2014年版 政府開発援助(ODA)白書 日本の国際協力

(5)文化の保護・振興

開発途上国では、自国の文化の保護・振興に対する関心が高まっています。その国を象徴するような文化遺産は、国民の誇りであるとともに、観光資源として周辺住民の社会・経済の発展に有効に活用できる一方、開発途上国には、保護・維持の面で危機に晒(さら)されている文化遺産も多く存在します。このような文化遺産を守るための支援は、その国民の心情に直接届く上に、長期的に効果が持続する協力の形ともいえます。また、これら人類共通の貴重な文化遺産をはじめとする文化の保護・振興は、対象となる国のみならず国際社会全体が取り組むべき課題でもあります。

< 日本の取組 >

エルサルバドルの首都サンサルバドルにある考古学博物館にて遺物の記録方法について指導を行う青年海外協力隊(考古学)の八木宏明さん(写真:エルネスト・マンサノ/JICA)

エルサルバドルの首都サンサルバドルにある考古学博物館にて遺物の記録方法について指導を行う青年海外協力隊(考古学)の八木宏明さん(写真:エルネスト・マンサノ/JICA)

日本は、文化無償資金協力を通じて、1975年より開発途上国の文化・高等教育の振興、文化遺産の保全のための支援を実施しています。具体的には、開発途上国の文化遺跡、文化財の保存や活用に必要な施設、その他の文化・スポーツ関連施設、高等教育・研究機関の施設の整備や必要な機材の整備を行ってきました。こうして整備された施設は、日本に関する情報発信や日本との文化交流の拠点にもなり、日本に対する理解を深め、親日感情を培う効果があります。近年では、「日本の発信」の観点から、日本語教育分野の支援や日本のコンテンツ普及につながる支援にも力を入れています。

2013年度には、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け、スポーツ支援を積極的に行ったほか、文化遺産保全や日本のコンテンツを活用した支援など幅広い分野で支援を実施しました。スポーツ支援としては、17か国に対してスポーツ施設・器材を整備したほか、文化遺産の保全のための支援として、ヨルダンのペトラ博物館建設やカンボジアのアンコール・ワット西参道保存修復のための機材整備の実施を決定しました。このほか、5か国において、日本のテレビ番組ソフトの提供整備なども行っています。

日本は、国連教育科学文化機関(UNESCO(ユネスコ))に設置した「文化遺産保存日本信託基金」を通じて、文化遺産の保存・修復作業、機材供与や事前調査などを行っています。特に途上国の人材育成には力を入れており、日本人専門家を中心とした国際的専門家の派遣や、ワークショップの開催等により、技術や知識の提供による協力も実施しています。また、いわゆる有形の文化遺産だけでなく、伝統的な舞踊や音楽、工芸技術、語り伝えなどの無形文化遺産についても、同じくUNESCOに設置した「無形文化遺産保護日本信託基金」を通じて、継承者の育成や記録保存、保護体制づくりなどの事業に対し支援しています。

用語解説
文化無償資金協力
開発途上国が文化・高等教育振興、文化遺産保全などを目的として実施する開発プロジェクト(機材調達、施設整備など)のために必要な資金を供与する。政府機関を対象とする「一般文化無償資金協力」とNGOや地方公共団体等を対象に小規模なプロジェクトを実施する「草の根文化無償資金協力」の二つの枠組みにより実施している。

●ガーナ

ラボネ高校野球・ソフトボールグラウンド整備計画
草の根文化無償資金協力(2013年2月1日~2014年3月31日)

ラボネ高校野球・ソフトボールグラウンド完成披露式・開幕試合における一コマ。熱戦の様子が伝わってくる(写真:樋口陽子)

ラボネ高校野球・ソフトボールグラウンド完成披露式・開幕試合における一コマ。熱戦の様子が伝わってくる(写真:樋口陽子)

ラボネ高校野球・ソフトボールグラウンド完成披露式・開幕試合後の記念写真。みんな素敵な笑顔を見せている(写真:在ガーナ日本大使館)

ラボネ高校野球・ソフトボールグラウンド完成披露式・開幕試合後の記念写真。みんな素敵な笑顔を見せている(写真:在ガーナ日本大使館)

2014年3月、日本の支援によってガーナ初の本格的な野球場が完成しました。その名も「KOSHIEN(甲子園)GHANA」。ガーナでスポーツといえばサッカーの人気が圧倒的ですが、長年にわたる在留邦人の支援などのかいもあって、野球やソフトボールもしっかりと根付き始めています。白球を投げる、打つ、追うという野球やソフトボールの楽しみが、アフリカの地でも広がりを見せているのです。「ガーナ野球・ソフトボール協会」、ガーナの日系NGO「おはようガーナ基金」、ガーナにおける野球振興を長年支援している日本のNGO「アフリカ野球友の会」などの活動を通して、ガーナの野球人口は年々増加しています。

とはいっても、これまで野球の練習や試合は、整備されていない空き地や学校のグラウンドで行われていました。そこで、今回、「草の根文化無償資金協力」によって、バックネットや土の入れ替えなどにより、野球・ソフトボールのためのグラウンドが整備されました。このグラウンドは、野球を愛する人たちの手作業で整えられていきました。整備の最終段階には、ガーナ野球・ソフトボール協会メンバー、ガーナのベテラン、若手の野球選手や野球少年たちがグラウンドに集まり、日本の大使館有志と共にベースを設置したり、小石を取り除いたり、ローラーをかけたりしました。

現地の人々と共に力を合わせて作り上げられた「KOSHIEN」では、今後、ガーナの少年たちが野球・ソフトボールというスポーツを通じて健全な心身を育んでいくことが期待されています。ガーナの「KOSHIEN」では、今日もガーナの球児が仲間と一緒に白球を追いかけています。

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