2014年版 政府開発援助(ODA)白書 日本の国際協力

(2)アフガニスタンおよびパキスタン支援

アフガニスタンとパキスタンにおいて不安定な情勢が続いていることは、両国やその周辺地域だけでなく世界全体の問題です。アフガニスタンを再びテロの温床としないため、日本をはじめとする国際社会は積極的に同国への支援を行っています。特に2014年にはアフガニスタンにおける大統領選挙による新政権の発足やISAF(国際治安支援部隊)のアフガニスタンからの撤収により、アフガニスタンの安定の確保が重要となっています。タリバーンとの和解等、アフガニスタンの安定にとって、パキスタンの協力が重要であり、周辺地域や国際社会の平和と安定の鍵となっています。

< 日本の取組 >

アフガニスタン

日本は、これまで一貫してアフガニスタンへの支援を実施しており、2001年10月以降の支援総額は約54億ドルに上ります。

2012年7月8日、日本は、「アフガニスタンに関する東京会合」をアフガニスタンと共催し、約80の国および国際機関の代表が参加する中、成果文書として「東京宣言」を発表しました。この東京会合において、アフガニスタンの持続可能な開発に向け、アフガニスタンおよび国際社会の相互責任を明確にするとともに、それを定期的に確認・検証する枠組みである「相互責任に関する東京フレームワーク(TMAF)(注21)」を構築しました。日本は、アフガニスタンに対し、「2012年よりおおむね5年間で開発分野および治安維持能力の向上に対し、最大約30億ドル規模の支援」を行うことを表明し、2012年以降、これまでに約21億ドルの支援を実施してきました。

2014年4月には、アフガニスタン大統領選挙および県議会選挙が実施され、前回を大きく上回る数の国民が投票に参加し、アフガニスタン史上初となる民主的な政権移譲が実現しました。日本は、このときの選挙に対する支援として、国際社会と連携し、16億3,900万円の無償資金協力を実施し、アフガニスタン政府による選挙プロセスを支援しました。

TMAFにおけるアフガニスタン政府のコミットメントについては、選挙の実施など進展した分野もありますが、汚職対策などさらなる取組が必要な分野もあります。

日本留学から帰国した若手行政官等を激励する、アフガニスタンのガニ新大統領(中央のノーネクタイの人物)(写真:JICA)

日本留学から帰国した若手行政官等を激励する、アフガニスタンのガニ新大統領(中央のノーネクタイの人物)(写真:JICA)


  1. 注21 : 相互責任に関する東京フレームワーク TOKYO MUTUAL ACCOUNTABILITY FRAMEWORK (Tokyo Framework)

●アフガニスタン

自然災害・防災体制に係る本邦招聘プログラム
技術協力プロジェクト(2014年2月2日~2014年2月12日)

兵庫県神戸市にある「人と防災未来センター」で、構造物の耐震化を図る「筋交い」の効果を確認する参加者たち(写真:JICA)

兵庫県神戸市にある「人と防災未来センター」で、構造物の耐震化を図る「筋交い」の効果を確認する参加者たち(写真:JICA)

アフガニスタンは自然災害の多い国です。毎年のように地震や洪水、干ばつ、土砂災害、寒波などの災害に見舞われ、被災者は年間40万人に上ります。同国政府は2003年に国家防災計画、新防災政策・戦略を制定するとともに、国家災害管理庁(ANDMA※1)を設立し、防災体制の構築に取り組んでいます。

また、日本はアフガニスタンと周辺地域諸国の協力促進を目的とする「イスタンブール・プロセス」において、防災分野の支援国として、国際社会との連携を進めています。

こうした背景から、日本は2014年2月、アフガニスタンの防災関係者13人を日本に招聘(しょうへい)しました。日本やアフガニスタン周辺国の防災への取組を学んでもらい、周辺諸国の関係機関とのネットワークを作ることで、アフガニスタンの防災体制の構築に活かすことが目的です。周辺諸国のカザフスタン、トルコ、パキスタンからも、講師として防災関係者4人が来日しました。

防災をテーマに学び合う中で、アフガニスタンと周辺諸国の防災関係者との交流と相互理解も深まりました。アフガニスタンの参加者は、「今回のプログラムで、日本だけでなく周辺3か国の取組からも多くを学びました。とりわけパキスタンの取組の中には防災にかかわる人材育成の手法や緊急時対応等の行動計画策定など、活用できるものが多いと感じました。今後はこれらの国々との連携を強化し、様々な支援を得ていきたい」と述べています。

アフガニスタンが周辺国や国際社会との連携を深め、防災対策を推進することで、一人でも被災者を減らしていくことが望まれます。


※1 ANDMA:Afghanistan National Disaster Management Authority

日本のアフガニスタン支援の主な実績

 

パキスタン

2001年の米国同時多発テロ後に国際社会と協調してテロ対策を行うことをパキスタンが表明して以来、日本はパキスタンに対して積極的な支援を行っています。2009年4月、日本はパキスタン支援国会合を主催し、同国に対し2年間で最大10億ドルの支援を表明し、これを着実に実施しました。(注22)また、2014年には、同国が進める電力セクター改革を支援するため、50億円の円借款を実施しました。

さらに、日本はパキスタンにおける治安改善に貢献するため、アフガニスタン国境地域で教育、保健、職業訓練等について協力を行い、民生安定を支援してきているほか、2013年には、パキスタンの主要国際空港の保安能力強化のため、手荷物検査装置の整備等、約20億円の支援を行うなど、テロ対策への支援を実施しています。


  1. 注22 : 2010年度大洪水に対する支援も含む。
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