2014年版 政府開発援助(ODA)白書 日本の国際協力

開発協力トピックス 03

防災国際協力(第3回国連防災世界会議)

2011年に発生した東日本大震災およびタイ洪水、2012年にニューヨークを襲ったハリケーン・サンディ、2013年にフィリピンを襲った台風ハイヤン(日本では台風30号、フィリピン名はヨランダ)などに見られるように、自然災害の脅威は近年ますます激しいものになっています。自然災害は、人々の生命や財産のみならず、長年の開発成果を一瞬で奪いかねない大きなリスクです。世界では、毎年平均2億人以上もの人々が被災していますが、自然災害の被害者の9割は途上国の国民であるといわれています。そして、女性、子ども、高齢者、障害者などの立場の弱い人々は、深刻な被害を受けやすい傾向にあります。また、グローバル化によりヒト、モノ、資本が大量に国境を越えて移動するようになった今、災害の影響は被災地のみならず、サプライチェーンが寸断されることで、世界各国に即座に波及します。自然災害による経済的損失は年間平均で1,000億ドルを超えるといわれており、開発途上国では、自然災害が貧困削減・持続可能な開発の大きな障害となっています。

数多くの自然災害を経験してきた日本は、防災先進国として国際社会において様々な防災の取組を行っていますが、その一つに国連防災世界会議が挙げられます。国連防災世界会議は、国際的な防災指針を策定する国連主催の会議であり、第1回は1994年に横浜、第2回は2005年に神戸で開催されました。第2回の会議では、防災対策の指針として「兵庫行動枠組(Hyogo Framework for Action)2005-2015」が採択され、各国や国際機関等が防災に関して実施すべき5つの優先事項が決まりました(下図を参照)。日本をはじめ各国が本枠組をもとに防災対策の実施に努めています。

兵庫行動枠組み 5つの優先行動

2015年3月には、東日本大震災の被災地である仙台市において、第3回国連防災世界会議が開催され、2015年に期限を迎える「兵庫行動枠組」の後継枠組が策定されます。都市化や気候変動といった新たな課題にも対応できる、実効性のある後継枠組の策定を目指すとともに、女性の活躍を後押ししている日本としては、女性の観点も含め、日本の災害の経験や防災の知見を後継枠組に反映したいと考えています。また、日本は、あらゆる開発政策・計画において防災の観点を取り入れる「防災の主流化」を推し進めており、第3回国連防災世界会議は、「防災の主流化」を推進するための絶好の機会であるともいえます。

第3回国連防災世界会議には、首脳・閣僚級を含む各国代表、国際機関代表、国際認定NGOなど防災の関係者約5,000人が参加し、一般の人々の参加も含めると4万人以上の人々の参加が見込まれています。会議のほか、被災地視察など、東日本大震災被災地の復興状況を発信するための関連行事も予定されており、開催に向けて各国や国際機関から高い関心が寄せられています。

ミャンマー早期警報プロジェクトにおけるコミュニティでの防災ワークショップ(写真:JICA)

ミャンマー早期警報プロジェクトにおけるコミュニティでの防災ワークショップ(写真:JICA)

2014年9月に国連で開催された気候サミットに出席した安倍総理大臣は、スピーチの中で、国際社会において日本が強みを持つ防災分野における日本の国際協力をアピールするとともに、各国に第3回国連防災世界会議への参加を呼びかけました。自然災害の脅威が増し、防災の重要性が増している中、数多くの災害を乗り越えてきた経験から、様々な知見と技術を持つ日本が果たす役割に国際社会の期待が高まっています。日本としては、第3回国連防災世界会議の開催を通じて、災害に負けない強靱な国やコミュニティの構築に向けて一層貢献していきたいと考えています。

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