(注)NGO:非政府組織(Non-Governmental Organization)
【日時】2013年11月25日(月曜日)17時00分~18時30分
【場所】外務省 南 297会議室
【参加者】外務省国際協力局2名,JICA農村開発部・アフリカ部4名,NGO14名(6団体,2大学・大学院)
【議事次第】
1. 事前にNGO側から提出のあった質問に対する回答(外務省・JICA)
2. 意見交換(外務省・JICA,NGO)
【配布資料】
外務省・JICA配布資料:
(1)議事次第(PDF) (29KB)
(2)参加者一覧(PDF) (38KB)
(3)NGOの質問状(9月25日付と補足質問10月17日付)への回答(JICA)(PDF) (309KB)
(4)プロサバンナの現地調査団派遣一覧(2009年6月~2013年10月)(JICA)(PDF) (72KB)
NGO配布資料:
- (5)
- 日本NGOによるプロサバンナの中断と見直しを求める緊急声明(2013年9月30日)
http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/6kai_shiryo/ref5.pdf
- (6)
- UNAC主催の土地小農国際会議(10月15~16日)の式次第(ポルトガル語)
http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/6kai_shiryo/ref6.jpg
- (7)
- 同会議にあたってのUNACによる声明(2013年10月14日)(ポルトガル語)
http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/6kai_shiryo/ref7.pdf
- (8)
- プレゼンテーション資料
http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/6kai_shiryo/ref8.pdf
- (9)
- 現地調査緊急報告会(2013年9月30日)議事録
http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/6kai_shiryo/ref9.pdf
- (10)
- 年表:ProSAVANAにおける農民・市民社会組織の参加・コンスルテーションの推移
http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/6kai_shiryo/ref10.pdf
- (11)
- UNAC記事「プロサバンナでは何も解決しない」(2013年11月)(和訳)
http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/6kai_shiryo/ref11.pdf
- (12)
- モザンビーク現状認識(外務省と現地新聞の違い)
http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/6kai_shiryo/ref12.pdf
1. はじめに(司会進行 日本国際ボランティアセンターJVC)
前回意見交換会から約四か月が経過。この間,日本の研究者やNGOが現地調査するなど動きがあった。まず,9月30日にNGOが出した緊急声明【資料(5)】,石橋通宏議員経由で出した質問(9月25日並びに10月17日)につき,外務省・JICAから回答頂く。次に,コンセプトノートに関する現地での話し合いの状況をJICAに報告頂きたい。その上で,重要なテーマとなってきた農民主権と市民参加の在り方について,NGOから問題提起する。最後に,NGOから同ノートに関する論点を紹介する。
2. NGOが事前に提出した質問に対する外務省・JICAの回答
(1)外務省から,NGO側の緊急声明に基づき【配布資料(5)】,次の7点について説明がなされた。
- 要請項目1:モザンビーク市民社会から提出された公開書簡については,三カ国協力事業のため,三カ国で話をした上で回答する。基本的に事業実施母体はモザンビーク政府のため,同政府の立場を尊重した上で協議し回答する。現時点で日本政府のみから回答することは難しい。
- 要請項目2:「2009年の調印時よりモザンビークにおける環境破壊,土地収奪による土地紛争,政治状況は悪化」とのNGO側の認識について。マスタープランの中で丁寧な現地調査を行うとしており,実際に行っている。農民組織・市民社会との対話も同様。今後も対話を続け,その結果がマスタープランに反映されるものと考える。
- 要請項目3:「現地の農民・市民社会との対話の抜本的な見直し」の必要性について,我々(外務省)は理解し受け止め,JICAは実施団体に,外務省はモザンビーク及びブラジル(政府)にそれぞれ伝えている。その結果,モザンビーク農業省は市民社会プラットフォームを通じた市民社会との対話を丁寧に実施する方針に至った。集会には,UNAC本部,各州UNAC代表にも参加を促し,故意に一部団体を招待しないとの対応は取っておらず,UNACが対話から排除された事実はない。ご指摘にあったナンプラ州,ニアッサ州でも対話を実施。日本政府は対話プロセスを尊重していきたく,NGO側も現地政府と農民・市民社会間で始まった対話を通じ相互理解が深まるよう努力してほしい。
- 要請項目4:「公開書簡」の緊急停止要求を受け,確かに外務省及びJICAは「時間をかけて対話した上で実施」と発言した。PDIFについては,第二次募集開始前の6月19日に市民社会代表者に説明済み。参加できなかった代表者にも27日に説明。市民社会への説明はきちんとしたと認識。
- 要請項目5:対話見直しの必要性については,3. で説明済み。対話が進んでいる状況。これを受けてマスタープランのドラフトは作成されるものと考える。
- 要請項目6:「国連家族農業年」の計画についての見解。「家族農業支援のための国家計画」については,モザンビーク農業省からUNACに過去複数回共有を求めているが共有されていないため,具体的な見解を示せず。しかし,本事業では家族単位で農業する地域の大多数の小農に貢献できる農業の方向性を打ち出すということで進めている。家族農業を否定しない。対話の中で最良と思われる農業のあり方を検証し,支援していきたい。
- 要請項目7:DUATに関し,モザンビーク政府が土地に関する住民の権利を守るためには,住民の土地使用権の確定が必要。境界線が曖昧のため争いが起こる。小農の権利を守るため,既存の土地法の範囲下,モザンビーク政府と協力し最善の土地境界線の確定手法を検討すべきと考えている。農民の土地の権利が担保され,土地収奪や土地紛争が生じないよう,我々としても責任ある農業投資原則のガイドライン策定を支援していく。これはモザンビーク政府の立場に沿っている。
(2)NGOからの質問状について,回答【配布資料(3)】に基づき,JICAから次の3点の説明がなされた。
JICAの見解は外務省と全く同じ。
- 質問状2.(6): モザンビーク政府アメリコ氏の発言にマスタープランが存在しているかのような発言があった点については,今後のマスタープラン・ドラフト作成の方向性とずれが生じないようにしていくことを説明したものと理解している。
- マスタープラン策定にあたって様々な現地調査を行なっているが,その結果は個々の項目別には取りまとめていない。マスタープラン策定にそれらを反映していく予定。
- 4.のクイック・インパクト・プロジェクト(QIP)に関し,(3)の「PDIFはレポート2ではQIPの一部であり,その扱いはまだ決まっていないとされていたが,実際はどうなのか」について。PDIFはQIPの一部ではなく,正式なQIPは作成されていない。PDIFはマスタープランで提案可能性のある事業の妥当性を検証するために行っており,プロジェクトの中で試験的に実施。妥当性が認められたものについては将来的にマスタープランの中でQIPとして提案される可能性がある。
(3)情報提供,質問状への回答に関し,JICA・外務省とNGO間で4点のやり取りや確認があった。
- 請求情報の優先順位を明確にとのJICAの依頼については,マスタープランのコンセプトノートが公開されている以上,その土台となる現地調査の報告を最優先で開示すべきとの強い要望があった。
- NGO側からの繰り返しの要望を受け,JICAは現地調査団派遣一覧をその場で開示した。
- 外務省より「NGO側からの質問もあるだろうから,出して頂いた方が良い」との発言があった。
- また,NGOによる質問の項目がJICAに取捨選択され返答されている点について,NGO側から改善が要求され,今後は「今回は回答できない」などとし,全項目を残し記載することが合意された。
(4)外務省・JICAの回答を踏まえ,NGO(アフリカ日本協議会AJF)から次の5点について確認質問がなされた。
- 【配布資料(3)】4頁に市民社会との対話の参加人数が出ているが,事業対象となる当事者数と比べると非常に少なく感じる。これについての見解。また何が問題か。
- プロジェクト対象地域の人口と農民の数。
- どのような意見が出されているのかの記録。特に,議事録,議事要約の作成状況と公開について。モザンビーク農業省は現地市民社会に対し「すべて公開する」と約束したがどうか(11月22日)。
- 重要な,目立った意見とはどういったものか。
- マスタープランのドラフトの期日についてはどうなっているか。
(5)これに対し,JICAから,次の回答がなされた。
- どこまでが十分な対話か検討中。現状で十分とは思っておらず,できるだけ市民社会の声を聞くのが丁寧な対話の姿勢。ただ,人口比からどの程度が参加したかについての分析・整理が必要。
- 400万人位で,農民の数もそれに近い数字と想定。
- 情報はこちらに上がっている。基本的にモザンビーク政府の方で検討するが,意見は十分に認識し,マスタープランを作る。議事の要約作成は参加者双方が実施。市民社会の了解を得られず現段階では非公開。これまで対話を行い議事内容について署名されているものを公開するためのプロセスに入っている。対話が継続的に行われているものについては,対話が完了後署名することとなっている。
- 意見がたくさん出ており,対話のプロセスの話や中身の話など様々。小農の多くが食料作物を作っているので,これにフォーカスすべきという意見がある一方,収益を増やすのに効果的な換金作物を拡大すべきという話も出ている。民間投資についても,必要ないという意見や農地が買い占められるのではないかとの懸念の声もあれば,民間投資が梃子になっているとの意見もある。
- 市民社会組織や農民と対話していく必要があり,期日を決めるのはあまり意味がなく,確定的なものはない。
3. 「主権」「参加」「対話」に関するNGOからの問題提起を踏まえ,外務省・JICAとの議論がなされた。
(1)AJFは冒頭に以下のように述べた上で,【配布資料(8)】に沿って,次の12点の説明と問題提起を行った。
我々の要望に基づき外務省・JICAが対話を促進するようになったのは喜ばしいが,「対話は進んでいる」「何人来た」「何日にやった」以上の情報は示されない。そもそも「何のため」の「対話」なのか。現地の農民・市民社会の望む「対話」との乖離があるように思う。その点について議論できれば,現状を打破するきっかけになるのではないか。
- 【スライド1】JICAの環境社会配慮ガイドラインでは,「国際人権規約と国際人権基準を尊重」と宣言されている。ドナーは,(被援助国の)国内法が国際法のレベルに至っていない場合でも,国際法の水準に引き上げて対応する必要があることを念頭に置くべき。この点について,9月30日の緊急報告会でアムネスティ・インターナショナルの若林秀樹氏が指摘。他に「ビジネスと人権に関する指導原則」等,人権の観点から考えることも重要であることが分かる。【配布資料(9)】を参照されたい。
- 【スライド2-3】日本も署名する国際人権規約(「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約A規約」)では「すべての人民は自決の権利を有する」とし,”Right to Development”では「人々を開発/発展の中心に据える」「自由で主体的で意味のある参加を保証する」とあり,「人民主権並びに天(自)然資源への主権を尊重」とされる点が重要。(プロサバンナ)対象地に住む400万人の大半が農民で,その99.89%が小農。小農の主権を中心に据えると,マスタープランはどうあるべきか。
- 【スライド4】FPIC (Free, Prior and Informed Consent)で示される「自由意思に基づく合意」「プロジェクト実施決定前の合意」「十分に情報を与えられた上での合意」は,国際的な合意になりつつある。「合意」は「相談」と異なる。マスタープラン策定にあたり重要なのは,「誰が主権者なのか,誰の合意を得るための対話か」という点。「対話」は目的でなく「合意の手法」にすぎない点を確認したい。本来,FPICは案件形成の段階でされなくてはならなかった。最初から問題があった以上,費用負担は政府で賄うべき。なお,プランは国家の政策の一部であり,農民らが主権者/主体。単に声を聞くだけでなく,「意思決定への参加」を目的とした対話であるべき。そして,彼らに「対話への参加やマスタープラン(結果)への拒否の自由」があることの確認も必要。
- 【スライド5-8】FPICは国連での「先住民の権利」をめぐる議論で発達したが,「先住民」に限定せず。日本も署名。FPICの重要な点は,主権者自身が(発展の中身とプロセスを)規定することにある。プラン策定や政策決定には,ローカル/ナショナル(主体)だけでなく国際,つまりJICA・外務省,NGOも,主権者の参加を保証しなければならない。アフリカは「特別配慮地域」とされ,特に土地収奪,大規模開発プロジェクト,採掘産業が問題と指摘されている。これにプロサバンナが該当し,注意が必要。
- 【スライド7】9月30日にJICAは,「(従来の)移動農法ではなく,定着農法への転換が不可欠で,それを進める」と述べた。しかし,(今年の国連常設フォーラムでは)「住民自身が開発の優先順位と手法を決める権利を有する」とある。万一モザンビーク農業省が言ったとしても問題。
- 【スライド9-10】要は,「我々無しで我々のことを決めるな」「我々のことは我々が決める」という当たり前の原則。残念ながら,プロサバンナではその理解が不足し,対話・参加がある種の圧力をもって強要されている点は問題にされなければならない。
- 【スライド11】2012年10月にUNACからプロサバンナ抗議声明が出た際,JICAは「情報伝達における誤解。説明会を加速化させる」としたが,この対応は良くなかった。主権者は彼らであり,こちらから「情報をあげる/『説明会』を開く」ことではないはず。ALIMIとIKURUの問題は根が深い。
- 【スライド12-13】質問状の背景は,現地から来る情報と,皆さんの「対話は進展」との説明に大きな違いがあるため。どこで情報がスタックするのか,他に何か原因があるのかを今後のために考えて頂きたい。【配布資料(10)】にNGOが把握した経緯が記載。持ち帰り,確認頂ければ。また,(9月30日に)JICAは「ナンプラ州市民社会プラットフォーム(以下PPOCS-N)と対話に合意したが二度も現れず」と述べたが,実際は合意なしに招待状が一方的に送付。現在は対話中とのことだが,同プラットフォームは,プロサバンナ事務局とJICAについて「分断,分裂化,弱体化」の「各種の工作活動と脅迫をしている」との声明(9月30日)を,同事務局に手渡し(10月3日),JICAも立ち会っている。しかし,これについて(JICAも外務省も)全く言及しない。現地社会で署名入り声明の作成は大変で,ましてや200団体を束ねる組織。「色々意見がある」では不十分。彼らの公的な批判を受け止めるべき。
- 【スライド14-17】国会議員への資料で「10月以降対話が進展」と記されているが,実態は異なる。6月時点でコンセプトノートはPPOCS-Nと共に作ると約束されていたが,手法の議論の途中でUNACの排除問題が発生し,対話ボイコットへ。「排除せず」とのことだが,モザンビーク政府と市民社会のやり取りの中で「排除」と認識されている。さらに,対話拒否の最中にコンセプトが発表され,農村集会なるものが開催(クアンバ,9月23日)。「UNACナンプラ支部もPPOCS-Nの会議に参加」というが,プロサバンナ事務局が同支部に何度も電話で個別会合を強要。同支部は手紙で「止めてほしい」「公開書簡の精神に基づいて民主的に」と要請するに至った(10月7日)。JICAにも届いているはず。その他,会議前に,議事要旨案を農業省が作成し会議場で市民社会にサインさせた,11月4日の会議でJICAとプロサバンナ関係者が無断で録音・録画して紛糾し協議がストップする事態が報告されている。
- 【スライド18】11月21日,UNACなど公開書簡署名団体と,農業省とJICA・ABCの間で会議が行われたが,これに至る経緯と当日に問題が多い。まず,4日にUNACと農業省間の,プロサバンナと無関係の国家政策に関する会議の場に,いきなりプロサバンナ関係者・JICA・ABCが現れ,「協議」を求めた。UNAC側は透明性と「公開書簡」の返答がないことから拒否。しかし,強要されたため,「協議」ではなく「協議の仕方を話す場」として21日の会議を設定。にもかかわらず,当日政府側は「プロサバンナ事業への対話参加者一覧」との紙への署名を市民社会側に迫り,紛糾。
- 【スライド19】ナンプラ(PPOCS-N)も言っているが,このような方法で「協議」してはならない。同プラットフォームによると,抗議声明を出したが,なぜそれを受け止めず,「対話」を強要するのか,と。このコンセプトペーパーの中身は農民にとって大変問題が多く,意見しない間に,一方では「1200人の農民と話した」とペーパーの既成事実化が進み,ドラフトになってしまう。これを避けるため「協議」をしているが,言いたいことは全て「公開書簡」にある。政府は(書簡へ)返答した上で「対話」すべき。しかし,毎回この様になっていくと非難。つまり,「対話」が強要されている。
- 【スライド20】JICA環境社会配慮ガイドラインには,市民社会や住民の関与する見込みがない場合,事業は取り止めると書かれている。そこを念頭に「主権」「合意」「対話」を今一度見直して頂きたい。
(2)司会進行
これまで何度も対話を試みたとのことだが,我々が何を学ぶかという観点,特に現地で何が起こっているのかを,現地情報を踏まえて分析すると,いくつか大事なポイントが抜けていたことが分かる。JICAがこれをどのように踏まえ,どのようにモザンビーク政府に働きかけていくのかが大事。ガイドラインの話が出た。JICA環境社会配慮ガイドライン改定委員会で,相手国政府のガバナンス能力がない場合,JICAは「それらを技術協力でカバーしていく」と述べている。「相手側に資金がない,予算がないから十分にできない」と言うだけではなく,技術協力などにより,相手国政府に取り組んでもらうために段階的に何を進めていくのかを考えるべき。我々の分析は述べたので,見解を求む。
(3)NGOの説明を踏まえ,外務省から次の5点の回答があった。
- マスタープランは大きなプロジェクトの計画作りにあたり,基本的には国の行政府,関係省庁がそれを作っていく。その中身については,裨益するもしくは影響を被る方と対話をし,出た意見を反映する。行政府は,民主主義の中で,人々の声に基づいてやらなければならないため。実施段階では,国が州政府と話し,市民社会組織やNGOが政策実施の過程で役割を果たす場合もある。モザンビークの場合,特に貧しい北部地方で,農業を通じて豊かになりたいとの人々の声があったことは事実。ここから日本の協力を求めるという話が受け入れられ,モザンビークに多い小農の生活向上を中心に置いた協力をする,との話が出た。
- 二番目の段階に,マスタープランという計画作りがあり,そのため1回は誰かがたたき台を作らなければならない。行政府が大きな組織,予算,調査能力を持っているため,このプラン作りをやってほしいとなった。たたき台をもとに議論し練り直す。その上でもう一度色々な人々の意見を聞いて議論し,最後は代表である人達の会議等で決められていく。
- 今回,たたき台をある程度考え,調査ができたところで,施策のところだけを先走った考えで投資に軸足をおいた説明会が行われてしまった。一部の州政府の人だけを集めて,趣旨の説明もなくやりたいと思っている投資寄りの説明をしたがために,「本当に理解できない」という指摘がなされた。「対話や説明の仕方,目的が間違っているのではないか」とのご意見を伺った。我々はその指摘はごもっともだと思い,途上国においてそのようなやり方ではついていけないとの指摘があったので,もう一度段階を初めに戻した。影響を被る3州での趣旨や調査についての説明に戻って,理解を得てからたたき台を作る。現在,2州では,次の議論まで来ている。残り1つの州については,そもそも対話の在り方について不安を持つ団体が多かったため対話が成り立たなかったが,またもう1回やることになっている。
- 2州では対話が進み,たたき台を見たいとの意見が多い。地域の人々が見たい,議論に入りたいといえばそうする。対話の方法論の結論をここで出すつもりはない。ある団体は「公開書簡」への回答が一番と言うが,他の人達にとっては違う。対話をしたい州もあり,もう少し議論が必要。
- モザンビーク農業省は「公開書簡」について知っているが,多くの人々にできるだけ早く様々なことを伝えるという意味では,対話が良い(方法)と考えている模様。同省も我々も,先走って投資について説明したことが大きな誤解を生んだと認識しており,本来の趣旨をもう一度説明し直すことは早急に必要だと思っている。対話を通じて返答するのが,現時点でモザンビーク農業省のやりたいことと聞いている。
(4)11月4日に首都で開催された「会議」をめぐり,次のやり取りが外務省とNGOの間でなされた。
- 外務省:モザンビークの農業省によると,その地域で最も意見があったのはUNACだった。だからUNACと話をした。UNACが自ら主催し,市民社会との対話集会をやると。ただし案内はモザンビークの政府がしてくれとなったため,この前の対話が開かれたと理解。
- AJF:(プロサバンナ関係者が)いきなり現れた,「ではどういう形であれば会えるか」と聞かれたので,UNACから「公開書簡」署名団体に声をかけるとなったと聞いている。
- 外務省:方法論については受け入れられないという意見をUNACから頂いたが,「会いましょう,名前を変えよう」となり,主催・呼びかけを行う窓口としてUNACが手を挙げた。1回集会が行われた。様々な意見が出て,もう1回12月に実施するため日程はセットされた。
- AJF:以上は外務省の見解とし,(UNACから聞いた私たちの理解では,)ここに書いてある通り,対話するかも含め検討中,とする。
(5)JICAから,具体的な方法論に関する次の説明があった。
- 農民にとり,開発調査の段階で良いと思っていたものが,具体的に事業が進むと,思っていたものと違うものであったのかもしれない。我々は市民社会組織,農民の方々から意見を聞いた上で案を作っていくが,全ての人々から合意を得ることは難しい。よって,多くの組織の代表者から,できるだけ丁寧に,その視点や考え方を聞き,リスクを考え,説明して作っていくという流れになる。
- 事前に議事録を作ってサインさせるというのはナンセンス。仮にそれが本当であれば,適切なやり方ではない。真偽を確認したい。
- 途上国政府はガバナンスがしっかりしていないことがある。この点を配慮し,実施段階ではガイドラインが順守されるような開発の進め方となるよう,支援の仕方を考えていきたい。
- (コンセプトノートを作成しながら対応するのか,との司会に対し,)検討しなくてはならない。様々な市民社会組織や皆さんの視点を踏まえ,次のもの――コンセプトノート「´(ダッシュ)」「2」など――を出していかねばならない。混乱させないよう,分かり易い形で出すことが必要。
- 現地市民社会対話にオブザーバー参加したことがあるが,議事録は市民社会側代表者が作成・取り纏めており,先程指摘頂いたことは必ずしも正しくない。また,対話そのものは,双方友好的で談笑しながら進行されており,我々としても対話の方法については学ぶべきところがあるか,と感じる。途上国だから対話が出来ていない,ということでは決してないと理解しており,モザンビーク人らしい,と思える対話を行っている。
4. プロサバンナ事業の抱える「リスク」に関し,次の議論がNGOとJICAの間で行われた。
- 立教大学:先ほどの説明の中に「リスクに関する説明をしている」とあったが,具体的にどのような「リスク」を説明しているのか。また,リスク分析はされているか。
- JICA:「リスクを考えている」と話した。例えば,我々の計画したものが農民の思っていない形になったり,土地問題のような我々の想定していなかった事態に陥ったりすること。その点に関しても,十分市民社会の意見・視点を聞いた上で,リスクを洗い出し,計画に反映させたいという意味。リスク分析についてはまだ。今は色々な話を聞き,リスク分析の材料にしていこうという段階。
- AJF:リスクに関してだが,農業経済をやっている者としてコンセプトノートを分析したが,大変リスクの多い点ばかり。これを話し合いのベースとして持ち出すのであれば,話し合いは頓挫するだろう。なぜなら,アグリビジネスの進出について一切出てこない。小規模農民の農業の転換が中心に書かれているが,そこにアグリビジネス進出の話が隠されている。そのため,「shifting cultivation(以後sc)から定着農業へ」とあるが,これは抽象的なものではなく,アグリビジネスが進出するという条件の中で議論されなければならない。これは,通常の集約農業への転換の話とは違う。もともと,scから定着農業への転換は非常に難しい問題。簡単に考えられているようだが,アフリカの多くの国が何年もかかってできない。しかもここでは,scが農業停滞の原因と書かれている。ここには,小農の農法も今や純粋な形でのscから(耕地分散と)輪作という形態の土壌保全システムへ進化しつつあるという認識が全くない。それを急転換し,農地の測定・登録を急速にやる形で書いてある。それが全体の方法論として出されている。農民にとってこれは1つの大きなリスクであり,何百万の農民に関わる。
- 立教大学:(JICAがガバナンスに関しリスク分析しているとの返事を受け)現在,(モザンビーク政府の)ガバナンスがますます悪化【配布資料(12)】。先日の「三鷹ストーカー事件」に関する専門家の分析が,プロサバンナにも共通する。危険レベルには3つある。ピラミッドに例えると,下からrisk,danger,poisonとなる。事件の被害者の場合,(最悪の)poison状態にあったが,警官の認識に乖離があった。プロサバンナに関しても,ガバナンスの悪化,市民社会の日本政府・JICAに対する不信感を考慮すると,poison状態に。皆さんの認識はどこにあるのか,はっきりしなくてはならない。
5. 次回会議と資料について次の合意が得られた。
(1)司会進行:参加の在り方を見直すという事でこれまで議論を行なってきたが,未だ双方合意には至らない。一つの提案として,12月9日のODA政策協議会以降,年内にもう一度意見交換会を開くのは如何か。今回我々から提案させて頂いたことを踏まえ,JICAに整理して頂き,コンセプトノートと参加の在り方について議論できたら良い。JICA・外務省とも積極的に情報は出して頂くとともに,NGO側も質問を出すことを合意。
(2)外務省:同じ問題意識。参加の在り方またはプロセス論の話と,コンセプトノートの中での動きを議題にすべき。一方で,(現地調査報告書について)NGO側からの質問もあるだろうから,(JICAに)それは出して頂いた方が良い。対話については,我々から質問があるので,お互いに質問を交換させて頂く。
以上
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