2014年版 政府開発援助(ODA)白書 日本の国際協力

(4)資源・エネルギー(再生可能エネルギーを含む)

世界で電気にアクセスできない人々は約13億人(世界の人口の18%に相当)、特に、サブサハラ・アフリカでは、人口の約3分の2(約6億2,000万人)に上るといわれています。また、サブサハラ・アフリカでは、人口の約5分の4(約7億3,000万人)が調理に際して屋内大気汚染をもたらす、木質燃料(木炭、薪など)に依存しており、若年死亡の主要因となっています。(注16)電気やガスなどのエネルギー・サービスの欠如は、産業の発達を遅らせ、雇用機会を失わせ、貧困をより一層進ませ、医療サービスや教育を受ける機会を制限するといった問題につながります。今後、世界のエネルギー需要はアジアをはじめとする新興国や開発途上国を中心にますます増えることが予想されており、エネルギーの安定的な供給や環境への適切な配慮が欠かせません。

< 日本の取組 >

日本は、開発途上国の持続可能な開発およびエネルギーを確保するため、近代的なエネルギー供給を可能にするサービスを提供し、産業育成のための電力の安定供給に取り組んでいます。また、省エネルギー設備や再生可能エネルギー(水力、太陽光、太陽熱、風力、地熱など)を活用した発電施設など、環境に配慮したインフラ(経済社会基盤)整備を支援しています。

資源国に対しては、その国が資源開発によって外貨を獲得し、自立的に発展できるよう、鉱山周辺のインフラ整備など、資源国のニーズに応じた支援を行っています。日本はこうした支援を通じて、開発途上の資源国との互恵的な関係の強化を図り、また、企業による資源の開発、生産や輸送を促進し、エネルギー・鉱物資源の安定供給の確保に努めます。国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による支援に加え、日本のODAを資源・エネルギー分野で積極的に活用していくことが重要です。

また、日本は、採取産業透明性イニシアティブ(EITI)を積極的に支援しています。EITIは、石油・ガス・鉱物資源等の開発において、採取企業が資源産出国政府へ支払った金額を、政府は受け取った金額を報告し、資金の流れの透明性を高めるための多国間協力の枠組みです。39の資源産出国と日本を含む多数の支援国、採取企業やNGOが参加し、腐敗や紛争を予防し、成長と貧困削減につながる責任ある資源開発を促進することを目指しています。


  1. 注16 : (出典)国際エネルギー機関(IEA)「2013年世界エネルギー展望」(2011年時点の推定)、国際エネルギー機関(IEA)「アフリカエネルギー展望(2014)」

●バングラデシュ

ハリプール新発電所建設計画(II)
有償資金協力(2009年3月~実施中)

バングラデシュのハリプール新発電所の外観(写真:JICA)

バングラデシュのハリプール新発電所の外観(写真:JICA)

2014年3月、バングラデシュの首都ダッカ郊外のナラヤンガンジ市で、CO2排出量を抑え、熱効率性を高めた「ハリプール新発電所」の運転が開始しました。

バングラデシュでは、近年の電化率の向上や工業化の進展のため、電力供給が電力需要の増加に追いつかず、2014年には、潜在的な需要である9,652メガワット(MW)に対し最大供給実績は7,536MWと、供給能力は需要の約8割にとどまっています。加えて今後10年間、年率約10%の電力需要の増加が見込まれています。

ハリプール新発電所には、単独の火力発電所としては国内最大級の412MWの発電能力があります。ガスと水蒸気を利用する「コンバインドサイクル発電所」で、ガスタービンは三菱重工、蒸気タービンは富士電機が納入するなど、要となる機材に日本の技術を活用しています。この発電所の熱効率は、これまでの同国内のガス火力発電所と比べ2倍以上に当たる約56%と、技術的に最先端の発電所です。また、建設から発電開始まで実質36か月でこぎ着けて、公共事業が遅れることが多いバングラデシュで関心を集めました。

また、事業の持続性を高めるために、ガスタービンの維持・管理について「長期メンテナンスサービス契約」が日本のメーカーとの間で締結されることになっています。具体的には、メーカーによる希少部品の安定供給に加え、5~6年間をワンサイクルとするガスタービンの定期的な検査が行われるのですが、それを通じて、発電所職員に対して運営や維持・管理についての指導が行われます。こうして最先端の発電所が、同国の発電所職員によって長期にわたって安定的に維持・管理される体制が構築されています。(2014年8月時点)

●ケニア

地熱開発のための能力向上プロジェクト
技術協力プロジェクト(2013年9月~実施中)

ケニアの地熱開発現場における掘削指導の様子(写真:JICA)

ケニアの地熱開発現場における掘削指導の様子(写真:JICA)

ケニアのピーク電力需要は、経済成長と人口増加により、2010年の1,227メガワット(MW)から2030年には12,738~22,985MWへと大幅に増加すると予測されています。しかし、2011年の時点で発電設備容量は1,593MWであり、今後大規模な電源の開発が必要な状況です。

ケニア政府はポテンシャル7,000MWともいわれる地熱資源に着目し、2009年にはケニア電力公社(KenGen)から地熱部門を独立させて、地熱開発公社(GDC※1)を設立しました。そして、地熱エネルギーの発電設備容量を5,300MWまで引き上げる計画を進めています。

こうした計画の下、GDCは試掘などを実施していますが、適切な掘削地点を選定できない、狙ったターゲットを掘り当てられない、持続可能な蒸気生産量を見極められないなど、技術面での問題があり、探査・掘削・貯留層評価といった技術の向上が課題となっています。このプロジェクトでは、日本から専門家を派遣するとともに、毎年22名程度を対象として掘削技術や貯留層評価の技術を身に付ける1か月間の日本での研修を実施しています。また、機材供与を行い、 GDCの地熱開発促進を後押ししていき、協力期間である計4年間で500名規模のGDC職員の能力向上に寄与する見込みです。(2014年8月時点)


※1 GDC:Geothermal Development Company Ltd.

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