(3)水と衛生

ウガンダで、故障して水の汲み上げができなくなっていた井戸を青年海外協力隊(村落開発普及員)の依田靖さんが住民とともに修理。「2年ぶりに水が出た!」その瞬間、思わず子どもが水に手を伸ばす(写真:依田靖)
水と衛生の問題は人の生命にかかわる重要な問題です。水道や井戸などの安全な水を利用できない人口は、2012年に世界で約7億4,800万人、トイレや下水道などの基本的な衛生施設を利用できない人口は途上国人口の約半分に当たる約25億人に上ります。(注4)安全な水と基本的な衛生施設が不足しているために引き起こされる下痢は、5歳未満の子どもの死亡原因の11%を占めています。(注5)
< 日本の取組 >

日本の無償資金協力により整備されたザンビアのンゴンベ・コンパウンド給水施設を視察する中根一幸外務大臣政務官

カンボジアの小学校で、水道水で手を洗う子どもたち。この地域では日本の支援により上水道が整備された(写真:久野真一/JICA)
2006年に開かれた第4回世界水フォーラムで日本は「水と衛生に関する拡大パートナーシップ・イニシアティブ(WASABI)」を発表しました。日本は、水と衛生分野での援助実績が世界一です。この分野に関する豊富な経験、知識や技術を活かし、①総合的な水資源管理の推進、②安全な飲料水の供給と基本的な衛生の確保(衛生施設の整備)、③食料増産などのために水を利用できるようにする支援(農業用水など)、④水質汚濁を防止(排水規制)・生態系の保全(緑化や森林保全)、⑤水に関連する災害の被害を軽減(予警報システムの確立、地域社会の対応能力の強化)など、ソフト・ハード両面で全体的な支援を実施しています。
2010年12月には国連総会において、国際衛生年(2008年)フォローアップ決議案の採択を日本が中心となって進め、MDGs達成期限となる2015年に向けて「持続可能な衛生の5年」を実現するために地球規模での取組を支援しています。
2008年に開催された第4回アフリカ開発会議(TICAD(ティカッド) IV)の後、2012年までの間に、日本は給水施設や衛生施設の整備を進めた結果、①安全な飲料水を1,079万人に対して提供するための無償資金協力および有償資金協力案件を実施したほか、②水資源分野における管理者およびユーザー(村落水管理組合関係者を含む)13,000人以上の人材育成を支援しました。
また、2013年6月に開催された第5回アフリカ開発会議(TICAD V)では、向こう5年間に約1,000万人に対して、安全な飲料水や基本的な衛生施設へのアクセスを確保するための支援を継続するととともに、1,750名の都市水道技術者の人材育成等の支援をそれぞれ実施することを発表しました。
- 注4 : (出典)WHO/UNICEF “Progress on Drinking-Water and Sanitation: 2014 Update”
- 注5 : (出典)UNICEF “Committing to Child Survival: A Promise Renewed”(2012)
●エチオピア
「地下水開発・水供給訓練計画」
技術協力プロジェクト(2009年1月~2013年11月)

地下水モデルコースの野外実習の様子。地図を見ながら、授業の習得成果を確認。適切な地下水モデルの立案は、効率的な井戸掘削に必要不可欠(写真:JICA)
エチオピアでは人口の8割以上が村落部に居住しています。ところが、水の利用について見ると、給水率※1は44%で、サブサハラ・アフリカ地域の平均給水率である64%を大きく下回っています。エチオピアの人々にとって、水を利用することは、たいへんな労力と時間がかかり、貧困の削減を妨げる一因となっています。それだけに安全な水の確保に携わる技術者を育成し、より多くの人々が安全な水を利用できるようにすることがとても重要です。
日本は、1998年から15年間エチオピア水技術センター(EWTEC)※2に対して技術協力を通じて、常設研修コースの設立・実施、センターの運営のための支援を行い、特に技術指導者の育成に力を注いできました。1998年から2005年の間は日本人専門家が中心となって研修を実施し、2005年から2008年の間には徐々にその役割をエチオピアのカウンターパート(相手側の同等の役割の人)へ移行していき、最終的(2009~2013年)には大部分の研修コースをエチオピア側が独自で実施できるようになりました。
その結果、EWTECでは、これまでエチオピアの政府機関、民間企業、職業訓練校などから通算で3,500名を超える研修生を受け入れ、今やエチオピアの各地で卒業生が活躍しています。また、周辺のアフリカ諸国(18か国)の技術者を対象とした国際コースの研修も実施し、エチオピア国内にとどまらず、広くアフリカ諸国の地下水技術者育成にも貢献しています。
その成果が認められ、2013年8月、EWTECは国立の水技術学校(EWTI)※3として承認され、名実ともに水分野の技術者育成の中心的な機関としての地位を確立しました。今後、新組織EWTIとしてエチオピアの水分野のさらなる発展へ寄与し、さらに多くの人々が安全な水を利用できるための重要な役割を担っていきます。
※1 安全な水を供給している割合。
※2 Ethiopian Water Technology Center
※3 Ethiopian Water Technology Institute