第 I 部 G7伊勢志摩サミットと開発協力大綱

エチオピア中部に位置するブレナ県にて、干ばつ時の水不足への対応のために日本の支援で設置された井戸に水を汲みに集まる地域住民たち(写真:原田美穂/在エチオピア日本大使館)
第1章 G7議長国としての日本の取組

2016年5月、三重県の伊勢志摩で開催された「第42回主要国首脳会議(G7サミット)」に参加する各国首脳。今回を含め、これまで日本は6回議長国となっている。
日本は国際社会と協力して世界の様々な課題に取り組み、平和で安定し繁栄する国際社会を構築することにより、豊かで平和な社会を引き続き発展させていく考えです。2016年5月、日本はG7伊勢志摩サミットを議長国として開催し、世界が直面する開発課題やグローバルな課題に真摯(しんし) に向き合い、国際社会の議論をリードしました。本編では、G7議長国としてリーダーシップを発揮し、これらの課題について向き合い、その克服に取り組んできた成果等について紹介します。また、2015年2月に12年ぶりに改定した開発協力大綱の下での2016年の日本の歩みを振り返ってみたいと思います。
第1節 持続可能な開発目標(SDGs)
日本が議長国を務めたG7伊勢志摩サミットでは、SDGs( 持続可能な開発目標、SustainableDevelopment Goals)採択後初のサミットであったことから、開発協力における優先課題として、G7としてのSDGs達成へのコミットメントを確認しました。これに先立ち、2015年9月、2030年までの国際社会全体の普遍的な開発目標として、持続可能な開発のための「2030アジェンダ」が国連サミットで採択されました。2030アジェンダは、開発途上国に焦点を当てていた前身のミレニアム開発目標(MDGs:Millennium Development Goals)と異なり、開発途上国および先進国の双方が共に取り組むべき開発目標として策定されたものです。その中ではSDGsとして、17のゴール(目標)と169のターゲットが掲げられています。貧困、飢餓、保健、教育、ジェンダー、水と衛生などMDGsに掲げられていた目標を引き継いだ上で、これをさらに推し進めたものも含まれるほか、経済成長やインフラ、気候変動対策等、MDGsには明確に含まれていなかったものも含まれており、内容も広範で包括的なものとなっています。
また、日本はG7議長国としてリーダーシップを発揮し、2016年5月に、内閣総理大臣を本部長とし、全閣僚を構成員とするSDGs推進本部を設置し、同推進本部第一回会合において、SDGsの実施に向けた日本の指針を策定することを決定しました。
これを受け、SDGs推進本部の下、指針の策定に向けて、2016年9月と11月の2回にわたり、NGO/NPO、有識者、民間セクター、国際機関等の広範な参加者によるSDGs推進円卓会議を開催したほか、パブリックコメントも実施し、広範囲にわたる関係者と意見交換を行いました。この結果、同年12月に開催されたSDGs推進本部第二回会合において、指針本文と付表の二つから成るSDGs実施指針が決定されました。
実施指針本文には、ビジョンとして「持続可能で強靱(きょうじん)、そして誰一人取り残さない、経済、社会、環境の統合的向上が実現された未来への先駆者を目指す」ことを掲げたほか、5つの実施原則とフォローアップの内容を定めています。また、SDGsのうち、日本として特に注力すべき取組の柱を示すべく、SDGsの内容を日本の文脈に即して再構成し、「あらゆる人々の活躍の推進」や「健康・長寿の推進」といった8つの優先課題を掲げました。付表には、これら8つの優先課題のそれぞれについて推進される具体的な施策として、関係省庁から提出された140の国内・国外施策を記載しました。
また、同推進本部第二回会合では、実施指針の決定に関連して、安倍総理大臣からSDGs達成に向けた具体的な推進策についても発表しました。国際保健については、感染症対策、保健システム強化や女性の健康、ポリオ対策支援等のため、国際保健機関に対し、総額約4億ドルの支援を行う方針を示しました。加えて、難民および難民受入国の支援のため、これまでの経験と能力を積極的に活用し、この分野の取組を質、量ともに一層拡充し、新たに5億ドル規模の支援を行う考えを表明しました。さらに、開発途上国の女性の活躍推進については、女性の権利の尊重、能力発揮のための基盤の整理、リーダーシップの向上を重点分野として、2018年までに総額約30億ドル以上の取組を着実に進めていくことを表明しました。
日本は、SDGs実施指針の下、関係府省庁一体となって、あらゆる分野のステークホルダーと連携しつつ、SDGs達成に向けた国際社会の取組をリードしていきます。
