2014年版 政府開発援助(ODA)白書 日本の国際協力

(2)効果的な援助の実施
ODA見える化サイト
ODA見える化サイト : http://www.jica.go.jp/oda

ODA見える化サイト : http://www.jica.go.jp/oda

ODAに対する国民の理解と支持をさらに高めていくため、2011年4月にJICAのホームページ上に透明性向上のため「ODA見える化サイト」を立ち上げました。全世界で展開しているODA事業のうち、有償資金協力、無償資金協力、および技術協力の各案件について、各事業の概要、案件の形成から完了までの過程を分かりやすく伝えるため、写真や、事前・事後評価などの情報を随時掲載し、情報の拡充に努めています。また、外務省のホームページにおいては、実施された案件について効果が現れている案件や十分な効果が現れていない案件などを含む具体的な達成状況や教訓をとりまとめたリストを既に3回にわたって公表しており、より効果的なODAの実施に努めています。このリストに記載されている情報を、2014年度からJICAの「ODA見える化サイト」の各案件のページへ盛り込み、利便性のさらなる向上に努めています。

PDCAサイクル
PDCAサイクル

PDCAサイクル強化については、①すべての被援助国における国別援助方針の策定、②開発協力適正会議の開催、③個別案件ごとの指標の設定、④評価体制の強化といった取組を進めています。特に、2011年から開催されている開発協力適正会議はPDCAサイクルの中核としての役割を果たしています。この会議は、無償資金協力、有償資金協力および技術協力の新規案件形成のための調査実施に先立ち、ODA関連分野に知見を有する外部有識者と外務省・JICAの担当部署との間で調査内容などについて意見交換を行い、過去の経験や外部有識者の視点を新規案件に反映することを通じて、ODA事業のより一層の効果的な実施と透明性の向上を図ることを目的としています。

評価の充実

より効果的・効率的なODAを行うためには、開発協力の実施状況やその効果を的確に把握し、改善していくことが必要です。そのため外務省を含む関係府省庁やJICAは、PDCAサイクルの一環としてODA評価を行っています。ODA評価の結果から得られた教訓や提言は、将来の計画や、実施過程に活かしていくため、関係する部局をはじめ、途上国の政府にも伝えています。また評価結果をホームページなどで広く公表することで、ODAがどのように使われ、どのような効果があったのかについて説明責任(アカウンタビリティー)を果たす役割も持っています。

現在外務省では、ODA評価として、主に政策レベルの評価(国別評価、重点課題別評価など)を行っています。外務省が実施するODA評価は、開発援助委員会(DAC)の評価5項目(妥当性、有効性、効率性、インパクト(長期的効果)、自立発展性)を踏まえて、政策は妥当であったか、目的は達成されたか、実施過程は適切であったかの3つの評価項目について開発の視点から評価し、その客観性・透明性を確保するため、第三者による評価を行っています。

また、2011年からのODA評価においては、開発の視点に加えて、外交の視点からの評価を行っています。

一方、JICAは技術協力、有償資金協力、無償資金協力それぞれのプロジェクトについての評価やテーマ別の評価を実施しています。各プロジェクトの事前の段階から、実施の段階を経て、事後まで一貫したモニタリング・評価を行うとともに、これら3つの援助手法に整合性のある評価の仕組みを確立しています。なお、これらの評価はDAC評価5項目に基づいて行われ、一定金額以上の案件については、外部評価者による事後評価を実施しています。

こうしたODA評価の結果から得られた提言や教訓については、対応を検討して、ODAの政策・実施へ反映させています。

これら以外にも、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(いわゆる「政策評価法」)に基づいて、外務省では経済協力政策の全般に関する政策評価や一定の金額を超える案件の事前評価、5年間着手されなかった案件(未着手案件)、または10年経っても貸付が終わっていない案件(未了案件)の事後評価も行っています。


不正行為の防止

日本のODAは、国民の税金を原資としていることから、ODA事業に関連して不正行為が行われることは、援助の適正かつ効果的な実施を阻害するのみならず、ODA事業に対する国民の信頼を損なうもので、絶対に許されません。そのため、政府とJICAは過去に発生した不正事件も踏まえ、調達手続きなどにおいて透明性を確保するなど不正の防止に取り組んでいます。

ODA案件の調達段階においては、JICA調達ガイドラインに従って開発途上国側が入札手続きを行い、その結果をJICAが確認し、受注した企業名だけでなく契約金額も公表することで透明性を高める対応をとっています。調達をはじめ、ODA事業実施の過程で不正が行われた場合は、不正を行った業者を一定期間、事業の入札・契約に参加させない仕組みが整えられています。

外部監査については、JICAにおいて会計監査人による外部監査を実施しているほか、300万円以上の草の根・人間の安全保障無償資金協力の案件について原則として外部監査を義務付け、実施しています。

内部監査については、有償資金協力では、政府間で合意がなされた案件を対象に必要に応じて監査を行うことができる仕組みを導入しています。技術協力では、JICAにおいてサンプリングによる内部監査(一部を抜き出して調べること)を実施しています。無償資金協力についても、JICAにおいて技術的な監査を実施しています。

また、OECD外国公務員贈賄防止条約(注8)の締約国である日本は、ODA事業への信頼を確保するため、外国政府の関係者との不正な取引に対しても、不正競争防止法などの適用を含め厳格に公正な対処を行っています。

2008年のベトナム円借款事業における不正を受け、外務省とJICAは、不正行為を行った企業に対して一定期間入札に参加させないなどを規定した措置の規程を見直しました。そして、海外にある日本大使館やJICAの海外事務所が現地の日本法人などをサポートできる体制を確立し、関係業界などへ法令を守るよう働きかけました。具体的には、企業団体との協力の下で日本企業向けの国際契約約款に関するセミナーの開催、相手国によるコンサルタントの選定に際してJICAの関与の強化、援助国との間で不正、腐敗を防止するための話し合いなどを実施しました。

しかしながら、このような取組にもかかわらず、2014年には、インドネシアにおける円借款事業をめぐる不正により、日本企業が米国司法当局と司法取引を行い、米国において有罪判決を受けたほか、インドネシア、ウズベキスタン、ベトナムにおける円借款事業等に関連した不正の疑いにより、日本企業関係者が起訴される事件が起こりました。外務省、JICAとしては、上述のとおり、これまでにも様々な不正防止策を講じてきたところですが、ODA事業への信頼を損ねる事案が発生したことを踏まえ、不正腐敗情報相談窓口の強化、不正に関与した企業への入札からの排除措置の強化、企業へのコンプライアンス体制構築の働きかけなどの再発防止策のさらなる強化を行っています。また、このような事態を未然に抑止するためには、日本側のみならず、相手国における取組・協力も必要であり、その観点から、相手国政府とも協議を行っています。

なお、2013年度においては、1案件(1企業)に対し、一定期間入札に参加させないなどの措置を実施しました。

用語解説
未着手・未了案件 
「5年未着手案件」とは、案件の実施が決定した後、5年を経過した時点においても貸付契約が締結されていない、あるいは貸付実行が開始されていないなどの案件。「10年未了案件」とは、案件実施決定後10年を経過した時点で貸付実行が未了である案件を指す。

  1. 注8: 正式名:「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」
    (Convention on Combating Bribery of Foreign Public Officials in International Business Transactions)
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