(注)NGO:非政府組織(Non-Governmental Organization)
【日時】2013年4月19日(金曜日)17時00分~18時15分
【場所】外務省 7階講堂
【参加者】外務省3名,JICA5名,NGO18名 (出席者リストは別添の通り)
【議事次第】
1. 冒頭報告(外務省)5分 パシェコ農業大臣の訪日の結果
2. 現地ステークホルダーミーティングでの発表内容(JICA)15分
3. 質疑応答(NGO・外務省・JICA)55分
【配布資料】
外務省・JICA配布資料:
(1)議事次第(PDF) (97.3KB)
(2)参加者一覧(PDF) (48.8KB)
(3)事前質問への回答(PDF) (371KB)
(4)ステークホルダー会議でのパワーポイント配布資料(英語)(PDF) (2.4MB)
(5)パシェコ・モザンビーク農業大臣の訪日について(PDF) (131KB)
NGO配布資料:
今日の議論は,農民主権と参加について。冒頭報告としてパシェコ農業大臣の訪問に関して外務省から報告。次に,現地で3月に開催されたステークホルダー会議で行われた報告を,JICAから説明。その上で,NGOと共に「農民主権と参加」について話しあう。
パシェコ農業大臣は,3月30日~4月4日までJICA主催プロサバンナ・ハイレベル会合(4月2日)のため訪日。外務大臣(日本)から,同事業はモザンビーク国民の食料不足解消と,農民の所得向上を通じた貧困削減を目的としたもので,農業支援の潜在性に着目した息の長い事業と説明。事業を円滑に推進する上で,モザンビーク農業省が大臣の指導の下,小農との対話をきちんと行うことが極めて重要と強調。パシェコ大臣は,(1)日本の支援に大変感謝しており同事業に強い期待,(2)趣旨について全面的に賛成,(3)農業開発に対し多くの農民が期待,(4)特に北部は農業しかなく貧しいため農業開発加速を希望,(5)資金不足のため投資呼び込みを希望,(6)ルールに乗っ取った投資を歓迎,(7)小農を巻き込んだインクルーシブな開発が重要,と強調。
(1)倉科芳朗(JICAアフリカ部アフリカ3課課長): 本会議は,マスタープラン調査の中で開催。2012年4月から何度か開催。
((注)司会 高橋: 過去何回,誰に対して実施したかのリストを要望,合意)
(2)天目石慎二郎(JICA農村開発部乾燥畑作地帯第一課課長): ステークホルダー会議での配布パワーポイント資料【配布資料(4)】で説明。同資料は途中経過であり,今後変わりえると補足。
((注)司会 高橋: 資料の文字が小さいため電子ファイルで送付を要請,合意。)
(注)パワーポイント配布資料参照。
(1)NGOより市民社会との情報共有/UNACの代表性に関し問題提起,外務省よる応答が,以下の通りなされた。
NGO(吉田昌夫 AJF): 冒頭「ミッション」はこちらが情報を探してわかった。事前に外務省・JICA側から全く情報をもらえず残念。今後の事前情報共有を要望。同ミッションに,UPCNが「農民組織代表」として加わっていたが,これはUNAC(モザンビーク全国農民連盟)下部組織(ニアッサ州農民連盟)。UNACの組織図参照【配布資料(6)】。UNAC下部組織が「農民代表団体」として政府ミッションの一員として来日。UNACは農民を代表する組織ということ。UNACが正当性を持ち,対話の相手であることの十分な認識を要望。
外務省の応答(貴島): 今回情報共有できなかったことをお詫び。次からは事前共有する。UNACの正当性については,モザンビーク国政府に確認しない限りできかねる。モザンビーク国農業大臣による農民団体認識については非公式だが意見交換済み。同大臣はできる限り多くの団体が漏れないよう,説明会やホームページで便宜を図ると述べた。
(2)NGOよる「農民組織代表」選定,UNACとの関係の認識,ステークホルダー会議における「参加」に関する問題提起に対し,JICAの応答が,以下の通りなされた。
JICA 倉科: JICAからモザンビーク国政府に要請し,政府が農民団体を選定。最終的に決まったのが「ニアッサ州の農民ユニオン」だとモザンビーク国農業省から連絡。
NGO(舩田クラーセンさやか AJF): (1)つまり,唯一選ばれた団体がニアッサ州のUNAC下部組織。モザンビーク国政府と農業省が積極的に選んだ結果。この組織代表が大臣らと訪日したとの理解で良いか。(2)ステークホルダー会議参加の市民・農民組織が相当抗議したこと,多くの質問が「時間不足」でカットされたことは承知か。(3)UPCN代表より上の立場のUNAC代表来日時,貴島課長は会わず。UPCNがUNACである事実は共有されず,セミナー後の個別会議の場で「UNACではない」とJICAモザンビーク国事務所の女性が通訳したことに抗議。(4)正当性を認めるのは困難でも,彼らの経験や実績に対し,ある程度代表性を認め,対等に対話する相手として受け入れてほしい。
(3)NGO(津山直子 AJF)より「農民の参加と関与」の問題提起が,以下の通りなされた。
NGO 津山: 4月17日は「小農闘争の国際デー」。世界各地で農民集会開催。事業対象地で「ニアッサ農民からのメッセージ(UCASN南部ニアッサ農民連盟)」【配布資料(7)】。「我々の畑を奪い,我々を肥沃な土地から排除する計画がある」と述べ,「プロサバンナ」について触れられている。「『参加』に関するモザンビーク市民社会の苦言」【配布資料(8)】では,(1)当事者が最初から関与すべきであった,(2)これらの主体が明確に意思決定に関わることを制度として保障していくべきと指摘。対話すべき内容は相当あるが,ステークホルダー会議は,何時間,何日間かけてやったのか。
((注)JICA 天目石: 正確には聞いてないが2~3時間。)
NGO 津山: これだけの分量の話を具体的にじっくり話すのには足りない。意見を聞くことが対話。今後の当事者の参加方法も触れられず。具体的に提示すべき。その上で十分な対話の時間の確保が不可欠。マスタープラン共有は「最終ドラフトのみ」というが,到底受け入れられない。途中経過のものでも,それを元に話し合い意見を聞いていく必要がある。
(4)NGOよりマスタープランのドラフトに関する問題提起,それに対するJICA/外務省の応答,そしてNGOとの議論が,以下の通りなされた。
NGO 津山: マスタープランのドラフトが,国際NGOの間に出回っており抗議文が策定中。
JICA 天目石/坂口幸太(アフリカ部調査役): 国際NGOが入手しているというものが正確に何か承知していない。マスタープランのドラフトではなく,暫定的なものではないか。
NGO 舩田: ”Support Agriculture Development Master Plan in the Nacala Corridor in Mozambique (PROSAVANA-PD) Report No.2 Quick Impact Project (March 2013)”。
司会 高橋: 既にかなりの分量のまとまった文書が作成済み。ドラフトと呼ぶかは別としても,これらの文書は存在し多くの人が目にしている。ステークホルダー会議では,協議時間が短く話し合いが出来たのか,農民を主体として本当に考えているのか懸念。JICAもこの文書を共有・理解しているのなら,そこから生じる懸念についても議論できるはず。
JICA 天目石: それ(以上レポートの中身)に関しては把握。これは今後変わりえる。マスタープラン作成にあたり,市民社会やステークホルダーから意見をもらうため,エッセンスを凝縮しパワーポイント資料に落として,ステークホルダー会議を繰り返し実施。
NGO 近藤康夫(No! to Land Grab, Japan): 同会議の位置付け,反映手法は。
JICA 天目石: その場で意見をもらい,これらの具体的な意見に関しては十分意識してレポートの取り纏めを行う。
外務省 貴島: 非常に深刻に受け止めた。ステークホルダー会議の時間不足はもっとも。もう少し対話,回数,資料を配り消化するプロセスがあるべき。農民にきちんと理解し,フィードバックをもらうまでマスタープランは完成しない。JICAから現地とコンサルタントにプロセスを確認する。JICA本部にステークホルダー会議の回数や時間を確認し,足りないならもっと開催するようコンサルタントとモザンビーク国政府にも伝える。ご指摘の文書については,外務省は中身を見ていない。本来的には途中ドラフトを外に出してはいけないが,中身については必ず農民と対話しなくてはならない。従ってマスタープランではないはず。
JICA 天目石: これはマスタープランのドラフトではなく,途中過程のもの。特にクイックインパクトプロジェクトについてのたたき台。
NGO 舩田/近藤: 今日配布,説明したパワーポイント資料【配布資料(4)】は,この中間報告書がベース。先にパワーポイント資料を見たが,それだけでは中身は全く不明。中間報告書を読んだ上でパワーポイント資料を見て,初めて理解やインプットが可能。現地も同様。農民主権・対話であれば,これまでのやり方は順序が違う。中間報告が出回ったのは,大切な情報が当事者・農民の手に届いていないことを危惧し,良心の呵責を感じた関係者がいたことを念頭に置くべき。
司会 高橋: ドラフトが出来上がってからやり直すのは大変。事前に共有をした方が外務省・JICAにとっても良い。意見交換する意味がでる。コンサルタントやモザンビーク国政府にそう伝えるべき。
(5)NGO(米川正子 ヒューマンライツウォッチ)より「JICA環境社会配慮ガイドライン」に関し,五点の問題提起が行われ,JICA/外務省と議論がなされた。
NGO 米川: 「JICA環境社会配慮ガイドライン」に,民主的な意思決定やステークホルダーの参加等が明記。(1)新旧ガイドラインがあるが,この案件の監視は「新」を適応か。((注)同意)(2)カテゴリーがAでなくBと分類。その理由は,住民移転があっても,事業による重大影響は「ない」――なぜならモザンビーク国政府の「住民移転に関するガイドライン」で,条件の良い所や同等の所に移転されるから――とあるからという。しかし政治分析が全くない。同国では,2004年から民主化が停滞しており,2009年から土地を巡る農民との衝突が起こっているが言及なし。同国憲法二章三条で土地は国有で,売却されないとある。これらの分析なしに,Bカテゴリーなのは何故か。(3)理念には,意思決定,ステークホルダーの参加,情報の透明性,説明責任等が書かれているが,UNAC声明(2012年11月12日)に示されている通り,欠如しており努力が不可欠。(4)JICAガイドラインは現地住民に説明されているのか。誰がどこで誰に対し,どのような内容で,何語で説明しているのか。ポルトガル語がないが,農民に英語で説明してもわからない。懸念。(5)Environmental impact assessment(EIA)は実施されたか。この結果はどのように住民に発表されたのか。調査配慮すべき環境ガイドライン(非自発的住民移動や雇用などの地域経済や土地利用,開発取引による土地利用など,地域に置ける利害対立等)の調査は十分か。特に「非自発的住民移転」に関し,「苦情処理メカニズム」が整備され,「住民移転計画」が作成されなくてはいけないなど細かいが,これらを住民に告知しているか。
JICA 天目石: AかBかの判断に我々は介入してない。制度に則って審査部が判断。ガイドラインについて説明したかは,我々は承知していない。確認する。
NGO 舩田: JICA本部から農民に説明するよう現地事務所等に伝えていないということか。
JICA 天目石: こちらの方からそういうことは言っていない。この分野のことは重要だと認識しているから,「責任ある農業投資」にのっとったガイドラインをつくる。
JICA 大嶋: 実際,住民移転が必要になる事業を計画する場合,住民に対して説明をする必要がある。細かくどこで移転が必要になるかマスタープランでは不明のため,今はやりようがない。
NGO 近藤: プロジェクト全体としての可能性から,住民に説明をするのが責任ではないか。
外務省 貴島: マスタープランのドラフトが,国際NGOの間に出回っており抗議文が策定中。
司会 高橋: (環境社会配慮)ガイドライン上の懸念点は伝えた。これについて調査を要請。(1)スクリーニングプロセスの中で何故カテゴリーBとなったのか,(2)どのような過程でどの程度行われ,(3)結果としてどうなっているのか,を教示依頼。
NGO 舩田: 以上の報告書を要望。【配布資料(11)】テテ州で2009年から発生の土地をめぐる衝突の記事。ブラジル企業への農民抗議に警察が介入し負傷者が3名発生。これまで政治分析がないのはNGOの指摘通り問題。選挙が近くあり,野党が警察と衝突し10人負傷者が発生【配布資料(12)】。対象地は反政府勢力が強く元激戦地。配慮の下でやってほしい。
(6)NGOよりマスタープランに関する疑問と懸念について先述マスタープラン中間報告に基づいて問題提起がなされ,JICAと以下の通りの議論がなされた。
NGO 吉田: 既に土地の紛争がある。「責任ある国際農業投資RAI」をいうが,JICAはRAIもFAOボランタリーガイドラインも両方考えるとしてきたが,後者はほとんど言及されず【配布資料(9)】。農民の土地の保護に関してあまりに消極的。土地収容の場合の異議申し立てに関してもほとんど書かれず。犠牲を被った場合のことのみ。土地収用はある前提。異議申し立ての独立専門機関設立を検討とあるが,土地収用に対して罰することはできないとも記載。申立者は「政府に資料を請求できるだけ」に留まる。実効性に欠ける。土地収用こそ農民にとって大きな問題にもかかわらず規則があまりに弱い。小農を犠牲にする民間企業の進出を阻止する物になっておらず変更が不可欠。住民にどう説明しているのか。
JICA 天目石: 議論しながら作成を進めている。これから固まっていく話。
司会 高橋: 事実確認として,ステークホルダー会議で説明された際,農民のレスポンスはどのような様子だったのか。
((注)JICA 天目石: この場ではわからない。)
NGO 舩田: 【配布資料(4)】は事前に共有/当日印刷配布されたか。「配布なし」は事実か。パワポ・スライド7-1,-2,-3(RAI)に書かれていることは,中間報告を読まないと全くわからず。吉田先生の分析結果は全く見えず。(本事業で)今後農民の諸権利はどうなるのか,彼らが報告書を読み,自分の権利をどう守るのか考え,それを共にやるしかないと思うがどうか。
JICA 天目石: 「責任ある農業投資のガイドライン」の作成はこれからのため,農民にも投資者にも理解を深めてもらうよう説明を行っていく必要があると思っている。
NGO 舩田: しかし,2013年11月に「最終ドラフト」完成後にしか,市民社会・農民組織には情報開示しないとモザンビーク国農業省が言っている。パワーポイント資料の説明だけで11月になって,このようなプランが固まった状態で出てきたら,彼らは本当に困ったと思う。
JICA 天目石: 今日も含め,農民と丁寧に意見交換する必要性を確認できた。主体はモザンビーク側だと思うからその旨も伝えてアクションしていきたい。
NGO 舩田: 現在,同国で農民の土地を唯一守る根拠の1997年土地法は,農民と研究者と政府が一緒に策定。(現在の状況やプランは,)1997年の土地法の枠を超える。同じプロセス再現の必要があるが,それをJICAからモザンビーク国政府に伝えてもらえるか。
JICA 天目石: 話はわかった。現地とも共有し伝える。
NGO 森下麻衣子(オックスファム・ジャパン): 現在RAIとFAOのボランタリーガイドラインの二つがある。後者があまり言及されていないことを危惧。グローバル市民社会ではFAOのものの方が評価が高い。合意プロセスがインクルーシブなプラットフォームだった。
NGO 舩田: 中間報告書を全部読んだが,これまで外務省・JICAが答えてきたこととは全く違う内容。小農という言葉は僅かで,主語でも目的語でもなく「枝葉」として記載。中間報告の基層には,ブラジルのシンクタンクFGV(ジェトゥリオ・ヴァルガス財団)が形成したかなり強固なアグリビジネスの利益誘導スキームがあり,セネガルの先行事業の焼直し【配布資料(10)】。日本の援助でこれを支援した場合,モザンビーク国北部だけでなく,アフリカ中,世界中の農民を敵に回すことを自覚すべき。大変な国際問題に加担した。中間報告書の背後にいる人たち(ブラジル,モザンビーク)は利権で連結。本事業は日本の援助として世界に知られる。日本政府にはぜひ危機感を持ってもらいたい。(批判から)逃げるため,「資金メカニズムと民間投資はブラジルとモザンビーク政府だけで実施」し,「日本はマスタープランと小農支援とインフラ整備だけ」になってきているが,日本は責任から逃れられない。単にブラジルを黙らせるのではなく,モザンビークの人々と同じテーブルで97年の時のように一緒に考えてほしい。
NGO 津山: マスタープランのドラフトが,国際NGOの間に出回っており抗議文が策定中。
司会 高橋: 次回会合は,5月のゴールデンウィーク明けに,NGO側の懸念を共有する。
外務省 貴島: 深刻なことがよくわかった。次の会合は持つが,次回その場で答えを求めるのは待ってほしい。(資料は)入手し読む。NGOとして一番深刻だと思う点は,NGOの皆様から具体的に提起してほしい。
NGO 舩田/米川: マスタープランのドラフトが,国際NGOの間に出回っており抗議文が策定中。
NGO 津山: このやり取りは市民社会が中間報告書を入手したからできるが,これはオフィシャルではなかった。本来,市民社会も持つべき情報で,議論が空理空論にならないため事前開示が不可欠。ステークホルダー会議で配布資料がないのも問題。現地での対応をも含めて情報開示への態度を変えてほしい。((注)外務省 貴島より確認するとの返答。)次回日本でやるのと同様のことを現地でもやれれば良い。
JICA 倉科: ドラフトという表現をされているが,議論プロセスの途中段階のもので今後変えていける旨再度お伝えする。