2014年版 政府開発援助(ODA)白書 日本の国際協力

国際協力の現場から 04

将来を担う人材を育てる日本式経営やビジネス手法
〜ミャンマー日本人材開発センタープロジェクト〜

ミャンマー日本人材開発センターで、「ビジネスプラン」科目でのグループでの作業を指導する日本人講師(写真:ミャンマー日本人材開発センター)

ミャンマー日本人材開発センターで、「ビジネスプラン」科目でのグループでの作業を指導する日本人講師(写真:ミャンマー日本人材開発センター)

人材の育成は、どの国でも経済発展の要(かなめ)となる重要課題の一つです。2011年の新政権発足以降、民主化と市場経済化の動きが加速するミャンマーも例外ではなく、経済を支える高度で国際的な経営知識やノウハウを持つ人材の確保・育成が求められています。ミャンマーの関係省庁をはじめ、業界団体や民間教育機関が産業の担い手となるビジネス人材の育成に取り組んでいますが、経験豊富な講師や時代に即した教材が十分ではないなど、教育の質的な向上が求められています。

こうした背景から、2013年10月、日本はミャンマーの商業省と商工会議所連盟と協力して、技術協力「ミャンマー日本人材開発センタープロジェクト」を開始しました。それに先立つ8月には、ミャンマー最大の都市・ヤンゴンのミャンマー商工会議所連盟ビル内に「ミャンマー日本人材開発センター(MJC)」を開設しています。27,000社が加盟する商工会議所連盟のビルに入居することで、現地産業界のニーズを的確に把握し、活動に反映できると期待されています。

ヤンゴンには、ビジネスを学べる大学や専門学校はありますが、理論が中心で、実践教育が不足になりがちです。学生や社会人の求めるものを必ずしも満たしているとはいえない状況です。そこでMJCでは、「ビジネスコース」に特化して、人材管理、ナレッジマネジメント、マーケティング、起業家育成、日本式経営・生産管理などの多彩なメニューを揃(そろ)えました。また、ビジネスコンサルタントとしての実務経験や、他の日本センターで教えた経験のある日本人が中心となって講師を務めています。2014年度は400名を超える受講生がビジネスコースに参加し、開設以来、延べ1,100名を超える盛況ぶりです。

受講生には、日本とのビジネスにかかわる企業関係者のほか、日本に関心があり、今後日本とビジネスを行いたいと考えている人もたくさんいます。受講生の一人、ミャンマー茶やコーヒーの販売を手掛ける会社で経営企画に携わるライン・ライン・ウーさんは次のように語ります。

「効率良く、かつ効果的に新規市場に参入する方法を学びたいと思い、『戦略的マーケティング』と『ビジネスプラン・ディベロップメント』の2科目を受講しました。新しい製品やサービスを提供したり、新規の顧客にアプローチするためには新しい事業の戦略立案が必要だということを学びました。これまで家族経営の伝統にのっとって事業を行ってきましたが、戦略的なマーケティングやビジネスプランの考え方を学ぶことで、事業を見直し、成長させるためには何が必要なのかを理解することができました。日本などの海外企業とも積極的に連携していきたいと考えています。」

「マーケティング」科目の受講生プレゼンテーションを講評する日本人講師(写真:ミャンマー日本人材開発センター)

「マーケティング」科目の受講生プレゼンテーションを講評する日本人講師(写真:ミャンマー日本人材開発センター)

日本から中古車を輸入して販売している会社で20代の若さながら役員を務めるティ・ミィェ・リンさんも、受講生の一人です。「以前、日本の会社について調査をしたとき、経営陣と従業員の間の意思の伝達がとても円滑に行われていることが分かりました。それで日本式経営に興味を持ち、より深く学びたいと思ったのです。受講したことで、事業に着手する前に市場分析をしっかりと行うビジネスプランが必要不可欠だと実感しました。以前は、『とにかく実行』と考えていたので、行き当たりばったりだったなぁ、と思います。ミャンマーでは、市場が開放されて間もないこともあり、豊富なビジネスチャンスが手つかずのまま残っていますが、適切な計画を立てて事業を行う企業は多くはありません。今回学んだ日本式経営やビジネスプランの手法を活かして、これから世界に大きく羽ばたこうとしているASEANにおいて自分の事業の幅を広げていきたいと思っています。」と語っています。

MJCは、3年間のプロジェクト終了後も、引き続きミャンマーの産業を担う人材育成を進め、ミャンマーの経済発展に貢献するとともに、日本企業がミャンマーに進出しやすい環境を整えるために機能することが期待されています。ヤンゴン日本人商工会に加盟する日系企業は175社(2014年6月末時点)。3年前に比べ倍増しています。こうした機運の下、人づくりからビジネス交流まで、人・知恵・技術が出会い、これからのミャンマーの発展を豊かに育む場となりつつあります。

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