※NGO:非政府組織(Non-Governmental Organization)
【日時】2013年5月10日(金曜日)17時00分~18時15分
【場所】外務省 南 396会議室
【参加者】外務省国際協力局2名,JICAアフリカ部・農村開発部5名,NGO16名(7団体,2大学・大学院)
【議事次第】
1. マスタープラン中間報告書の位置づけ(JICA)
2. マスタープランに関する問題提起(NGO)
3. 2.を踏まえた議論(NGO・JICA/外務省)
4. 今後に向けて(外務省・NGO)
【配布資料】
外務省/JICA配布資料:
(1)議事次第
(2)参加者一覧(PDF:0.1MB
)
NGO配布資料:
(3)「共同声明:モザンビーク北部のProSAVANA事業マスタープラン(案)は最悪の計画を露呈した
~市民社会組織は大規模土地収奪に道を開く秘密計画に警告を発する~」(2013年4月29日)(原文PDF:0.2MB
・和訳PDF:0.5MB
)
(4)「ProSAVANAマスタープラン暫定案に関する専門家分析と問題提起」(2013年5月8日)(PDF:0.4MB
)
1. はじめに (高橋清貴 日本国際ボランティアセンター,司会進行)
本会議では,プロサバンナ事業マスタープラン中間報告書(マスタープラン案)について意見交換を行う。今回の主な目的は,前回JICAに発表されたマスタープラン案の課題や改善点をNGO側が指摘することである。まず,マスタープラン案の位置づけについてJICAから説明がある。
2. JICAによる説明とNGOとのやり取り:マスタープランや報告書の位置づけ・プロセス確認
JICA側(天目石慎二郎 農村開発部乾燥畑作地帯課課長)から以下の説明がなされた。
- NGO側が入手した「クイックインパクトプロジェクト(以下,QIP)報告書(あるいはレポート2)」を「マスタープラン(案/暫定案)」と認識しているが【配布資料(3)(4)】,QIP報告書は,マスタープラン案ではない。NGO側が入手したもの(レポート2)は,決定版ではなく,途中段階のもの。マスタープランの構成は現在検討中。同報告書は,現地発表された段階でのQIPのアイデアをまとめたもの。検討過程のものであり,今後見直される。
- プロサバンナ事業のビジョン・狙いは,「対象地域であるナカラ回廊地域で,インクルーシブで持続可能な農業開発を行い,地域住民の生計を改善すること」にあり,4月2日の公開セミナーでもモザンビーク政府代表が説明した通り。この目的達成のため求められる計画をマスタープラン案に書き込む。
NGO(津山直子 アフリカ日本協議会理事)からは次の十点について確認質問がなされた。
- 報告書には,狙いやビジョンが明記されているのか?
- 現地のステークホルダー会議で使用されたパワーポイント資料(【第3回意見交換会JICA側配布資料(4)】)が,NGO側共同声明(【配布資料(3)】)の中で「マスタープラン案」として示された「QIP報告書(レポート2)」を元に作られていることは明らか。その関係は?
- ステークホルダー会議ではマスタープラン案の全体像について説明したのか。
- 今回NGOが分析・発表する点は,マスタープラン作成の上で加味されるのか。
- 同報告書は,「マスタープランでなく全体の一部の構成文書」とのことだが,現地住民が一番心配するマスタープラン作成の今後のスケジュールやプロセスは?
- 現地で行われるのは,「説明会」「意見交換会」「ブリーフィング」のどれか。
- 第3回意見交換会で問題となった「ステークホルダー会議の持ち方,資料の共有,意見交換の時間,参加団体が会議後に持ち帰り話し合った結果をどうするか」についての再検討結果と改善策を知りたい。現在も現地ではステークホルダー会議は続行中と聞いている。
- 前回ステークホルダー会議で発表されたもの(【第3回配布資料(4)】)は,大幅に書き換えられる可能性があるのか。それとも骨子は変わらないのか。
- 現在進行中の19郡での会議では,パワーポイントで示しながら説明するだけなのか。
- 改善されたものについて共有を求める。
以上の十点の質問について,JICA(天目石慎二郎課長)から以下の返答があった。
- 同報告書(レポート2)は,クラスター,ゾーンなどの情報も書かれているが,基本的にはQIPの「あの段階」のレポート。今見直しを行なっている。狙いは十分に示されておらず,今後書かれる予定。
- については,NGO側が指摘する通りである。齟齬が生じている。記載ぶりに誤りがあった。
- については,そうではない。マスタープラン案はこれから作成する。現在検討中のQIP報告書(レポート2)がそのままマスタープランになるということではない。
- については,まだ何も決まっていないが,関係者内で共有する。
- については,元は11月までにプランをまとめる予定であったが,今回の協議を経て,より丁寧な意見交換が現地で必要と判断し,プロセス・完成時期は検討中。モザンビーク側と調整が必要なため,スケジュールの報告に関しても時間が欲しい。
- については,その進め方を含め検討が必要だと考えている。
- についても検討中。今日の段階で示せる状況ではない。19郡(プロサバンナ対象郡)に向けた会議は進んでおり,今後より丁寧なものが必要と考えるが,そのスケジュールは未定。
- については,現段階では不明。NGOが入手した報告書は,マスタープランの一部を構成するものではあるが,これ自体の中身も検討中。内容自体が変わることも十分あり得る。
- については,説明のみならず意見交換も実施。時間も3時間程度とり,プロジェクターで映すだけでなく,資料も配布(【第3回配布資料(4)】と同じ)。現地の声を踏まえ,分かりにくいものに関し説明を加味。
- については,同意。
3. NGOからの「共同声明」紹介と外務省とのやり取り
現地・国際NGOから出されたマスタープランについての「共同声明」に関し,NGOから以下の説明と要望が出された。
- 国際NGOが署名する「共同声明」(【配布資料(3)】)について,前もって外務省・JICAと共有した。現地・国際NGOが署名団体となり現在も賛同団体が増えている。本「声明」に留まらず,団体が異なる形で声明を出す可能性もある。それほどマスタープラン案が,国際,モザンビーク,ブラジルのNGOで広く問題と懸念・認識されている。5月29日に,ブラジル,モザンビーク,国際NGOが市民社会ラウンドテーブルを開催し,シンポジウムを行う。外務省,JICAから会議に出席するなどし,TICAD V前に話し合いの機会をもってほしい。外務省・JICA内での「声明」共有状況を。
外務省(貴島善子課長)から次の三点の応答がなされた
- 報告書が「マスタープラン案」ではなく「QIP案」であると認識。プロサバンナ事業の目的は書かれておらず,これが全体案だとしたら自分も怒るだろう。
- 今回のような事態にならないようなマスタープランにしなくてはならないが,なってしまった今,どのように対処していくかという方法論を考えなくてはならない。
- 土地の農民が自ら力を付けていくような支援をしたいというのが,多くの日本人の気持ちだ。そのために,モザンビークがすべきことが書かれるのが,マスタープランのあるべき姿。誤解が誤解になっているものをどうしたらよいかと考えている。
NGOから以下の八点について追加質問がなされた(津山直子 / 近藤康男 No! To Land Grab, Japan)。
- レポート2の後半部分,非常に大きなエリアで行われるアグリビジネスに関して,QIPと関係ないことが書かれているが,ではなぜこの報告書に入っているのか。
- 前回(意見交換会)では,QIPはパイロット事業的なモデル事業として地域に広めていくものとして行なわれているという話だった。QIPはプロサバンナ事業の中でどういう位置づけか。
- QIPは現在行われているのか。
- QIP自体を中止すべきではないか。
- レポート2では「既に始まっているものがある」と書かれている。
- 進めようとしてきたものを中断している,ということか。
- 「声明」執筆団体を含め,NGO側は「(マスタープランにつき)相当構成ができており進んでいるもの」と理解し,不安を抱いている。誤解を招きかねない状況にある。農民や国際NGO内に生まれ得る誤解に対してはどのように対応するのか。
- 国際NGOや現地農民に向けてはどう説明されていくのか。
JICA(天目石慎二郎課長)より以上の八点について次の返答がなされた。
- および
- について。QIPは比較的短い期間で成果が出て,やり易いものを挙げたもの。これらは検討中で,最終案ではない。「再検討,再構成が必要だ」と認識している。
- および
- については,「QIPはアイデアとして挙げているもので,今やっているという性質のものではない」ということ。
- については,その点を含め見直し中。「途中段階のものが流出した」と理解されたい。「現地で進みつつあるものを参考にした」のは事実であるが,表現ぶりが適切でなかった。現在QIPは見直し中。
- については,「あくまでも検討を進めている」ということ。
- 現在,中身や対話のプロセスの検討を進めている。
- こちらでプロセスを検討した上で,モザンビーク政府から説明が行なわれる。
4. NGOによるマスタープラン案に関する分析と問題提起
「専門家分析と問題提起」(【配布資料(5)】)に基づき,吉田昌夫(アフリカ日本協議会)元代表から,下記の(1)分析の総括,(2)全体的な問題,(3)具体的な三点の問題の指摘,池上甲一(近畿大学)教授から,下記の(1)質問,(2)五点の問題の指摘があった。その上で,結論として,「マスタープラン暫定案には問題が多く,これを進めることは日本に大きな責任を課し,悪影響をもたらすと思われる。JICAに,マスタープラン案の書き直し,代替案の作成を求める」との要望がなされた。
以下,吉田元代表によって,分析並びに問題提起に関し,次の三点が指摘された。
(1)分析の総括:
「当事者不在で正当性に欠けるマスタープラン」であり,「小農に犠牲を強いる構造とQIPに問題」がある。マスタープランの「あるべき像」(対象地域住民の抱える課題,小農の望みを適確に調査した上で,農業政策全体を包む上位課題の中に位置づけ問題解決を目指す)と全く異なり,恣意的に目的が設定され,現地状況を顧みず書かれており,正当性に欠ける。
(2)全体的な問題:
【恣意的な目的設定】: レポート2は,JICAが調査に基づき作成したマスタープラン・レポート1を参考にせずに書かれたと見える。これまで外務省・JICA(理事長含む)は内外に「プロサバンナはナカラ回廊の小農支援を中心としたプログラムだ」と説明してきた。しかし,マスタープラン案を見る限り,「小農の発展は二の次,アグリビジネスの進出促進」が目的とされている。
【小農に犠牲を強いる構造という共通の分析結果】: この結論は「共同声明(【資料(4)】)」と類似。
【形ばかりのアリバイとしての「参加」の欠陥】: (報告書等が)住民,農民組織,市民社会に開示されずに進められてきたことに起因。これまでの日本,ブラジル,モザンビーク三政府の主張「ステークホルダー会議で十分に協議した上で作成」には実態が無く,住民参加という点で欠陥があった。
【先行方式的QIPの問題】: 現地に混乱をもたらす原因に。QIPを全体の方法を決める先行事例にし,これを全体に当てはめていくという論理が垣間見られる。
(3)具体的な問題点:
【配布資料(4)】の分析では17の問題点を列挙。1.ゾーニング,2.農民の土地の権利,3.農業投資原則(土地問題が起きた時に,それを解決する組織作り)の三点に集約し問題提起する。
【1.独断的で机上のゾーニング】: (本事業での)ゾーニングの使い方は特殊。通常はその土地や住民の既存の状態を詳しく調べ,それを改良・発展させていく方向。それに対し,(本事業では)非常に細部にわたる使い方が書かれ,強制を伴う性格を有す。農民は発展の仕方を勝手に位置づけられ,ゾーニングは現状の把握の上に成り立っておらず,独断的な机上で作成されたものとなっている。
【2.開発主体を三種類に限定】: ゾーン毎に,個人・農民組織・アグリビジネスの誰がどこを開発するかを指定。マジュネ郡ではアグリインダストリーの一社を指定し,独占権を付与。主体や栽培作物の指定は小農の意志を完全に無視することを意味。食料主権,食料安全保障において,農民の努力に疑問を投げかける構図。ゾーン内にはアグリビジネス中心の経済特区が設定され,インセンティブや租税優遇措置を促す計画,QIPゾーンで先行され,誰がどこでやるか,コスト計算までも書かれている。これを先行事例として他のゾーンに広げていくことを予期するような書き方になっている。
【3.土地占有権登記(DUAT)に絡む問題】: パイロットプロジェクトProSAVANA Development Initiative Fund(PDIF)が既に動いており,問題に直面していると記載有(3-13)。土地登記問題が既に生じているのに「登記を何よりも先行させるべき」とされている。モザンビーク農民の土地の権利は1997年の土地法で,慣習法上の土地アクセス権を保障されており,農民は土地占有権の登記を急いでいない。タンザニアと同様。同国でも土地は慣習法上守られており,農民にとり土地登記はコストがかかり積極的ではない。登記が農民同士の紛争を誘発することも。(レポートでは)「登記をすれば(土地)問題は解決」とされている。登記を急がせることは大変問題で,やるには長い期間と費用がかかる。実際に紛争が起こった場合の補償についてもほぼ説明がない。「ProSAVANAガイドラインを作る」とあるが,問題が多い書きぶりで現地農民や環境を守る姿勢がない。独立機関の設置が記載されているが,罰則を与える機関ではないと明記。土地登記は農民ではなくアグリビジネスないし外部の開発主体の便宜を図ることが中心で,農民は土地を奪われてしまう。
次に池上教授により,以下の3点の質問と,JICA南部アフリカ研究会でモザンビークを担当した経験や自らのアフリカ研究を踏まえた5点の問題点の指摘がなされた。
(1)質問
- 外務省貴島課長の説明(QIPの見直し)は,どのレベル・段階で進んでいるのか。日本政府内のみ,モザンビーク大使館含めて,モザンビーク政府・ブラジル政府も交え行なっているのか。内側で見直しが必要と言っているだけなのか,公的なものとして見直しを進めているのか,教えてほしい。
- 見直しはプロジェクトに反映させられるのか。南南協力としての大規模事業は日本政府にとって初の試み。変なやり方・結果を残すのではなく,南南協力のモデルを作るべき。従来二国間でやる作業管理,アドバイザー管理は三国間でもあるのか。
- ステークホルダー会議といっても,弱い立場の人はこのような会議に出られず,出られても発言力がない。弱い立場の人たちの底上げこそ農村開発の狙いであり,このような人たちをカバーできるようなステークホルダー会議でなくては問題。
(2)五点の問題点の指摘
【クラスターに関する問題】: 通常,単なる垂直的統合をいうのではなく,「違うもの」の集合体にサポートする産業が集まり,そこに複合的利益が出てくるものであるが,本事業ではそうは読めない。
【「小農が契約栽培をすればよい」前提の問題】: サブサハラアフリカにおいて成功例はあまり聞かない。ある程度力のある農家では可能かもしれないが,対等な契約が可能か。一方的な収奪になってしまう恐れがある。政府や独立組織がサポートする仕組み(農家の能力強化,契約の監視,契約の改善)なしには,農家は損し,安く買い叩かれる,品質が均一でないため買ってもらえないことも。
【モノカルチャー・作物選択の問題】: QIPでは,モノカルチャー方式で土地生産性・経済性の向上が目指されている点が問題。モノカルチャーは熱帯アフリカでは無理。(環境が)非常に脆弱で,生態条件的にも危険。農民は生活の知恵として多様な作物を選択し,一つの作物が駄目になっても他の作物で対応してきた。また,国際価格の変動が激しい綿や大豆を輸出目的で導入する点に問題がある。
【リセトルメント(「強制移住」)の問題】: モザンビークでは,一部の例外を除きリセトルメントは失敗が多い。エチオピアでも同様。リセトルメントを前提とした農業政策は実効性に乏しい。
【土地登記問題】: 登記という手段が「最後の砦」としてあるのは良いが,最優先させるべきことではない。タンザニアの例もあるが,急いで進めると力関係が出てくる。また,農民の土地利用法は多様であり(共有地など),広範な利用法も認められるべき。私有制の登記優先で出てくる問題は多い。
5. JICAの返答
以上の分析・問題提起を踏まえ,JICA天目石課長から返答があった。
質問1について,声明を出したNGOのHPで報告書が掲載されていることは知っており,モザンビーク政府,ブラジル側もこれを承知。三国間で問題は共有されている。レポートの見直しは現地のコンサルチームによって検討が進められている。
質問2について,定期的に直接会っての打ち合わせ,メールベースでの意見交換を行っている。JICAが発注している日本のコンサルタントとのメールベースでのやりとり打ち合わせも頻繁。(NGOより:懸念点を伝え,見直しの要望は出したかについて,)情報は共有している。この点踏まえ,マスタープラン策定に向けて見直しを進めている。(NGOより:この見直しは,決定権のある人からの指示/権限を与えられ実施されているのか。実務者レベルで意見交換後改めて「上に」上げているのか。政策的に位置づけられているのか)JICAとコンサルタントチームで意見交換を行い,進めている。権限については分からないが,正規のプロセスで実施。
6. NGO側からの追加問題提起
以下の4名から追加の問題提起がなされた。
- 斉藤龍一郎(アフリカ日本協議会事務局長): 権限の問題もあるが,4月2日のセミナーにモザンビークから「農民組織代表」が来た際,JICAモザンビーク事務所の通訳に問題があった。東京と異なり,現場のスタッフは切迫感に欠けている。レポート2を出してくるようなコンサルタントを使って本気だと言われても信じられない。
- 近藤康男(No! To Land Grab, Japan): 最大の受益者は現地農民であるべき。しかし,マスタープラン案を見ると(農民が)「最大の被害者」になり得る懸念がある。お互いこの懸念を頭に置きながら話を進めるべき。2000年の日本・ブラジル間の二国間援助協定,2010年までの協議・合意署名を見ると,(本事業では)ブラジルのセラード開発を背景にした調査・分析が先行し,その結果を日本・モザンビーク・ブラジルが協議・合意し,内容確認し,ほぼ追認した形で次のステップに進むという経過が続いている。その結果が今回の一連の問題に繋がる必然性を持つ。このような事態には歴史的背景があったことを懸念として伝える。
- 渡辺直子(日本国際ボランティアセンター): 本事業は環境問題を含む事業だ。【配布資料(4)】の16番にもあるが,レポート1では「事業対象地は森林地帯」と書かれている。一方,レポート2では,「森林地域=農業開発の利点」と書かれている。森林伐採をした上での農地移転が予定されている。一見低利用,生産に関係ないように見える土地でも,農民の生活には欠かせない。2月に来日したモザンビーク環境団体Justiça Ambientalが指摘した通り,森林は農民の生活を成り立たせる採取において重要。同団体は森林伐採による社会的影響を調査し,それが社会問題を引き起こすことを結論づけている。現地の環境について知見を持つ現地の人々を巻き込んでいく仕組みを検討すべき。
- 林達夫(アフリカ日本協議会代表): 検討中と言いながら,プロジェクトが一部進んでいることはおかしい。
7. 外務省・JICAからの応答
全体を通して,以下の応答があった。
(1)外務省(貴島善子 課長): QIPが進んでいるとは聞いていなかったため,確認したい。
(2)JICA(天目石慎二郎 課長): 書きぶりが悪かった。マスタープラン案は途中段階で修正がなされぬままに流出した。本来,今後考えられるものを載せるべきだった。QIPはまだやっていない。関係者の意見を聞き,それを反映していくというプロセスだったが,説明が不十分だった。今後気をつけたい。(NGO側から「レポート2に,パイロットプロジェクト(PDIF)に関しては『既に始まっている』とはっきり記載」との指摘については,)どのように反映させるかは検討中。
(3)外務省(貴島善子 課長):
- 自分としては,QIPはまだ進んでいない,具体化していない,案を提示しただけという理解。何が書かれているかは分からないので次回示したい。
- 今回の意見は大変参考になった。途上国における農業支援の意義,どこからレベルアップしていくか,というのは難しいので,農業専門家の先生二人に指摘されたことは納得した。
- 脆弱な農民を強くしていくために,やることは色々ある。プロサバンナに関しても,JICAはこれまでの途上国支援の経験を生かしてやっていると思っていた。しかし事実,現地で誤解を生むような形で説明がなされ,更に誤解に誤解を生むような形になってしまった。ねじれた問題をどうするかという問題もあるが,そもそも,今どこまで進んでいるのか不安。
- 外務省内部でも激しいやり取りをしている。在日モザンビーク大使は声明が出た時から非常に懸念しており,外務省もこの問題の政治的扱いについて考えている。ただ,判断のためには,情勢と現実を知る必要がある。外務省内部では,軌道修正だけでなく,プラン自体の見直しについても,事実確認し,三カ国でやっているものをどの方向にもっていくべきか,考えなくてはならない。これは外務省内部でシェアされた,ハイレベルな問題。
- みなさんのフラストレーションは分かる。自分自身もそうだが,今後の方針,時期,そもそもプロジェクトを止めるか,など結論はまだ出ていない。今日はすみませんとしか言えないが,次回TICAD後に報告したい。
- 自分が課題と思っているのは二点。プランの中身に軌道修正が必要か確認しなくてはならないということ。また,エスカレートする誤解,猜疑心に対し,対話のプロセスに戻すためにいかに信頼回復していくかということ。ここまでしか言えない。
8. 今後に向けて(NGO・外務省)
今後について,以下がNGO・外務省・司会によって提案された。
- NGO 斉藤龍一郎: JICAが,小規模農民を支援し,現地の食料安全保障に寄与しようと積み重ねてきたことの原点に返る姿勢を示すことが大事。今,そこから外れようとしている。日本政府の基本姿勢を示し,外れそうなことに関しては止めなくてはならない。コンサルとの問題であれば契約を見直し,三国間の問題であれば対応について相談すべき。
- 司会進行 高橋清貴: 生じた誤解とプラン自体の修正をどうしていくかという話があったが,これは早いうちに結論を出さないと問題が出てくる。一番良いのは中断するという方法ではないか。その上なら,建設的な話し合いを一緒に進めることができる。
- 外務省 貴島善子課長: 事業には色々な人が絡んでいる。これを止めるとモザンビークや世界中の期待を裏切ることになり,一切お金が入らなくなって一番困るのも彼ら。だからこそ難しい。次回答えを持ってこいと言われても困るが,どこまで検討したか等を伝えるため,TICAD後のなるべく早い時期に会合の調整をしたい。
- NGO 津山直子: プロサバンナ事業は,三角協力であるが日本ODA事業との国際的な見方が強い。これまでやってきたことが逆効果にならぬよう,国際社会の中で理解を得ていくことが重要。
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