※NGO:非政府組織(Non-Governmental Organizations)
1.日時 | : | 2004年(平成16年)2月20日(金曜日)14時00分~16時00分 |
2.会場 | : | 外務省中央庁舎 669号室 |
3.次第 | : |
1. 開会の挨拶 2. 五月女NGO担当大使の挨拶 3. 出席者自己紹介 4. 報告事項 (1) 無償資金協力案件審査ガイドライン作成の進捗状況(外務省 山田無償資金協力課長) 5.次回2004年(平成16年)度 第1回ODA政策協議会開催日程について (1) イラク復興支援策について(協議時間45分) (2) ODA政策策定見直しプロセスとODA総合戦略会議について(協議時間45分) 6. 次回2004年(平成16年)度第1回ODA政策協議会開催日程について 7. 閉会 |
4.配布資料 | : | 司会及び記録:NGO側担当
<NGO側> 1.第1議題論点 「イラク復興支援策について」 2.第2議題論点 「ODA政策策定見直しプロセスとODA総合戦略会議について」 <外務省側> 1.「最近のイラクの治安情勢に関する注意喚起」 2.「我が国のイラク支援」 3.「イラク復興支援のための無償資金協力」 |
5.出席者 | : |
<NGO側> 1.第1議題論点 「イラク復興支援策について」 2.第2議題論点 「ODA政策策定見直しプロセスとODA総合戦略会議について」 <外務省側> 1.「最近のイラクの治安情勢に関する注意喚起」 2.「我が国のイラク支援」 3.「イラク復興支援のための無償資金協力」 出席者: <外務省側出席者> 五月女NGO担当大使 渡辺課長 政策課 和田課長 調査計画課 河野課長 国別開発協力課 山田課長 無償資金協力課 城所室長 民間援助支援室 高橋首席 国内広報課 阿藤課長補佐 国内広報課 中野事務官 人道支援室 安田事務官 民間援助支援室 藤井事務官 同上 <オブザーバー出席者> 佐藤副主任 JBIC 開発事業部企画課 竹内課長代理 JICA 国内事業部国内連携促進課 <NGO側出席者> 1.石田恭子 「環境・持続社会」研究センター 2.小野了代 京都NGO協議会 3.神田浩史 (特定非営利活動法人) 関西NGO協議会 4..伊藤道雄 (特定非営利活動法人)国際協力NGOセンター(熊岡路矢代理) 5.西井和裕 (特定非営利活動法人)名古屋NGOセンター 6.山中悦子 ODA改革ネット東京事務局(福田健治代理) 7.釜野徳明 (特定非営利活動法人)日本ケナフ開発機構(森祐次代理) 8.高橋清貴 (特定非営利活動法人)日本国際ボランティアセンター 9.田辺有輝 「環境・持続社会」研究センター 10.瀧本昌平 Network NODE 11.原 征治 福岡NGOネットワーク 12.河内伸介 アフリカ日本協議会 13.清水俊弘 (特定非営利活動法人)日本国際ボランティアセンター 14.大河内秀人 (特定非営利活動法人)パレスチナ子どものキャンペーン 15.黒河内康 (社団法人)アフリカ協会 16.福田忠弘 新潟国際ボランティアセンター 17.鈴木瑛子 市民平和基金 18.高橋良輔 (特定非営利活動法人)国際協力NGOセンター 19.小林哲也 連携推進委員会NGO側事務局 20.榛木恵子 ODA政策協議会NGO側事務局 21.宮下和佳 ODA政策協議会NGO側事務局 |
<議事録>
(神田)
どうもお待たせいたしましてすみません。
これから今年度第3回NGO外務省定期協議会、ODA政策協議会を開催いたしたいと思います。
今回はNGO側が司会というふうなことで承りまして、私は、関西NGO協議会、提言専門委員の神田が司会進行を勤めさせて頂きます。よろしくお願いします。
それでは最初に自己紹介ということで、一言ずつマイクを回して行きますので、ご所属とお名前だけお願いします。
(自己紹介:省略)
(神田)
それでしたら、協議事項、報告事項が盛りだくさんですけれど、協議、報告に先立ちまして、4ヶ月に1回のこの会合ですので開会に当たりまして、五月女NGO大使の方から、冒頭ご挨拶をということでお願いします。
(五月女大使)
皆さんこんにちは。遠路はるばるお越し頂きましてありがとうございます。私も東京以外、あちこち各地お邪魔いたしまして、皆様方とは京都、大阪あるいは福岡、名古屋、今日はまた新潟からもお越し頂きました。各地で皆さんに、色々と意見の交換の場を持って頂きましてありがとうございます。今日はまた、こういった会合で皆様にお目にかかるのを大変うれしく存じておりますが、ご承知のように今回のテーマと申しますのは、ODA政策作成問題の協議の他に、今のホットなイッシューでございますイラク支援の問題を抱えておりますので、こういった総論的なものと各論的なものと、両方、色々取り混ぜて、皆さんと活発な意見交換ができればよろしいかと思っています。
ニュースではずっと言っているわけですけれど、イラク支援というものは非常に大きなニュースになっています。ご承知のように世界の色々な国の支援の中で、アメリカが第一位の200億ドル以上の支援ということですが、日本が二番目に多くて50億ドルの拠出を誓約しているということでございまして、他に世界銀行、IMFという、この2国と2機関のみで80%以上の支援になっているという面では、日本の支援というのはヨーロッパ諸国に比べて遙かに大きな比重を占めているわけでございますので、せっかくこのようなODAの予算を使っての支援ですので、これが有意義かつ透明性をもって施行されることを我々は望んでいるのですけれども、ご承知のようにこの支援というものは、もっかの所緊急援助ということを中心にして行われている訳でございますけれども、その後の安定した暁には、やはり復興開発援助ということで、他の緊急援助以外の活動をされているNGOの方々にも、またそれに参加して頂くということになって参るかと思います。
今日はまたそういった提言をして頂くという会合でございますので、これからの流れ、色々な復興開発、緊急援助も含めまして、政府のODA政策に対する色々な提言、注文を含めまして、皆様から活発なご意見を頂ければと思っています。
そんなこともございまして、2時間弱、有意義な議論が行われることを望んでおります。
今日は本当に皆様お越し頂きましてありがとうございました。
(神田)
それでしたら今五月女大使からもありましたように、限られた時間内ですので、さっそく報告の方から入っていきたいと思います。当初、この協議会に望むに当たりまして、NGO側で議題をいくつも出し合いました。それで調整していった結果、いくつかの議題にまとめあげていったということがありますけれど、この報告事項ということで今回出させて頂いておりますけど、これも時間があれば協議事項にしたかった、というくらいのものでもあります。
前回10月の第2回ODA政策協議会におきまして、このことに関しまして今年度中に外務省の方で何らかのアクションを起こされるというふうなお話がございました。それで今年度は後1ヶ月あまりしか残しておりませんので、現時点でどのような進捗状況になっているのかというふうなことを簡単にご報告頂きたいということで、山田無償資金協力課長の方からお願いいたします。
(山田課長)
無償資金協力審査ガイドラインという名前におそらくなると思いますが、これについてはJICAの環境社会配慮ガイドラインの改訂委員会の席でも議題に上りまして、私共の方から、こういうものを作成すると、準備していくと申し上げました。
現在までの作業状況ですが、おおむね省内、JICAとの議論が終わりつつあるところでございまして、来週末ないし来月の始めにはパブリックコメントをすべく、ホームページ上に出すということを今計画しています。その結果、今の所の予定は4月から施行ということですが、パブリックコメントを付してご意見が来て、それにどういうふうに答えていくか。その結果4月から暫定施行ということで、意見を踏まえて更に、ガイドライン自体に外部からの意見を踏まえて随時見直しをしていくというようなことも入っております。そこがどういう形になるかというのはパブリックコメントの状況次第であると思います。
現在の作業は案件審査ガイドライン、概ね省内は終わっていまして、関係省庁、財務省との協議もあると思いますけれど、来週か3月の始めくらいにはパブリックコメントに付しますので、そこでご意見があれば承るようにしたいというのが、現在の進捗状況でございます。
(神田)
はい。ありがとうございます。いくつかNGO側から質問があると思いますので、質疑応答だけ幾つかして頂いて次の議題に入りたいと思うのですが。
(石田)
「環境・持続社会」研究センターの石田です。パブリックコメントをして頂くということですが、この期間はどの程度考えていらっしゃいますか。4月から施行ということは、もしかしてすごく短いのではと思うのですが、期間をある程度取って頂きたいと思います。
(山田課長)
正直なところ、イラク支援で無償資金協力課は大変な作業を、若干作業が遅れているのは事実です。1つはパブリックコメントの期間はある程度とると考えているんですけれど、パブリックコメントの期間が終わって、後一切受けつけないかというと、そうではないということを1つ申し上げたいと思います。
先ほど4月から施行がどういう形になるか分からないと申し上げたのは、本当であればパブリックコメントを受けて、更にやり取りがあって、それを踏まえて4月から施行ですとなるのが一番美しい形だったんですけれど、若干時間的に間に合わない。ただ4月からはパブリックコメントを踏まえて、こういう形で施行していく。ただ更にパブリックコメントの意見を聞いて、それを踏まえて修正するというのは、来年度も引き続きに行っていくという形にすれば、意見を聞くと時間が短かったということにはならないだろうと思います。施行を4月1日から施行とするのか暫定施行とするのか、公表しておきますけれど、現実にはガイドラインに沿って運営していきますけれども、その施行は後にするのか、というのは現時点では見ています。
(石田)
ありがとうございます。一回パブリックコメントが終わった後も、それで終わりではなく受け付け、順次考えて頂くというのはキャッチボールとしていいと思います。一方で、ある程度まとまったパブリックコメントをきちんと出して、きちんと対応していただきたいとも思っています。それにタイミングを逃したくないというのもあります。ですので、もし可能でしたら最低1ヶ月間位はパブリックコメントの期間を設けて頂ければと思います。
(山田課長)
期間については検討いたします。本当は1ヶ月位取るべきだと思っているのですけれど、1ヶ月だと、それは暫定施行にならざるを得ないのかなという感じがあります。
タイミングの問題については、今、伺った御意見も参考にしたいと思います。将来では、こういうものをこういう形で出して、書いてある事自体は別に特別なことが書いてあるわけじゃないんですが、色々な質問がきて大変なんじゃないか。おそらく、質問に答えることはやらなければならないけれど、作業が相当大変になるのではないか。昨年調査計画課がODA大綱で、まだまだ不十分だという意見もありましたけれど、隣の課で見ていてとても可哀想だと思うくらい色々な作業があって、そういう継続的なプロセスということが相当あるんで、大丈夫かというのを周りの課から言われているんですが、そういう意味で、暫定的なものが公表されつつも意見を入れてどういうふうに修正していくかというプロセスが4月を越えて若干続くんであろうなというふうに、考えております。
(神田)
私が関連して一言だけですけれど、公聴会を開催することを考えておられないのかということと、関係各省を回しながら作成されているという話が冒頭にありましたけれど、改訂していく時に、そういうことが障害にならないのかという懸念があるんです。
無償資金協力課の一存で色々変えていけるということでしたら、どんどんキャッチボールしていったら変わりうると思うのですが、それがすごく面倒な作業ですごく時間がかかるというふうになっていくと、できたものが変わらないという恐れを抱くんですけれど。
(山田課長)
関係省庁というのは、ここでは財務省を想定しております。その改訂が、コメントを受けて大変にならないかというのは、大変だと思います。ですから意見を受けて勿論良いものは取り入れますけれども、我々も色々な形で縛られているわけで、無償資金課独自にやっているわけではないので、色々な所の制約の中で、いかに良いものにするかということなんで、作るのも大変ですし改訂も大変だと思います。それは正直に申し上げたいと思います。
公聴会は率直なところ、それだけの能力がないんで、公聴会の意義を否定しているわけではないんです。無償資金協力課の能力がないという感じがあります。色々なNGOとの協議会みたいなものは、こういう場もございますので、そういう時に意見を出して頂くということであれば、別にパブリックコメントに限らず意見の伺い方に制約を付しているという訳ではございません。
(神田)
ありがとうございます。この件に関しましては、事前のやりとりの中で、次回送りでどうかというふうな話があったのが、年度内にということならば今日報告をして頂きたいということで、ご報告頂きました。この事は、今日の協議事項の2番の政策策定の話とも絡んできますし、政策レベルの問題というのもあると思いますけれども、そこでまた関連する事項を協議していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
協議事項の入っていきたいと思います。大きな議題が2つございます。1つ目の議題がイラク復興支援策について。これにつきましてNGO側から名古屋NGOセンターの西井さん並びに日本国際ボランティアセンターの高橋さんの方から質問に関しまして説明並びに主旨お話頂きます。
(西井)
名古屋NGOセンターの西井です。よろしくお願いします。
皆さんご存知のようにイラク復興支援策ということで、日本政府は15億ドルの無償資金協力を表明されたということです。その中味については、これはウェブページで確認したことなんですけれど、1月16日に閣議決定ということで、緊急無償資金協力を2つ出しています。1つは国連人間居住計画を通してイラク学校再建事業、同じく国連人間居住計画を通してコミュニティ再建事業。それから警察車両の供与計画ということで、この2つが緊急無償ということで提案されています。閣議決定されています。
勿論これだけではございませんで、15億ドルという巨額な金額ですので、その後の発表によりますと、イラク国内の援助案件の調査のために、イラクの復興支援案件形成調査団というのをヨルダンの方に派遣した。現在3月中ということで、調査活動を行っていると聞いています。
私共のキャッチした情報ですと、そういう情報なんですけれど、そういう情報に接して、いくつかのNGOなりの、現場に関わっているNGOの立場からいくつかの疑問点がございますのでそれを質問(1)質問(2)という形で進めさせて頂きます。
先ず質問(1)の方なんですれど、これも細かくいきますと、(ア)(イ)(ウ)(エ)と4項目に別れています。
質問(1)なんですけれど、イラクは既に、今現在の主権といいますか、国内を統治する主権がないという状況で、米英軍の同盟軍による占領下にあるという状況です。
そのためにまだ治安の方が充分回復していないという状況で、その中で人道復興支援ということで、自衛隊を派遣されているという状況です。その中で、従来のODA案件を実施する環境としては非常に厳しい状況にあると思います。特にイラク国内は、待避勧告が出されている状況ですので、日本人がその中に入って援助案件の発掘、進行管理といったことができるのかどうか、非常に不安な面がございます。
そういった観点から質問させて頂くのですが、まず(ア)ですけれど、無償資金協力供与の対象となる事業の実施主体は一体どこになるのか。(イ)ですけれど、案件発掘、予備の調査、基本的な調査といったようなことが、従来のODA案件ではそれの流れで運ばれて行きますけれども、その流れは従来通り行われるのかどうか、ということです。治安状況が悪い中で充分可能なのかどうかということです。(ウ)そういう援助案件を実施するに際して、当然住民のニーズの汲み上げですとか、住民への情報公開とか、住民参加が必要になってくるでしょうし、それは充分確保できるのかということです。(エ)は、紛争地という特殊な事情もございますので、安全確保、援助案件の実施に関わる人員の安全確保、あるいは効果を上げるために何らかの形で自衛隊と連携することはあるのかということ。以上4項目を質問(1)に関して上げさせて頂きました。
質問(2)に関しては、高橋さんの方からお願いします。
(高橋)
日本国際ボランティアセンターの高橋です。今の西井さんの質問とほとんど同じなので、特に追加的に言うことだけに限定して話をします。
1つは日本人の待避勧告がある中でイラクで行われる事業の管理をどういうふうに確保していくつもりかということを教えてください。
2点目は、イラクでの事業の価格の適正化をどういうふうに図るかということです。特に、イラクの場合、リスクが高く、緊急性も高いということで、十分に三者見積もりを取る時間はおそらく無いだろうと思います。そういう中で、価格の適正化は図れるのか。特に、イラクには、補正予算はあっても、他国への無償資金事業への配分を削ってまで多額の金額を振り向けているので、費用対効果をしっかりと見て、他国での無償資金協力事業に対する要望・ニーズを差し置いてまで実施した明確な説明をする必要があると思います。
3点目ですが、ガイドラインの話ともつながるのですが、平和構築とか紛争地での支援の場合、援助が紛争を助長しないように配慮するという、いわゆる環境影響評価の紛争版のようなもの、英語で言うとPCIA(Peace and Conflict Impact Assessment)が必要という考え方が最近ドナーでは主流になってきていると思います。今回、特に日本人が入れない。ましてや価格もどういうふうにモニターしていくのも分からないという中で、ちょっと透明性が欠けるような中で、特にそれを投入するような、資源や機材や物が紛争を助長しないようにするための配慮をどういうふうにされるか、ということです。もし可能であれば紛争影響評価みたいなものを今後どういうふうに活用していきたいか、という方向性についてもお話頂ければと思います。
最後に、前回もイラク債務の救済について質問をしましたが、今回も有償資金協力課の担当課長がいらっしゃらないので分かる範囲でとお答え頂ければということで質問します。債務救済というのは、透明性の問題なのです。いわゆる、今のイラクで復興資金のための財布は大きく分けて4つあると思うんです。国際機関に直接出すもの、CPAがやっている開発基金、そして世銀やUNがやっている復興基金-これは2つに分けることもできますが-、そしてNGOなどを含む日本がバイで行うものです。日本は、CPAが持っている開発基金に、無償資金を出さないと私は思っていますけれども、イラク復興全体のあり方に開発基金の果たす役割は大きいと思っています。
イラク債務の帳消しを日本は一応約束しました。イラクでは石油収入が、債務返済に当てられていますが、救済をすれば、返済に回る予定の石油収入が見かけ上の追加資金としてCPA管轄の開発基金に入れられることになります。つまり、日本が債務救済を行った場合には、当然開発基金の会計をモニターする権利が生まれます。そのことを踏まえれば、開発基金の透明性確保に日本政府がどのような働きかけをする大事になると思うのです。国連では、開発・復興基金のモニタリング機関としてインターナショナル・モニタリング・アンド・アドバイザリー・ボードの設置を約束しましたが、そのような開発資金管理の仕組みを、債務救済を約束した日本はどのように進めようかと考えているかを教えて下さい。また、日本は50億ドルの残り、35億ドルを円借款で行うことを考えていると思いますが、その点からも開発基金を含む、復興全体の透明性を確実にすることは大事ではないでしょうか。日本政府の透明性確保に向けた外交努力の内容を教えて下さい。
(神田)
政策あるいは無償資金に関することで、お答えをお願いします。
(山田課長)
私の方から無償資金協力についてご説明させて頂きます。前回の会合の時も週末からイラクに行きますというふうに言ったのですが、明後日からヨルダンとクウェートに出張する予定でございます。
イラクについての支援、総論的な事を申し上げますと、イラクに対する復興支援というのは非常に困難なことが多いですし、日本が今まで経験したことの無かったような事態の中で、復興支援を進めていくという状況にあります。キーワードを4つ言えば、柔軟性とスピード、公正さと透明性ということを考えております。
スピードというのはイラクの人たちにいち早く支援の手を届ける事。これが困っている人たちを早く助けるという点。それからイラクの人たちは、戦争が終わった後、自分たちの生活は良くなるんだろうという期待があったのにも関わらずなかなか良くならないということで、率直に言うと若干フラストレーションが段々貯まっているという状況にある。こうした状況が不安定な状況に繋がらないように、復興支援の手を早く差し伸べるということが、イラクの平和と安定、イラクの国民の幸福に繋がってくるのではないかと考えています。同時に苦しい時期に、日本がいち早く助けに来てくれたんだということが分かることが、将来のイラクと日本の関係においても非常に重要ではないかと思います。
次に柔軟性ということですけれど、ご承知の通り、現在のようなイラクの治安状況で日本人には待避勧告が出ている。現在イラクに入っている人は、自衛隊とバクダッド及びサマーワの少数の外務省の職員。プレスの方は一杯おられます。NGOの方はごく一部、いたりいなかったりするようですけれど。非常に厳しい治安状況。それともう1つ。通信状況が非常に厳しい。電話がなかなか通じないし、ファックスもなかなか通じないし、メールなんか通じる人もいれば通じない人もいるし、なかなか難しい。そういう状況で、なおかつ現在ここでご指摘ある通りイラクにおいてはまだ政府というものが、暫定政府も出来上がっておりませんので、6月末に主権の委譲があって、おそらく暫定政権というものが出来ると思われますけれども、どういう形になるのかまだ分かりません。そういう中でいかに早く、効果的に援助を行っていくかということで、今までの前例であるとか仕組みであるとかに捕らわれずに、新しい仕組みを作って、そのルールを公にしながら進めていくということが必要であろうと思います。それが柔軟性であると思っています。
それから公正さと透明性というのは、これは皆様に説明するまでもないことですけれど、イラク支援で通常の無償予算の半分以上の補正予算が、先ほど国会で通りました。ある意味でそれは非常に注目されました。いかに活用されるか。それはイラク国民はもとより、日本国民の高い関心事でありましょうし、ビジネスの面から見れば、ビジネスチャンスだと思っておられる日本人の方もたくさんおられます。その中で無償資金を使っていくわけですから、誰からにも後ろ指を指されないような公正さと透明性を持って行われなければならないというふうに考えております。
そう言う意味では、率直に、責任が重くて潰れそうな感じなんですけれど、にも関わらず先ほど申し上げた支援を進めて行かなければならないというふうに感じております。チャンネルについてはお手元に説明会の議事録、これは主として、この時の説明会は事前にホームページでも紹介しておったのですけれど、関心を持つ企業の方が対象、念頭にありましたので、若干そういう聴衆を念頭に置いた発言もございますけれども、そこにどういう方向でやるか、あるいは方式はどういうふうにやるかということが書いてあります。15億ドルは主として4つのチャンネルと書いてありますけれど、信託基金、UNDP、正確に言えばUNDG、UNDPを筆頭とする国連の開発機関のグループらしいですけれど、そこが管理する信託基金。それから世界銀行が管理する信託基金。それからイラクの各省庁、地方自治体、行政機関などに直接供与することによって実施される無償資金協力。これはNGOについて言及がございませんけれども、NGOもここに入ると考えております。それから国際機関に対して直接拠出する緊急無償資金協力。大きく分けてこの4つのチャンネルがある。
信託基金、UNDPと世界銀行の管理については、補正予算の中に組み込まれておりましたので、まもなく発表されることになるんじゃないかと思いますけれども、補正予算の中から、こちらに拠出が行われるとうふうに考えております。それから、国際機関に対する緊急無償資金協力というのは、これまで既に実施してきたウンムカッスル港緊急浚渫とかユニセフのバックツーザスクール、それから1月16日に発表したUNDPに対するコミュニティ再建、学校再建事業、そういうものが含まれています。
従って事業の実施主体というのは、それぞれ異なるんですが、おそらくここでご質問があるのは、バイの直接支援の実施主体はどこか、ということだろうと思います。現在想定しておりますのはイラクの各省庁、あるいは場合によっては一部地方自治体、勿論NGOということもございます。草の根無償資金協力についてはNGO及び地方の自治体ということが想定されております。
イラクにおいてバグダッド市というのは、他の地方自治体と違って、特別の地位を与えられているようで、これはむしろ中央の省庁並みの地位らしいんですけれど、そこも自治体になりえると考えています。何故そういうことをやるかというと、先ほど通常であれば、相手国政府が実施主体になるんですけれども、政府というものは今の時点ではない。他方イラクの状況を見ますと、それぞれの各省庁、内務省、保健省、電力省、地方公共事業省そういうものがかつて存在し、現在も存在し、それから主権移行後も存在すると想定されています。主権移行後の政体というのは非常に不透明で、おそらく誰に聞いても分からないだろうとも思いますけれども、それぞれの省庁が存在するということは、誰に聞いても逆にそういうものだと。現にそれぞれの省庁は国民に対し、お金が無い中で最低限の行政サービスを提供し、提供しようとしている。そこを実施主体とすることが、今後の案件の維持管理であるとかについても責任を持てる主体であろうということで、関係の省庁、あるいは地方自治体、地方自治体も色々ありまして、例えば国会で話題になりましたムサンナー県ですと、県ですと県知事さんがいて、県の下に中央省庁の出先である○○局××局がある。そこが県におけるいわば公共サービスを提供している。市の方は、これは場所によってかなり違うようで、サマーワ市評議会の話で国会はかなり議論になったわけですけれど、実質的に援助の実施能力のあるところを選んで場合によっては草の根無償の対象になるということがありえるかと思います。
でただ大きな案件というのは、基本的には現在のところ省庁を対象にすると考えています。バグダッド市も先ほど申し上げたように対象と言えるかと思います。6月以降はどういう形になるかというのは、まだ統治体制自体がどうなるかわからないところがあるのですが、基本的な構造は実は現在とあまり変わらないのではないか。政府ができて、場合によっては暫定首相みたいなものができるのかも知れません。その現在の状況では、みんな直接選挙がいいと思っているけれども、6月7月に選挙は直ぐにはできないということはみんなはっきりしているらしいんで、本格的な政権というのは、あるいは先かも知れませんけれども、現在の省庁は続くであろうということであります。
それで通常の無償資金協力の流れで実施されるのか。それは可能かということについては、基本的には通常の無償資金協力の流れをかなり参考にしてと申しますか、そういう形で実施していきたい。その中味が実施要領であるとか、私の説明の中に入っております。問題は充分な調査が出来るか、ということです。現在色々な形での情報収集を行っております。無償資金協力課は直接イラクの省庁であるとか、CPAであるとか、関係者に直接電話やメールで連絡しております。通常の国ではこういうことはやりません。それは普通は大使館であるとか、JICA事務所の仕事であろうかと思います。
それから私明日からクウェート、ヨルダン行きますけれど、ヨルダンにはJICAの予備調査団、案件形成調査団というのがずっとおりまして、ここがイラクから出てくる関係省庁の人々、あるいはCPAの人々、そういう人たちと意見交換をし情報収集をしております。例えば電力省は、ヨルダンの電力省の中にオフィスを持っているそうです。それから同時に重要なのは、イラク国内で活動している国際機関であります。国際機関の国際職員はかなり引いておりますけれども、現地職員の方はまだたくさんおられます。また国連の職員の方の話を伺っていますと、国際職員の方も段々戻りつつある。まだ8月15日の事件以前のレベルにはまだ戻っておりませんけれど、戻りつつあるということでございます。そうして色々な形での、ありとあらゆる形での情報を収集して、案件の形成に当たっているということです。
実際のところイラクにおけるニーズというのは、かなりはっきりしていると思います。ただこの中で何が出来るか。出来ることを前提にやらなければならない。例えば環境社会配慮、住民参加はどうなるかということに関係しますけれど、JICAの社会環境配慮ガイドラインでいえば(A)や(B)にあたるものは、多分実施できないであろう。従って今主として検討しているのは、既存の施設のリハビリ、かつて日本の企業が関係した施設のリハビリであるとか、複雑な据え付けとか必要でない機材の案件、そういうものを中心に考えています。例えば、ゴミ収集車であるとか、バキュームカーであるとか、移動式の変電機であるとか、それから既存の発電所のリハビリ、既存の病院のリハビリ。そういうことです。
もう少し、例えば調査が必要なものは、場合によっては国際機関が行うものの信託金の方からやってもらうというようなことが考えられます。ちょっと1例を挙げますと、南部湿原の回復というのが日本の新聞紙上を随分賑わしましたけれど、これは色々な人が色々なことを言っていますけれど、これについて詳しく知っている日本人はほとんど皆無といっていいかと思います。ただ幾つかのNGOであるとか、国際機関はこれまでも関心を持って一部調査をしていましたけれど、詳しいことは良く分かっておりません。南部湿原の方も、かつての1/20位になってしまったようで、回復、復旧ということはあり得ない話だろうと思います。ただ、こうした部分も含めて環境問題の重要性というのは言うまでもないわけですけれど、それについては先ずは国際機関等を通じた調査、それから何をやるべきかを中長期的に考えていくべきだと考えています。
そして問題は高橋さんがおっしゃったとおり、いかに適正な価格をつけるかというのが非常に難しい問題だと思います。単に機材を出すものであれば、三者見積もりまで時間がないだろうとおっしゃったんですが、無償資金協力、各省庁に出すようなものは、基本的に一般競争入札を行います。無償資金協力の原則と同様に、一般競争入札が競争上必ずしも適当でない場合には、場合によっては指名競争入札、随意契約ということもありえますけれども、例えば機材を納入するというものであれば、これは当然一般競争入札になるだろうと思います。ただ草の根無償資金協力で額が小さい場合には、見積もりを取って行う。これも三者見積もりを取って行う事になると思います。この間サマーワの給水車の件が発表されました。2月の末のはサマーワに届くと思いますけれど、これについては5社か6社くらいで見積もりを取りました。たまたまそれだけ見積もりを取れるところがあった、ということなんですが、これはある意味ではラッキーだったんですけれど、一番安く一番早く納入できる。たまたま他のお客さんもあったんだけれども、こっちに回しても良いよというようなだったらしくて、2月の末には半分位は納入できると言っています。
皆さんは援助に携わっておられるので、援助の実施には時間がかかるとお分かりになると思いますけれども、私共は、今日買って明日持っていけという話を毎日のように聞いていますので、それは出来ませんという説明をしている次第で、なおかつ、非常に厳しい状況の中で可能な限りの調査を行っているということだろうと思います。
リハビリ等の案件につきましては、どういうふうに設定するのか、これは、通常の無償資金援助のように限度額を明示的に決めて、そこからは出ない。そこより下だったら国庫返納なり設定変更をして、ということがあるんですけれども、そこをどういうふうにするかは、まだ若干課題になっております。いずれにしろ当初の調査、制度が不適正ではないんですが、厳密な精度をもって出来るかというと難しいところがありますので、今我々が考えているのは、ちゃんと実際にそれだけのお金がかかったのかということを、勿論一定の額を決めまして、その中でやってもらう。本当に例えば輸送費とか保険料がイラクの場合突然高騰するというようなことがあります。それが明らかになった場合は、場合によっては追加的な無償資金協力を出す、というふうなことも考えております。もし余ったら当然設計を変更して、この部分だけスペアパーツなどを余計に積むかあるいは、余ったらお金を返してもらう、そうした、仮にも追加無償なんかをするのは例外的なんですけれど、そういう時は、何故そういうものをやったかというものをとって、それを情報を公開していくことによって、正確性なり説明責任をちゃんとしていけるんではないか、というふうに考えております。
事業管理も非常に難しい問題だと思います。現在今行っていますのは、JICS、日本国際協力システムが資金管理と調達代理に当たる。イラクに無償資金援助をというと、イラクの人にお金を渡して、知らない間に大臣が使っちゃうんじゃないかと思っているような一般の人も多いんですが、通常の場合でも日本国内の銀行に相手国の口座があって、そこにお金を入れて、その工事の進捗に従って支払っていくという体制を取ります。今回もそうですけれど、JICSが資金管理をやって、その会計報告をやる。報告書を相手側の機関からとりつけて、それを公開していくという形を取ります。ただJICSも周辺国までは行きますけれど、中には行きません。何をしているかというと、JICSと同じような立場にある、英国の機関であるクラウン・エージェンツとJICSがパートナーを組むという形になっております。クラウン・エージェンツの人はイラク国内に何人もおられます。先々週からクラウン・エージェンツの方が日本に来られました。私共と協議いたしましたけれど、クラウン・エージェンツの方がイラクの人たちを活用して、可能な範囲で事業管理を行っていく。勿論、やがて治安が回復して日本の人たちが行けるようになれば、それに応じた日本人による事業管理ができると考えられております。けれど現時点ではJICS、クラウン・エージェンツがイラクの関係省庁と連携しながら事業管理を行っていくという予定であります。
住民に対する情報公開、協議、住民参加。これは率直のところ、日本人が直接行って話すということが非常に難しいです。先ほど申し上げたように、社会的な配慮と申しますか、例えば移転を伴うようなもの、著しく環境に影響を与えるようなものは、15億ドルの緊急無償では、そもそもできないだろう。例えば大型施設案件の、新しく建設するということは、関心は高いですし、イラク側からもやってくれという話はあるのですが、そこは当面無理だと思いますし、我々はそこまで手を出せないだろうと思います。住民との協議等も我々が直接やるという訳には、実質問題としてなかなかいきません。ただイラクの省庁、イラクの行政機関、更にはCPA等を通じて、可能な限り住民の声を吸い上げるという努力を行って頂くようにしたいと思います。
現に今、それが一番行われているのはサマーワであろうと思います。(エ)に関して、自衛隊と連携することはありますか、ということですけれど、現に自衛隊が展開しているのはサマーワを中心とするムサンナー県だけです。従ってそこ以外の所は自衛隊の連携ということは、ちょっと考えにくいんですけれど、例えばサマーワに外務省の職員が何名かおります。彼らがサマーワにおける支援の案件を発掘形成しておりますけれども、その時には自衛隊の人たちと一緒に行動をするとか、自衛隊の方々、医官の方々は医療支援を始めたというニュースが今日出ておりましたけれども、地方の医療ニーズにどういう対応をしていくのか、どういうニーズがあるかということを、サマーワのムサンナー県の人であるとか、住民の代表であるとか、お医者さんからとか聞いている。それを外務省に繋げて、自衛隊のできること、できないことで、ODAが何かしらできることを外務省の職員に伝え、それは我々の方にも上がってきます。そういう意味での連携はあろうかと思います。
近い将来、空自の輸送が始まるんじゃないかと思います。私の詳細は承知しておりませんけれども、サマーワへの人道復興支援物資をこうした飛行機が届けるということもあり得るかと思います。自衛隊との連携は私だけで申し上げることではないと思いますが、政府は自衛隊による支援活動とODAによる支援を車の両輪として、一緒に現地の人たちに一番役に立つ支援ができればなというふうに考えております。
イラク全体にこうした支援が広がれば、勿論それが一番望ましいわけですけれど、現に日本の人が、展開している地域はムサンナー県サマーワ地域に限られているわけで、そこから自衛隊というよりも、日本が来て良かったという支援をやりたいというふうに、私は思っております。
イラクにおけるこれまでの支援につきましては、外交フォーラムの3月号に奥大使と井上書記官の追悼企画を述べまして、その中に彼らが何をしていたか、復興人道支援でこれまでどういう事をやったかということが書いてあります。結びの方に私か書いたのは、助けを求める人にとって重要なのは、軍の支援か文民の支援かではない。ここにおられる皆さんは当然色々なご意見をお持ちだろうけれど、私としては、そう言う意見とは別に、支援の手を待っている人たちの視線に立って、先ほど申し上げたように、日本が来て良かったという支援を行いたいというふうに考えております。
そういう意味では最後の紛争後の平和構築、紛争影響評価ということについて、なかなか明確な答えは難しいんですけれど、イラクの人の生活が目に見えて分かる形で向上していくということが、結果的にはイラクの安定、紛争の回避と申しますか、そういうことに繋がるんではないかと思います。勿論およそ、米英を始めとするコアリションフォーシズのやっていることはみんな反対という人は復興人道も反対かもしれません。現に国連の事務所が爆破され、国際赤十字、国連のやっていることや、国際赤十字の人道支援活動のいわば人道性といいますか、意味というのは誰も疑う者はないと思うんですけれども、それすらターゲットになったということは、ありますけれど、むしろそうしたテロリストの行動がイラクの圧倒的大多数の国民の中で、いかに意味がないものであるか、ということが分かるためにも、できるだけ早い支援が必要ではないかというふうに考えております。
CPAの開発基金の話は政策課長の方からお話ししてもらった方がいいと思いますけれど、いずれにしろCPAにお金を出す、資金を出すということは、日本政府の政策として考えていない。そもそもCPAというのは6月には消えて無くなる。この間先週保健副大臣とインスペクタージェネラルですから保健省の監察局長みたいな人と、CPAの保健担当の方が日本に来られました。保健省のお二人についてはJICAの招聘で、CPAの人は自前で、CPAがお金を出したのかもしれませんけれど、来られました。CPAの彼が言っていたのは、関係省庁、それぞれどのぐらいしっかりしているのかは差がある。ただいずれにしろCPAの役割は段々小さくなって、主権が委譲されれば完全にアドバイザーとして、例えばCPAそのものが無くなるし、CPAで働いている人はその省の顧問として残るかもしれないけれど、そういう形で引くんだということを言っておられました。
私の方からの説明は以上です。
(渡辺課長)
イラクに出張し、それからイラクから来る政府の関係者と最も頻繁に接触して情報を収集している山田課長からのお話は非常に具体的で、皆様のお役に立てたのではないかと推察したします。新聞テレビなどで報道される治安に関する報道であるとか、現在のイラクの現状、すなわちCPAが実際に治めているという現状から、イラクへの復興支援について、色々と問題があるのではないかというご認識をお持ちの方がいらっしゃるのかも知れませんけれども、確かに一方で治安の問題は復興支援にとって大きなチャレンジではあります。
ただそのことと、復興支援を今行うということ自体は別に切り離して考えるべき問題だと私共は思っております。国連決議の1511という決議がございますけれども、この決議によって、現在のイラクにある統治評議会、その元にある政府の各省庁というのは、今の移行期間において、今のイラクの主権を体現するものであるというような位置づけを与えられておりまして、私共はそういう観点から、イラクの政府の省庁等を相手に色々な復興支援のお話をして、実施してきているというのが現状です。ちなみに国連につきましても、8月の爆破事件以降、国際スタッフは基本的には撤収という方針でやってきておりますけれど、国連のイラク人スタッフはイラク国内で活動していて、イラク国内で復興支援活動をやっている。それから他のドナーもやはり規模についてはそれぞれ差はありますが、色々な支援活動をやっているというのは事実でございます。
サマーワについては、自衛隊の人道復興支援活動ということで日々報道されております。今山田課長からお話がありましたように、この自衛隊の活動をサポートする意味で外務省員が数名現地に派遣されていて、現地の関係者との折衝のお手伝いをしておりますが、その中で、これら外務省員がサマーワの援助ニーズの把握に努めていて、そういったことを日々の活動の中で行っております。
ご案内の通り、給水車の供与ということが先般発表されておりますけれども、自衛隊の人道復興支援活動にも勿論寄与するものでございますけれども、何と言ってもサマーワの現地の人たちの生活の改善に役に立つような支援を、我々としては考えて実施していくということであります。
円借款担当は同席していませんが、債務問題のご質問がありました。開発基金というのはCPAがコントロールしているということですけれど、基本的にはイラクの経常経費というものを賄うということで、そういう位置づけになっていると理解しておりまして、復興支援の受け皿、あるいは復興支援と直接関わってくるという話ではないというふうに理解しております。ただイラクの復興自体に関わっていく立場から、この開発基金の運営であるとか、あり方というのは、我々としても引き続き関心を持ってやっていかければならない話だと思っています。
15億ドルの当面の支援、その後の35億ドルの中期の支援、これは基本的には円借款中心で対応していくという考えでありますけれども、円借款の場合は当然のことながら、イラクの政府、しかも債務をきちんと返済する意見と能力のある実体が受け皿としてあることが前提であります。当然のことながら開発基金といったようなものに供与するということは想定されない訳でして、イラクに主権が委譲されて然るべき政府ができた暁に色々検討していく話だと思っています。
また、円借款の場合にはJBICの環境社会ガイドラインといったものを念頭において、案件を進めていくということであると思っています。以上です。
(神田)
ありがとうございます。山田課長、渡辺課長、膨大な質問項目に対して丹念にお答え頂きましてありがとうございます。この件に関しまして、まだ色々とNGO側から追加で質問意見があると思いますので、順次出して頂けたらと思うのですが、いかがでしょうか。
(清水)
丁寧な説明をありがとうございました。ちょっと追加でいくつか質問ですが、例えば給水のことに関しても、「復興支援」というイメージから言うと、非常に一時的な印象がある。
復興支援と言うからには、それは、そこに仕組みとして残っていくような形であるべきであろうと思うんですけれど、バグダッドも含めてイラクの各地の様子でいうと、もうタンカリングを続ける時期ではなくて、浄水施設から繋げていくネットワークを復旧させることの方がニーズとして高いと思いますし、おそらく作成段階で住民参加、住民の声を聞けば、そういう声は圧倒的に多いんじゃないかと思うんですけれど、結果的に今回、作業が給水車いくつか供給して、それだけで終わってしまうことになると、そこがかなり大きな期待はずれになってしまうのではないかということも含めて、そこの先のイメージみたいなものがあればお聞かせ頂ければと思います。
それから、もう1点なんですが、自衛隊との絡みで車の両輪であると、サマーワには外務省の方もいて、その地域での援助案件を考えていらっしゃるそうですが、僕らバグダッドに一人駐在員がおりますけれど、彼の意見などでも、どうもサマーワの方にかなり援助が偏ってしまうイメージがある。日本があそこにいて、そこの人たちに日本のことを分かってもらうというのはあると思うんですが、イラク全体から見た場合に、どうしても偏り感が否めなくて、それが先ほど言いました、他の地域とのギャップとか、いらぬいさかいを起こさないとも言えないんじゃないかという意味で、相当な配慮が必要なのではないかと思うんですが、紛争予防の観点からも、その辺に関して何かお考えがあればと思います。
(伊藤)
山田課長にお伺いしたいんですが、今後5年に渡ってイラクに対する無償資金協力などが増えていきます。これは日本の途上国に対する支援策の中でどういう位置づけになっているのか。途上国の、NGOの関係者からは、段々自分たちに対する支援が少なくなるんじゃないかと、心配の声が聞こえてくるんですけれど、その辺の見通しについてお伺いしたいと思います。
(西井)
先ほどの山田課長の説明の中で、今回は非常に困難な中での援助の実施だと言うことで、4つの基本原則、柔軟性、スピード、透明性、公正性をおっしゃいました。柔軟性というところで前例とか今までの仕組みにとらわれない、とにかくやっていくというふうにおっしゃいました。それは日本の市民の理解を得るための方法だと思いますけれど、情報公開が必要だとおっしゃいましたけれど、具体的にどのように情報公開をされていくのかということを教えて頂ければと思います。
(高橋)
どうもご丁寧なコメントをありがとうございました。私からは渡辺政策課長の方に質問なんですけれど、ニーズというのはどこでもたくさんあります。また、いくらでも“つくれます。”ですから、今回のイラクの問題は、ニーズがあるか無いかではないんです。日本ODAの限られた予算、限られた資産をどうやって配分するのか、その配分の背景にある考え方が大事だと思っています。今回、イラク一国に50億ドルという非常に大きな金額の振り分けを決定したわけですけれど、イラクに給水の必要性は高いと思いつつも、そのようなニーズが50億ドルもあるのでしょうか?政治的な思惑を優先させて、50億ドルのニーズを作ろうとしているのではないでしょうか?そこでつくられるニーズはアフリカの感染症の問題比べて、緊急度はどうなのでしょうか?国際約束であるミレニアム開発目標(MDGs)があるように、日本も国際社会の一員として、アフリカの感染症や貧困問題に緊急的に取り組むことを約束しました。経済開発によって貧困削減のためのお金を作るなんていう悠長なことを言っていられないくらいに、状況の厳しい国々がアフリカにはあるのです。そういう中において、日本とは何を考えてこういうふうな配分を考えたのかということです。そこら辺の考え方が一番分からない。イラクのニーズも、どういうニーズなのか分からない。フセイン圧政によるニーズなのか、経済政策によって生じたニーズなのか、それとも戦争によって破壊されたニーズなのか。そこら辺を政府がどう考えているのかがよく分からないところがあります。そう言うことも含めて、外務省の考え方を教えて頂きたいと思います。限られた資産予算の配分ということにおいて、外務省のODAに対する考え方が反映されてくると思うので、教えて頂きたいというのが1つです。
債務のことは、担当の課長さんがいらっしゃらないので、詳しくは聞けませんけれども、改めて言うと質問したかったのは救済をした時に、返済を免れた資金、これは主に石油収入から上がってくる資金ですが、それがどういうふうに扱われていくかということなのです。そのまま自動的に、あれは返済に充てるはずの石油収入のお金はCPAの管理なんだから、CPAのお金になってしまうのか。それとも別に、新しく救済の結果生まれた資金として、別枠の基金枠組みを作って、それを救済に同意したドナーが共同管理をして使い道を決めていく仕組みなのかということについて、外務省の考え方をお聞きしたかったのです。課長が分かる範囲内で結構ですので教えてください。
(神田)
それなら山田課長からでよろしいでしょうか。4名の方々から質問が出ておりますのでよろしくお願いします。
(山田課長)
復興支援が一時的になるんじゃないかという最初の質問ですけれど、緊急の支援なんで、なかなか今の段階では中長期のものになるということを確保するのは難しい面があります。ただバグダッドでおっしゃる通り、浄水施設もより本格的なものが必要とされていると思いますが、サマーワにおいては今現段階では、給水車というのは非常に活動していますし、数が足りないと。市民の人たちは水が欲しいんだ。蛇口をひねれば直ぐに出てくるような水が欲しいんだと思いますけれど、それをやるためには2年3年かかるんだろうと思います。現に給水車は活動して数が足りないということがサマーワ、ムサンナーの県当局、そのCPA、オランダ軍、それから現地で活動しているNGO等の話で分かった。そういうことで給水車を使ったわけでして、日本だけでイラクの膨大な復興ニーズを支えるわけには当然いきませんし、給水車は一時的でありますが、同時にかなり中期的にも使用されるものだということを考えてやっております。
というのはむしろ無償資金協力課は、今すぐやれ、足りない、欲しい、と言っている人たちがいるから直ぐにやればいいじゃないか、と言っている人を、いかに、これは本当に中長期に意味があるかどうか、相手がしっかりしているか見なきゃいけませんということを、みんなに説明しつつ怒られているのが現在の無償資金協力課であって、皆さんのようにおっしゃる人たちは実は少ないんですけれど、我々は、その場にあるニーズを見ると同時に、これが中期的に、更に先まで役に立つのか、意味があるのか、相手側に最低限の維持管理能力があるのか、イラクは厳しい状況ですけれど、それはできる限り見ていきたいというふうに仕事をしております。
車の両輪ということで、サマーワに援助が偏ってしまうのではないか、偏り感が否めない、そういうギャップに対する配慮、それは非常に私も思っております。他方、色々な形での支援を行う時には、全国展開の中の一部サマーワということになろうかと思います。従ってサマーワだけに草の根みたいなものは、きめ細かいものは、実際はサマーワと、ひょっとしたらバグダッドでできるかも知れませんけれど、大使館員がイラク中を飛び回るということはできません。奥参事官や井上書記官、あるいは11月までの大使館員はそれをやっていたわけですけれど、少なくとも当面そういうことは出来ませんので、そういう草の根的支援はサマーワに偏っている事はございます。
他方イラクの全体の地域バランスを考えなくてはならないことは、常に私共の念頭にございます。一方でイラク全土満遍なく面倒を見れるかというと、それは資金面でも色々能力的な面でも難しいところがございます。イラクのバグダット南部が若干重視されるかなという感じがしております。それはイラクの南部の方が、フセイン政権時代に冷遇されていた地域であって、そういう意味での必要性が高いというのが、全体を見てるような人の感じでございます。ただイラクの人と、なるべく話し合って、我々の能力でできる範囲で、その地域のバランスを考えてやっていきたいというふうに思っています。
それから伊藤さんの無償資金協力が今後途上国の支援が減っていくんじゃないかというのも、我々の日々の心配で、頭痛の種であって、色々な途上国の大使の方であるとか、そういう質問はストレートに出されます。少なくとも平成15年度、16年度について言えば、無償資金協力予算のかなりの部分がイラク、あえて言えばアフガニスタンにも取られました。回されます。イラクとアフガニスタンはそれ以前にも、イラクは特にそうですけれども、無償資金協力のほとんど対象になっていなかった。供与していなかった国が被援助国として突然現れた。一方でそれ以上に重大なのは、世の中の他の国々がODA予算を伸ばしている中で、日本のみがどんどん減っている。97年度のピーク時から比べればODA予算は無償資金協力予算と共に大体7割になってしまいました。まだ減らせと言う声の方が我々の耳には届いてくる。
そういう状況で途上国のニーズにいかに応えていくかというのが、非常に重要だと思っています。平成16年度については、これもかなりの額が行くと思いますけれど、それ以降はイラクに対する支援は、かなり少なくなるだろうと思います。それは、イラクは元々は石油が出て豊かな国であって、無償資金協力を大量に供与しなくても自分の足で歩いていける国ではないかと考えるからです。従って平成17年度以降はトレンドは逆転するんですけれど、先ほど申し上げた、より大きな心配は、ODA予算、無償資金協力予算、どんどん減っていきます。中には卒業していく国も出てきておりますけれど、そちらの方が非常に心配です。現在のところは、実際に何が起こっているかというと、ある程度、広く薄く削っているということにならざるをえないと思います。その代わり、それをある意味でポジティプに捉えて、無償資金協力の最近の合い言葉は、調査をしっかりやって工期をしっかりとってやりましょうということで、場合によっては、今までよりもゆっくりやることになって、結果的に相手国と関係を同じ額で長く繋ぎ止めるという、より少ない額でも、同じとは言いませんが、効果の発現度が変わらないようにできるだけ努力していくということだろうと思います。それから一件当たりの額は若干小さくなっておりますし、それから予算が全て削減されている中で、草の根無償資金協力だけはずっと伸びてきておりますので、これがいかに途上国の草の根の人々に人間の安全保障という側面から見ても役に立つようにするかという、それをいかに使いよくするかというのも、無償資金協力の大きな課題だろうというふうに思っています。
(伊藤)
イラクとアフガニスタンに対する支援の割合の規模はどれ位でしょうか。
(山田課長)
2004年はイラクは約200数十億円位を念頭に置いています。それからアフガニスタンの方はちょっと分からないんですけれど、アフガニスタンは平成14年度は、無償資金協力史上始まって空前の規模の、一財政年度で一か国に対して300億円を超える資金協力を行いました。今年は色々な準備をしていますので、年度末までにかなりの額が投入されて全部で200億円くらいなるかもしれません。来年度はそれより更に少なくなって。アフガニスタンは貧しい国なんで、当面無償資金協力の重要な対象国となると思うんですけれど、吸収能力なども考えながら、こういう額にはならないと思います。むしろ私はアフガニスタンの人に言ったのは、今はアフガニスタンは世界中が注目しているけれど、残念ながら世界中はあなたを忘れます。ただ無償資金協力課は忘れません。その代わりあなた方は援助をしっかり活用して、できるだけ早く自立の道を歩いてくださいと、会う大臣ごとに言って参りました。アフガニスタンはここ1,2年はかなりの大きな額が出ると思いますけれど、その後は他の途上国と同じようなレベルになるんじゃないかと思います。アフガニスタンは正に紛争後の平和構築という点で非常に重要にところである。色々な形で、援助の実験というものが行われています。例えばDDR、動員解除、武装解除、社会復帰。日本はそのリーディングカントリーになって、政治的な働きかけと支援と両方やっいます。私は見に行って、これは大変なことだ。これは上手くいくのかなという感じがしていますけれど、アフガニスタンの国民にとって必要なことだし、出来るだけのチャレンジに日本としてつき合う、こういう言い方は良くないかも知れませんけれど、この挑戦に取り組むべきじゃないかというふうに考えています。
情報公開ですけれど、情報公開も私が経済協力課に初めて来たのがもう15年位前になるんですが、段々進んできている。ただ私は前職は、情報公開審査会というところにいましたんで、100点かというとまだ100点じゃないところがあるかも知れません。例えば入札情報とか予定価格の公表というのは、平成15年、今年度から予定価格を公表していますし、入札情報等は外務省のホームページなどでも公表しております。公表しても誰も見ていないんで、だから公表した方がいいんだというのが私の意見で、いずれにせよ、そうした報告書は全部公開の対象になると、公開するという前提でおります。国会答弁では相手側の供与先の同意を得て公開することとしております、ということを書いております。相手側の同意を得て、ということですので、同意を得られなかったらどうするのか、それは始めから同意を得るように、今度の警察車両の入札情報も今書類の準備中ですけれども、月末ぐらいまでには多分公表できると思います。そういう形で公表していく。ホームページ上に載せていくとか、ものによっては膨大になるんで、請求に応じて迅速に公開していくということになろうと思います。特別な仕組みを考えているというよりは、従来の仕組みで、できるだけ迅速に公開する公表するということを考えている次第です。
限られた予算の配分は若干私もお話したように思うのですが、渡辺政策課長にマイクを戻したいと思うのですが、その前に、この中で日本政府の資金を得ないで独自にイラク国内でNGOとしての活動をしている団体がおられると思うんですけれど、1つ質問があるんですけれど、日本政府でないよその国、今度、日仏独の調整委員会に私は出席することになっているんですけれど、日本は日本のNGOは勿論、外国のNGOも本当に役立つ活動をしているところがあれば、草の根無償資金協力なんかで応援したいと思っているんですけれど、日本が出すばっかりでは面白くない。フェアーでない。公平でない。フランスやドイツで日本のNGOが活躍しているのだから出せと言いたいんですが、しかし他方で、申請が無ければ出しようがないではないかと言われそうなんで、フランスやドイツからの資金だったら、得たいと思っておられるNGOがあるのかどうか、この場で答えられないかもしれませんが、お伺いしたいと思います。
(神田)
時間が押しているところなんで、おそらくイラクの問題だけでこの2時間費やしたら、そういった議論をどんどんやって行きたいんですけれど、後でお願いするとして、渡辺課長の方からの話を挟みまして、小野さんの方に回したいと思います。
(渡辺課長)
ミレニアム開発目標の達成というのは日本にとってとても重要な課題だと思っています。他方で、ポストコンフリクトの国や地域の復興や平和の定着ということも非常に大切な我々にとっては政策課題でして具体的にはアフガニスタン、今回のイラクといったようなケースがあげられます。両者は決して矛盾するものであると考えてはいません。
ODAの予算が削減傾向にあるというのが非常に大きな頭痛の種でして、アメリカやヨーロッパの国々がODA予算を増額する傾向を見せている中で、日本としてもMDGの達成のためにも、そしてイラク、アフガニスタン等の支援のためにも予算を増やして行かなければならない。皆様方もご賛同頂けるのであれば、そういった我々の努力に少しでも力を貸して頂ければ大変有り難いと思っています。
高橋さんの2つ目のご質問は、将来、債務免除、あるいは削減ということになった場合の返済を免れた資金がどうなるのかということだと思います。多分イメージされているのは、重債務貧困国におけるPRSPプロセスを念頭においているのではないかと推察しておりますけれど、この辺の話というのは、今後パリクラブ等で、そもそも債務の削減のこの問題をどう処理していくのかという話と、おそらく一緒に議論されていく話ではないかと私は思っています。我々もよくフォローしながら、こういった場でもご紹介していきたいと思っています。
(小野)
今、日仏独の共同資金なんかにアプライズするかしないかおっしゃった後、パッと思いついているんですが、ここにいらっしゃるNGO方で、日本の政府資金でないと困るというふうに思っていらっしゃる方はほとんど1人もないと思うんです。ただ、ケースバイケースということで条件を見ておられると思います。うちの会も同じようなことを考えております。
それで援助に入る、支援に入る側としまして、いつも派遣要員の日本人。今は行けないとしても安全の確保ということが最大のテーマになっておりまして、うちも今アフガニスタンのヘラートで活動しておりまして、そういうことの中から、今車の両車輪とおっしゃった自衛隊、特に南部で活動している自衛隊が直接、間接的にNGOの保護といいますか警護といいますか、そこまで考えていらっしゃるのかどうか、というようなこと。それからあの辺で過去に使われた劣化ウランの地図が欲しい。やっぱり大量に劣化ウランを浴びて帰国しますと、若い人たちの将来が、日本人の若者達の将来まで引っかかってくるような劣化ウランの問題ですから。もし行くとしたら、徹底してそのマップを作らないと入れないと言っているような状態で、そういうことに対する自衛隊及び政府の協力、及び直接及び間接的なNGO要員の保護みたいなことも考えておられるかどうか、お聞きしたいと思います。
(福田)
先ほど山田課長が言っておられた自衛隊と援助が車の両輪だとおっしゃったのですが、このイラクに自衛隊が入ることによって、タイとかカンボジアとかでの活動が、危険になるのではないか。僕は今議事録を持っていて、2003年度の第1回の委員会で、矢野事務官の方からテロの方に気をつけてくれという話があったんですけれど、自衛隊がイラクに入る事によって、それ以外国でのNGOの活動であるとか、JICAとかの活動にどういう配慮をされているのかをお聞きしたいと思います。
(渡辺課長)
自衛隊がいるから、あるいは入ったからということで、何らかのテロ情報を出すといったことは行っていないと承知しています。いずれにせよイラク全土が待避勧告の対象になっています。
劣化ウラン弾の話は私は手元に情報をもっておりません。持ち帰りさせて頂きたいと思います。
自衛隊がNGOの保護をしてくれるかどうか、というご質問に関しては、私共は自衛隊を代弁する立場ではないので、お答えすることは差し控えさせて頂きたいと思います。一般的に申し上げれば、自衛隊の活動というものは、政府として基本的な方針を決めて国会でご承認して頂いて行っているという、そういう性格のものでございます。基本的に自衛隊の活動というのは色々な制約があるというのが現状でございます。
(神田)
ありがとうございます。時間の制約の加減で色々な発言を遮ったりして失礼しました。まだこれから意見が出て来そうですけれど、とりあえず、この議題に関しまして一旦切りたいと思います。これぐらい色々な議論が出てくる議題ですので、企業側に対する説明会をやられたというふうに伺いましたけれど、NGOとこれだけ意見交換しても、色々なアイデアや意見、視点が出てくるんじゃないかと思いますので、また折を見てご検討頂けたらと思います。
時間が経過したしましたけれども、2つ目の議題、これも大きな議題で、いくつも論点がございますのでこちらの方に移りたいと思います。
先ほど山田課長、渡辺課長、両課長の御発言の中に、ODAの削減という大きな問題が話されております。私共、ODA政策が信頼される、信任されるということがODA削減を防ぐ1つの手だてではないかというふうな思いもございますので、こういった件に関しまして、改めてJVCの高橋さんのほうから問題提起して頂きたいと思います。
(高橋)
第2議題の『ODA政策見直しプロセスとODA総合戦略会議について』ということで質問させて頂きます。
今、神田さんの方からご説明があったように、昨年ODA大綱の見直しがありましたが、今年は2つの大きな動き、大綱の次くらいに大切な日本のODAのビジョンとか構想力として、今後の方向性を決める大事な動きがあると思っています。
先ほどの議論の続きみたいになりますけれど、イラクの問題にしても、実は債務の削減の話とか、「車の両輪」の話とか、サマーワの給水の話とか、全部繋がってきていると思うんです。日本の援助に関するビジョンみたいなもの。イラクを支援する理由です。イラクに充分な石油があるならば、何も援助で外からお金を出すんじゃなくて、不当に追わせてしまった債務の削減をきちんとやって、使い道をきちんとさせばいいというふうなビジョンも可能だったでしょう。また、「車の両輪」と安易に言うことよりも、自衛隊のためにODAを活用することで逆に国民の反感を買ってしまうかもしれないという考え方だってある。更に、一体イラクの今のニーズは何が原因か?その、ニーズを作り出さないためには、元々戦争のことも含めて、日本は取るべきスタンスがあった。平和へのビジョンをもってアメリカなどへもっと働きかけをするべきではなかっただろうか。そういう意味で統一したビジョンみたいなものを、日本の援助を通してどうやって外交的にやっていこうかという当たりが、ODA大綱に続いて、中期政策の見直し、ODA総合戦略会議の見直しにおいて、必要だろうと私は思っています。そういう意味で質問をさせて頂く次第です。
順序が逆になるんですけれど、まずODA総合戦略会議について質問します。これは資料でいうところの1と3になっています。
1の方は、個別具体的にODA戦略会議で実際に行っている国別援助計画の作成のプロセスそのものについての意見ですので、これはちょっと後回しにさせて頂いて、まず3について。今年の6月にODA総合戦略会議が改選されると聞いていますので、そこにちょっと絡めながら先にお話させて頂きたいと思っています。この2年間ODA総合戦略会議がやってきたことは一体何だったのだろうか、ということ。これについての外務省のお考えを聞かせて頂きたい。というのはODA総合戦略会議というものは、そもそも第二次ODA改革懇談会の中で、「国民参加の促進」ということが言われて、その目的を具現化するための仕組みだと私は理解しています。勿論、そのために重要な政策である国別援助計画を話し合うのは重要だというのは分かるんです。しかし、ODA総合戦略会議の本来の目的が「国民参加の促進」であったのならば、果たして同戦略会議は、それを体現していたかどうか、ということは大いに疑問です。例えば、まず会議そのもののオブザーバー参加が限られている。透明性という観点では、問題ありと言わざるを得ないと思っています。
ですから改選という時期を迎えて、外務省としてはODA総合戦略会議をどういうふうにレビューして評価していくのか。本当に、この会議を続けていく意味があるのか。続けるならどういう目的で、何のためにやるのかという当たりのことをまず改めて聞かせて頂きたいと思います。それが1点目です。
そこから続いて論点3の質問になってきて、じゃあ、国民参加とか透明性を確保しつつ、総合的にODAの戦略を考えていくために、どのようなメンバー改選プロセスであるべきか。外務省がどういうふうに考えていらっしゃるのかということを、続けて教えてください。
それらの外務省の考え方を先ず議論させて頂いてから、その上で、ODA総合戦略会議の主たる役割である国別援助計画の策定プロセスについて、各論として聞いていきたいと思っています。
国別援助計画はこれまでベトナムやスリランカの計画案が作られてきましたが、これからモンゴルやスリランカ、インド、インドネシアが作られる予定と聞いています。因みに、ベトナムの計画は中心になっていた大野教授の采配もあって、かなり透明性の高い形で進められてきたというふうに思います。例えば、ホームページを見ても、どういう議論があったとか、どういう資料があったとか全部出ていますから、これは評価できるプロセスだったと思うんです。そういう事例を踏まえて、これから策定するモンゴルやインドネシア、インドの計画をどういうプロセスでつくっていくのかということを聞きたいと思っています。
例えばインドネシアの場合ですと、外務省は昨年ミッションをジャカルタに1週間ほど送ってヒアリングをしていると思うんですけれども、そこでの記録みたいなものがきちんと公開されているのか。つまり現地の人たち、インドネシア側の人たちの意見のすくい上げプロセスだと思うんですけれど、そういうプロセスを大事にして現場の意見をどう活かそうとしているのかということをお聞きしたいと思っています。
最後に、もう1つ大きな論点があります。中期政策ですけれど、これは昨年から今年の3月にかけて、見直しというプロセスを進めています。今後は、それを踏まえながら、4月からになるんでしょうか、新しい中期政策の作成に入ると思います。これはODA大綱に次ぐ位の大事な政策の変更だろうと思います。特に、JICAが独立行政法人化を迎えた中においては、JICA事業の中心となる極めて大事な政策になるだろうと思っているわけですけれど、そういった意味で、中期政策がきちんと公開性を持ったプロセスで作られていくのか。そのことについての外務省の考えをお聞きしたいと思います。
また、現時点では、中期政策にODA政策総合戦略会議は直接タッチしていないと私は理解していますが、もしODA総合戦略会議が「国民参加の促進」のために中心的な政策をどう作っていくのかということを話し合う場でとなるならば、この中期政策策定プロセスにどう関わってくるべきなのか、ということも合わせてお聞きしたいと思います。
(神田)
司会からなんですが、1つだけ加えておきたいなと思うんですが、この会議の冒頭に3枚1組のペーパーを新たに資料として配付させて頂きました。ODA総合戦略会議はODA政策の透明性を改善したかという、クウェッションマークで締められているペーパーですけれど、これは、ODA改革ネットワークというNGOの方で、ODA総合戦略会議の今後に向けて、こういった形の申し入れをしようかという準備段階のペーパーでございます。この中にいくつか私たち、市民参加というものを促進するための上での、この2年間のODA総合戦略会議のあり方をウェブ上で見て、問題点等を分析した上で、新たに再編するのであれば、こういった点にご留意頂きたいという提言、提案を作って出していこうというふうに考えているところであります。出席されている皆さんの総意というわけではなくて、従って参考資料として出しています。
(伊藤)
私の方からODA中期政策について一言。ODAの中期計画というのは、この案が出たのは1998年と記憶しています。「NGO・外務省定期協議会」の「ODA改革小委員会」として発足していました。そのときのプロセスの中で、ODA中期政策の作成にあたって、非公式に提案を出してもいいということになりまして提出しました。内容的にはかなりNGOの発想を取り入れてもらったところがありました。フィールドのレベルにおいては、ODA機関とNGOの連携が謳っていますが、政策レベルではゼロでした。実は今日申し上げたいのは、ODA中期政策のレビューに当たって、本当は非公式ながらNGO側が参加したものですから、レビューにも参加させて欲しかったなというふうに思っている点が1つと、今度新たなODA中期政策が検討されるかも知れませんが、その時には今度は非公式ではなくて、公式な形でNGOも中期政策の作成過程に参加できないだろうかということです。この2点を質問したいと思います。
(神田)
それでしたらODA総合戦略会議についてというのが1つ。そしてODA総合戦略会議以外に取り組んでおられる国別戦略会議の作成プロセスについてが2つ目。3つ目は、関連するかどうかは分かりませんけれど、ODA政策に関しましては、今後大きな柱になっていくであろうODA中期政策見直しプロセスの現状につきまして、この3つについてご説明頂きたいと思います。
(渡辺課長)
ODA総合戦略会議について私からお話し、国別援助計画については河野課長からお願いして、中期政策については和田課長からお願いしたいと思います。
ODA総合戦略会議がこれまでに何を達成したのかという質問がありましたけれど、これはODAという国民の幅広い理解を得る必要のある我々の事業の中にあって、ODAの司令塔的機能をODA総合戦略会議に果たして頂くということで、2年前の夏、まさにここに書いてある通り第2次ODA改革懇談会の報告に基づいて設置されたものであります。座長は外務大臣が勤めさせて頂いておりますけれど、基本的には渡辺座長代理が、委員の先生方に、色々な御提言を頂きながら、議論を進めていくという、そういう場でありまして、外務省の経済協力局はその議論をサポートする事務局的な機能を果たしているものです。
その意味でODA総合戦略会議の運営であるとか、成果については、委員の先生方に負うところが極めて大きいわけでございます。メンバーの方々には、NGOの方もいらして頂いておりますし、それから学者有識者の方もいらっしゃいますし、経済界の方もいらっしゃる。テーマによっては、そうとう熱い議論が行われることもあるし、意見が必ずしも収れんせずに、座長代理のところでまとめられることもございまして、それぞれのメンバーにとっては、必ずしも納得いかない、満足できないものになっている、留まっているというのも、当然あるんだろうと思います。
ただこういったODAに関わる幅広い当事者を集めて議論して頂くという機会は画期的なものではないかと思っています。新ODA大綱をまとめる際にも、戦略会議で色々議論頂いたことは、たいへん有益で重要なステップだったと思っております。
ベトナムの国別援助計画についても相当密度の濃いものができております。それ以外の国でも、ODA総合戦略会議が出来る以前の国別援助計画に比べても、かなり密度の濃いものが出来つつあります。皆様の立場からご覧になって、もう少し改善すべき点があるのではないか、もうちょっとなんとかならないのかといったご批判ご提言はあるかと思いますけれど、こういった場を通じてODAについて幅広い意見が展開されて、それがホームページで、時間がかかりますけれど公開される、そしてその議論が経済協力局の仕事の中でも、反映されていくというような仕組みは有益ではないかと考えておる次第です。
メンバーの改選については、座長代理の渡辺先生や他のメンバーの方々と今後ご相談していくべき話であって、私共があれこれ言うような話ではないと思います。いずれにせよODAに関わる各方面の人材、専門性を備えた方々を公平に選任していくというのがあるべき姿であって、今のメンバーの方々もそういったプロセスで選ばせて頂いているといふうに理解しております。
(河野課長)
この会に出席させて頂くのは初めてで、こういう機会を与えて頂いてとても有り難いとと思います。
国別援助計画の作成過程のプロセスのあり方について、簡単にご説明させて頂きたいと思います。特におそらくご関心のあるのはNGOの皆様方との協議の機会、情報公開についてどう考えるかということだろうと思います。基本的な考え方としては、美辞麗句を並べるつもりは全然ないんですが、正に国民参加という観点から、NGOの方々から意見を聞く機会はなるべく設けたいし、それもなるべく公開していきたいと思っています。それでこれまでの実績というのを見た場合に、ベトナムとスリランカ、他にいくつか挙げられましたけれど、それぞれにおいて差違があることは事実です。今ご指摘があった通り、ベトナムというのはおそらく考え得る限り、ほとんど全てのものを記録を作り、それをホームページ上に載せてということをやって来た。ある種の極に近いようなところにあるような対処をしてきたように思います。
スリランカについては、そこまで至っていなかったというのが事実として、経緯としてあります。まず第一点として、それぞれについて扱いが違っているのは事実としてあるんですけれど、なんでそうなっているのかということを、これはODA総合戦略会議のかなり早い段階での議事録を見て頂ければ確か出てくると思うのですが、国別援助計画を作るプロセスというのをどういうふうにするかという議論が結構早い段階にありました。私共の方から雛型的なものを提案したりもしたんですけれど、ODA総合戦略会議において、とりあえずはどういうやり方が良いのかも含めて検討するために、それぞれ当面は各国別チームの方でやり方を考えて進めていこう、従って当面、統一的なプロセス手順というものを作らない形で走り始めようということになり、それに沿って進めているのが現状としてあります。
その中で、それぞれのプロセスの中でタイミングなんかも、それぞれのプロセスの中で考えながらやってきているというのがありますので、ある意味で統一された手順というものをまだ作れていないというのが実際のところです。
今ベトナム、スリランカ、インドネシア、モンゴル、パキスタン、インドというのが動いていますけれど、こういったものを作りながら、段々収れんさせていくということになるんではないかということを考え、かつ期待もし、そういうふうに持っていきたいと思っている次第です。
それで配布されている資料の中にスリランカについて、ベトナムと同じレベルではなかったのは事実なんですけれど、情報がありませんというのは、我々はそうかなというのが若干事実認識としてちょっと違うのかもしれないと思っていて、スリランカについてはNGOとの協議という意味では、2003年2月くらいに現地に行った時に現地のNGOと協議をやったというのが1つあるのと、2003年4月にこれは東京の三田共用会議所でいわば公開ワークショップみたいなものを開いたりもしました。その際にホームページ上でこういうのをやりますから来てくださいというふうな募集をかけたり、あるいは個別にご関心があるだろうと思われるNGOに案内を出して参加頂いたり、後、そこでは時間の制約がありましたので十分に議論ではなかった、あるいは意見を言えなかったという方々がいらしたので、その後4月5月ホームページ上でご意見募集というような形でやったりもしたわけなんです。実際正直いってあまり意見は来なかった。
他方、今から考えれば、そういうことをやっているということをお知らせする努力が少し不十分だったのかもしれないと思っています。つまりODA総合戦略会議の議事録にしても、国別計画に関する議論というのは、中間報告も含めてあそこに全部載っかってはいるんですが、国別計画ということで、必ずしも明示的なリンクを貼っていなかったとか、情報を探しにくいという面はあるかもしれないと反省点はあります。
また、ODA総合戦略会議における色々な議論の中で報告される文書も全部公開されていますけれど、ちょっと掲載に議事録チェックなどで時間がかかっている場合もありますので、比較的我々早い段階で報告していると思っていても、必ずしも、探そうと思っても探せないという状況もあったりしますので、それは例えば完全な議事録ができる前にもそういった議論に使ったような材料なんかは早めにホームページに載せて見せるようにするとか、そういった工夫も今後していきたいと考えております。
また、色々やり方が違っていると申し上げましたが、今のところベトナム、スリランカというのがほぼ終わって完成してきたと思っていますが、次に上がってきているモンゴル、インドネシアについては、実はNGOの皆様方との意見交換をできる材料というものが、モンゴルでようやく出来てきたかなというところで、まだ完全に日程が決まっていないんですけれど、3月くらいには意見交換の機会を作るような運びにしたいと思っています。インドネシアについても同様です。インドとパキスタンについては、まだ素案を作っている段階で、それをベースに意見交換をするだけのレベルに達していないという形ですので、まだ予定が立っていませんけれど、これもいずれにしても意見交換の場を設けるつもりです。
1つこれは私自身がやりながら悩んでいるところなんですが、モンゴルとかインドネシアについても、何をベースにNGOの方々と議論をするか、というところがいつも悩むところで、ある程度のものができたところで、それをベースにやろうと思うと開催するまでに比較的時間がかかってしまう。かつ、これまでの意見交換には伊藤さんにはご尽力をお借りしたり、場を設定して頂いていますけれど、NGOの方々の中での色々な議論が必要だということで、意見交換をやる前に一定のリードタイムが必要であるというふうなご指摘があって、なるべくそうしようと思っているのですが、例えばある段階で、素案みたいなものを作って、それについて議論をしたいときに、例えば3週間なり4週間のリードタイムが欲しいと言われた時に、なるべくやろうと思っていますが、その3週間4週間の間に作業を進めているものですから、議論する段階で既に前に決まったものが古くなっているというケースが出てきている。そういうことで、この何を材料に議論するのかということを、もうちょっと工夫しなければいけないな、ということを実はやりながら感じているところです。
1つのやり方というのは、もっとざっくばらんに、我々が案を作る前の段階から、あまりテーブルの上に載せられるものはないけれど、とりあえず議論しましょうというやり方もあるのかなと思ったり、やり方についてもまだまだ試行錯誤中というところもありますので、皆様方の観点から見て、もっとこうしたらいいということがありましたら、どういう形でも構いませんので、私の方に言って頂ければ検討したと思っています。
情報の公開ということで、色々な協議の記録の公開、ベトナムは先ほど申し上げた通り、極めて公開性の高いようにやったんですけれど、それはそれで意義かあったと思っています。その一方で、全くこれは行政の都合と言えばそれまでですが、極めて負担が大きかった、というのも事実としてあります。記録を作るということに非常に大きな能力を割いたということで、そこもちょっとうまく工夫しないと、いわばサステナブルではないということを感じたりしています。
後は、これも色々な工夫の仕方でしょうけれど、色々な議論をしていく中で、全てこれは記録として作りますという前提で議論を進めて行きますと、なかなか喉で詰まって出てこないという人もいるものですから、その辺のバランスも考えながら、かつ、なるべく公表していくという原則というものを守りながらどうやってやっていくか、今後工夫していきたいと思っている次第です。
(和田課長)
中期政策につきましてですけれど、中期政策は99年8月に策定され、今年の夏で5年が経過するということ、ODA大綱が昨年改定されたということを踏まえまして、先程来お話がありましたように、中期政策は今評価をやっております。見直しというお言葉がありましたけれども、我々は見直しではなくて評価を行っているわけです。評価につきましては、普段から国別の政策だとか分野別の政策だとか評価をやっているわけなんですが、通常であれば基本的には評価報告書ができた段階でそれを公表するということに留めているわけなんですが、中期政策はその重要性に鑑みて、そのプロセスをオブザーバーにも開放したということでございまして、我々も、通常より透明性を重視したつもりでやっております。
3月の末くらいまでに、報告書がまとまってくると思いますけれど、いずれにしましても、評価報告書にも外務省のホームページにも我々評価について、あるいは外務省のODAに関して、いつでもご意見があったら受け付けるということにしておりますので、この中期政策についてもご意見等ありましたら、質問等ございましたら、いつでも言ってきて頂ければと思います。
その後、新しい中期政策の改定、見直しを行うかということにつきましては、評価の結果を踏まえた上で、また場合によっては総合戦略会議などでご議論など頂いた上で、政府全体に関わる問題ですので、みんなできちんと決定した上でプロセスに入ると思います。現時点ではまだ改定を行うとか、いついつまでにどういうスケジュールで何をするというようなことは一切決まっておりません。
いずれにいたしましても、新しい改定されたODA大綱の中で、国民参加の拡大ということが謳われていることは我々正に見直しに携わってきた当事者として良く理解しておりますので、今後もし改定プロセスということが行われることになりますれば、新しい大綱の趣旨を踏まえて、国民の参加をどうやって確保していくかということを、具体的に考えて行きたいと思っています。現時点ではそういうことであるとご理解頂ければと思います。
(神田)
ありがとうございます。時間が来たんですけれど、ちょっと今のご説明に対する質疑だけ時間を取らせて頂いてよろしいでしょうか。その時間だけ取りたいので、御三方の発言に対しましてNGO側からここを確認しておきたい、これは伝えておきたいというふうなことに関しまして、何人かまとめて一人一言でお願いします。
(福田)
ベトナムの方でODA大使館の方に参加させて頂いたのですが、ODA大使館が国別援助計画にどのような関係があるのか、全然見えないまま、ベトナムの方で議論がずっと進んでいましたので、国別援助の策定の中でODA大使館がどのような位置づけなのか、教えてください。
(原)
福岡からなんですけれど、ものすごく単純に、公聴会とタウンミーティングの区別が広報の時よく分からない部分があって、タウンミーティングは説明会なのか、公聴会は意見を聞く場所なのか。タウンミーティングをしますと言われても、外務省だけの説明で終わると、国民参加という部分で、はい聞きましたという部分で終わってしまうというのが多々としてあると思うので、公聴会だったらもっと意見を聞くとか、国民参加という部分である程度はっきりさせて頂きたいと思います。
(石田)
私はODA中期政策をもし作られるとすれば、通常、最初のたたき台を作って、それをパブリックコメントに伏しますが、そのドラフトを作る段階から誰でも関心のあるNGOが参加し、意見が述べられる、そういった場所で是非ドラフトの作成を行って頂きたいと思います。これは山田課長が参加されているJICAの環境社会配慮ガイドラインの提言委員会など、コンサルタントの方、NGOも含めて、その分野で問題意識を持っている人が集まって作ってきた結果、色々課題もあると思うのですが、大方皆さんの間で良いものが出来てきているという評価になってきていると思います。NGOの間で、なぜ前回のNGO大綱に対して不満がこの協議会で色々出て、残ってしまったかというと、ドラフトの段階で関われなかった、ある特定の人たちに限られていてクローズドで、そこに関われなかったという事です。いくらパブリックコメントで、コメントを述べたところで、それは段階的にも手遅れだとところが大きかったという挫折感があると思います。そういった意味で中期政策のドラフトがODA総合戦略会議で話合われるとしたら、ここにODAネットからペーパーが出ていますけれど、今までと同じような形ではなくて、ここに述べられている提言のように、会議の公開性、誰でも発言できること、そういった点を是非クリアーして頂きたいと思います。
(高橋)
ODA総合戦略会議がはたして国民参加の促進をしたかという、そもそもの目的に照らした評価の認識で温度差があるんだろうと思います。私たちは促進ということにおいては、まだまだ十分ではないというふうに思っています。そういった意味で、外務省が主体的に提言しても良いはずだと考えています。また、今度の改選には、外務大臣である議長がメンバーを決めるということではなくて、公募して、公募の中から互選で議長を選ぶというプロセスも検討して頂ければと思います。
(神田)
ODA総合戦略会議につきまして、ODA中期政策にも関わる可能性があるというので、非常に重要かと思い一言申し上げたいと思います。渡辺課長からのお話ですと、渡辺座長代理の権限が相当大きいように伺ったんですけれど、ODA総合戦略会議の座長というのは外務大臣であるということは、外務省でもってこれをこういう方針でやるというふうに決められれば、これは委員の方々がどういうご意向をお持ちであっても、できるのではないかと思います。何よりも大事なことというのは、やはり多くの市民がそこに参加できるというふうなことと、そこでの議論が信頼に値するものになるかどうかであろうと思いますので、そこのための工夫ということ。今回3枚の資料を渡していますけれど、そういった手続きもすごく大事かと思いますので、そういった観点から考え直して頂ければと思います。
(伊藤)
私はODA総合戦略会議の委員であるので立場がちょっと微妙で、私自身ODA総合戦略会議にNGO関係者ということで入っています。私の役割はNGOのコミュニィーとODA総合戦略会議、外務省との間の橋渡しをすることと認識しています。ただ今日は熊岡さんがコーディネイターなので、その代理として来ています。1つ提案したいのは、石田さんからも提案がありましたが、中期政策にしてもODA総合戦略会議。国別援助計画にしても、骨子が作られる段階にNGO、その他関係者と話し合いの場を持った方がいいのではないかということです。今思い起こせばODA中期政策が作られる時に、NGO側から提案したんです。それはインドネシア、タイ、バングラディッシュに関わるNGOが複数集まり、外務省で議論を行いました。そういう形で今後あると、参加意識も高まって、ODAの国別援助計画に対するサポートも増え、むしろ外務省にとってプラスになるんじゃないかと思います。交渉の段階でどうしてもと言うことは、もう一つのアイデアとしては、作業部会で、これをODA総合戦略会議にも提案したんですが、各作業部会に一人はNGO関係者をメンバーとして入れるということが必要かなと思います。インドならインドに得意な人が、大橋正明さんのように長年インドに関わった人が入ることによって違う貯蔵かが入って、違うネットワーク、インドとの連携ができるんじゃないか、と思っています。最後に、現在進められている国別援助計画の作業部分の記録の公表です。これはODA総合戦略会議で私が、提案したんですが、現段階では難しいという反応がありました。外務省の方のミッションで、昨年9月にジャカルタを訪問しました。河野課長さんも一緒に行ったんです。最後の日に日本大使館で、元環境大臣を務めたエミル・サリムさん、現在NGOのリーダーにもなっている元住居・地域開発大臣のエルナ・ウィトラーさん、その他NGOの代表者7~8人が集まり、インドネシアの開発ニーズについて大いに議論を行いました。かなり良い話の内容で、NGOにも公表して教示されると日本の政府ミッション(ODA総合戦略会議関係者など)は、こういう形で努力しているんだという事が分かります。出来れば、作業部会のそういった議論も公表されると、信頼、期待が高まるんじゃないかと思います。その発言は今日は委員、コーディネイターとしてやっていますのでよろしくお願いします。
(田辺)
1つ目は国民参加というコンセプトから、是非ステイクホルダーの参加をコンセプトで広げて頂きたいなと思います。特にODAのプロジェクトの直接の受益者、被害者である途上国の住民も含めた参加というふうに、よりコンセプトを広げていって欲しいです。
政策改訂における意見交換、参加のステージなんですけど、私は大きくわけて3つあると思います。1つはドラフト作成前の評価段階。評価における参加。それからドラフトができた段階、一次案、二次案とできた段階での参加、意見交換。それから最終案段階での参加。最終意思決定者と同じドラフトをステイクホルダーが意見交換できるかどうか。この3点のステージでの、それぞれステイクホルターも違うと思いますし、やり方も違ってくると思いますけれど、それぞれのステージにおいて参加を確保するのが重要ではないかと思います。
(神田)
議論していけばどんどん出てくると思います。でも今日のところは今の7人の方々から出てきたご意見に関しまして、3人の課長さんの方から簡単にお答え頂いて締めていきたいと思います。
(渡辺課長)
ODA総合戦略会議のメンバーの改選の件につきましては、今度どういう方針で望んでいくかということについて、我々会議の事務局サイドとしてまだ方針も考え方も整理している段階ではないので、この場で申し上げるのは差し控えさせて頂きたいと思います。
公募というご意見が書かれてありますけれど、私の個人的な印象で申し上げると、公募ということになった場合、誰がどういう基準で選ぶのか、なかなか難しい課題ではないかなという印象を持っています。いずれにせよ、今日頂いた意見は私としても色々考えさせて頂きたいと思いますが、最終的には会議のメンバーの先生方とよく相談する話ではないかと思っています。
それからNGOの関係者の意見を早い段階で吸収していく、というところは一般論として結構なことだと思いますが、他方で全体の作業工程との関係で、NGOの関係者に限らず、色々な国内各方面の当事者の意見をどうやって取り入れていくか、全体の作業スケジュールとの関係もありますので、これは、もしかしたら河野課長や和田課長から説明があるかもしれませんけれど、全体のバランスの中で考えていく話だと思っています。
国民参加とステイクホルダーの関与という話ですけれど、国民参加という言葉を使う場合には、日本国内の納税者の理解を促進するということを念頭に置いて使うことが多いように思います。援助を実施する際に途上国の現地の住民に対する様々な配慮といったようことは当然考えていかなければなりません。規模の大きな円借款事業を行う場合には、ステイクホルダーの意見が反映されるよう十分留意するように相手国政府の実施主体に申し入れているというようなことも含めて、充分留意してやっているのが現状であります。
(河野課長)
福田さんから、ベトナムでのODA大使館の国別援助計画策定プログラムの位置づけといのがはっきりしなかったという御指摘を頂きました。ベトナムでの現地での作業だと思うのですが、私自身現地で具体的にどういう作業が行われたか、詳細まで承知してはおりませんが、結論から申し上げれば、この辺も整理しなければならないことだと思います。国別援助計画策定プロセスの中で、ODA改革の1つとして昨年くらいから現地ODAタスクフォースというものを立ち上げておりまして、大使館、JICA、JBIC、場合によってはジェトロ、場合によっては他の国際交流基金も入ってもらって、いわば分業しながらやるという体制を作っております。国別援助計画策定プロセスの中では、このODAタスクフォースが中心になって動くんですが、それ以前から存在しているODA大使館という、大使館とNGOを中心とする枠組みというのと、その辺整理が若干必要だなと。今までこういうご指摘を受けたことがなかったので、非常に有り難く考えさせて頂きたいと思います。
それから色々の作業の記録の公表については、なるべくやっていきたいと思いつつ、先ほど伊藤さんからご指摘があった、インドネシア大使館でやったNGOの方々との議論というのは非常に面白かったしためになったと思うんですけれど、あれはひょっとしたら公表することにあまり人の抵抗はないかもしれないけれど、国別計画を作るチームがジャカルタに行って色々議論をした、例えばインドネシア政府側の人間のと協議の記録というものはそのまま公表できるかというと、そこは同じに扱えない部分もあるだろう。そうなると非常に恣意的な形で、これは出す、これは出さないという形になるのは好ましくない。これもどういう工夫があるのかというのが課題だと思っています。
先ほどドラフトの作成前、作成時、最終案のご指摘は良く分かりますし、なるべくそうできればいいと思うのですが、先ほどの渡辺からあった通り、勿論NGOの方々というのは、正に国民参加という意味からは非常に大きな位置づけがあると考えておりますけれど、色々な産業関係者とか、学識経験者とか、色々な人と話をするものですから、全体のスケジュールの中にうまくなるべく組み込んでいきたいと思います。1つには、どの段階で意見交換をやるかというのを悩んでいると申し上げましたが、ドラフト作成前に、というご指摘もあったので、そういう早い段階に一回できないかなあということを少し考えてみたいと思います。場合によっては、あまり煮詰まらない議論、言いっぱなしの議論になる可能性もあると思うのですが、そういう議論すること自体に意義があるかも知れませんので、我々としてこれはどうでしょうと示す前の段階、とりあえず、これまでこの国に我々がやってきたのはこういうことです。これからどうしましょうかという、ラフなディスカッションみたいなことをやるということを考えてもいいのかなと感じた次第です。
(和田課長)
私の方から追加することは無いんですけれど、我々も日々膨大な仕事量の中で苦しんでいる部分があって、大綱プロセスの中で、あの時は挫折感があったというお話もあったんですけれど、なかなかもっともっとできるかというと、出来ない部分もこれまた現実の問題としてあると思います。他方、皆さんの参加意識を高めることは政府にとってはいいことではないかとご指摘頂きましたし、私もそうだと思っていますので、今後何ができるのか、全体のバランスも見ながら我々のできる範囲で、何か考えていくということではないかと思っております。
(神田)
公聴会とタウンミーティングについて、その使い分けについてお答え願えればと思います。
(渡辺課長)
ODAタウンミーティングはODA総合戦略会議で議論していることを各地方においてご紹介しながら、その地方の人たちの意見を吸収させて頂くという目的で公聴会というのは、特定のテーマ、最近ではODA大綱の見直しプロセスにおいて開催したと思います。事前の広報では両者を区別してやっているつもりはあったのですが、今日のご意見もあるんで、もう少し明確にするように努めたいと思います。
(神田)
この辺りで切りたいと思います。外務省の方から特に報告などございませんか。なければ閉会にあたりまして、五月女大使の方にマイクを回してご挨拶頂きたいと思います。
(五月女大使)
非常に長い間、ありがとうございました。非常に活発な意見を頂きまして、出来る限り皆さんのご希望に添えるような形で検討させて頂くことになるかと思います。
先ほどから申しましたように、私もアフリカの応援団の一人ですので、やはりODAがあるところに偏るというのは非常に残念、と言わないけれど、他の所も考えて頂きたいなという事も感じております。しかし現時点では日本の国益ということも考えますし、流れの中で、現時点ではイラクというものを重点的にやるということも大事であると思っていますので。
先ほどから出ています15億ドルの使い道も透明性を持って効率的に効果的にやっていくという面で、NGOの方々にも積極的に参加して頂いて、より良い成果を挙げるということに持って行けたらいいんじゃないかなと思っています。
今日はODA政策策定の方の議論でしたが、この中には実際に現地にプロジェクトを持って活動されているNGOの方々もおられますし、色々な面で色々な形で皆さんのご意見を聞きながら、実施していくということになって参ると思います。そんなことで日本の今後のODAの行方というものはイラクに限らずアフガニスタンのフォローアップ、スリランカの停戦の話、東チモールもありますし、アフリカの感染症の問題から始まって水の問題、広くODAの行方は大事なものがあるんですけれど、残念ながら今のところ、ODAがずっとここ5年間くらいで30%もダウンしているという状況で我々も危機感を持っておりまして、私も各地でODAの必要性、大事な所を強調して皆様のサポートを得たいということを思っております。特に他の先進諸国はODAを伸ばしております。やはり日本もそこでどんどん落ちてしまうというのは、かろうじて今草の根無償は伸びていますけれど、草の根無償が伸びていると言っても全体が落ちてくるのは危機感があるわけです。その中で日本にとって長い歴史を見れば、日本も世界の国々から助けてもらった国ですので、やはりそういう面から見れば、我々は助けを求めている国々を助けるということは非常に大事なことである。そのためにもODAをこれ以上減らしたくないという気持ちは非常にたくさん持っているわけです。そういう面もございまして、透明性を確保しながら実施するという面で、皆様方のご意見、提案は非常に大切なものであると思っています。
今日聞いておりまして、私はこちらに出ている各局の政策課長以下、課長の方々の考え方と皆さんの考えは非常に近いと感じました。ただ色々な制約があるし色々な条件があって、なかなかピッタリはいかないけれども、話を聞いて同じ方向に向かっているなということを感じました。それで今日の意見交換は非常にうまく行ったのではないかという気が私はしました。そんなこともございまして、これからもこういった会合を積極的に持って議論が深まっていくことを期待しております。
今日は長い時間参加頂きましてありがとうございました。遠いところからたくさんの方々に来て頂いて、また今後ともそういった面で皆様方の外務省へのサポートも1つお忘れ無く、ということでお願いしたいと思います。今日はありがとうございました。
(神田)
どうもありがとうございました。それでしたら、次回のおおよその日程だけ調整させて頂きまして散会させて頂きたいと思います。4ヶ月に1回という見立てでいきますと、次が6月くらいというふうになりますが、議会との関係等で前倒しした方がいいとか、若干後がいいというのがありましたら、その当たり調整しますけれど。
6月の上旬位で日程を調整させて頂いて、後は事務局ベースで調整ということでよろしいでしょうか。それではNGOの関係の方々も皆さん調整させて頂きますので、今後ともよろしくお願いします。
どうも今日は長時間ありがとうございました。これにて散会いたします。