※NGO:非政府組織(Non-Governmental Organizations)
日時 | : |
2003年7月4日(金曜日)15時00分~17時10分 |
会場 | : |
三田共用会議所 |
議題 | : |
(NGO、外務省合同議題)
(1)イラク復興支援と国際平和協力のあり方
(2)債務放棄後のモニタリング
(3)ODA大綱の見直しとODA総合戦略会議の役割について |
報告 | : |
(外務省側)
(1)「第3回アフリカ開発会議(TICAD3)NGOシンポジウム」開催について
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配布資料 | : |
議題1) |
「イラク復興支援と国際平和協力のあり方」(NGO) |
議題2) |
「債務放棄後のモニタリング」(NGO) |
議題3) |
(1) |
「ODA大綱」見直しとODA総合戦略会議の役割(NGO) |
(2) |
「ODA大綱見直し」に関するNGOからの共同意見書(NGO) |
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その他の資料
(1) |
人間の安全保障委員会最終報告(英文)(外務省) |
(2) |
6月18日以降のテロに関する渡航情報(スポット情報、広域情報)の発出状況について(外務省) |
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出席者 | : |
1.NGO側
石田恭子(「環境・持続社会」研究センター)、小野了代(京都NGO協議会)、神田浩史(特定非営利活動法人 関西NGO協議会)、片山信彦(特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター)、西井和裕(特定非営利活動法人 名古屋NGOセンター)、福田健治(ODA改革ネットワーク)、森裕次(農業・農村開発NGO協議会)、山上正道(特定非営利活動法人 AMDA)、松本悟(メコン・ウォッチ)、吉川次郎(日本民際交流センター)、明田真澄(国際労働財団)、佐々木緑(国際労働財団)、大河内秀人(特定非営利活動法人 パレスチナ子どものキャンペーン)、田辺有輝(「環境・持続社会」研究センター)、大竹直子(「環境・持続社会」研究センター)、鈴木瑛子(JPMA(パレスティナ医療協会))、Kyaw Kyaw Soe(チョーチョーソー)(ビルマ市民フォーラム)、寺嶋悠(NGO福岡ネットワーク)、飯塚啓(日本インドネシアNGOネットワーク)、信澤健夫(特定非営利活動法人 BHNテレコム支援協議会)、磯田厚子(特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター)、高橋清貴(特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター)、榛木恵子(ODA政策協議会事務局)
2.外務省側
五月女NGO担当大使、横井課長(経済協力局政策課)、西永課長補佐(経済協力局政策課)、臼井課長補佐(国別開発協力課)、須永課長(調査計画課)、高田企画官(有償資金協力課)、有馬首席事務官(無償資金協力課)、光永課長補佐(無償資金協力課)、中野首席事務官(民間援助支援室)、斎藤事務官(民間援助支援室)、中島事務官(民間援助支援室)、杉尾事務官(人権人道課)、原田専門官(アフリカ2課)
3.国際協力事業団(JICA)
奥村職員(国内事業部国内連携促進課)
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<議事録>
司会(NGO:西井)
去年12月に第1回目の政策協議会を行い、その時にNGO側・外務省側との間でODA政策協議会の持ち方について大枠が確認され、実施要綱が作られた。そのあとを受けてNGO側としては今年の2月に、ネットワークNGO全国会議でNGO側の体制を固めて、外務省とこの協議の仕方についての議論をしてきたという経緯がある。
当初の開催予定だと4月、8月、12月という年3回の開催予定だったのが、4月開催が7月ということになった。年3回というペースはこれから維持していきたいと思う。次回の開催は、今日の議論を受けてできるだけ早い時期に開催していきたいと思っている。
ただ今から議論に入って行きたい。その前にNGO担当大使をしている五月女さんから一言ご挨拶をお願いする。
外務省:五月女
(冒頭挨拶省略)
今年は特に色々な国際会議、国際紛争がずっと続いており、外務省やさらにNGOの方々が活躍する場というか活動するフォーラムや会議に多数ある。G8エビアン・サミットとスリランカ復興開発会議会等に関連したNGO対話等、多くのNGOに参加して頂き成功の方に向かっていったということに感謝している。
ご承知のようにODAは非常に厳しい中で、これまでよく言われていた“ODA世界一”というのは2001年にアメリカに抜かれて第2位になってしまったが、NGOの方々、外務省、財政当局の理解もあり、NGO支援の予算というのはずっと伸び続けているという状況である。さらにこれは日本のNGOを支援するばかりでなく、海外のNGO、あるいは海外の自治体等を支援する予算も増え続けているということで、それは私共としては大変喜ばしいと思っている。しかし諸外国、欧米諸国と比較すると、日本のODAの中に占めるNGO予算はまだ少ないと思うので、もっともっと努力すると同時にNGOの努力ということもぜひ期待したいと思っている。
ご参加のNGOとは多方面で 経済協力ばかりでなく、人道問題・人権問題、色々な面に関わる議論をして頂ければ幸いである。これから2時間の会議では、忌憚のない意見交換がされることを期待している。
司会
今回の会議に向けて、NGO側としては議題を公募したところ17議題あった。その中から絞りに絞って3議題に絞った。どれも中味の濃い議論が聞けるかと思う。そのためには時間を有効に使いたい。できるだけ皆さん発言なども手短かに要領よくお願いしたい。発言される時は、所属・お名前を名乗って頂きたい。
それでは簡単に自己紹介をして頂きたい。
(自己紹介・省略)
司会
外務省からの報告事項として「第3回アフリカ開発会議NGOシンポジウム」開催について説明。
外務省:原田
私の方から一点、第3回アフリカ開発会議(TICADIII)に向けて、NGOの方々が主催するNGOシンポジウムについて、紹介だけさせて頂く。
TICADに関心をもって活動しているNGOグループで『ACT2003』があり、そこが事務局になって同シンポジウムが企画されている。
「開催日時:8月3日(日曜日)、会場:国連大学の国際会議場、テーマ:「アフリカの開発にどう取り組むべきか」、参加者:NGO、研究者、学生のシンポジウムを計画している。
TICADを主催する外務省、それとUNDPが後援する形で、シンポジウムを開催する。詳しくは『ACT2003』が近々広報の予定である。皆さんには参加して頂きたい。
司会
質問は。なければ、さっそく協議事項を開始する。
(1)イラク復興支援と国際平和協力のあり方について。
NGO(高橋)
この協議事項の最初のイラク復興支援と国際平和協力のあり方について何点か質問させて頂く。今日はあまり時間もなく、特にこの議題に関しては、おそらく外務省からも説明があるだろうが、今後の日本のODAの一つの柱になると聞いている。その中において、今日一回では終わらない話だと思う。私が提出した質問書は皆さんの手元に既に配られていることを前提に話をする。
できるだけ議論の時間を長く取りたい。今日は、ここにはイラクと書いている、イラクに拘泥することではなく、むしろ国際平和協力ということの考え方全体についての意見交換をしたい。
また、国際平和協力と言った時に、ここはODAの政策協議という場ではあるが、おそらく色々な分野が関わってくるということもあり、外務省だけでは答えきれない部分もあるのかもしれないが、できるだけ広く意見交換をしたい。
この国際平和協力という分野は、「平和構築」など様々な言い方がされる。確かに国際情勢の移り変わりの中で、特に現代紛争の一つの特長であるところの、どこで戦闘が終わったのか、どこから始まったのかが曖昧で分からないという中で、常に平和のことを念頭に置きながら現場での活動というものがきわめて大事になってきているという、一つの関係的な側面がある。他方、日本の側もある種新しい分野というわけではないが、必要性があるということで、一つ注目を浴びてきた分野なのだろう。
この国際平和協力という分野は、NGOも明確に定義を持ち、きちんと考え方を持って、現場ではそれぞれニーズに答えながらやってはいるが、これからもっと議論をしていきたいところだ。
おそらく外務省では様々な政策部署で、国際平和協力について意見を出しているように見受けられるが、それについて意見を交換したく、大きくは3点意見をお聞きしたい。
1) |
国際平和協力に対する理念・考え方について。
まずは「国際平和協力」「平和構築」「平和定着」という用語の定義が解り難い。実際に、平和構築ということに関しても、国際社会・国際ドナーの定義が一致していないと我々は理解している。特に93年のcheck Agenda Co-Peaceから「平和構築」という言葉が出てきたと思うが、その後様々な変遷を経て、定義も移り変わり、拡大してきている。大変、境界が曖昧になってきている中で、日本はどう考えるのかというところを定義という形で教えていただきたい。 |
2) |
「平和構築」というものを、日本が政府として行動する場合にどのように考えているのか。
特に視点の一つとしては、「人道」という視点がどの程度入ってきているのか。そして外交との関係について。
紛争地というのは極めて政治的な状況で、ポリティカルなコンテキストが強いと我々は理解しており、そうした中で平和構築・復興・平和定着に取り組むということは、それなりの配慮も必要である。中立性・公平性などの、いくつかの原則のようなものが、特にNGOの場合は活動してきて極めて大事だと思っている。
他方で平和構築ということは、外国とのつながりの中で語られる部分もあり、そのあたり、日本が政府として行動する場合にどう考えているのか、ということをお聞きしたい。 |
3) |
過去のODAのレビューについて。
国際平和協力ということを日本政府が進めていく上にあたって、これまでどのような実績があり、その実績に基づいてどのような教訓を学んできて、今後どのように進めていこうとしているのか。その実績についてのデーターみたいなものがあったら是非紹介して頂き、もしかすれば私たちと意見が違う部分があるかもしれないので、そういう話もしたい。それに合わせて、そういった実績とか経験を集約するような一時的体制というようなものは、特にこの国際平和協力という分野では経験から学ぶ部分が極めて大事であり、NGOなどの現場でやってきて、頭で考えるのと経験、一つ一つ紛争の状況は違ったりするのだが、そこから学ぶものが大きい。そういうものを集約することが極めて大切になっている。そういう考え方のなかで、外務省側の実績と経験の集約の体制を聞きたい。
これは過去のODAのレビューとも繋がってくるが、プラスに働きかける、平和を作るということだけではなく、さきほどの政治的なコンテキスト・極めてセンシティブな状況ということにつながるが、ODAは金額が大きいということもあり、政府がやるということもあるが、それによって平和に導くのではなく、逆に紛争に火を注ぐ、逆に紛争を助長してしまうということもあり得る。そのあたり、国際社会・OECDなどで平和配慮というガイドラインを作ろうとか、考え方を整備しようと議論している。この点に関して日本政府がどのように考えていくつもりなのか。
特に現在、ODA大綱の見直し、これは後で議論すると思うが、特に軍事的な政権だとか、どこかで歯止めやガイドラインのようなものがあった方がいいと思うが 大綱以外のガイドラインのようなものを考えているのかについても聞きたい。
ここで一旦、外務省の説明を聞き、自由に意見交換させて頂きたい。
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外務省:横井
経済協力局政策課長として、今答えられる限りの範囲で答えたい。
順不同になるが、まず理念・定義論について。数十年前は、基本的には、ODAというのは途上国における開発を進める、福祉を増進するといったところが一番大きな任務であった。そのためには色々なやり方があった。他方、最近明らかになってきたことは、90年前後の冷戦の崩壊によって、開発を進めるとか福祉を増進させる以前に、-戦乱が続き、そのことによって昨日よりも今日、暮らし向きが良くなるということすら望めないという状況の中で、まずそれを正常な状況に戻し、その上で開発を進め、そして福祉を増進する、という、まさに開発に先立った部分での活動というものが必要とされた「平和構築」というものが、ODAの課題として出てきた背景である。
外務省内の欽定版定義というのはないが、念頭においた定義を言えば、平和構築の概念というのは、平和をまず定着させ、復興に手がつかないような所の条件を整えること、「平和の定着」「その上の国造り」の二段構えを考えている。平和構築というのは、「平和の定着」と「国造り」という二つの側面を持っている。
「平和の定着」を考える場合、紛争が起こる前→発生→終息という紛争の段階があるが、大事なのは、紛争を起こさせないという努力、紛争予防という段階である。仮に紛争が始まってしまった場合には、その紛争を拡大させないという努力が必要である。その上で、紛争を終息に結びつけるような努力が必要である。紛争が実際に落ち着きつつある所では、その中で大きな被害を被っている国内に様々な -難民が発生すれば難民対策、あるいは食糧が足りなければ食糧を、水が足りなければ水、シェルターが足りなければシェルターといったような- 人道に基づく復旧支援が、その段階で必要になる。実際に紛争が片づいた、一応終息した上では、今のイラクもそうだが次に治安の回復が必要になる。そして、対人地雷の除去のほか、紛争の副産物としての軍隊ならびに武装勢力のDDRつまり武装解除・動員解除・元兵士の社会復帰支援、といった段階がある。これが「紛争の発生と終息」に着目した、「平和の定着」の具体的な努力内容だと思う。
その後の国造りだが、国造りというのは、政治・経済・社会、あらゆる面でその秩序が崩壊し仕組みが無くなっているので、例えば政治面だと選挙制度を含む民主的な政治制度を整備し、そしてその行政組織を整備し、また、経済・警察・司法制度の整備を行うといったような政治的な枠組みの構築が必要であろう。
次に、経済的な枠組みとして、経済金融制度、いわゆる経済プラン、それから経済インフラである道路・港湾・橋梁などの一番最低の部分の整備が必要である。
最後になったが、一番重要なのは社会的な枠組みの整備だろう。例えば保健医療・教育・水などの分野。あるいは教育・職業訓練制度、またその中にあって人権・ジェンダー・平等の確保、最後にメディアの支援。それらが概念的には挙げられる。
外交面では、一番大事なのは紛争が起こる前の努力だろうと考えられるので、「予防外交」と最近は整理されているが紛争を芽のうちに摘んでおくことである。あるいはそれ以前の、紛争が起こらないように安定した、かつ繁栄した社会・国造りというものが、前段階の努力としてある。不幸にして紛争が起こってしまった場合には、国際社会全体が努力をし、たとえば、国際機関が中心となり個々の国々が協力するなど、その紛争の解決に努めることが必要である。紛争が一旦終息すれば、緊急の人道援助の実施。それが落ち着けば、次の国造りの初歩的な準備、そして最後に定着。たとえば、日本がアフガニスタン等々と結びついて行ってきた復興会議の主催、ないし支援というようなことも考えられるだろう。
不幸にして紛争を助長するという可能性もあるのではないかという指摘については、可能性としてはあるだろうが、誰もが避けたいことである。少なくとも日本のODAというのは、この部分について一番神経質にできている。ODAが紛争を助長したり、あるいは軍事的な目的に使われるということに関しては、極めて神経質な運用をしてきた。それは現行の大綱の中にも書かれており、また新しい大綱の原則にも受け継がれていく。
そして「平和構築」ということを考える上で、「人間の安全保障」という考え方が、非常に参考になると思っている。当初我々がODAを考えた時には、開発・福祉の増進であったが、その担い手は相手国政府というのが原則であった。しかし、国自身が機能していない中で、「人間の尊厳」「その尊厳を意味づける安定した生活」「必要な物資の確保」などは、相手国政府に期待してもなかなか充足されない。そのような場合は、相手国の中にあるコミュニティーを支援する、あるいは、その中にある人間同士の関係を直接支援することによって紛争下における人道的な面を充足させるというのが、人間の安全保障における基本的な考え方だと思う。「人間の安全保障」については、最近レポートが出たところで、これに基づく充分なODAの蓄積というものはないが、我々が政策を考える上で、常に「人間の安全保障」という視点に立ち返り、再検討するのが良いと考えている。
NGO:高橋
最初に申し上げておくことは、私たちはこの分野は大事だと思っており、おそらくNGOが結構協力できる分野なので、その意味で、慎重に真剣に議論を続けていきたいという意味で質問させて頂いている。必ずしも最初からネガティブなものではないと確認しておく。
今の話に対して、5点質問させて頂きたい。
1) |
平和構築に関して。
今定義に近い説明があり、「平和定着」と「国造り」の組み合わせという話しがあった。まずはじめに、外務省の考えを政策文書できちんと出して頂いた方が良い。それがないと、メディアの報道は別にしてもその後出てくる色々なODA関係の文書が何を言っているのか解らなくなると思う。きちんとピラミッドを造る「政策の定義」をどこかで発表して頂きたい。
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2) |
国造りに関して。
今の外務省のアプローチは、「拡大・拡張人道アプローチ」というか、色々な側面から色々なことをやろうとしているように思える。たとえば、経済・政治・社会分野においても保健・水・教育・メディアと言っている。イギリスなどは、「貧困削減」というようにはっきりさせて、そこに集約させているような感じがあり、どうも日本の場合は、「国造り」といっても色々なセクターをやる訳だ。こういうアプローチの一番分からないところは、評価である。特に国造りなど、色々なセクターの分野が相互に絡み合っていることが出てくると、評価の仕方で解り難い部分が出てくる。特に平和ということを目的に絡めた場合は、評価がかなり難しい。これについて、これから考えを作っていくとは思うが、今はどのように考えているのか。
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3) |
予防外交について。
ここが国民にとって分からないところがある。特に紛争が自然発生的にできるものではなく、ある種人為的な部分があって、いくつかの紛争。 端的に言ってしまえば、今回イラクにしてもアフガニスタンにしても、どうもやっぱり日本は作った側にあるのではないか。ところが他方で平和構築・紛争復興ということを言っている。予防外交とは何だろうと思ってしまう。広い外交理論になるのだろうが、ODAの側面から見ていくと、色々な紛争があると分かるのだが「関わるべき紛争」「関わってはいけない紛争」がある中で、倫理的なところも含めて、それが整理されていない感じがする。それが外務省に対する不信感や、私たちNGOが一緒にやる際に、私たちに対する不信感などに繋がる。その辺の考え方をはっきりさせて頂きたい。
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4) |
ODA大綱の運営について。
紛争を助長させないということでODA大綱のことを言われたが、これはあとでODA大綱のところで深い議論になると思うが、大綱に述べている原則をどのように運用するか、が重要である。運用においては、総合的判断とか色々あり、ある種ブラックボックス的なところがある。「この場合は良くて、この場合は悪い」というような悪い言い方をするとダブルスタンダード的な理念を作ってしまうところがある。確かに文面としては良いものなので、運用については後でODA大綱のところで答えて頂きたいが、これから益々「国際平和協力」が重要になっていく中で、その部分の大綱の運用に関しては極めて慎重であるべきだと思う。
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5) |
NGOとの関わりについて。
新しい分野であるし、考えるべきことがたくさんあり、その中で外務省とNGOが一緒にやっていくためには、お互いの経験の共有や教訓の共有というプロセスが必要である。NGOが現場で活動していると、その時々の紛争の状況などの分析を自分たちの現場できちんとやるということが、自分達の活動の安全にも繋がるということもあり、大事である。そういう紛争分析の専門家みたいなものを、外務省側でもきちんと整えていこうと考えていると思う。そういう部分でも、NGO側と経験を共有するなど、一緒にやっていける部分があると思う。それに対する意見をお聞きしたい。
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外務省:横井
まず、政策文書で外務省側の考え方をきちんと記すべきではないか、という点について。紛争全体を経済協力局で全部見ている訳ではないが、少なくとも外務省の政策文書としては、毎年出している外交青書・ODA白書があり、その中の平成15年度版では、「紛争への包括的取り組み」といって、この中にいくつか総論から各紛争防止など、外務省の考えをここで述べている。これに基づいて議論するのが一番良いかもしれない。
次に、現在の日本の政策の中で、様々な取り組みが総花的に示されているのではないか、という点については、先ほど私が申し上げたのは、概念的な整理であり、これは少なくとも紛争における取り組みというは日本だけで行っているのでは勿論なく、様々な国・様々な団体・国際機関が取り組んでおり、その中で其々が得意なところを分担してやるのだと思う。その中で、日本が比較的関心をもって、例えばアフガニスタン等々で取り組んだのは“バックトゥスクール”である。日本としては、教育・医療・水というところに比較的関心もあり、得意であると思っている。何でもできるつもりはないし、比較的得意な部分に取り組んでいくべきと考えている。
それから予防外交について、「関わるべき紛争」、「関わってはいけない紛争」というのは私にはよくわからないが、「正しい戦争」「正しくない戦争」という言い方が昔あった。イラクの戦争に対する評価は、これは評価が分かれるところである。先ほどの質問は、「イラクの戦争は不義の戦争であり、日本はそれを支持するべきではなかった」と言っているのかもしれない。その部分には国会で散々論戦のあったところなので、要すれば場所を改めて議論を要する問題だと思う。
どうしても残ってしまうミッションについて。紛争の後、取り残されてしまう弱者、つまり女性・子ども・家族を亡くした人・職を無くした人に対して、当面の水が無かったり食糧が無かったりという状況に対して、人道的なニーズというのはどうしても残ってしまう。その部分についての活動が残るわけで、どちらかのNGOの団体の“困っている子どもを誰が助けてもいいじゃないか”というコマーシャルがあったが、私はあれは非常に正しいと思っており、困っている人がいれば助ける -原因のいかんに因らずそういった部分がとりあえずある-その上で国全体の構え、国全体の利益として、あるいは国全体の考え方としてどういうふうにその紛争に関わっていくかは、別途の問題としてある。
それから大綱の運用について。これはおそらく政策について、法律に基づくとしても、ある条項をどう判断するかというのは必ず裁量が入ってくる。特に、大綱の4原則の部分について、総合的に判断するという部分が出ており、例えば、パキスタン、インドが核実験をした時に、それを理由として日本は援助を止めた。しかしその後情勢が変化し、9.11以降アフガニスタンに対する制裁が起こるにあたって、その周辺諸国という考え方で、パキスタンに対する制裁が解除されたが、少なくとも我々として心がけなければならないもののうち、裁量を行うにあたっては透明性が必要である。それから結果についての報告が必要である。そしてそれに基づく皆さんからの批判・批評を受け付けることになる。
従って透明性について、先ほど申し上げたODA白書にその原則の運用については毎年でているわけで、こういったものをまとめて学者の方が何本か論文を書いているので、そういう物も参考になると思う。少なくとも運用については常に白書の形でご報告させて頂く所存。
「平和予防」「平和定着」などの部分における経験というのは、かなり限られている。我々自身もコソボ・東チモール・アフガニスタンがあって、今イラクがあるのだが、最初に述べた通り、ODAの対象として「平和の定着」というのは極めて新しい分野であるだけに、我々自身の経験も非常に限られている。故に一線で活躍されている皆さんの経験、見方は極めて貴重だと思う。
そういう意味で、「平和の定着」そのものというのは、昨年の夏以来、官房長官の諮問の形で平和懇談会の提言というものが昨年の年末に出ている。それなりに包括的にまとまった文章であると思う。今それについてのフォローアップというのをどうするか、政府の中で検討されている。そのフォローアップがなされる中で、あの提言の具体化が進んでいくと思うが、政府のしかるべき部門と定期的にこういう話し合いの場を持って、皆さんの経験を聞かせて頂くというのはいいことだと思う。
司会
これに関して、他の方の意見はどうか。
NGO:高橋
最後の経験や教訓の共有というのは、是非検討していただきたい。その際に過去のODAについて、平和の観点からのレビューなどを含めて頂ければ、多分前の質問にあった大綱の運用の話とも繋がってきて良いと思う。そのような形で検討していただきたい。
外務省:横井
これは開発に限らない側面があるので、必ずしもこの場で検討するのが正しいのか解らないが、具体的に開催する場合には、検討会を開く等も含め改めて協議したい。
NGO:高橋
質問項目は、その辺の具体的な実施体制のあり方についても用意していたが、時間もないので、改めて今のレビューと繋がるような形で次回に時間を設けて意見交換させて頂きたい。
司会
確認1) |
横井さんの提案:外交青書・ODA白書などのODA大綱運用の報告などについての資料の読み込みなどを行って、共通の基盤に立って一度議論しよう。 |
確認2) |
高橋さんの提案:経験の共有とその継続についての2点、そして今日準備していたこれに関する議題もあるが、それも次回に協議していく。 |
次に進みたい。協議事項の二つ目。債務放棄後のモニタリングということで、今から資料を配付する。
提案者はメコン・ウオッチの松本さん。
NGO:松本
今日は共同議題提案という形で、債務と貧困を考えるジュビリー九州と一緒の提案である。
本日配布している短い議案について、ご意見などを用意されていると思う。今お配りしたものはあくまで私としてここで述べておきたい意見も含んでおり、必ずしも質問という形はとっていない。
すでに2003年度に返済期限を迎えた部分について、債務放棄ということが今後始まってくる。交付金によってJBICの方に300億円という予算が当てられるという形になっている。これについてどう考えるかということについては、これまで重債務貧困国の債務問題について取り組んできたNGOの中からは評価する声が大きいというのは事実だろう。
一方、今まで日本政府は債務救済無償資金協力を使って単に債務をキャンセルするのではなく、しっかりとモニタリングをする。それが相手国の国民生活向上、あるいは経済発展のために適切に使われているかどうかをモニタリングするのだということが、少なくとも公に述べられていた債務救済無償資金協力の趣旨だと。ただそれが現実的には極めて厳しいものであるということが外務省の中で聞かれる声であり、それもまた事実だと思う。しかしながら、私はしっかりモニタリングをするという考え方は賛成である。救済してキャンセルしてお終いということにはならないと思う。
そこで、実際にいま対象となっている国々のリストを見ると、様々な国がある。HIPCsの対象国でPRSPを勧めている国もあればそうでない国もある。TDB無償の対象国であればそうでない国もある。様々なカテゴリーを外務省は4つくらいに分けているが、TDBとHIPCsの関係で分けていると思う。そういった国々の状況に応じて、どのように今後モニタリングをしていくのか、ということが一つ重要。すなわち債務を放棄する 一般会計からJBICに対して交付金を出してキャンセルする。それでは、それが適切にODAの目的、もともと債務を救済する目的であるそうした貧困国の、国民生活の向上とか経済的な成長であるとか、そういうものに使われているかどうかをどのようにモニタリングするのかということが、今日の最大の質問の趣旨である。
今配ったものには、もう少し細かくそれを書いてある。第1点目のモニタリングの方法というのは一般的なものである。最初にお送りした質問の中でも特にビルマ(ミャンマー)に対してという書きぶりをしている。ご承知の通りHIPCsの対象国でありながらPRSPのプロセスを取っていない国である。PRSPをやっている国については世銀等MDBsと協力しながらその成果の程をモニタリングしていくといった方法はあり得るのかと思うが、こうしたビルマ(ミャンマー)のようにPRSPのプロセスを進んでいない国に対しては、日本が独自で何らかのモニタリングの方法を取らざるを得ない。そうでなければ債務放棄の成果を見ることができないと思う。
特にこのビルマ(ミャンマー)については、対象となる額は2,735億円と報道されており、対象額からすると非常に大きい。全体の3割を占めているということになるので、この辺りについては、モニタリングの方法の中で具体的に議論していく必要がある。
それに関連し、これはビルマに限らないと思うが、我々はビルマ(ミャンマー)について様々に情報を持っているので、それを例として挙げますが、債権額2,735億円の内1,500億円程度は延滞債権である。この延滞債権が債務の放棄の対象なのかどうかが非常に曖昧になっており、対象の中に2,735億円と書いてあると、延滞分の1,500億円も対象なのかな、と見ていると思ってしまう。このあたり、モニタリングという意味では延滞債権の扱いは非常に重要であると思っている。この辺については、どの様に考えていらっしゃるのか、ということについてお答え願いたい。というのは、引き続き債務救済無償資金協力が残るというふうに理解することもできる。2003年度よりも前に返済期限を迎えている資金については、これは引き続き債務救済無償資金協力になるのかなということも考えられる。
これまで債務救済無償資金協力では、一旦返済されて、ほぼ同額が無償資金協力で出され、それをどういうものに使ったかというリストを提出させるという方法をとってきた。しかし、そのリストが提出されていない国も多かった。あるいはリストの内容が非常に不十分で、実質的には使途不明金というのも多かった。従って、今回の債務放棄によって全てそれがクリアーになって終了というわけではなくて、やはり2002年度までに返済分を迎えたものに対する対応というのが外務省の中に残らざるをえない。かつ2003年度以降に返済期限を迎えたものについては、新しい債務放棄の枠組みの中でのモニタリングを考えざるをえない。ある意味、過去の大変なやり方の呪縛を持ちつつ、新しい方法を考え出さなくてはいけない、そういう立場にいるのかなと思う。そのあたり、私は無償資金協力の中で債務救済が今まで占めてきた額的な割合というものが無視できないほど大きいものだから、そういう意味では真剣に考える必要があると思っている。
最後アップデイトの話だが、昨今アウンサンスーチー女史の拘束事件を受けてODAの新規分については凍結という報道がなされているが、実際問題、対ビルマ(ミャンマー)のODAは過去数年を見ると、半分くらいが債務救済無償資金協力だったということを考えると、もし外交上、日本政府の姿勢を示すのであれば、債務救済無償資金協力、今回から債務放棄ということになるが、これについてもなんらかの態度を対ビルマ(ミヤンマー)に個別にするべきではないかということを考えている。これについて何か外務省で考えていることがあれば、それをお聞きしたい。
高田:外務省
今の説明の通り、今までは、一度返してもらってまた出すといった債務救済無償資金協力を続けてきた。それは今年度からやめて、JBICの債権を放棄する。これを償却するという方法に変えることとしている。当然だが債権を放棄すればおしまいというわけではなく、日本が債権を放棄した国が国全体として貧困削減や経済社会開発をちゃんとやってくれているかということを見ていかなければならない。それも今までは債務救済無償資金という形だったが、今後は国際社会の枠組みを活用する。すでにそういうのができていたのを今後は積極的に参画するという形でやっていこうと思っている。
今回の対象国のほとんどがHIPCか、またHIPCでなくてもIDA(第二世銀)融資対象で、HIPCの国はもちろんのこと、IDAの融資を受けるという場合は今やPRSPを作らざるをえない。だからHIPCでないバングラデシュなども間もなくPRSP認定という段階だと思う。国際的にはそういう中で、ここまでは日本は独自にやってきたが、今後それに積極的に参画することによって、それに貢献し、かつ我々(外務省)の目でも見ていきたいというふうに考えている。
そうはいっても、ミャンマーは対象だが、当分PRSPはできないのではないかというのが、御質問のかなり大きなポイントかと思う。ミャンマーについては ―ミャンマーだけではないが― 債権放棄に関する政府間の交換公文というものはまだ締結していない。ミャンマーだけでなく全ての国に対してまだやっていない。最初に円借款を供与する時に、供与のための政府間の公文があって、それを受けてJBICの借款契約というのがある。債権を放棄する場合はまた政府間で交換公文をしてということになるが、実はまだ準備中・作業中である。そういう状況の中でミャンマーについては、今回のような事態になっている。
今回の状況が非常に深刻であると認識しているので、このまま準備して進めるかということは、状況を見極めつつ慎重に対応していかなければいけないと考えている。それ以降の話はまた考えなければいけないが、今のところミャンマーについてはそれ以前の段階ということである。
それから延滞については、(1)ミャンマーのようなTDBの国については、これまでは期限がきたら返してもらって、債務救済無償を出すという方法が、今後は期限がきたらその分を放棄するという形である。そうすると延滞が残ってしまう。HIPCだと-あるいはTDBであっても同時にHIPCであると-完了地点に達すれば全て負債解消となる。
(2)HIPCにならない国、あるいはHIPCでない国についても、日本独自の観点で、何らかの形で、いつの時点かで、その国の経済改革とか状況を見て、やはり最後は延滞分も解消するということを考えなければならない。
そういう意味で、債権放棄の対象額というのは延滞分を含めた額になっていた。ただ、当面は支払期限のきたものから放棄していくので、延滞額が残るということである。
寺嶋:NGO
これまで債務放棄の問題は、いつも外務省が担当なのか財務省が担当なのか、たらい回しのようにさせられたが、このことに関しては有償資金協力課の方に聞けば全て分かるということでよいのか。
高田:外務省
円借款の制度というのは三省体制、三省というのは、あと財務省と経済産業省だが、取りまとめは外務省。もちろん調整はしなければいけないので外務省だけでは決められないが、債権放棄に限らず円借款は外務省が取りまとめている。
松本:NGO
配付資料の2-2とか2-4について外務省の現在の考え方はわかったが、肝心の2-1モニタリング方法については、回答がない。想像するにまだ考えていないのかなとも思っているが、これはすごく難しい問題で、そんなに簡単にモニタリングの方法が見つかるとは思っていない。そういう中で、もし外務省さんがお困りであれば、もう少し良き方法を考えていった方がいいのではないかと思う。日本政府が、少なくとも対ビルマ(ミャンマー)については欧米と一線を画した外交をしているのは極めて有名になっている。その中でこういう政策を出した以上、一貫性を持って他のPRSPのプロセスを経ている国と同等のモニタリングの方法を日本として考えない限り、対ビルマ(ミャンマー)の支援というのは、ある意味では社会的な賛同を得られるのかどうか、極めて疑問だと思う。
そういう意味で、モニタリングの方法についてもう少しオープンな議論をするとか、今後どうやって決めていくかというプロセスについて、有償資金協力課で議論になっているようなことはないのか。
外務省:高田
これは実際向こうと相談をしなければいけない。PRSP、あるいはIDAのプロセスだと、後ろにIMFや世銀のお金もついてくる大きなプロセスである。これだけを考えて向こうと話すという訳にもなかなかいかない。
今はこのような状況なので、ミャンマーの今の政権とどうつきあっていくかという中で、貧困の問題がある国なので、我々として何ができるか、あるいは彼らにそういう目をどう向けてもらえるか、有償はまあ難しいが、無償とか技協とか、色々な支援はあるので、そういうのも考えながら全体としてどうやるかというのを考えたいと思っている。とにかく債権放棄の交換公文締結し、政府間で対話をしていくという形になると思う。それよりもまず、今やってもらわなければならないことは、もっと重要なことがある。完全な回答にはなっていないし、また何かあったら知恵をお借りできればと思う。
向こうもHIPCというものがどういうものか、あるいはPRSPというものがどういうものか、そういうのは知っていると思う。しかし今までそういうものを作ったこともないだろうし、普通の国だとIMFや世銀が直ぐに入っていってかなり作ってしまうのだろうが、そうもいかないであろう。外務省に限らず、政権の是非は別として日本国内はミャンマーを応援してあげたいという声はあるので、そういう声を汲み上げながら考えていきたい。
司会
他の意見は?
外務省:有馬
2-3についてまだ充分な回答を申し上げていなかったので発言させて頂く。この債務救済無償資金協力の制度は松本さんの方からご説明があった通りで、また、理念としては、我が国としては自助努力を支援するということで、一度返済まで頑張ったところで同額を無償で供与するという考えに基づいていた。この考えに基づいて返済を継続的に行った国もあるが、そもそも国際社会で債務救済を行おうとしたのは、債務国に資金がないことが理由であり、ほとんど払わずにきている国が多かったのも事実である。
他国ではフランスが似たような制度を持っていると聞いているが、国際社会の他の国々は、この枠組みを決めた時点で一括して債権放棄をしている。我が国は、78年から見ればほぼ25年間この制度を続けてきている。我々も努力してきているが、ご批判があるとすれば、あるいは我々の方で反省があるとすれば、なんとなく心の底ではそもそもは債権放棄であったので他の無償資金協力と比べれば、報告書の取り立てについて力が抜けていたというか、大目に見ていたというか、そういう面があったのではないかと思っている。
ミャンマーの報告書の中には、使用目的の記載のない額があって、それについての批判が出たことがあるが、我々としては、ミャンマー側には、今まで供与した債務救済無償の使途報告書、また既に出ている報告書の中で記載のない部分については使途を明らかにしてくださいということを繰り返しお願いして、相当程度の範囲では使途について報告書が出てきている。
債務救済無償資金協力制度そのものが廃止され、新規に供与するということはないが、今後も過去のものについては引き続き適正な使途報告書が出るように働きかけを行っていきたいと思っている。
司会
今日は、ビルマ市民フォーラムのメンバーが参加しているので、ビルマの方の声も直接聞く良い機会だと思うので、発言をお願いする。
NGO:Kyaw Soe
質問ではないが、ビルマへ日本からODAを出すことで、一つ考えてほしい。ODAというのはビルマのために結構力があると思う。そういう力を日本の政府は正しく使って欲しい。何故かというと、この前、元総理大臣の羽田さんの話があって、羽田さんは95年頃にビルマの外務大臣に会って「あんたの国は変わらなければだめだ」と言って、その時外務大臣は「それは私たちも知っている。軍事政権は良くない。これは変わりますよ」それが何年間たっても全然変わらない。日本のODAは結構力があるので、それを正しく使ってビルマが民主化の国に変わることをちゃんと行う-今の軍事政権にプレッシャーをかけていけば早めにビルマの国は変わると思う。今日もビルマの副外務大臣が日本に来て川口大臣と会談があった。それは何故来たのか。日本の政府から、アウンサンスーチーさんが解放されないならODAをストップするのを考えますよというメッセージがあった。そのメッセージだけでも軍事政権には脅威だから、日本に来て色々ロビイングする。ですから、日本のODAはビルマの国に結構力がある。そういう力を正しく使って、ビルマの国を民主化になるようにやって欲しい。外務省はビルマについてODAをどうするか考えてやって欲しい。
司会
日本のODAはビルマ(ミャンマー)に対して非常に影響力が大きいという訴えだった。今後、政策を検討する場合に充分に含んで頂けると思う。他に関連で質問は?
NGO:寺嶋
松本さんが発言したように、今の回答では回答になっていないと感じる。モニタリングの方法を今考えていると言われても、この協議会が次回8、9月あたりに開かれるまでには次々と返済期限がきている。この問題については非常に重要なので、この協議会の場でもあるいは他の場でも、このままにせず継続して協議していければと思う。
反省点として挙げられていた「報告書の取り立て方が緩かったかも」ということについて。これまでは「日本の債務救済無償資金協力は日本が誇る非常に効果的な方法だ」という風にずっと言われてきていて、「いや、そうではない」と言い続けていたのだが、それが去年になって突然「これ、やめます」と言われて、私たちは驚いてしまった。私たちは債務問題について外務省と対立したいのではなくて、効果的に解決できるように一緒に探って行きたいと思っている。
司会
今後も債務放棄の問題についてモニタリングの仕方を検討するということで了解する。
次の協議事項『ODA大綱の見直しとODA総合戦略会議の役割について』提案者は関西NGO協議会の神田さん。
NGO:神田
ODA大綱に関して、今日話をしておかなかったら時期はずれになってしまうのだが、そうならないように話をしたいと思う。大綱の見直しは、今のスケジュールからいくと、7月から8月にかけて『決め』というふうに話されていると伺っているが、それ自体が拙速ではないかということが言われている。これは、4月に意見交換会を京都・札幌・東京・福岡などで開いた時に、多くのNGOから出ていたこと。
なぜ拙速かというと、時間をかけてきちんと見直していくというプロセスを踏むことによって、ODAを支持するという世論を喚起できる可能性があるのではないか、という期待。もう少し時間をかけて、透明なプロセスで改訂していけばどうかという意味も込めて、今日改めて議論したい。
従って今日の議論は2つの大きなポイントがあり、一つはプロセスに関する議論、もう一つは内容に関する議論。
内容に関する議論については、これからパブリックコメントや公聴会というプロセスが踏まれていくと思うので、その辺でも詳しく議論できると思う。プロセスに関しては急務なので、改めて議論し提案していきたいと思っている。というのも、日本の公共政策、政府の政策というのも、相当に政策立案の過程が透明化されてくものも出てきていると思っている。
私は京都をベースに活動していると、例えば国土交通省が琵琶湖淀川流域の開発に関する開発計画を立てるにあたり、すごく透明なプロセスを採ってきたということによって、近畿地方整備局の政策立案プロセスが市民の間から関心度が高まった。特に国土交通省、旧建設省の時代というのは、市民から不信感をもって見られていた役所が、公募委員を半数入れた、委員会を全回公開、その委員会の議事録を徹底して公開というプロセスを踏んで、しかもオブザーバーでの参加を認めるというふうな委員会形成をやってきた結果、誰もがオブザーバーでも発言できるという委員会が重ねられてきたという経緯がある。そういった形で政策の原案を作った上で整備局の方で検討するというプロセスを踏むことによってすごく信頼を勝ち取れるという例があることを見ている。
僕自身、ODA政策の不信感の根っこがODA大綱にあるとは考えていない。現行の4原則は相当見るべきものがあると評価している。これが適正に運用されていけばODAに対する信頼はむしろ高まるという風な期待もある。
ただODA大綱全体を見ると、当然92年に立案されたものでもあるので、時代に即して改訂という部分があるのも確かだ。何を今更と思われるかもしれない。もう既に特に与党で承認を得て原案という形で提示していく、というプロセスに入っているということは重々承知の上ではあるが、ODA政策のサポーターを増やすという意味でもきちんとした透明化を繰り返し訴えていきたい。
そういった意味で言うと、ODA総合戦略会議は、当会議にも委員である磯田さんも出席しているが、当初は別にODA大綱改訂の機能を持たせて発足させたのではないと承知している。しかし去年の後半以来、ODA大綱の改訂の動きが出てきた中で、ODA総合戦略会議の中でODA大綱の改定の議論が進められてきた。
ODA総合戦略会議というのは、先ほど申した琵琶湖淀川流域の整備に関する委員会と比較すると、まず委員の構成自体が、オープンなプロセスで進められたものではないという問題がある。各界各層を代表するというふうに言われているが、そういった人たちがどういうプロセスで選ばれたかが非常に不透明でもあるし、特に学会の方々が多くて、現場から背離した方が多いのではという懸念がある。そういった中、総合戦略会議自体が非公開で開かれている。発足当初に私たちNGOの仲間共同で、公開されるように、オブザーバー参加を認めるようにと申し入れをおこなったが、それは認められず、もう一点の方、逐語録の公開は認められて、議事録は外務省のホームページで拝見できるという風にはなっている。ただし昨日現在で見ていても5月の総合戦略会議の議論までは載っているが、6月以降のものはまだ載っていないため、なかなかそこでの議論を垣間見ることは難しい。そういった、いわば非公開で行われている委員会で原案が議論されてきたという過程という意味からすると、もしODA大綱を透明な形で議論していくならば、原案作成の委員会自体、透明なプロセスで作っていく必要があるのではないか、というふうな問題意識を持っている。
改めて伺いたい所というのは、次ぎの点である。
(1)ODA大綱の見直しの必要性について、もっともっと説明していく必要があるのではないかということ。
(2)ODA大綱が不信感を持たれているというよりも、ODA大綱の実効性に対する疑問・懸念が強い。これに対してどう説明するのか。政策評価をきちんと行って調査結果を報告していく・説明していくということが重要ではないかということ。
一番目の議題の中で、横井課長が、ODA大綱に関して透明性と結果報告ということをODA白書等で行っていると話されているが、ODA大綱自体を誰がどのように評価しているかというあたりはまだ不明確なままである。
ODA大綱が今の次元に合っていないというならば、このことをきちんとした評価委員会・調査委員会を作って、そこから説明するというプロセスが必要ではないかと思う。
それらが前段としてあった上で、改定総合委員会的なものを公開のプロセスで作っていって、そして原案提示、パブリックコメント、公聴会というプロセスを踏んでいく必要があるのではないかと思っている。
ただ、現行で言うと、そのあたりはズーッと飛んで-もちろん4月に全国4ヶ所でNGOとの意見交換会があったが。これはNGOの仲間と相談して、各地全て公開でおこなってきた。私たちNGOというのが別に何ものかを代表している訳ではないので、広く多くの方に来て欲しいということで公開としたが-各界各層との意見公開と言われている中で、もちろん与党との意見交換というのは私たちには知るよしもないし、経済界との意見交換、学会との意見交換もほとんどはクローズド・非公開で行われてきたのではないかと思っている。
そういった結果こういう風に判断してきましたよという原案が、おそらく近々提示されるのだろうと思うが-私たちはODA政策にこだわって、ODA政策を変えることが日本のODAのサポーターを増やすことと思って活動しているが一般のODAの原資を出されている納税者や郵貯・年金の資金を供与している方たちからしたら、7月初旬になって出てくる原案提示というのは唐突に思われるのではないかという懸念がある。
長々と説明したが、改めてプロセスを仕切り直すという用意はないのか、ということをお願いしながら、一方で現時点では今後どのようなプロセスを考えていられるのか、を議論していきたい。
何も私たちの提案というのが全てという形で、これを飲まなかったらおかしいよという思いで来ている訳ではない。思いはそうであっても、そういう場ではないと思うし、より良く進めるにはどうしたらいいか、ということ。内々に伺っているところでは、例えば公聴会などは、大阪と東京2ヶ所であるというふうに伺っている。けれどそれで果たして充分なのかどうか。例えば東京で開かれるこういうふうな会合にも、わざわざ交通費を自前で払って福岡、名古屋からも来ているという現状を見ると、ODA政策に対する関心はもっともっと広い所にあるのではないか、そしてそういった関心にきちんと答えていくことが、ODA政策ひいてはODAそのものを支持する人たちを増やしていくのではないかという思いから、現行考えてらっしゃるアイデアに関しても改良の余地があるならば改良していって、より良い方策を考えていけないかという思いで提案している。これはプロセスに関する所でもある。
それから、ODA大綱に盛り込むべき点ということで、私たちで添付資料を配付している。これは京都で開かれた意見交換会の際に須永さんに対して提案したものを若干手直ししたものである。ただ、京都で開かれた意見交換会でも2時間という限られた時間であったし、参加者の数が多くてしかも関心が高いということもあり、充分に議論できたというふうでもない。改めて一々説明しないが、こういったことをこれからも提案していきたいということと、あわせてもう一つの資料、5月16日に今回のODA大綱の見直しに関する意見交換会を共同で開催した各地の団体が共同で呼びかけて「ODA大綱見直しに関するNGOからの共同意見書」というのも出している。こういったものに関しても。今後とも詳細に議論していきたい。これらはパブリックコメントなので公聴会のプロセスになるのかもしれないが、そこにおいてきちんと議論しておきたいと思っている。加えて、先ほどから提案している、プロセスを見直すという所と矛盾するかもしれないが、今回パブリックコメントと公聴会というプロセスを踏むということでも、外務省サイドとしては、相当一歩も二歩も踏み込んだという意識でやっていると思う。私たち市民側としては、「まだまだそれだけでは外務省、ODAに対する不信感は払拭できない」というところではあるが、外務省サイドでは色々なしがらみや組織の呪縛の中で考えられてきた方策だとは思うが、ぜひパブリックコメントや公聴会を丁寧にやって頂きたい。
担当されている方が倒れているという噂も聞いており、「こんなことをやっていたら担当官がどんどん倒れる」と思われるかもしれないが、各地各所から出てきた意見に対して日本政府としてどういうふうに対応していくかということを、文書としてきちんと残していくという手続きは、パブリックコメントや公聴会をやっていく上で非常に重要ではないかと思う。
どこそこからこういう意見が出ました、これに対してこういうふうに対処していきます、あるいは対処できません、対処できないならその理由は何か、そこまできちんと文章で明記して残していくのは大切ではないかと思う。
私たちの意見がODA大綱に対する全ての意見だとは思っていない。色々な意見が色々な所から出てくるのは当然である。そういったことに関してこういう対処をしております、どういう見地からしております、ということをきちんと残していくことだ。
おそらくODA大綱の改訂は今回だけではないと思う。私どもの意見としては大綱では不十分であって、これだけの金額のODAなのでODA基本法という法律を作って、ODAを律するべしと考えているが、そうありながらも政策文書としてのODA大綱というのは残っていくと思うので、前回の改訂作業がどういうプロセスで行われたかは必ず大きなポイントになっていくと思う。それが5年先10年先の作業になるかは分かないが、今後ともODAの透明性・信頼性を高めるために、ぜひ今回のODA大綱改訂のプロセスにおいて、現行でできるベストを尽くしてほしいという思いでの提案でもある。細かい内容に関しては議論するだけの時間はないと思うので、主にプロセスに関して重点をおいてご説明いただいて、できればこれに関しても議論を継続したいと思う。ただ、先ほどの二つの議題も議論継続となっている。このままでいくと、この協議会議は一回の開催時間8時間とか10時間となってとても議論できないということになりかねないので、ODA大綱に関しては、とにかく今日、答えられる所はお答え頂いて、次からまた議論していきたいと思う。
外務省:須永
最初に非公開でNGOの人と東京で会合をもったのが確か2月か1月だったと思うが、その時にも政策評価をすべきだと指摘を受け、その後、京都でも東京でも同じ意見を聞き、これはどうしたものかとずっと考えていた。
5月12日にODA総合戦略会議があり、その際に、外務省がやっている色々なところとの対話、不透明であるという指摘もあったができるだけ正確に、色々なところから出た意見、団体名を言わないで欲しいという所もあったので、実施機関とか経済団体とか色々書いてある。私が自分で書いて、委員の前に出て説明したのを覚えている。そこでも、政策評価をする必要があるという意見が出たと報告している。
その間にも、私自身でもコントロールできない力もあって、プロセスが進んでいるが、色々な専門家の方に意見を聞いたり、総合戦略会議の有識者に意見を聞いたりして、政策評価をどうしたらいいのかと考えていた。私が今、色々な意見を聞いて考えているのは、(1)大綱は政策評価にはなじまないと言う先生方が何人かいた。たとえば中期政策とか国別援助とか政策目標がきちんと測定可能であるとやりやすいけれど、大綱はどうか、という人がたくさんいた。(2)私自身もそう思うのだが、大綱を外部の人が評価するというのは、ODA政策そのものとか、外務省の体制とか、やり方そのものを評価することだということ。それを考えると、第一次ODA改革懇談会があり、第二次があり、それから去年は外務省を変える会とかもあり、その中で随分きつい意見もあって、ODA改革とか議論してきて、これは人選が不透明だと言われればそれまでだが、外部の方・外務省に対して厳しい意見を持たれている方も入っている状況でやってきて、第一次ODA改革懇談会は3年前くらいからやっているのだが、論点はかなり出てきたのではないか。私が5月12日にODA総合戦略会議で報告した時にも、「論点は出ているからこれは思い切ってODA大綱の見直しをすべきだ」という意見があった。
個人的にも今まさにODAを、ODA大綱を見直す時期かなと思っている。いわゆる政策評価法にのっとった政策評価はやっていないが、ODA全体についての色々な批判とか、改革の提案は3年間くらい、そればっかり、ずっとやってきているので、かなりの部分は批判を受け取ったつもりでいる。
プロセスは、論点整理は総合戦略会議でやって頂いたし、私どもの方でも3月に基本的考え方というのを示しているので、これは公開して、それについての意見も色々頂いているし、今頂いた紙の中のパブリックコメント・公聴会とかいうことではないが、そういうのも頂いている。それから中間報告、改正案というのは来週にでも提示したいと思っている。実は今日、総合戦略会議でも議論してまた意見をいただいた。
私が責任者としてショックを受けたのは、文章が下手であると指摘を受けたこと。さらに修正を加えて、来週にでも提示したいと思っている。それについてはパブリックコメントも公聴会もやる。公聴会は東京と大阪ということにさせて頂く。これも色々福岡や北海道などの方から要望を頂いたが、意見はファックスやEメールや郵便でも受け取るので、そうすると日本全国や海外からも意見はいただける。書面にしていただきたいと思っている。公聴会だけではなく、そういう形で、全国どこからでも受け付けられる形にしたいと思う。それについては全て公表して、私どもの考え方も示して、受け入れられる意見・受け入れられない意見、根拠などきちんと示していきたいと思う。これはどういう意見が出てくるかによるが、これ自身を読むと、いわゆる法律書によくあるコメンタールみたいな形で、文章の表現の裏にある考え方、今後の運用方針みたいなものが浮き彫りになる可能性もあるが、どういう意見が出てくるか次第で、公聴会は2ヶ所であるが、これは不十分だと思う。しかしながら、いつでもどこでも受け取るし、もし例えば私の所に神田さんが来られたら、いつでも会って話し合うこともできるし、その結果を公表して頂いても結構だし、できるだけ透明性を高めてやっていきたいと思っている。
NGO:田辺
プロセスの件で一点確認したい点がある。3月14日の対外経済関係閣僚会議で、確か今年の中頃までに新しい原案を閣僚会議に出すということだった。それが今聞いているところによると8月末頃に決めるとのことで、今年の中頃といった時に8月末という時期は早いのではないか思うが。大体4ヶ月で区切ると大体11月末までが中頃ということで、その判断は外務省がしたのかどうかということと、それを11月末頃までに伸ばすことができるのかどうかということを聞きたい。
3月14日の閣僚会議の答申でも、充分に議論を尽くした上で中頃までに目処をつけると書いてあり、8月末という時期がちょっと早すぎるのではないかと思うが。
外務省:須永
8月末ということで作業を進めているわけであるが、一つは予算要求とか、あるいは定員機構の要求とかが9月から始まるので、それに反映させる部分があるかと思い、そういう作業日程を組んでいる。
議論を尽くしたかどうかについては、私の個人的な能力を越える部分があると思うが、色々な人と話をして、2度3度4度と会っても、堂々めぐりの議論が多い。ある所で色々な妥協点を探るとか、両方とも論点を書くとか、バランスをとるとか色々な手法があると思うが-そうすることによって、また文章が分かりにくくなって、文章が下手だと言われるのだが-おかげさまで関心が高くて色々な意見があるので、議論して収斂するのを待っているとできないと思っている。拙速だという批判を覚悟で、ある時点でそれなりのものを作るつもりでいる。
NGO:田辺
つまり8月末という決定は外務省としての決定ということか。
外務省:須永
政府全体としての決定である。
NGO:神田
今の田辺さんとの話しとも関連するが、理念的な文章である大綱と予算の絡みとかがどうも腑に落ちない。8月末というのは何か他に意味合いがあるのではないかという疑念が晴れない。本当にそれだけの理由でこの時期だというなら、もっともっと先に延ばした方がいいと思う。
色々な意見があるので収斂できないと言うならば、むしろそれをバーッと出し合ってみて、その中で政府としてはこういうふうに採択をやっていくというやりようもあるのではないかと。須永さん個人に覆い被さっていく政策立案プロセスというのもどうかと思う。
外務省:須永
私自身には全然かぶさっていない。政府全体が関わっている。私は単なるその一人。官邸の人も含めて政府全体として取り組んでいる。
これも説明にはならないが、前回の大綱の見直しは92年の6月だった。我々は本来なら6月頃にいきたかったが8月になり、政府内にも政治家の方にも、なんで8月なのかという人もいる。8月というのは、予算の絡みもあっていいタイミングだと思っている。期限を設定して馬力をかけてやるという考えである。パブリックコメントも1ヶ月はやりたいと思っているので意見を出して頂きたい。
NGO:寺嶋
先ほど須永さんから東京と大阪だけでは不十分だけれども、自分の力ではどうしようもないところもあってと言われた。ファックス、メールなどでも受け付けるからとも、直接会いに来てくれても構わないと言われた。けれども、4月に福岡で(意見交換会が)あった時に、かなりギリギリになって日程が決まり、(開かれたことは非常に良かったが、)一般の市民の参加-外務省がいつも言っている「国民の参加」、「市民の参加」、「納税者の参加」-が不十分だったので、是非次回、改めて正式にこういう場を持って欲しいと要求してきた。しかし、できないということで、理由としてマンパワー・日程のことを挙げられた。
聞けば、福岡だけではなく、札幌の方からも要求が来ている。それでも開かれないというのは、東京と大阪に住んでいない者は納税者ではないのかという気持ちが出てきてしまう。
地元では充分要望があって、私たちも開催されるという前向きに検討して頂けるという感触のご回答を頂いたので、何度も勉強会を開き、一般市民、 一般の関心の無い層にも、より良くしていくにはどうしたらいいんだろうと呼びかけて準備をしている。この12日も福岡ではODA大綱についてのシンポジウムも開いて、地元はやる気満々である。対立ではなくて、どうしたら良くなるのだろうか、外務省の方から直接説明を聞きたいし、自分たちも言う機会が欲しいと言っている。この点について、8月の締切がどうしても延ばせないからというのが理由なのだとしたら、その期限付きということは問題ではないか。
外務省:須永
私個人の問題で福岡では開かないということはない。さっき言った通り、日本全国4ヶ所でやればいいのか、10ヶ所でやればいいのか、どこで線を引いたらいいのか分からなくなる。公聴会は2ヶ所。その代わり、今は色々な通信手段があるからそれをお使い頂く。むしろその方が、福岡だけではなくて沖縄から北海道から、我々としてはたくさんの人と意見交換できるということもあるので、そこはご理解いただきたいと思う。
NGO:寺嶋
何も福岡で開けばそれで充分というのではなくて、せめて各県で一回くらいは開いて欲しい。タウンミーティングではかなり広範囲に回られたが、どうしてあれと同じぐらいのことをやっていただけないのか疑問が残る。福岡の開催については、そのことを伝えるように福岡の者に言われたので、引き続き地元としては開催を強く望んでいるということをお伝えする。できるだけ地元の意見をもう少し採り入れて欲しい。距離的なものがあり、私たちはなぜいつも切り捨てられるのかという不満がある。東京に来て頂いてもいいと言われても、福岡から20人くらい飛行機に乗って来るということはなかなかできない。メールやファックスでいいと言われても、限界がある。地元では是非直接聞きたいという要望があるということを、心に留めて頂きたい。
今回のやり取りで地元には非常に落胆がある。外務省に対する不信感が増した。開くと言っておきながら開かれないのは今回が初めてではないので、どうしていつも私たちの声は届かないのかという無力感に襲われそうになる。地元に落胆があったということはお伝えしたい。
NGO:神田
こういう結果になったというのを伝えるのが説明責任ではない。プロセスを伝える・共有することがすごく大事だと思っているので、別に福岡だけではなく、ODAの信頼を増やしていくという意味での前向きの対応が大事だと思う。仕事の効率という面からすれば、東京で受け身の姿勢でいた方が遙かに効率的だと思うが、長い目で見た時のODA理解の浸透という意味から考えると、少なくとも要望のあるところには応えていくことがすごく大事だと思う。須永さんが単身行かれるという機会でも、作れるものなら、是非それを実現していってほしい。
NGO:信澤
ODAは外務省だけの問題ではない。全国民を対象として、関心を持ってもらおうとして今色々考えておられるのであれば、たとえば、全国各県の知事に、「ODA大綱をこういうふうに変えようとして、こういう案を作っているのだけれども、こういうものについて県民の方に意見を聞いてもらえませんか。その時に外務省の方でも誰かが行けるなら行きましょう」と。県知事を巻き込んで、全国でODAに対する意見を聞いてもらう、関心を持ってもらう機会を作るというようなことができるのではないか。外務省だけの問題だと限らず、ODAの問題を全国的な問題に広げていくように考えたらいかがか。
ついでに言わせて頂く。今頃になって大綱に対する意見を述べるのはたいへん申し訳ないが、この間新聞の報道でちょっと気になることがあった。先ほどお話があった理念について。福祉の向上と途上国の発展が基本だとおっしゃったが、大綱のもう一つの前の段階として、それぞれの国・地域の人々の自主性・自立性、自主自立の心を応援するのがODAの基本的な理念ではないかという気がする。
これは五月女さんがよく言われていたことだが、日本はかつてODAの被援助国だった。日本が人道支援を受けた時に、何を期待され、どういう努力をしてきたか。その過去の経験を僕らは今度ODAの援助国として生かさなければならないと思う。
我々は援助を受けた時に自主・自立をするために援助をされた。たとえば食糧を援助された時にそれをただで配られたわけではなくて、配給制で、お金を払って援助を受けた。そのお金を対日援助見返り資金として積み立てさせられた。積み立てたお金をインフラの整備に回した、という経験がある。
ウルグアイでも人材の育成ということで、8,000人くらいの人たちが1年2年、長期の研修を受けた。それは技術だけではなくて、マネイジメント、マーケティング、ファイナンスやデモクラシーや色々な形での研修を受けにアメリカやヨーロッパに行った。そういう人材育成で受けた我々の経験というのも生かさなければならない。今の日本のODAで援助している人材育成はちょっと贅沢すぎると思っているが、そういうことについて、かつて日本が受けた経験を生かす政策、理念を入れ込んで欲しいという気がする。
司会
少し時間を延長する。
ODA大綱のプロセスについて、NGO側の希望・要望と外務省の方で進めているプロセスとの間には開きがあるということで、検討して頂く余地があるのなら検討して頂くということで、今日のところはこの問題に関しては、プロセスに関しては、議論を閉めたい。
(1)の議題で、平和構築の問題で高橋さんからODA大綱との絡みで後半においての質問を、今お願いする。
NGO:高橋
NGOで意見交換をしようという話もあったが、平和という大切な問題はNGOよりも国民の方に強い関心があると思っている。一つのモデルあるいは参考になると思うが、カナダでは毎年平和構築のマニュアルコンサルテーションというものをやっている。400人くらい、NGOだけではなくて学校の先生も含めて、弁護士、時には軍人も入るとのこと。つまり平和構築というのは必ずしも外との問題だけではなくて、たとえば難民受け入れの問題ということも含めて、包括的に根本的に取り組んでいくべきものだとカナダは考えている。そういう意味でカナダでは外務省とNGOが共同議長でやっている。国際平和協力懇談会のフォローアップともおっしゃっていたが、そういう形でのコンサルテーションも進めていったらいいのではないか。
カナダの例では分科会もあり、例えばユーゴの分科会をやると、あのNATOの攻撃はよかったんだろうかと喧々囂々とやる。おそらく今回そういうことをやるなら、日本でもイラクやアフガンのことも議論が続くのだろうと思う。是非そういう形で考えて頂きたいと、プロセスの議論から紹介させて頂いた。
外務省:横井
この協議会は、皆さんの立場からすれば、窓口を絞れよということになるのかもしれない。経済協力局民間援助支援室主催のNGOとの協議会ということになっていて、基本的なアスペクトは開発というところが主となっている。今発題されている平和構築は、おそらく開発だけに捕らわれず、それこそPKOをどうするんだといった、私が最初に説明をあえて試みた、私自身充分説明できたか自信のない、全てのアスペクトについても問題が及ぶものだと思う。そういう意味でいうと、外務省の主管局から言うと、総合政策局、そこの国際平和協力室というのが基本的にはPKOの窓口となる。我々はODAが絡む所については見ているわけだが、五月女大使とも相談の上、NGOの、PKOも含むところだと少し我々とは違うので、検討したいと思う。
司会
準備した議題の方は議論したと思うので、残りの時間で第2回目の協議会の開催日程について、この場である程度日程を煮詰められるようでしたら話し合いをしたい。今回は2時間だけであったが、最低3時間は頂きたいと思う。3時間取れるようなところで、できるだけ早い時期に開催したいと思うが外務省の都合はどうか?
外務省:中野
この場では決められないので窓口を通してご相談をお願いする。
NGO:神田
大使、課長の業務が多忙だということで、今回2時間という時間になった日程調整が難しいが、そうすると議題が山積みになってしまうので、できればそういうことはこの場で確認しておきたいということでの提案。時間設定をフレキシブルに、できれば3時間というのが私どもの希望でもある。年3回を担保していく中で、一応4月、8月、12月と入れていたが、今はもう7月になっているので、次回は遅くても9月中開催の要望もある。その点、多忙の方もおられるので、そのスケジュールを是非先に押えたい。
外務省:横井
9月というのは、我々にとっては予算の月である。ある日突然(財務省から)説明を要求されるので、我々が出られない時もあるという前提で検討させていただくことになる。それでもよろしいか?代理人が出るという形にもなる。
NGO:神田
先ほど横井さん、民間援助支援室主催でと言われたが、私どもの位置づけでは政策課長とNGO共催ということで認識しており、政策課長抜きで開くというのは考えにくいので、それでは、何日がよいかという検討は必要だと思う。
次回の開催日程に関しては、後日双方の事務担当者が調整を行うこととする。
以上