開発協力トピックス 05
2014年版ODA評価年次報告書ハイライト
〜評価を通じたODAの改善を目指して〜
■ ODA評価年次報告書の目的

2013年度に実施された評価結果の概要などを紹介する「ODA評価年次報告書2014」(外務省発行)
外務省ではODAに関して、ODA白書に加え、ODA評価の概要についてまとめたODA評価年次報告書を毎年発行しています。1982年に第1回報告書を発行して以来、今年で32回目の発行となります。
そもそもなぜODA評価を行うのでしょう。評価には、ODAの管理改善を支援することと、国民に対し、ODAが適正に実施されているかどうかについて説明を行うという二つの目的があります。
第一の目的のODAの管理改善とは、日本が世界各地で実施しているODAが、効果的に実施されているか、それが本当に被援助国の開発に役立っているかを検証し、改善すべき点があれば対応し、その後の活動に活かすことです。そのために、外務省は、開発政策上、重要なテーマや分野、また援助実績の多い国などの観点から、年に8件程度の案件を取りあげて、有識者による第三者評価を行っています。評価結果は、今後のより良い援助のための提言とともにまとめて評価報告書として公表されています。
さらに、ODAについて国民の理解と支持を得るという第二の目的のために、過去1年間に行った評価結果の概要と、評価の結果行われた提言に対し、どのように応えていくかについて簡潔にまとめ、年次報告書として公表しています。
なお、評価報告書は、客観的な観点から評価を行うとの考え方に立って、外務省のODA担当部局から独立した立場で外務省の評価専門の別の部局が作成しています。

カンボジア・コンポンチャム州において『ジェンダー主流化プロジェクト』に参加する農民たちから広く意見を聴取する
■ ODA評価年次報告書2014の概要

ペルーの国家緊急オペレーションセンター。地震などの災害を検知し、ペルー全土に知らせる役目を果たしている(写真:岡原功祐/JICA)
ODA評価年次報告書2014は3つの章と参考資料から構成されています。
第1章ではODA評価の制度や経緯の概要について紹介しています。第2章では外務省が2013年に実施した第三者評価の概要と提言、そしてそれを受けた外務省およびJICAの対応策について説明しています。また、外務省だけでなく、日本政府としてどのような評価が行われたのかについて紹介するため、他省庁およびJICAが実施した評価の概要も紹介しています。2013年度は8件の第三者評価が実施されましたが、ここでは、その中から、防災協力イニシアティブの評価について紹介します。
防災協力イニシアティブが評価の対象となったのは、同イニシアティブが評価すべき重要な節目を迎えていると判断されたからです。一つには、2005年に神戸市で開催された第2回国連防災世界会議で、国際的な防災の行動指針となる「兵庫行動枠組」が策定され、日本のODAによる防災協力に関する基本方針として「防災協力イニシアティブ」が発表されて10年となること。二つ目は、2015年に開催される第3回国連防災世界会議で「兵庫行動枠組」の後継枠組みが採択される予定であることです。これらを踏まえ、第2回国連防災世界会議以降、日本が推進してきた防災協力イニシアティブを評価し、第3回同会議に向けた日本の政策立案の参考とすることを目的に評価が行われました。
評価の結果、防災協力イニシアティブは、日本が長年実施してきた防災分野の協力の姿勢を内外に明確に示す意義があった、とされました。また、今後の防災分野における協力の方針として、すべての開発政策・計画に防災の観点を導入する防災の主流化を進めるため、災害多発国の災害統計の整備や災害リスク評価制度の導入などが提言されました。日本は、この評価結果も踏まえ、第3回国連防災世界会議に向けて今後の国際防災協力の進め方の検討を進めています(開発協力トピックス参照)。
また、第3章では、2012年度に実施された第三者評価8件の結果に対するフォローアップの状況を報告しています。
いくつかご紹介すると、たとえば、キューバに対する日本の支援の評価では、「日本の民間セクターを後押しできる協力」や「ODA実施体制の強化」が提言として挙げられましたが、これを受けて、2013年10月に官民連携アドバイザーや農業開発アドバイザーの派遣を決定し、JICAが、2014年4月に各1名の派遣を開始したことが報告されています。また、男女平等や女性の活躍のための支援の評価では、「協力案件の要請・計画など各段階においてジェンダー視点(注)からのレビューを重視すべき」との提言が示されました。これに対しては、JICAとして、途上国がJICAに協力を要請し、案件を形成していく初期の段階で、「ジェンダー視点」から案件の内容が適切であるか確認しつつ、途上国側に助言を行う取組を継続するとともに、年2回モニタリングする制度を新たに導入したことが報告されています。
各評価案件の報告書や年次報告書は外務省ホームページに公表していますので、ここに紹介しきれなかった内容や、評価についてより詳しく知りたい方は、こちらもご参照ください。
(注) 「ジェンダー視点」とは、男女平等に配慮した視点という意味です。