(4)政策立案・制度整備
開発途上国の持続的成長のためには、インフラ(経済社会基盤)の整備とともに政策の立案・制度の整備や人づくりが重要です。汚職を撲滅し、法・制度を改革し、行政を効率化・透明化して地方政府の行政能力を向上させるなどの支援が必要です。
< 日本の取組 >

カンボジアの王立司法官学院で行われた裁判官、検察官の卵たちによる模擬裁判の様子(写真:JICA)
政策立案や制度整備への支援の一環として、日本は法制度整備支援を進めています。法制度整備は良い統治(グッドガバナンス)に基づく自助努力による国の発展の基礎となるものです。この分野への支援は、日本と相手国の「人と人との協力」の代表例であり、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、モンゴル、カンボジア、ラオス、ウズベキスタン、バングラデシュなどの国を中心として日本の「顔の見える援助」の一翼を担っています。
また、これにより開発途上国の法制度が整備されれば、日本企業がその国で活動するためのビジネス環境が改善されることとなり、その意味でも重要な取組です。法制度整備への支援は、日本のソフトパワーにより、アジアをはじめとする世界の成長を促進し、下支えするものです。
さらに、民主的発展の支援のために、法制度、司法制度、行政制度、公務員制度、警察制度などの各種の制度整備や組織強化のための支援、民主的な選挙を実施するための支援、市民社会の強化、女性の地位向上のための支援などの取組を行っています。汚職の防止や統計能力の向上、地方行政能力の向上も支援しています。
国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)を通じて、刑事司法分野の様々な課題について、アジア・太平洋地域を中心とした開発途上国の刑事司法実務家を対象に、研修・セミナーを実施しています。UNAFEIの行う研修には、人権上の配慮等に係る女性犯罪者の処遇に関するものも含まれています。
国内治安維持の要(かなめ)となる警察機関の能力向上については、制度づくりや行政能力向上への支援など人材の育成に重点を置きながら、日本の警察による国際協力の実績と経験を踏まえた知識・技術の移転と、施設の整備や機材の供与を組み合わせた支援をしています。警察庁では、インドネシア、フィリピンなどのアジア諸国を中心に専門家の派遣や研修員の受入れを行っています。これらを通して、民主的に管理された警察として国民に信頼されている日本の警察の姿勢や事件捜査、鑑識技術の移転を目指しています。
●ミャンマー
法整備支援プロジェクト
技術協力プロジェクト(2013年11月~実施中)
ミャンマーでは、2011年に新政府が発足して以来、様々な改革が精力的に進められていますが、法律および司法分野の改革を通じた法の支配の確立は、これらの改革を進める上で不可欠であり、中でも、市場経済化促進と投資環境整備に向けた法律および司法制度の整備は差し迫った課題です。
現行のミャンマー法には、現代の複雑・高度化した市場経済に合致しない内容を含む法律が多く残っているほか、場当たり的な法令整備が行われてきた結果、法制度全体が体系化されておらず、法令同士の抵触や重複が見られます。このような問題は、ミャンマーにおける投資やビジネスを検討する際に求められる法制度の透明性や予測可能性を損なっています。
法律の起草に関して、法律を所管する関係省庁に専門スタッフが不足している上、法案起草のための訓練の機会も限られています。法案起草に関する審査・助言などを担当する法務長官府でも、研修プログラムの中に上記の問題点に対応する研修は十分に組み込まれておらず、専門的な知見・ノウハウを得る機会は限られています。
こうした中で、ミャンマーの法律および司法関係機関(法務長官府と最高裁判所)において、時代や社会、国際基準に適した法律を整備し、適切な運用が行えるよう、組織的・人的能力の向上を目的として、この法整備支援プロジェクトを開始しました。

ミャンマー最高裁判所による新任判事研修の様子。JICA長期専門家が新任判事向けに刑事法分野に係る講義を実施(写真:JICA)
このプロジェクトでは、ミャンマーが直面する経済法などの起草・改正における課題に対応する活動を行いながら、法律の所管省庁の法案作成能力および法務長官府の法案審査・助言能力の向上を図ります。また、より中長期的な観点から、人材育成の基盤整備、法令相互の整合性・体系性、立法の優先順位などを検討し、それにより、将来の自立的、持続的な法令の整備および適切な運用、さらには、法の支配の確立、民主化、経済改革に寄与することを目指していきます。
具体的には、ネーピードーに3名の長期専門家が常駐し、法務長官府および最高裁判所職員が法案作成や法案審査に当たって必要な視点を養うことができるよう、知的財産法や仲裁法に関するセミナーを開催したり、最高裁判所の新任判事研修で講義を行ったりと、様々な活動を行っています。(2014年8月時点)