会議 TICAD Ⅵ:Sixth Tokyo International Conference on African Development
  2. 注2 : 「OAU/AU50周年記念宣言」を基礎として策定された、今後の50年を見据えたアフリカの統合と開発の大綱。アフリカの自決、成長、自由のための汎アフリカ主義の継続に向けた原動力となる文書であり、2015年1月のAU総会において採択された。
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