※NGO:非政府組織(Non-Governmental Organizations)
●日時 | : | 平成18年3月22日(水曜日)15時00分~17時00分 |
●場所 | : | 外務省南庁舎 272号室 |
●司会 | : | 鈴鹿 光次 外務省民間援助支援室 首席事務官 |
1.議題
(1)挨拶 (15時00分~15時05分)
五月女 光弘 NGO担当大使
(2)自己紹介 (15時05分~15時15分)
※氏名・所属のみ
(3)報告事項 (15時15分~15時30分)
最近のODA改革をめぐる動きについて
(4)議題 (15時30分~17時00分)
(イ)「国益優先」のODAの問題
(ロ)今後のODA政策・企画・実施体制におけるNGO、現地市民社会との関わり
(ハ)TICADプロセスへのアフリカや日本のNGO、市民社会の参加
(ニ)人権問題のある国への援助のあり方と人間の安全保障
(ホ)その他
※配布資料
1)議事次第・参加者リスト
2)<報告事項関連資料>「海外経済協力に関する検討会」報告書の概要(PDF)
3)議題と論点(PDF)
4)<議題(ハ)関連資料>TICAD平和の定着会議(概要と評価)(PDF)
5)<議題(ハ)関連資料>アフリカ政策市民白書2005(第1号)-貧困と不平等を超えて-(PDF)
6)<議題(ニ)関連資料>議題の背景と論点(PDF)
7)<議題(ニ)関連資料>ネパール・メラムチ給水プロジェクトにおける各国政府の支援状況(PDF)
8)<議題(ニ)関連資料>カンボジア市民フォーラム人権状況調査報告書(PDF)
9)<議題(ニ)関連資料>現在のカンボジア政治・人権状況と私たちに何ができるか(PDF)
10)<議題(ニ)関連資料>カンボジアにおける最近の人権状況(PDF)
2.参加者(47名)
(1) 外務省(17名)
(イ)五月女 光弘 NGO担当大使
(ロ)経済協力局
和田 充広 国別開発協力第一課長
上村 司 政策課長
城守 茂美 民間援助支援室長
小野 日子 開発計画課 企画官
鈴鹿 光次 民間援助支援室 首席事務官
高根 和正 民間援助支援室 課長補佐
清原 剛 有償資金協力課
佐々木 忍 国別開発協力第一課 国際協力インターン
井實 聡 民間援助支援室 事務官
(ハ)その他各課室
斉田 幸雄 アジア大洋州局 南西アジア課 首席事務官
梶原 徹 アフリカ審議官 アフリカ第二課 課長補佐
花澤 光樹 アジア大洋州局 南西アジア課 事務官
福永 真理 アジア大洋州局 南東アジア第一課 事務官
田中 紀子 国際社会協力部 人権人道課 事務官
木村 祥子 国際社会協力部 人道支援室 事務官
笹原 直記 国際社会協力部 人道支援室 事務官
(2)NGO側(27名)
熊岡 路矢 特定非営利活動法人国際協力NGOセンター/カンボジア市民フォーラム
田坂 興亜 カンボジア市民フォーラム
山田 裕史 カンボジア市民フォーラム
上村 未来 カンボジア市民フォーラム
高瀬 国雄 TICAD市民社会フォーラム
石田 洋子 TICAD市民社会フォーラム
浪瀬 佳子 特定非営利活動法人 WE21ジャパン
横川 芳江 横浜NGO連絡会
山中 悦子 特定非営利活動法人 草の根援助運動
土井 昌子 特定非営利活動法人 日本口唇口蓋裂協会
原 征治 特定非営利活動法人 NGO福岡ネットワーク
伊藤 衆子 財団法人 日本フォスター・プラン協会
池上 善晴 特定非営利活動法人 国際平和協力センター
大上 博史 特定非営利活動法人 日本紛争予防センター
飯塚 裕貴子 特定非営利活動法人 日本紛争予防センター
田辺 有輝 特定非営利活動法人 「環境・持続社会」研究センター
長瀬 理英 ODA改革ネットワーク・東京
西井 和裕 特定非営利活動法人 名古屋NGOセンター
高橋 清貴 ODA改革ネットワーク・東京
川村 暁雄 特定非営利活動法人 関西NGO協議会/ODA改革ネットワーク・関西
小堀 優井 特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター
山口 誠史 特定非営利活動法人 シェア=国際保健協力市民の会
吉岡 健治 特定非営利活動法人 JHP学校をつくる会
森 祐次 農業・農村開発NGO協議会
木村 真希子 市民外交センター
榛木 恵子 特定非営利活動法人 関西NGO協議会(ODA政策協議会事務局)
瀬良 香織 特定非営利活動法人 関西NGO協議会(ODA政策協議会事務局)
(3)オブザーバー参加(3名)
岩井 雅明 国際協力機構(JICA)市民参加協力室
竹崎 希 国際協力機構(JICA)市民参加協力室 市民参加支援事務局
斎藤 光範 国際協力銀行(JBIC)開発業務部企画課 調査役
以上
<平成17年度第3回ODA政策協議会・議事録>
○皆様、こんにちは。また、外務省にようこそいらっしゃいました。
本日は、本当にたくさんのNGOの皆様が御臨席になっております。中には、遠く、地方から、この日のためにわざわざお越しになった方も多数いらっしゃいます。ということで、本日の会議はできる限り、それにペイするようにポイントを突いた、より深い議論が行われるようにということを心がけてまいりたいと思います。
最初に、自己紹介を申し上げます。私、民間援助支援室で、本日、司会を務めさせていただきます鈴鹿でございます。よろしくお願いいたします。
会議を始めます前に、幾つか申し上げたいことがございます。
まず、最初は、皆様のお手元にこのような資料が渡っております。その一番上の、言わば表紙の部分に本日の議題の内容、それから、おおよその時間づけが書いてございます。できる限り、この時間づけのとおりに議事を進行させていただきたいと思います。これが、まず1点目でございます。
2点目は、御発言の際には必ず、そこに幾つかマイクがございますけれども、マイクを通して御発言いただきたいと思います。これは声がよく通るようにということに加えまして、記録のための録音の関係もございますので、よろしくお願いいたします。
次に、今日の議題なんですけれども、(イ)から(ホ)まで議題が並んでおります。この議題の趣旨につきましては、あらかじめ、こちらのペーパーの形でいただいておりますので概要はつかんでおります。したがいまして、議題の提起を行われる際には、できる限りポイントを突いて、手短にお願いいたしたいと思います。また、その他の発言につきましても、できる限り、同じようにポイントを突いた短い発言をいただきたいと思います。その理由といたしましては、今日、たくさんの方がお集まりでございますけれども、皆様に等しく発言の機会があるようにということが1つ。もう一つは、できる限り議題の提起などは手短に済ませて、ディスカッションの方をより充実させていきたいと。より深みのある議論が行えればと、そのように考えております。
したがいまして、御発言がひょっとして長きにわたる場合には、私の方から指摘させていただくということがあり得ますので、あらかじめ御了承をお願いいたします。
それでは、議題の一番最初でございます、五月女NGO担当大使からごあいさつをいただきたいと思います。五月女大使、よろしくお願いいたします。
○五月女 どうも、皆様こんにちは。はるばると各地から来ていただきましてありがとうございます。
このNGOと外務省との定期協議会も、平成11年以来、6~7年の長きにわたって行われておりまして、東京のみならず、名古屋、大阪、それから福岡、各地で行われまして、非常に成果が上がっているものと思っております。
私も、各地にお邪魔いたしまして、各地で活躍されているネットワークのNGOの方々と議論をする機会がございまして、大変に私ども、いろんな意見を提起していただきまして、それを活用させていただいております。
本日のODA政策協議会も、平成17年度の3回目で、最後の会合でございまして、次は平成18年度、4月以降にまた行われるわけですけれども、本日はODA政策協議会として、ODAの改革問題あるいは次のTICADの問題、アフリカ支援、市民社会との連携など、いろんな各方面にわたって議論を行っていただくことになっております。
皆様、御承知のように、平成18年度のODA予算は、残念ながら、努力にもかかわらず3%減ということでございますけれども、その中でNGO支援のための予算は横ばいという状況でございますので、そういう面ではいろいろ財政当局にも重要性についての理解があるのではないかと思っております。
近年、アフリカ重視ということが政府上層部でも言われておりまして、JICAの緒方理事長におかれても、また、小泉総理におかれてもアフリカ支援ということを重視されておられるわけで、本日もTICAD関係の方々が多数お見えになっておられます。
私も、ここに戻る前はザンビア大使とマラウイ大使をやっておりまして、アフリカの応援団としては大変に喜ばしいことだと思っておりますけれども、御理解いただけるかと思いますけれども、世界191
か国の中でアフリカは53か国という非常に大きな比重を占めている中で、やはり国際社会で生きていく日本としては、遠いところにある国々も我々の友人として、そして、彼らの発展のために努力すべき立場にあるということであろうと思います。
私も、この間、アフリカを回り、また、アジア、ネパール、あるいはカンボジアにも参りまして、NGOの方々の活動ぶり、活躍ぶり、それから国連との連携とか、いろんな面でいろいろと勉強してまいりましたし、皆さんの御意見もあるいは要望も聞いてきたわけでございます。そのようなことで、今年のODAの執行に当たりまして、NGOの皆さんの御協力は大変に重要なものであると思っております。
先般、昨年の末でございますけれども、一橋記念講堂で、大学とNGOとの連携というシンポジウムがございました。そのときに、多数のNGOの方々、それから学識経験者もたくさん出席されておられたわけでございますが、私も、今、学校で教師をやっておりまして、若い人たちにNGOの活動の重要性、あるいはODAの重要性についての講義もやっておりますし、今日お見えの中にも多数のNGO関係の方々が大学で教鞭を取られておられるのを承知しております。
私は、やはりNGOに対する支援、あるいは理解を深めるためには、国民の皆さんのサポートも必要ですけれども、同時に、これからの将来を担う若い人たちに、その重要性を理解してもらうという活動が大事であると思っております。そういう面で、皆様方が御自分の経験、体験を生かして、やはり学校、大学等で若い人たちに対する教育を進めていただくというのは大変に大事なことではないかと思っているわけでございます。そんなこともございまして、私はやはり、皆様が是非とも、そういった経験を若い人たちを育てるためにも使っていただきたいと思っているわけです。
国際協力に関わる人々の大事な点というのは、私は3つのモットーがあると思っておりますが、それは、援助する側についても、援助される側におきましても、やはり、それは効果的であり、効率的であり、透明性があること。この3つが非常に大事であると思っているわけです。
日本が、戦後ちょうど60年経ちまして、還暦を迎えたわけですけれども、戦後の日本が非常に国際社会から敬意を表され、賞賛されたのは、日本が当時、被援助国であるにもかかわらず、各国からの援助、それから、国連、国際機関からの支援、国際NGOからの援助を極めて効果的に、そして、効率的に透明性を持って執行したということが非常に賞賛されたわけでございまして、その点はこれからもやはり同じであると。ですから、NGO活動ばかりでなくて、ODAに関わる人たちも、政府の人たちも、あるいは国際機関、それから、関連のJICA、JBICの方々も、NGOの方々も、この3つのモットーは非常に共通なものであると思っておりますので、やはりODAを効果的に、効率的に、透明性を持って行うための努力をするということのために、みんなで努力すべき状況であると思っております。
そんなこともございまして、この本日のNGOと外務省の定期協議の中のODA政策協議会は、今後のODAをどのように透明性を持って行っていくかという面では大変に大事な議論であると思っておりますので、是非とも建設的な御意見を出していただいて、そして、活発な議論がされることを希望するわけでございます。
そんなこともございまして、今日も1日、2時間少々ですけれども、皆様と一緒に議論に関わってまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○鈴鹿 五月女大使、どうもありがとうございました。
それでは、次に「(2)自己紹介」でございます。五月女大使についてはただいまごあいさついただきましたので、その次から時計回りに、お名前と御所属をおっしゃっていただきたいと思います。
マイクは、皆様の人数分はございませんので、適宜回していただければ幸いに存じます。 それでは、城守室長からよろしくお願いいたします。
○城守 民間援助支援室の室長をしております、城守です。
○高根 民間援助支援室の課長補佐を務めさせていただいています高根和正と申します。
○佐々木 経協局国別開発協力第一課の国際協力インターンの佐々木忍と申します。
○和田 経協局国別開発協力第一課長の和田でございます。
○井實 民間援助支援室の井實と申します。
○山中 草の根援助運動の山中でございます。
○原 NGO福岡ネットワークの原です。
○西井 名古屋NGOセンターの西井です。
○高瀬 TICAD市民社会フォーラムの高瀬でございます。
○石田 同じくTICAD市民社会フォーラムの石田と申します。
○森 農業・農村開発NGO協議会の森祐次と申します。
○川村 関西NGO協議会として、この協議会の世話人の一人をやっております川村です。今回は、ODA改革ネットワーク・関西のメンバーとして発題者となっております。
○田辺 環境持続社会研究センター(JACSES)の田辺と申します。同じく、人権に関する議題の発題者となっております。
○長瀬 ODA改革ネットワーク・東京の長瀬と申します。
○高橋 同じくODA改革ネットワーク・東京、並びに日本国際交流センターの高橋です。今回の定期協議会の世話人をさせていただいています。
○熊岡 カンボジア市民フォーラムの事務局長で、あと、今回はJANICの理事として出席しています。
○田坂 カンボジア市民フォーラムの代表世話人で、アジア学院の理事長をしております田坂と申します。よ
○上村 カンボジア市民フォーラムの事務局調整員の上村と申します。
○山田 同じく、カンボジア市民フォーラムの山田と申します。
○竹崎 JICA市民参加支援事務局の竹崎と申します。
○岩井 同じく、JICAの岩井と申します。
○斎藤 国際協力銀行(JBIC)の斎藤と申します。
○横川 地球の木の横川と申します。今日は横浜NGO連絡会の事務局として来ました。
○浪瀬 WE21ジャパンの浪瀬と申します。ODA改革ネットワーク・東京の実行委員をやらせていただいております。
○吉岡 JHP学校をつくる会と、JENの理事をしております吉岡と申します。
○木村 市民外交センターの木村と申します。
○小堀 国際協力NGOセンター(JANIC)の小堀優井と申します。
○池上 国際平和協力センターの池上と申します。
○山口 シェア=国際保健協力市民の会の山口と申します。
○大上 日本紛争予防センターの大上と申します。
○飯塚 同じく日本紛争予防センターの飯塚裕貴子と申します。
○土井 日本口唇口蓋裂協会の土井と申します。
○伊藤 日本フォスター・プラン協会(プラン・ジャパン)の伊藤と申します。
○榛木 関西NGO協議会の榛木です。NGO側の事務局をさせていただいています。
○瀬良 同じく、関西NGO協議会の瀬良と申します。
○小野 外務省の開発計画課の小野と申します。
○上村 遅れて済みません。政策課長の上村です。
○鈴鹿 皆様、どうもありがとうございました。
それでは、次に「(3)報告事項」でございます。最近のODA改革をめぐる動きについて、上村政策課長の方から御説明いただきます。上村課長、よろしくお願いいたします。
○上村 お手元に「『海外経済協力に関する検討会』報告書の概要」という3枚紙がございます。原文については、既にウェブサイト等で公表されておりますので、この概要に沿って御紹介いたします。時間の関係からポイントのみに絞っていきたいと思います。
まず、この検討会は、去年12月の半ばから、たしか9回にわたったと思いますが、大変インテンシブな議論を官房長官の下で重ねてこられました。座長は原田さんという元検事総長です。
その中で、基本的にはここにございますように、3つの柱について議論がされました。1つは「基本的視点(検討の前提となる国際情勢)」。我が国を取り巻く国際情勢がどうか。
なぜ、海外経済協力か。これは、経済協力という概念は、ここではODAのみならず、OOFあるいはPF、民間のお金についても、一応、念頭には置いております。
それから、この海外経済協力を取り巻く国内外の状況ということで、ここに、例えば国民参加の推進の必要性ということにも触れられているということであります。
こういった基本的視座を踏まえて、では、政府内体制はどうあるべきかというのが第2の論点であります。
結論は、ここに書いてございますとおり、現在のODA関係の閣僚会議、約六人の閣僚の方々が参加されている会議がありますけれども、それを、ここにあるように「海外経済協力会議」、仮称でありますけれども、これを内閣に設置する。常設メンバーは、限られた閣僚にする。
これらが大戦略の部分でありますが、その下、いわゆる今までの13省庁でやってきた政府レベルではどうか。政府、行政庁レベルでは、外務省が関係省庁との連絡を深めつつ、調整の中核にあるべき。一時期ありました、援助庁をつくって独立さすかどうかという点については、種々、いろいろ議論があったようでございますけれども、結果的にこういうことでございます。
3つ目の議論は、2ページ目の第3と書いてございますけれども、戦略、政策と来て、では、実施はどうなるのかということでありますが、実施機関の在り方としまして、結論を申し上げますと「3 我が国海外経済協力の実施機関の改編」というところがございますけれども、過去50年近く積み上げてきました円借款リスク、無償資金協力というような分け方につきましては、JICAが実施を基本的に一元的にやったらどうかという提言であります。
具体的には、円借款は、今のJBICの円借款部門をJICAと統合する。それから、無償資金協力については、現在、外務省無償資金協力課が中心となって、JICA、その他、JICSなどの助力を借りてやっておりますけれども、これをJICAの実施主体として位置づけると。この所要の体制、法律の改正といったものをやったらどうかというのが3つ目の主要点でありました。
次のページをめくっていただきますと、これがチャートとしてなっております。いわゆる司令塔といいますか、13省庁を中核とするODA閣僚会議の代わりに、海外経済協力会議(仮称)。ここにあるようなイメージで新設をする。
実施機関につきましては、現状、このように政府系金融機関。特に、その中でJBICさんは国際金融と円借款を併せて扱っておられますけれども、これを見直し案の方による新政策金融機関が国内向けの残る政策金融機関プラス国際金融のところと、そして、新しいJICAが円借と技術協力と無償資金協力を基本的には一体的に支援をする。こういうような改革の方向が出されております。
これを受けまして、今、政府内では政府系金融機関の所要の法改正に向けた準備が進んでおります。経済協力に限って申し上げますと、主要な場はJICA法、今の国際協力事業団法の改正という動きになります。新しい実施機関のシステムは、平成20年度から実施ということになります。
最初に御紹介しました司令塔部分につきましては、これは法改正は特に必要といたしません。これは、今の想定では閣議決定ということでありますので、平成20年度を待たずに、できるだけ早く導入をしたいというのが内閣官房の考え方のようであります。
それに付随しまして、実は外務省の機構改革を考えておりまして、外務省の経済協力局を廃止しまして、新しい国際協力の体制をしくということになります。これも平成20年度を待つことなく、できるだけ早い時期に導入したいというのが麻生大臣からの指示でありまして、そのために作業を進めております。
ポイントは、麻生大臣も何回か国会や記者会見で言っておられますけれども、国連機関などのいわゆる多国間援助の部分は、今、国際社会協力部というところが基本的には見ていたんですけれども、経済協力局と違うところが見ていたんですけれども、基本的にはそういう国連を中心とするマルチの援助と、それから、有償資金協力、無償資金協力、技術協力という二国間の援助と併せて見る。そして、政府内の調整を行っていく企画立案なり調整を行っていく部局を新しくつくろうというのが基本的な考え方であります。
以上、簡単に最近のODA改革をめぐる動きについて御紹介いたしました。
○鈴鹿 上村課長、どうもありがとうございました。
若干、時間に余裕がございます。これまでのところで、何か御質問等ございましたら、どうぞおっしゃってください。
田辺さん、よろしくお願いいたします。
○田辺 JACSESの田辺と申します。
この報告書の概要の2ページ目の第3の「3 我が国海外経済協力の実施機関の改編」に関して、その2つ目の点の「なお、無償資金協力のうち、機動的に実施すべきもの等は外務省が引き続き自ら実施」と書かれているが、外務省無償資金協力の中で、大使館ベースでローリングプランに載らないものに関して、どれぐらいの割合があって、なぜそれらをローリングプランに載せないのかをお聞きしたい。
○上村 これは、まだ具体的に査定官庁の財務省とも話を始めていませんので、結論的なことは申し上げられませんが、我々の基本的な考え方は、典型的に見られるのがイラクの立ち上げの段階、2003年の戦争直後にああいう状態が起こったわけですけれども、ああいう緊急性のあるもの。それから、草の根無償資金協力といって、外国のNGOを対象に、今、やっている大使館が、あるいは現地のタスクフォースがあったりする案件がありますけれども、ああいうのも基本的には財務省のそういう緊急性、戦略性、機動性という3つの、今、メルクマークを立てているんですけれども、その中に読み込もうと思っています。 したがって、JICAさんの方に実施をお願いする分というのは、いわゆるハコモノと言われる一般プロジェクト無償ですとか、食糧援助ですとか、ある程度、読めるもの、当初から計画が立てられていて、勿論、それは戦略的にやらなければいかぬというのは確かなんですけれども、それと、やはりイラクの立ち上がりのときのようなものはかなり性格が違うので、そういう切り分けをしようと、今、考えております。
したがって、ローリングプランには、当然、今みたいな後者の部分というのは乗ってこないのがほとんどですから、あるいは小規模なもの。ただし、小規模だけれども、大変、効果的だというようなものについては、外務省の実施ができるような仕組みにしたいと思っております。
割合で言いますと、大体、6割、4割かなと思うんですけれども、ただ、これはつくってみないとわかりません。予算が1,000 億円あったら、600
億円がこちら、400 億円がこちらという、イメージなんですけれども、必ずしも毎年そういう予算の組み方になるかどうか、結果、終わった後でそういう帳尻になっているか。それはやはりわからないと言う以外はないです。
だから、考え方としては、かなりの部分をJICAさんに委託をして、実質上はやっていただこうということであります。
○鈴鹿 あと1問ぐらい、よろしければございますか。
高橋さん、よろしくお願いいたします。
○高橋 ODA改革ネットワーク・東京並びにJVCの高橋です。
外務省の再編の方針について、1つだけ御質問させていただきたいんですが、結局、国社部が経協局と一緒になって国際協力局になっていくという話なんですが、実は、今、国社部の方とは、国連改革のためのパブリックフォーラムというのを私たちはやっていて、貧困問題やODA問題を含む国連改革のあり方を市民参加の下で議論してきています。国社部が経協局と一緒になった場合に、こうした市民参加の枠組みはどうなっていくのでしょうか。つまり、市民参加は、新しい体制の中でどうなっていくべきと、外務省は考えていいますでしょうか?
ODAに関する閣僚会議ができることで、今後、政策レベルでの市民参加が後退するのではないかと心配しています。それによって、活性化されますでしょうか?この後、NGOの方から質問でも同じ点を聞きますが、今の時点で教えていただければと思います。
○上村 1つ目の御質問については、国際社会協力部全部が国際協力局というか、今の場合の援助とかに入ってくるというわけではありません。
国連機関を見ている中には、援助とはかなり違うところ、規範づくりですとかというところがあります。あるいは政治的な、国連の安保理をどうするかとか、これは経済協力部というか、国際協力とは必ずしも一致しませんので、恐らく国際社会協力部というのは内容的に言いますと半分に分かれて、経済協力物については国際協力局、新制の新しいところに来るという感じになると思います。したがいまして、市民社会との対話というのも、やはりそれがODAに関するものなのか。国連改革というと、恐らく、私は国際協力とは違うところに行く部分だろうと思います。
よその局課のことをどうこう言うわけにはまいりませんけれども、私は基本的にはNGOあるいは市民社会との対話ということについては、強化されこそすれ、弱まることは、どういう組織になろうとも私はないと思います。
2つ目は、非常に難しい御質問をいただいて、確かに今回、大変短い時間で結論を出さないといけないということで、NGOさんを中心とする市民社会の御意見はなかなか吸い上げて、このODA改革ということを走れなかったんですけれども、それは御理解いただくとして、いろいろ御意見もちょうだいしました。それから、官邸の安倍長官の方にも直接御意見を提出された諸団体もいると聞いておりますし、そういうのを設けまして、今後の経済協力あるいは海外経済協力という広い概念ですけれども、こういうことをやることにおいては市民社会等の知見も活用しながらやっていくべきだというのは、まさに提言の中に書かれているようなことであります。今まで、大綱や中期政策の改定でいろいろ対話もさせていただきましたし、こういう会合も開かせていただいているわけで、こういうのを強化こそすれ弱めることはないというのが基本的な私の考えであります。
第1の質問は、他局に関することでありますが、私は外務省全体として今の方針を申し上げられるだろうと思います。
○鈴鹿 どうもありがとうございました。ここまでで「(3)報告事項」は終わりでございます。
次に「1.議題」の中の「(4)議題」。これはディスカッションの意味でございますが、ディスカッションの方に移りたいと思います。
まず最初に「(イ)『国益優先』のODAの問題」について、ODA改革ネットワークさんの方から議題の提起をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○長瀬 ODA改革ネットワーク・東京の長瀬と申します。議題(イ)について問題提起させていただきます。
ここでは、特に全般的な話になるわけですけれども、ODA、今の政策の中では非常に国益が強調されるようになりました。前面に押し出されるようになりました。それが、ソフトパワーの源泉としてのODAが持つ相手国、受取国に対する影響力がかなり低下するのではないかと。その辺を、まず外務省としてどのようにお考えかということをお聞きしたいわけです。端的に言えば、日本のODAに対する評価が下がるのではないか。受け取り国の人々にとって下がるのではないかという全般的な話。
あと、具体的な点として2点あります。
1つは、先ほど、イラクでのお話がありましたけれども、自衛隊活動とODAとが一体化する。そして、テロとの戦いに対してもODAが使われる。これによってODAが持つソフトパワーが減じるのではないかという懸念があります。
第2点目としては、これはNGOの現場ですけれども、今年度から外務省の方でのNGO支援無償に広報強化のためとして日の丸あるいはODAロゴの表示が義務付けられました。これが、相手国の受け取る人々にとって日本のODAの評価が下がらないか。特に、私たちNGOが持つ非政府性、自発性といったNGOとしての力がこれによってそがれるのではないかと。それについて、具体的に問題提起させていただきたいと思います。
まず、全般的なソフトパワーの源泉としてのODAという話ですけれども、これは今年3月3日の参議院の決算委員会で高野議員が質問に立たれまして、ODAの戦略性について質問されました。日本のODAにこれまで戦略性がなかったのではないかと。今後、戦略はどうするんだと。それに対して小泉首相がどういうふうに答弁されたかというと、最近のBBCの世界の世論調査を見ろと、日本は影響力として非常に高い評価を受けているんだと。しかも、日本のODAというのは相手国のニーズにかなっているから高い評価を受けているんだと。つまり、そういった国益に基づく戦略性を立てなくても十分評価されているんだという答弁をされました。
この小泉首相の答弁に関して、初めて小泉首相の意見と私が合ったという思いをしたわけですけれども、やはりそういう、今までの日本が持っていたODAのよさが余りにも国益というものを強調し過ぎることによって、そのよさがなくなってしまうのではないかと。
それを具体的に、先ほど小泉首相が引用されたBBC調査で見ると、日本は確かに今年は高かったんですけれども、アメリカは非常に低いんです。下から数えて2番です。しかも、前年、2004年の調査と比べて5ポイントも低下しているんです。これはなぜかといえば、今年の調査に限って言えば、実際に調査した人の分析はないんですけれども、2004年の調査をしたときの分析によれば、やはりアメリカは軍事力を前面に押し出して、ハードパワーを押し出したから評価が下がっているんだと。要するに、ソフトパワーを持つような日本のような国は評価をされているという、そういった判断ができるわけです。
他方、では、ODAがソフトパワーについてどういうような影響力があるかという関係を言うと、ソフトパワーについて皆さんに言うのは釈迦に説法だと思いますけれども、ジョセフ・ナイが言っているのは、要するに、軍事力による強制や経済力による報酬といった「アメとムチ」によって相手に対して影響を与えるのではなくて、脅かしや誘導とかでやるのではなくて、やはり政策が持つ魅力です。そういったもので相手国に対して影響力を及ぼす、あるいは望ましい結果をもたらす。
ところが、ナイによれば、政策が偽善的、傲慢、他国の意見に鈍感、国益に関する偏狭な見方に基づいているとわかったときにはソフトパワーを減らすんだと言っているわけです。これはまさしく、OECDによる日本の対日援助審査、これは2003年12月に行われましたけれども、そこにもやはり警告が出ています。ODA大綱では非常に国益が強調された。これは偏狭な見方に基づく、国益に基づくODA政策あるいは実施にならないか、非常に懸念している。それについて、外務省としてどのようにお伺いしたいかというのが、まず1点あります。
まだ、続けてよろしいですか。
あと、具体的な自衛隊の活動との一体化と、あるいはテロとの戦いにどういうふうに使われるかという懸念についても、これもやはりイラクでの世論調査がありまして、これも最近、今年1月末にイラクで行われた世論調査によれば、大多数が米軍を中心とする多国籍軍の撤退を望んでいると。その理由としては、占領に対する反感とか、撤退によって治安が改善するという、それ以外の理由として、やはり復興支援がよくなるんだと。つまり、これは2005年11月の世論調査でもはっきりしているんですけれども、今までの多国籍軍による復興支援というものを評価していないのが59%に上るわけです。
つまり、全体として、自衛隊だけではないけれども、多国籍軍の復興支援に対する評価が非常に低い。特に、自衛隊の活動について、世論調査があるわけではないですけれども、ソフトパワーの源泉であるODAを使って、自衛隊の駐留に対する反対を抑えて、それによって自衛官の安全を確保することが第一義的な目的にあるんだと。つまり、日本の国益がまず最初にあって復興支援をしているんだという見方が、そういう指摘が出ているわけです。ですから、これは非常に日本のODAの評価を下げる。アメリカと同様に、日本のODAの評価を非常に下げてしまうのではないかという懸念がかなりあるわけです。
これは、軍事力を前面に出ているテロとの戦いに対する支援についてもそうです。特に、治安当局、国軍、警察に対する、国軍に対するODAはないわけですけれども、人権侵害を犯している警察に対するODA供与も、今、非常に議論になっています。例えば、フィリピン、その他、インドネシアも含めて非常に問題になっております。そういう点について、どういうふうにお考えかというのが具体的な懸念としての2点目です。
最後、ODAにおける広報強化とNGOへの影響ですけれども、やはりナイが言うには、ソフトパワーで重要な広報としては、自分のメッセージが相手にどのように受け止められるかを理解し、それに従って調整していくべきであると言っております。
今年から、外務省の方では、NGOに対する支援無償については広報強化のために日の丸かODAロゴの表示が義務付けられましたし、また、国連機関を通じたNGOに対しては、NGOへの資金支援については日の丸を一方的に、日の丸が付いたシールとか配付物を一方的に押し付けられるケースがあります。これというのは、そういった相手国の人々が日の丸に対してどういうような感情を持っているか。特に、日本が占領したり植民地支配した国々の人々、あるいはほかにも嫌な思いを持っている人に対して配慮すべきではないか。しかも、NGOの非政府性や自発性といった面で、日の丸という、そういう政府とは一線を画しているというところで活動をすることによってNGOのよさが出ている部分があるわけです。先ほど言ったBBCの世論調査の中でも、グローバルプレーヤーとしてNGOを評価する場合は、割合が60%。肯定的にです。国連の59%を上回っているわけです。そういう場合に、NGOが一体なぜ評価されているのか。その辺をやはり考えていただきたいと思うわけです。
結論としては、自衛隊の活動とかテロとの戦いにODAを利用することは、やはり相手国にとって人権侵害も含めてマイナスの影響が大きくて、翻って日本のソフトパワーも弱めることになるので、これはやめるべきではないかと思います。そして、日の丸とかODAマークのロゴの表示づけも同様な理由から、その表示方法についてはNGOに任せること。勿論、日本の資金源がそうだということは表示するのもやぶさかではないですけれども、その表示方法についてはNGOの自発性を尊重していただきたいと。それでNGOのパワーを維持させていただきたいというのが提案です。
どうもありがとうございました。
○鈴鹿 どうもありがとうございました。ODAの本質に関わる、非常に重要な問題提起をしていただきました。
それでは、これに対しまして上村課長の方からお答えいただきます。
○上村 まず、ソフトパワーを減じるのではないかという御指摘ですけれども、1月19日に麻生大臣が日本記者クラブで我が国の海外経済協力に関してスピーチをしました。その中に、今の御質問に対する答えが幾つか入っていると思います。
これは御案内のとおり、ODA大綱に、いわゆる国益という言葉は出てきませんけれども、世界の平和と安定は我が国の安定につながるんだという発想が書かれていると思いますけれども、つまり、だからといって、我々、感染症だ、グローバル・イシューズについての関心を含めていることはありません。MDGに対して、その目標について、それぞれ、少ないながらも工夫してやりくりして、NGOの方とも共闘するという姿勢では全く変わっていないわけです。
それは、麻生大臣の言葉を借りると、結局、それは回り回って自分のところに返ってくるんだと。つまり、それだけよりよい国際社会ができれば、それが日本のためになるんだと。これが私の考えている、そういう意味では国益なんだというような趣旨だったと、私は聞いていて自分の中で解釈しましたけれども、今のお話については、政府が国益を追及する中、右の方にかじを切ってそのままというような発想ではないということを、まず、1つ申し上げたいと思います。
ちょっと中座しましたので、よく聞いていなかったところがあるかもしれませんけれども、麻生大臣はソフトパワーのところについてもちゃんと触れているわけです。なぜこれだけ、日本人がいろんな途上国において評価されているかということについては、やはり額に汗をして一緒に働くという、これはJICAのボランティアであれ、NGOの方々であれ、あるいは我々、経協のメンバーにいる人間であれ、あるいは企業の民間の方の活動もそれは入ると思いますけれども、そういうことがまさにソフトパワーの源泉。それがジャパンバリューになるというくだりもありますけれども、私はソフトパワーを国際の平和と安定のために、それが我が国の回り回って平和と安定につながるという発想の下で経済協力をやることによって、ソフトパワーとちゃんと両立するというのが、私の今の1つ目の御質問に対する答えであります。
私の個人的な経験ですが、やはりイラクに行って、私もイラクと長くつき合っていますけれども、例えば、1998年の制裁下のイラクでも医薬品が細々と供給されていましたけれども、NGOの方の活躍されるあれは非常に大きかった場面があったんです。それでも田舎まで行くと、医薬品もなければ、診療所には聴診器が1個しかないと。だけれども、そのときでも基幹病院として日本が80年代につくった13病院というのはイラクの人の心のよりどころだったわけです。それは制裁の20年という、失われた二十年を経ても、まがりなりにも医療機関として生き残っていっているというのを目の当たりにしてきたころから考えて、私はやはり、日本のODA、それに伴うソフト、システム、制度、パッケージでいろんな日本人の顔を持ちながら外に出していくということの威力、まさにソフトパワーだと思いますけれども、目の当たりにした記憶があります。
2つ目のテロとの戦い、例えば警察支援とかああいうことについては慎重たるべしではないかというお話ですけれども、私もここは難しい問題だと思います。では、何から手を付ければいいのかと。例えば、イラクのような現状、アフガニスタンのような現状を見ると、やはり地元の人、皆に回すというか、全会一致でこれが欲しい、あれが欲しいということにはなかなかならないと思いますけれども、やはり、基礎インフラとしては何よりも先に治安です。ですから、我が国も警察当局に対する協力というのを一つのイラク協力の柱に据えておりますけれども、私はテロとの戦いというのは我々の子どもや孫の世代のための長期的な取組みだと思っています。
これは、当然、何も警察権力に対する協力という狭い意味のテロとの戦いだけではなくて、貧困削減であれ、初等教育であれ、宗教学校から実学重視への転換への協力であれ、いろんな側面が、私はテロとの戦いについては入れられると思いますので、今後とも、よくよく考えながらやっていきたいと思います。
それから、私は自衛隊の保安のためにイラクでODAをやっているという御指摘については首をかしげざるを得なくて、むしろ両者ともイラクがよりよくなるために言っているわけで、お金で安全を買うとかそういうような発想というのは基本的にはありません。やはり自衛隊がやっておられることと、我々がやる資金や人の協力ということは、繰り返し言っていますけれども、車の両輪となって、今日よりは明日、明日よりはあさっての方がちょっとでもよくなると。現実にイラク全土を見渡して、北部は別として、やはりサマーワというのは格段に治安のいい、いわゆる経済がようやく回り始めた地域に、その取っかかりに来ていると私は思います。
3つ目の広報のところですけれども、これも大変、重要なポイントだと思います。いろんなところで私も議論させていただきました。
今の日本の一般会計のODAレベルは、額面ベースで言うと、大体、1980年か1981年ぐらいです。デフレーターをかけますと、いわゆる資金的には、恐らく70年代のODA実力も持ち得ない国になってしまったんです。その分、市民社会の方で一生懸命頑張って活動を増やされている。それは70年代と今と、30年後とはかなり違うところだと思いますけれども、私の一番の悩みは、つまり減っていく資金源をいかに効率的に使い、そして、それがいかに国民一般の方々に理解をされるかということを考えるのが私の一つの仕事でして、日の丸マークやODAマークということをおっしゃいましたけれども、別に日の丸を付けろとかということを我々は言っているのではなくて、ODAマークか、日の丸マークか、どちらか、少なくとも日本から政府資金がある協力についてはよほど何らか特別な事情がない限り、できるだけそれを尊重してくださいというお願いをしているはずであります。 逆に言いますと、イラクなどで日の丸を付けたらすぐねらわれますので、それは付けていませんけれども、例えば、それはときどきによって違います。私は、それを付けることによって日本のソフトパワーが落ちるかどうかということについては、必ずしも私は長瀬さんのおっしゃることは説得されない。むしろ、どんなマークが付いていようと、何しようと、日本人の顔をした者が向こうに出ていって、向こうのネットワークの中に入って、向こうのネットワークと一緒に汗を流して働いてというのが、私は日本のソフトパワーで優先だという気がしています。
以上でございます。
○鈴鹿 どうもありがとうございました。
この議題について、ほかに何かございますでしょうか。
○長瀬 今、いただいたコメントに対する対応はよろしいですか。
○鈴鹿 よろしくお願いします。
○長瀬 ODA改革ネットワーク・東京の長瀬です。コメントありがとうございました。 ちょっと認識が違う部分を少し言わせていただきたいと思います。
まず、最初のテロとの戦いと自衛隊の問題ですけれども、テロとの戦い、テロ対策にODAを使われる。警察にいろいろ、例えばフィリピンに自動指紋識別機とかを無償でやられたり、今後、集中的にインドネシアとかにもやられる予定にしていますが、要するに、そういうことを使った治安当局が、テロの犯人を捕まえるために、例えば、そこに人権侵害が起きている。これはNGOの指摘もありますし、国際社会の指摘も実際にあるんです。そういったことに、日本政府はどれだけ敏感なのか。そういったことに対して、やめろとかそういった、少なくともネガティブリンケージを発動されなくても、外交圧力をかけるとか、相手国政府に働きかけるとかそういったことにどれだけ敏感であり得るのかということをまず具体的に言っているわけなんです。
自衛隊についても、同様の問題はあると思うんですけれども、例えばサマーワに全体のODAの40%近く、金額でも、件数でも集中していることの意味です。それが果たして、イラクの人たちにとってどういうイメージを持っているのか。別に、これは無償の場合、だれにでもやってもいいのであれば、別に日本人が行かなくても、勿論、今は入れないわけですけれども、別に、タイドでなければ、だれがやってもいいのであれば、ほかにもっと支援が必要なところに分散させるということもあり得るわけですから、サマーワに集中させる必要はないわけです。やはり、そういう面で、日本はやはりサマーワに集中している。やはり自衛隊がいるからだというふうに疑念を持たれてしまう。ODAとの一体化というのは明らかに見えてしまう。
最後の広報強化ですが、これについては私は日本のソフトパワーのことを言っているのではなくて、NGOが日の丸を背負うことによるマイナス面をどういうふうに、その辺を配慮していただきたいと。しかも、国連機関を通じた資金供与の場合には、日の丸を一方的に押し付けられる場合があるということです。NGO支援無償の場合はODAロゴか、日の丸かのどちらかの選択ということなんですが、国連機関を通じた場合には日の丸を一方的に押し付けられる場合があるということをお話ししたわけです。
○鈴鹿 それでは、この問題については、まず上村課長の方から何かございましたらお答えいただくとともに、特にNGO支援無償についての広報については城守室長の方からお答えいただきたいと思います。
○上村 日本が、ODA供与に当たって人権問題にどれだけ敏感かということですけれども、総論で申し上げると、それは敏感にならざるを得ないというのが確実な流れだと思います。ただ、私は、個々、個別の部隊でこういうことがありましたので、こういうことは慎重になりましたという例示はなかなか持っていないし、そういうのはむしろ言わない方がいいのかもしれません。
フィリピンについての例は、私は知りません。ただ、例えば空港で指紋を使うとかというのと、人権を侵すというのとはちょっと私はよくわからないんですけれども、指紋の機材供与先というのは、私の理解ですけれども、金属探知機とかああいうことを含めて、水際作戦のところにテロ対策ということを考えて供与しているというのが私の考えなんですけれども、もし間違っていたら、後で訂正させていただきます。
2つ目は、サマーワの40%集中云々ということですけれども、私のことから言うと、やはりあそこが唯一、バグダッド以外、北部、クルドは除いてですけれども、日本の援助関係者が入れるところなんです。外務省員が、今、延べで言うと、少なくとも22~23人があそこに張り付く体制になっていまして、そういう意味ではモデル地区なんです。サマーワというのは、治安が安定することによってこれだけ伸びていくんだということを見せるという効果も当然、我々は考えてやっております。少ない資金で、やはり50億ドルといっても、イラクの2,700
万人の人口から見ると、言わば本当に実施されるかどうかわからないところにばらまくという選択肢は、今の行政官として私は持ち得ないので、そこはそういう御理解をいただきたいと思います。
それから、ロゴの話ですけれども、私が申し上げたのは、例えば政府資金についてはお願いをしているということで、国連機関経由の日本資金について、私はどうなっているかわかりませんので、事実関係のわかる方からあればと思います。
いずれにしても、EUも、たしかNGOはEU資金にEUのものを張ったりする例もあると。諸外国にもそういう例はあると聞いていますけれども、そういうのは間違いなんでしょうか。それとも、割合に特別なことをお願いしているのか。もし、そうだったら考えなければいかぬと思います。
○城守 民間援助支援室の城守です。日本NGO支援無償のロゴについてお話ししたいと思います。
国際機関のことは、私も承知しておりませんので言及できませんが、ちょっと認識の違いがあるという感じがしますのは、広報を私どもが強制しているというお考えでお話しされているようなんですけれども、私はそうではないのではないかと。日本NGOの方々には国民の支援がもともとあって、その国民の支援の下にNGOの支援ができていくのだろうと思います。例えば、NGO支援無償で支援をやれば、今、ロゴを付けることをお願いしていますけれども、更に御自分たちがやられたプロジェクトはホームページに載せてくださいとお願いもしています。
私は、更に、ホームページに載せたら、それをもって、国民のお金を使って友好的に外国でこういう良いことができましたという報告を、今度は国民との間でやっていただきたい。そうやって初めてNGOの方は国民の方と一緒に手を組んで、いろんないい活動ができるのではないかと。そういう観点に立てば、政府のお金、国民のお金を活用して事業をした場合には、国民が一緒であることを示すということは、政府が強要するからではなく、NGOの方々からもお考えいただいて良いのではという気がいたします。
また、外務省は連携推進委員会というNGOの方々との会議を持っておりまして、私、1年間協議をしてきましたけれども、そちらの方では、今、おっしゃられたような広報の強制はいかがなものかというような問題提起をいただいたことがありません。他方、何でもかんでもロゴを付けろと言っているわけではなくて、付けることによって危ないところ、特殊な事情があるところ、NGOの方の命の危険とかいろいろ困ったことになるような場合には、それはお話しいただければやめることもできます。ただ、国民のお金を使ったときのアカウンタビリティー、それから、皆さんは常に国民と一緒にいるわけですから、それを見せると。見せることによって、逆に、私はNGOのソフトパワーは弱くなるのではなくて、強くなるのではないかと思います。我々NGOは、国民と一緒にここに来て、こういういい活動をしているんだということを広く訴えていただければ、かえって、NGOのパワーが強くなるのではないかという気がしております。
○鈴鹿 どうもありがとうございました。
本件については、時間の制限もございますので、このくらいにさせていただきたいと思います。
それでは、ディスカッションの第2番目の議題であります。「(ロ)今後のODA政策・企画・実施体制におけるNGO、現地市民社会との関わり」。
ここで、上村課長が、この次の会合の予定がございまして、まず、いわゆる政策決定といいましょうか、ODAの政策・企画・実施体制に対するNGOの関わりの部分だけ簡単に議題の提起を行っていただきまして、その後、上村課長に答えていただくと。その後は、また議題提起を続けて行っていただいて議論を続けていくと。そういう格好にしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、名古屋NGOセンター及びNGO福岡ネットワーク様、議題の提起をお願いいたします。
○西井 名古屋NGOセンターの西井です。よろしくお願いいたします。
ここに挙げました議題に関しては、既に「(3)報告事項」の「最近のODA改革をめぐる動きについて」のところで概要は説明していただきましたので、そのことを踏まえた上で、上村課長さんは質問の内容はわかっているということで、ここで発言してよろしいですか。
○鈴鹿 結構でございます。
○西井
それでは、既に報告がありましたので、それを踏まえて質問いたします。
先ほどの報告の中でも、今回のODAの組織改変にあるように、市民社会の意見を吸い上げる部分に関しては非常に不十分である観点の発言もございましたし、市民社会との対話の重要性は認識しておられるというような御発言がありましたので、それを実際に、どのようにして今後のODA政策の企画立案、実施の部分で実現していくかということに関しての質問をさせていただきます。
特に、今回、ODAの政策の企画立案をどういうふうに感じて、従来ですと、外務省が一括してまとめて企画立案をやってきたわけなんですけれども、外務省の上に海外経済協力会議というものが設けられて、司令塔としての役割を果たすということになっております。その司令塔の中で、今後どのような議論がされるのか。司令塔の中身は閣僚によって構成されると示されておりますけれども、この中で、私どもが従来、主張してきました市民参加、透明性、公開性といったものをどういうふうに確保するのかというふうなことでの質問です。
まず、この海外経済協力会議なんですけれども、ここは外務省のホームページなどで示されているイメージ図に基づいていきますと、外務省が各現場から上がってきた案件についてまとめて、それを海外経済協力会議に情報提供して、海外経済協力会議の中で会議をした上で政策決定していくというふうになっておりますが、その中に、この海外経済協力会議の中で、議論の中に透明性あるいは公開性というのはどういうふうに確保されるのかということが1つ目です。
それから、外務省は、その中で、非常に重要な役割を果たすと思うんですけれども、その中に、外務省の中で現地からの情報をどんなふうにまとめて、それを海外経済協力会議に上げていくのか。そのプロセスにおいて、どのような公開性、透明性を確保していくのかということが1つありますので、それについてお考えを述べていただきたいと思います。
○鈴鹿 では、上村課長、よろしくお願いいたします。
○上村 済みません、ちょっとどたばたと出入りして、もし抜けていたらごめんなさい。 この海外経済協力会議(仮称)ということについては、これは内閣官房にできる、総理大臣を補佐する会議であります。したがって、私が、今、この場で有権的にこうこうだということをお答えすることはできません。まず、お断り申し上げます。
私が聞き及ぶところでは、この有識者検討会の中では、この海外経済協力会議で何を議論するかというのは、まさに御指摘になったようなことをずっと議論されているものであります。議論の模様についても、概要についてはウェブサイトに載っているはずですけれども、結論としましては、この4閣僚、総理を入れて5閣僚が議論することというのは、例えば、例示的にはODA大綱ですとか、中期政策のようなもの。それから、主要な国別の話。これは、主要な国といっても、要するに定義があるわけではありませんからどこかはわかりませんが、少なくとも、今、経済協力をやっている百数十か国すべてを相手にやるわけにはいきません。そういうのはもうわかることだと思います。
それから、例えば、事項別で重要な案件。例えば、どこか世界で新しい紛争が起こったときにどう対応するのか。人道的な措置が必要なときにどう対応するのかというようなこともあるでしょうし、ということで、今のお答えにあれしますと、外務省が何かすべて案件を吸い上げて、ふるいにかけて、それで海外経済協力会議に上げていくと。こういうことでは必ずしもなくて、恐らく、この戦略というところの欠如というのが、特にここ10年、15年の日本の経済協力に欠けていたと。こういう批判からこれが始まっておりますので、いわゆる戦略を立てた後の企画立案のところは、戦略の大きな枠の中で外務省が従来どおり、あるいは従来にも増して調整の中核としての機能を果たしなさいということが全体像であります。
したがって、A、B、Cという案件が外務省にあって、それがA、Bにふるいがかけられると。そして、そのA、Bのオプションで上に上げてAを選ぶとかこういう発想の仕事のやり方ではむしろなくて、もっと大きな、世界で何が起こっているか、どういうことが必要かということを戦略会議で議論して、何か大枠が示されると。その中で、外務省が従来どおり、年間2,000
件も案件がありますけれども、これを来年、再来年に向けてどういうものをつくっていくかということを、今まで以上に実施機関に指示しなければいけないわけです。そういう戦略の下でそういう指示をする企画立案をしていく。こういう機能を高めなさいと。これが全体の構図であります。
それから、市民社会との関係について申し上げると、これもまた内閣官房との話になりますけれども、有識者検討会では、とにかく、今の外務省がいろいろ持っている枠組みを是非活用しろということが最終結論で書かれてあります。逆に翻って見ますと、ひっくり返して言うと、官邸の方の5閣僚の下に何か恒常的な機構をつくるとか、例えば市民対話ですとかそういうことをやる事務局をつくるわけでもありません。ただ、そういう援助機関の長とか、必ずしも閣僚ではない、専門的な知見を持った人をどんどん会議には必要なので呼んでいきましょうということにはなっています。
そういうような意味から、外務省が、今、やっておりますようなNGOとの対話ですとか、例えばODAの総合戦略会議ですとかそういうことについては一層活用しろというのが有識者検討会の指示でありますので、これから制度設計にかかっていきます。今、この時点でどのようなふうにして意見を吸い上げていくのかということについて確たる答えができませんけれども、こういう対話、それから、各種の節目のときの公聴会のようなもので対話をしていく。そして、もうちょっとうまくプラスアルファがないか、知恵を絞っていくということではないかと思います。
○鈴鹿 どうもありがとうございました。特に、市民社会との協力あるいは連携ということについては、これまでの既存の枠組みをできる限り効果的に活用するということでございましたけれども、実際に、これまで、そのような枠組みを極めて効果的に使ったがゆえに大きな結果が得られたという例がございます。このことについて、ごくごく簡単で結構でございます。民間援助支援室の方から、ごく簡単な御説明をいただきたいと思います。
○上村 ちょっと済みません。急遽、ここで中座をしないといけませんけれども、必要なことがございましたら後で報告を受けますので、中座することをお許しいただきまして、失礼いたします。
○鈴鹿 では、よろしくお願いします。
○高根 それでは、実施体制の件で、NGOの方々との連携ということでございますが、最近の例といたしましてですが、パキスタンの例を出させていただきまして紹介させていただきたいと思います。
パキスタン地震が、昨年10月に発生しましたけれども、昨年10月に発生しました後に日本のNGOの方々は現地で援助活動を展開されましたが、特に日本のジャパンプラットホームが現地政府及び国連の機関、現地のNGOの方々と連携いたしまして、越冬支援用のキャンプジャパンというものを立ち上げ、運営いたしました。このキャンプジャパンにつきましては、現地の政府並びに国際機関からパキスタンにおける援助活動のベストプラクティスであるという評価をいただいています。これにつきましても、やはり、今、言及がございましたとおり、日本の顔が見えるソフトパワーとしての魅力を発揮しているのではなかったかなと思われます。
以上でございます。
○鈴鹿 どうもありがとうございました。
それでは、本件につきまして、ほかに論点とか御質問とか、議論のポイントはございますでしょうか。
西井さん、よろしくお願いします。
○西井 名古屋NGOセンターの西井です。
先ほどの質問のコメントを若干いただきましたので、それに対する、またコメントというようなものでありますけれども、従来ある対話を見ていて、窓口を活用するというお答えがありましたけれども、まさに今回はODAの司令塔機能というものに関して、新たな事態が生じたのではないかと、私はそう思っておりまして、勿論、それが閣僚会議ということでありまして、外務省の方でなかなかコントロールがきかない部分があるかとは思うんですけれども、それにつけましても、外務省はそもそも閣僚会議の中の一員ということで一定の発言力というのは持っておられると思うんですけれども、閣僚会議をどういうふうに透明化するかというようなことも、きっと、それは外務省からの御提案をいただいて内部で議論していただく。
それで、閣僚会議を、できれば傍聴を確保していただくとか、何らかの形で市民参加の、それは不十分な形ではありますけれども、できるような、そういう御提案を閣僚会議にしていただくということは可能ではないかと思いますので、一度、その辺を御検討いただければと思いますし、また、新たな機会ということで、NGO、市民の声をどういうふうに、ODA大綱で言えば、国民参加というものを政策決定の上流から下流まで一体として貫いていくという形でも非常に大事な位置であると思いますので、一度、御検討いただきたいと思いますので、お願いいたします。
それと、今、政策決定に関する部分での質問だったんですけれども、実施段階の市民参加ということに関して、福岡のNGOネットワークの原さんからお願いします。
○原 NGO福岡ネットワークの原といいます。議事次第には「福岡NPOネットワーク」となっていますけれども「NGO福岡ネットワーク」で訂正をお願いします。
市民との協同をうたって、ODA大綱なり、ODA中期政策に関して公聴会だったりとか、パブリック・コメントというのがある程度開かれたと思うんですが、今回の一元化に関しては一切なかったということで、1つは、さっき時間がなかったという発言があったんですが、やはりそこはきちんと担保していただきたいと思います。
もう一つは、現地市民社会との関わりということで、現地市民社会とか、案件に関わるところも含めて、現地のNGOというところの声というのをどのように今後扱っていくのか。例えば、現地大使館などを通じてのコメントを集めるということもできたはずだと思うんですが、その辺をどう反映させるのかというのを少しお聞かせいただきたいと思います。
○鈴鹿 これについて、一般的、抽象的にお答えするというよりも、ひょっとしたら具体的な例をもって御説明申し上げた方がより分かりやすいと思われます。以上について、何か例示的に説明できる方はいらっしゃいますか。
和田国別一課長、よろしくお願いします。
○和田 例示的に説明できるかどうか、よくわからないんですけれども、まず、戦略レベルでの議論、閣僚会議での議論にどういうふうにNGOの、市民社会の声を反映させるかという点については閣僚会議の傍聴というようなことを考えてほしいということだったと思いますが、政策課長にも伝えて検討してもらいますが、今回の一連のプロセスはODA大綱とか中期政策とは全然違っていまして、あの当時、大綱と中期政策は外務省が全体のプロセスをコントロールしながらやっていたわけですけれども、今回のプロセスは、外務省の在り方も含めてどうするかはもっと上の方で議論をされていましたので、外務省がコントロールしていたわけではないんです。どちらかというと、我々も我々の考えを聞いてくださいというぐらいのもので説明をしていたわけでございまして、市民社会の声をもっと聞くべしという点についても、もっと上の方に言っていただいた方がいいのではないかという感じがします。
いずれにしても、こういう新しい仕組みを今後つくるわけなので、御指摘の点は課題の一つでしょうから、内閣の方でも検討していただく必要があるのかなと思います。 現地レベルでの市民社会の関与、関わりという点については、まず、どうしても我々、とりあえずは日本のNGOの方々とどういう連携ができるかというところにすぐ目が行ってしまうわけですけれども、先ほどパキスタンの例などの御紹介もありましたけれども、パキスタンに限らず、バングラデシュやらいろいろなその他の国でも、現地ベースで大使館、JICA、JBICなどの現地タスクフォースと、日本のNGOの方々との意見交換会とか、協議だとか、それから、一緒にいろんなことをやるというような場面はまだまだ不十分な面はあると思いますけれども、一生懸命やっていますし、今後とも一生懸命やっていきたいと思っております。
それに限らず、現地においてしかるべき現地のNGOの団体とか、それから、NGOに限らず、現地における有識者の人々とか、政府以外の関係者の声についても、大使館などを中心に可能な限り聴取するように努めていますけれども、これもまた、在外公館の体制の問題だとかいろいろございまして、難しさもあります。本来、もっとやるべきだという御批判はあり得るんだろうと思っています。
いずれにしても、フィリピンなどでも、まだ形にはなっていませんけれども、現地のNGOの人たちと大使館やJICAとか、日本のNGO関係者とか、ネットワークをつくれないものだろうかというようなことで、いろいろ議論が始まりつつあるというふうな状況もあると承知しておりますが、それぞれの国によってもNGOみたいなものが認められていない国とかいろいろございますので、それぞれの国ごとの状況を踏まえながら、また日本側の、また我々の側の体制の制約といったようなものもあるわけですけれども、一歩一歩、前に進んでいけたらと思っております。引き続き、また皆様の方から提案がございましたら、いただければ考えていきたいと思います。
○鈴鹿 どうもありがとうございました。
それでは、そろそろ時間も押しておりますので、特に御提起なさりたい点がございましたら、あと一つだけお願いします。もし、そうでなければ次の議題に移りたいと思いますが、いかがでございましょうか。
よろしゅうございますね。承知いたしました。
それでは、議題の3番目でございます。「(ハ)TICADプロセスへのアフリカや日本のNGO、市民社会の参加」について、TICAD市民社会フォーラムの方から議題の御提起をお願いいたします。
○石田 TICAD市民社会フォーラムの石田と申します。
私どものNGOは、アドボカシーを行っている団体でして、メンバーには大学で教えている者もいれば、開発コンサルをやっている者もいます。ですから、いろいろな専門性を持った者が集まっているということが特徴です。
今、1つ前の議題であった市民社会の参加というところと同じような議題になるわけですけれど、TICADあるいはTICADのプロセスに対して市民社会に、是非、参加を勧めていかせていただきたいというのが、主な提案です。
私どもNGOは、先ほど言いましたようにいろんなバックグラウンドを持った人間が集まっています。私自身もマラウイで5年間ぐらい教育のプロジェクトを、開発コンサルタントでして、ちょうど五月女大使がザンビアにいらっしゃるときに何回かマラウイに来ていただいたときに実はお会いしています。ですから、現場も知っているし、アカデミックなことも知っているので、いろんな話ができるのではないかと思っております。
先日、2月16日、17日にエチオピアのアディスアベバで開催されましたTICAD平和定着会議にNGOの方からオブザーバー参加してよろしいということで、私どもの方から2名参加いたしました。ほかにも、日本のNGOからも参加されました。昨日、その帰国報告会を日本のNGOや関係者の方々に集まっていただきまして、報告会をいたしました。そこに外務省アフリカ二課から梶原さんにもいらしていただいて、かなり活発な討論をさせていただいております。こちらのいろいろな意図とか、意思、気持ちというのはアフリカ二課の方には、いろいろ伝わったと思います。
TICADの今回の平和の定着に関する会議は非常に盛大に行われましたし、アフリカ各国からも400 名近くの方が参加されて、日本に対する期待は大きいのだということがよくわかるものでありました。
ただ、議題が平和の定着ということで難しかったということもあるとは思うのですが、参加各国が経験をシェアすることはできました。しかし、TICADの枠組みの中で具体的に、平和の定着のために、どう活動していったらいいかというような話にはなっていなかったということが1つ課題として挙げられます。また、市民社会の参加というところに目を向けますと、先ほども言いましたように、発言は一応許されているものの、オブザーバー参加であるということ。それから、平和の定着会議の開催に至るまでのプロセスの部分、どういった背景や準備プロセスを経て、そこまで至ったのかという部分はわかりにくいところがあったということ。同時に、会議の中では、市民社会の参加は非常に重要だということは何度も繰り返して言われて、これはよいことだと思ったんですが、「だから、具体的にどうしましょう」という話には至っていないというところが残念だったと思います。
2008年にTICAD IV が開催されます。それまでに、日本がTICADをリードして開催することについて、どういったところを特徴立てていきたいかとかを明確にすることも必要だと思います。いろいろなアイデアを、私たち市民社会も、現場経験を踏まえて持っていますので、TICAD IVの開催について、意思決定をされていく段階や、準備をされていく会合なり、いろいろな機会にもっと我々と話をしていっていただけるといいと思っております。
今回、ODA政策協議会に初めて参加させていただいたのですが、やはりこちら側がNGOで、そちら側が外務省というかたちで面と向かってやっていると、やはり議論を闘わすようになってしまうように思います。それよりはお互いに日本のODAをよくするにはどうしたらいいかというような、もっとざっくばらんな話し合いができるような、会場の構成になればいいと思いました。
私どもでは、昨年、アフリカ政策市民白書第1号を出しまして、もうすぐ、出版もされます。白書では、アフリカのNGOにも評価をしてもらっています。
例えば、昨日の報告会でも議題に出たのですが、TICADとTICADの5年間のモニタリングをどうするかとか、TICAD自体の評価をどうするかとかについて、現地のみんなにどう受け取られているかとか、日本の市民からどう受け取られるか、市民社会の目から見た評価やモニタリングというのも含めて、我々の白書で対応していくことも可能ではないかと思います。外務省とも、そういうところでもブレーンストーミングができるのではないかと思っております。
先ほど、現地のNGOの話があったんですが、私どもは、パートナーシップセミナーというのをやっております。去年はモザンビーク、セネガル、タンザニアで開催しました。日本のODAを現地NGOによりよく活用してもらうため、大使館、JICA、日本のNGOと、現地NGOのネットワークをつくることが目的です。今年はエチオピア、マラウイでの開催を計画しています。世銀やJICAの衛星放送も使って会議もできるのではないかというようなことも考えておりますので、いろんなアイデアが出てくるかと思います。また、これから定期的にこちらからもそういった場を提供したり、情報を発信していきたいということを思っております。
最後になりますが、我々の提言は、今回のTICADプロセスに対して平和の定着会議に参加させていただいた中で、いろいろ市民社会の参加は重要だとは言われておりますが、是非とも、これから準備をされる段階において、あるいは実際のTICAD
IV の会議において、市民社会を、アフリカにしろ、日本にしろ、対等なパートナーとして、正式参加を認めていただきたいということが1つ。
それから、TICADの共催側に、是非、アフリカの団体、AUやNEPADを、正式に入れていただきたい。この2つを提案させていただきたいと思います
○高瀬 補足的なコメント、よろしゅうございましょうか。
○鈴鹿 どうぞ。
○高瀬 TICAD市民社会フォーラムの高瀬と申します。
TICAD市民社会フォーラムの高瀬と申します。
同時に、私、国際開発センターの顧問もずっと続けております。私自身のアフリカとの関わりは、1966年にスーダンに行ったのを皮切りに合計230日間ぐらいアフリカの16か国くらいを歩きました。私は農林水産業の専門なものですから、農村開発を主にしたアフリカの、開発戦略の評価や改良点を日本政府に提言してきました。今度、このTICAD市民社会フォーラムがこういう提案を出したのは、1つは2003年に行われたTICADIII
の経験に基づいております。TICADIII のときは、TICADIIのときよりはもっと外務省は力を入れてくださいまして、予備会議とか、本会議でもオブザーバーとして,
NGOの出る幕をつくっていただきました。
しかし、問題は、そのときの議長をされていた外国人女性が、自分の意見を半分以上言って、NGOの言う時間がなかった。それから、勿論、最後の議長総括にはNGOのことは、オブザーバーですから、何も入っていない。そういうふうなことで、結局、NGOの思いはどこにも入ってなかったことが非常に問題だと思いました。
そこでTICADIII に集まったアフリカのNGO、日本のNGO、それから、アジアのNGOの3つが団結し、それで、2004年にできたのがこの「TICAD市民社会フォーラム」なのです。
今まで、私どもの経験では、NGOというのはいろいろ言うけれども、大きな欠点が2つあると思っていたんです。1つは、専門的能力から見ると、細かいことはいろいろわかっているかもしらぬけれども、マクロ戦略的視点が不足していることが1つ。2つ目は、お金を持っていないんです。この2つが非常に大きな欠点だった。
TICAD市民社会フォーラムというのは、この2つの欠点を克服する努力をしましょうということで、構成員としても、NGOの人だけでなしに、研究者とか、コンサルタントとか、JICA、JBIC、マスコミ、学生まで入ってもらい、今90人ぐらいです。第1回目の白書が、この間、ここにも添付しましたけれども、「貧困と不平等」というテーマでした
第2年目のテーマはこれから考えますが、これはより具体的に私たちの専門能力を結集します。そTICAD IVに役に立つように、勿論、外務省の方にも提出し御相談もします。それが1番目です。
2番目の、「お金がない」ということは、どうやって克服できるのか。各ドナー間の考え方が異なるので、数字的に示すのは非常に難しいです。しかし、例えばOECDの平均から見れば、国際機関側の拠出も含めて、ODAの14%、15%くらい欧米諸国は出している。それに対して、日本は2%ないし4%ぐらいではないかという一つの資料があります。こんなに離れているとやはり困るのです。それを日本もODAのせめて10%ぐらいまでNGOに使えるようにしてほしい。そうなれば、日本のNGO活動もかなり具体化できると思います。
以上でございます 。
○鈴鹿 いろいろと示唆に富んだ議題の提起をいただきまして、どうもありがとうございました。その中には、政策協議会の実施方法についての非常に革命的とも思えるような御示唆もございました。
それでは、既にお話し合いは進んでいるようではございますけれども、このTICADプロセスへのNGOの関与という点について、アフリカ第二課の梶原補佐の方からお答えいただきたいと思います。お願いいたします。
○梶原 アフリカ第二課の梶原と申します。よろしくお願いいたします。
時間も限られているということでございますし、あと、まさにTICAD市民社会フォーラムの会合に昨日お招きいただきまして、いろいろと意見交換をさせて頂いたところでございまして、手短にお答えさせて頂きたいと思います。TICADプロセスへの市民社会、NGOの方々の参加につきましては、また今後ともいろいろと勉強をして、意見交換をさせていただければと思っております。
またNGO、市民社会を正式なパートナーとしてTICADプロセスに参加ということでございますけれども、私もアフリカの開発で、非常に市民社会の役割というのは重要だというふうに私どもも認識をしておりまして、それが恐らく、実施面で御協力等をお願いしている、もしくはすることになるということ。
もう一つ、それだけではなくて、政策面においてもいろいろとお知恵、お力をいただけるということというのは私どもとしても認識をしておりまして、TICADIII
のときには、TICADIIよりは、ある程度御評価をしていただいたということであるとは思うんですが、市民社会との対話というTICADIII
の中ではセッションも取らせていただいて、御評価は勿論いろいろとおありだとは思うんですけれども、私どもとしては考えた中で、ある一定のことはさせていただいたというふうに認識をしているところでございます。 TICADIVに向けても、こういった協力を更に進めることができるのか、どういった、TICADIII
からの現状の変化ですとか、いろいろな周りの環境なども踏まえて、かつTICADIII の反省を踏まえて、どのような形で協力を、具体的な形で御説明できるのかということをまた御相談させていただきたいと思います。
そのためには、個人的な考えではありますが、恐らくこういった場もお借りして、TICAD市民社会フォーラムさんだけではなくて、いろいろな団体の方、現場で実際に支援事業に携われている団体の方、もしくは政策研究・提案をやられている団体の方、例えばアジアについて知見がおありな方ですとか、そういった方々の御意見も幅広くお伺いをしていくような形にできればと思っております。
もう一点、AU・NEPADとの共催という話でございますけれども、前回のTICADIII ではNEPAD支援を大きな柱の一つとして打ち出しました。そういった意味で、TICADIVへ向けてNEPADとの連携強化、協力強化というのを積極的に進めているところでございます。
これは、先般、ムカベレ事務局長を日本に招聘して、第1回になります政策対話というものをさせていただきましたし、そのときのコミュニケと申しましょうか、議事内容というのはホームページで公開されております。
そういった意味で、AU・NEPAD、特にNEPADとの連携協力というのは、これもTICADIII のときから、少しずつではありますけれども進んできておりまして、将来的にどういった形で、例えば共催という形になるのか、それ以外の形になるのかという議論はあると思いますが、いずれにしても、支援強化ということは今までもある程度やっていることでございますし、これからも、まさにいろいろ御意見をいただきながら考えていきたいとは思っております。
以上、簡単でございますが、ありがとうございました。
○鈴鹿 どうもありがとうございました。それでは、以上の説明に対しまして、更に御質問であるとか、問題の提起等ございますでしょうか。
どうもありがとうございました。それでは、本日の議題の一番最後の方でございます。「(ニ)人権問題のある国への援助のあり方と人間の安全保障」について、ODA改革ネットワークの方から問題点の御提起をよろしくお願いいたします。
○川村 ODA改革ネットワーク・関西の川村です。
実は、この少し後で議事次第の訂正をお願いしたいんですけれども、この議題というのはODA改革ネットワークだけではなくて、環境持続社会研究センター(JACSES)及びカンボジア市民フォーラム、3団体の共同提案ということでさせていただきたいと考えております。
というわけで、発言する人間も何人かいるわけですけれども、私の方から簡単にどういう問題意識でこの論点を取り上げたのかという背景と、大きな問題意識について報告させていただいて、あと、ネパールとカンボジアについて具体的な例を挙げながら、JACSES及びカンボジア市民フォーラムの方から御発言いただきたいと考えております。
まず、私からなんですけれども、この議題をここで取り上げようと思ったというのは、昨今のネパールとカンボジアの状況、特に市民権に関わるような状況が悪化しているということがあります。
最終的に、この1年ぐらいの間に外務省の方でもかなりこういう状況に対してはっきり姿勢を示されるようになったかと考えているわけですけれども、当初は必ずしもそうではなかった。少なくとも、カンボジア、ネパールのNGOからはそうは見えなかったという事実があります。
その中で、日本政府は一体こういう状況に対してどう考えているんだろうかと。一方で、ODA大綱あるいはODA中期政策の中で人間の安全保障というのを強く打ち出しておられる。だけれども、現場の具体的な実施は一体どうなんだろうという問題意識があったということを、まず、お伝えしたいと思います。
確かに、このカンボジアとネパールについて、具体的な行動、例えば声明を出されるとかという形で随分態度をはっきり示されて、その点について非常に私たちも歓迎しているわけですけれども、ただ、それでもやはり、当初持った問題意識というのは必ずしもぬぐい去ることはできない。
それはどういうことかというと、そもそも外務省はODAを実施するに当たって、人間の安全保障をどのようにとらえているのか。特に、相手国の人間の安全保障の実現状況、あるいはその課題についてどのように分析され、どのような判断をされているのかというところがよく見えないということであります。
私たちは、その意味で、広い意味での人権、これは単なる市民的自由、言論の自由だとか、結社の自由だけではなくて、教育、医療サービスから排除されるというようなことも含めての広い意味での人権の状況を踏まえて、やはり人間の安全保障の実現の課題というのを、特に深刻な課題を持つ国について分析していって、それを現地の市民社会も含めて共有していくべきではないのか。そういう共通の認識があるという中での行動であるなら、よほど理解もされやすいし、支持もされやすいであろうと。そういう問題意識で、少し提案をさせていただきたいと思います。
なぜ、人権かということなんですけれども、これは中期政策の中でも書かれていらっしゃいますけれども、人間の安全保障を考える上で、生命、生活及び尊厳が危機にさらされている人々、あるいはその可能性の高い人々が一体どこに分布し、何を必要としているのかを把握した上で重点的に援助を実施しなければいけないということを書かれているわけです。
尊厳がさらされるというのは、まさに人権が侵害されて、もしくは侵害されるおそれがあるということかと思います。だから、そういう状況を踏まえて、どこに援助を行うのか、どういうふうな援助を行うのかということは考えていかなければいけないということを書かれている。これは本当にそのとおりだと思うんですけれども、では、それは実際にどのようにされているのかというのはよく見えない。
特に、今回のカンボジア、ネパールの状況ではっきり見えてきたかと私たちは考えているわけですけれども、人権の中でも市民的自由、発言をしたり、政府に対して意見を言ったりする自由が保障されないときというのは、やはり人間の安全保障、それは短期的な意味でも、あるいは先ほど言った教育や医療サービスからの排除といった意味でも、人間の安全保障の実現の支障になってくるだろうと。
そういうとき、一体、どのように行動するのかということについては、現状では恐らく総合的に判断されているということなのかと思いますけれども、より透明性のある、我々も、あるいは現地の市民社会も納得できるような判断の枠組みというのを示される方がいいのではないかと考えています。
このようなことを実際に実現していくためには、人間の安全保障を具体的に実現していくためには、国の状況についてどのような分析しなければいけないのか。どのような課題をとらえていくのかということを、NGOを含めて議論していく。それは、例えば国別援助計画に反映させる、あるいは政策対応の中に反映させるというようなことをやっていく必要があるのではないかと考えております。
そうは言っても、実際にどうしたらいいのかというのはなかなか難しいかもしれません。だから、当面、重要な課題のある国についてパイロットプロジェクト的に取り上げて、共同のNGOとか、共同のプロジェクトをやっていくということはできないのかとも思っております。
この人権と人間の安全保障というのは、非常に大きな問題でありますし、外務省のODA政策の中でも深く関わることだと思います。今日の議論だけでなかなか簡単な答えにはたどり着かないかとは思いますけれども、今後とも議論をさせていただければありがたいと思っております。
では、引き続き、あと、ネパールとカンボジアの具体的な例を取り上げていただいて、御発言いただきたいと思います。
○田辺 JACSESの田辺と申します。ネパールに関しまして簡潔に問題提起させていただければと思います。
ネパールは、御存じのように、マオイストと、議会と、王室の間で旧来よりずっと紛争状態にあります。基本的にネパールは山岳国家でありまして、特に山岳地域においてはマオイストの支配地域というか、支持地域が非常に多くあります。
近年、昨年2月の王室の政変以降、より人権侵害が厳しくなりまして、政治家の逮捕であるとか、人権活動家の逮捕、それからさまざまな通信の傍受であるとか、いろんな人権侵害が行われてきております。
これに関しては、外務省でもプレスリリース等を出されて、我々も迅速にプレスリリースを出したことに関しては一定の評価をしております。 ただ、この紛争の背景には、やはり経済的な問題、つまり貧困の問題が根底にあると私は考えておりまして、やはりこの部分を何とか構造から変えていかない限り、多少の合意は行われたとしても、なかなか前進しないのではないかと懸念しているわけです。
具体的なプロジェクトの概要と背景、こちらではメラムチ給水プロジェクトということを例に挙げさせていただきました。この具体的な話は参考資料を参考にしていただきたいのですが、私が言いたいポイントは2点ございます。
1点目は、まず、やはりこういった政情不安、紛争地域において円借款を実施するということには非常に不確実性が高まるということです。ガバナンスの問題、民主的なプロセスの問題、環境社会配慮の問題、それから、工事の遅延と利子の増加による負担の問題というようなさまざまな不確実性が高まってしまうのではないかと思います。
2点目は、これは先ほど少し申し上げましたが、こういったプロジェクトが紛争を助長する可能性があるのではないかという点です。つまり、国家予算の半分に匹敵するような巨大なプロジェクト、財政においても大きな負担を強いるプロジェクトがカトマンズへの一極集中を促進し、本来、経済的に貧しい地域にきちんと分配していかなくてはいけないが、そういった財政の機能をゆがめてしまっているのではないかと思います。
先ほども申し上げましたように、貧困問題を解決しなければ、次のステップに行けないということで、そこをもう少し構造的にとらえて、円借款のプロジェクトがそういった紛争を助長する可能性がないかどうか、やはり分析する必要があるのではないかと考えております。私の方からは、以上です。
○熊岡 カンボジア市民フォーラムの熊岡です。カンボジア市民フォーラムは、1992年に準備段階があり、93年にちょうどUNTACなどで展開されたころ、日本で創設されました。それ以降、日本とカンボジアをつなぐ、特にカンボジアのNGOと日本のNGOの協力、具体的には、選挙監視も含む民主化支援ということを一緒にやってきました。
今回、過去1年、カンボジアにおいて野党の国会議員の議員特権剥奪、逮捕、野党の党
首が国内にいられない状態ということがありまして、さらに10月以降、ベトナムとの国境線策定と絡んで政府批判をした、その他の理由で、労働組合の幹部、メディアの幹部、それから、人権NGOのリーダーが逮捕されるという状況が続いていました。
配付資料8)の3ページ目の下の方に「カンボジアのNGOは日本に何を、どのような対応を求めるか」という項目があります。全体の時間が限られているので、この項目に絞ります。ということで、かなりひどい状況の1月中旬に、山田、上村とともに現地で、特に人権NGOからの聞き取りを行って戻ってきたときのレポートです。
ということで、2点問題点を指摘させていただきたいと思います。
これは、1つはカンボジアの人々、あるいはカンボジアのNGOの声であると同時に、カンボジア市民フォーラムの声でもあるんですけれども、カンボジアNGOが理解する日本のODA。全般的には非常に日本の政府、人々からの関心と支援に感謝していますけれども、全体として大型の支援、建設関係などハード面が多いということなどから、結果的に権力者と、その周辺を支えてしまっているのではないかと受け止めている人が多かったです。
それから、むしろ民主化などが後退する中で、問題行動に関しては、これはカンボジア政府とか指導者の問題行動に関しては日本政府外務省として、是非、批判点とか意見を公にしてほしいという要望が強くありました。
この間、1年の状況においても、日本大使館としてはさまざまな非公式のルートでも進言といいますか、アドバイス等をしているんだとは思いますけれども、少なくともカンボジアの一般の人、NGOからは、その意見、行動が見えないということで、そこは非常に残念だと。日本がカンボジアの友好国として、また、トップドナーとして、これらの、この1年間のネガティブな状況に関して明確な意思表示をしてほしい、あるいはしてほしかったという意見がありました。それが権力者の独走へのブレーキとなり、あるいは民主化を志す人々への励ましとなるはずだというような意見が多くありました。
表に出ない形での働きかけで一定の効果もあったりするでしょうし、また、いわゆるアメリカ流のスタイルでなくてもいいのですけれども、外交、それからODAにおける日本の価値観、理念に基づいた意見を明らかにしてほしいと。そうでないと、いわゆる、英語で彼らが言っていましたが「Generous Donor」、寛大な援助国、あるいは寛大で批判をしない援助国と受け止められてしまうおそれがあるというような意見が強くありました。
これは、1月中下旬時点での状況・分析なので、2月、3月の状況については、後で補足します。
第2点目。これは、カンボジア和平協定から15年が経って、協定の精神といいますか、そのときの希望としては、平和の状態の回復。安心して生きていける社会の復興・再建。それから、市民社会形成に基づく民主的な社会を構築していくというようなことがあったと思うのですけれども、日本政府、そして私たちも掲げている人間の安全保障の概念と限りなく重なると思うのですけれども、この15年、残念ながらカンボジアにおいてかえって極端な貧富の差が広がっています。
そういう中で、ここで数字を出していませんけれども、具体的には小学校に行けない子どもたちの数、割合は増えています。結果的に、非識字者の数、割合が増えています。それから、農村の子どもたちを中心に、あとは都市の底辺層の人々を中心に栄養状態、健康状態はむしろ悪化しています。
これは、一義的にはカンボジア政府の行政の問題、責任だと思いますけれども、これまでカンボジア政府財政の約5割か、場合によっては5割以上が日本のODAを含む国際援助によって賄われている現実から見れば、日本のODAを含めた国際援助がもう一度見直されて、つまり、これらの問題が解消されるには、人間の安全保障の理念に立つなら、基礎教育、基礎保健、あるいは基礎医療、基礎福祉というようなこともあると思いますけれ
ども、そういうようなことに直結する援助にしていく、あるいは結果を出していくにはどうしたらいいかという検証が必要だろうと思います。
1点目に関しては、簡単に、今の状態を補足します。
カンボジアのNGOの人たちが声を上げたり、私たちもカンボジアのNGOの人たち2名と一緒に高橋大使にお会いしたというようなことも多少効果を持っているのかもしれませんが、実際にここ最近、カンボジアNGOからの報告では、現在のカンボジア政府と野党の関係、人権NGOとの関係が改善され、その中で日本大使、それから大使館の活動が効果を上げているという判断が届いています。
あと、2月6日に外務省報道官の談話というのが出ておりまして、これも過去1年間のカンボジアのネガティブな状況へのコメント、憂慮と、それが改善されることを望むということが公表されて、これもカンボジアの英語、あるいはクメール語の新聞でも紹介され、現地でも評価されました。先ほど言った、一定の励ましとなり、またカンボジアの人々、NGOの声が届いたのかなということが伝わってきております。
代表世話人の田坂から一言お願いします。
○田坂 カンボジア市民フォーラムの代表世話人の田坂と申します。一言、日本のODAとの関わりで、今の熊岡からの報告に結び付けて1つコメントをしたいと思います。
日本のODAは高い評価を得ているというのが、いつもODAの関係者とNGOとの話し合いのときに外務省の側から出されるのですが、やはりカンボジアの場合に、特にフン・セン現首相は、今、熊岡からも指摘があったように、コンディショナリティーが全くない日本の援助は非常に大歓迎だと高く評価しているわけで、これは現地のNGOの声がほとんどインプットされないで、特に、私自身は1993~1994年に農薬援助が問題になったときにカンボジアに行って、今川大使ともいろいろ話し合いをしたのですけれども、援助したものがもともとは食糧増産援助ということで、本当に底辺の人たちが食べていけるようにするために始まった援助であるにもかかわらず、実際に農薬や化学肥料が送られて、そして、それが市場で売られている。そして、見返り資金はほとんど不透明のままでどこかへ消えているという状況があって、そういう汚職にまみれた政府に対して全くコンディショナリティーを付けないというようなODAの在り方が非常に私は問題を感じました。
そういった問題が現在もなお、これも熊岡からの報告にありますように、野党や労働組合、あるいは人権NGOやメディアの現政権に批判的な人たちに対して、軍、警察、それから、形式上は整ってきた司法を使って徹底的な弾圧をするというようなことが実際に起こっているわけで、こういうことに対して、後になってから、それに対して非常によいコメントが日本の政府からもされたので、それは評価しますけれども、願わくは、後になってからではなくて、そういうことが起こっているときに、やはりODAの在り方と結び付けて何らかの影響を与えるというようなことを是非お考えいただければと思います。私は、これは内政干渉ではないと思いますので。
○鈴鹿 どうもありがとうございました。人権問題のある国への対応、特に人間の安全保障ということで、非常に高度な議題を、非常に具体的な例なども踏まえながら提起していただきまして、どうもありがとうございました。
それではこちらの方からも、まず、人権問題ということで、ODA大綱の具体的運用という形からお答えさせていただきたいと思うんですが、まず、大綱の運用という基本論を把握した後で、具体的にネパールとカンボジアというところに対して、これまでどのような方針で援助を行ってきたのか。また、今後の方針いかんという観点から、お伝えをしたいと思います。
それでは、まず、経済協力局の開発計画課の小野企画官の方からODA大綱の運用についてお願いいたします。
○小野 開発計画課の小野と申します。よろしくお願いします。
ODA大綱の原則の運用につきましては、大綱の理念にのっとり、国際連合憲章の諸原則及び4点を踏まえて、途上国の援助需要、経済社会状況、二国間関係等を総合的に判断した上でODAを実施するということを大綱で規定しています。その4点とは、第1点目が開発と環境の両立、第2点目は、軍事的利用等及び国際紛争助長への使用への回避、第3点目が、軍事施設、大量破壊兵器などの動向に十分注意を払うこと、そして第4点目が、民主化、市場経済導入の努力、基本的人権及び自由の保障状況に十分注意することです。
実際、被援助国側に好ましくない動きがあった場合には、相手国に対して事態の改善を求めるといったような外交的な働きかけを行った上で、相手国の政治、経済、社会状況、また、そういった状況が過去と比較して、改善されているのか等々につきまして、総合的に判断した上で、必要に応じては援助の停止といった可能性も含めて援助を見直すということになっております。御案内のとおり、具体的な運用に際しては一定の基準を設けて、このボーダーを超えたら機械的に停止するといったような形を取っておりませんで、事態が起こった背景や、過去との比較等々を含めまして、総合的に個別の案件ごとに慎重に判断するといったような立場に立っております。
先ほど、川村様から御指摘がありましたとおり、ODA大綱及び中期政策でも人間の安全保障の視点を基本方針の1つに掲げています。当然、その実現に向けた効果的・効率的な援助をいかに行うかという視点を常に考えながらODA政策を実施しているわけです。大綱の原則の運用や人間の安全保障の実現については、ここでこうなれば、こうすると機会的に決まるようにはならないのが、援助を実際に行っていく上で難しい点ですが、我々といたしましても、できる限り市民社会の皆様方との対話も含めて、我々の支援ができる限り効率的、効果的に実現するように行いたいと思っております。
また今後、戦略的な援助の実施に向けて、閣僚レベルの会議も立ち上がる予定となっています。重要な国への援助政策につきましては、そういったところでも議論するということが恐らく想定されるのではないかと思われます。また、市民社会との対話を強化していく、あるいはODAの実施において透明性を高めていくといった今の流れが、強化されることはあったとしても、減じることはないと私どもとしても思っております。具体的には、先ほどいろいろな御提案もありましたが、今後、追ってまた議論を継続させて、具体的な在り方というのをお互い探っていくということになるのではないかと思っております。 個別の点については、また和田課長等々の御説明に委ねたいと思います。
私からは、以上です。
○鈴鹿 どうもありがとうございました。
次に、具体的なネパールとカンボジアについての政策ということでありまして、地域担当の課の方から何らかのお考えを拝聴したいと思います。
まず、順番にネパールの方でございます。まず、南西アジア課の斉田首席事務官の方からよろしくお願いいたします。
○斉田 ネパールにつきましては、確かになかなか状況を見極めるのも難しい状況にあって、去年の2月1日、その後今年に入って幾度か外報官談話という形で、基本的な立場というのを出させていただいています。基本的に私たちが目指しているのは、やはり多くの部分を共有していただけると思いますが、一個一個の人権侵害という個別の事実について、そこをどうにかするということです。
もう1つは民主主義というのをしっかりネパールに根づかせるということです。まず、この2つが非常に大きな目標だと思っています。
先ほど、田辺さんもおっしゃっていましたけれども、背景にある経済的な問題、貧困の問題、それへの対処というのも当然大事だと思っています。
日本がネパールで活躍するに当たっては、この3点について、いかに日本政府、その他すべて、オールジャパンとして達成していくかということなんだろうと思っております。
その中で、経済協力というのは一つ重要な手段であり、これはプラスの面としての活用、圧力ないしは、テコとしての活用の両面があると思うんですけれども、これをどう活用していくかというのは非常に難しい問題だろうと思っています。
田辺さんが御指摘のプロジェクトにつきましても、基本的な目標はやはり貧困とか、国民に直接、ネパールの人たちに直接裨益できるかどうかというようなことからすれば、これも、その目的からすると悪いものではないだろうと思うんです。
ですから、もともとネパールは去年の2月以前から状況がよかったかというと、そういうわけではないですけれども、個別に一個一個の案件について、今の状況を踏まえてやるのがいいかどうかというのは慎重に判断していくということが基本的な姿勢です。
それで目標は、今、申し上げたとおり、個々の案件についてはネパールの人たちに直接裨益するのかどうかというところを慎重に見極めていくということだろうと思っています。
○鈴鹿 どうもありがとうございました。以上がネパールでございました。
それでは、次にカンボジアについて、南東アジア第一課の福永さんの方からお願いいたします。
○福永 南東アジア第一課でカンボジアを担当しております福永と申します。
先ほど、田坂氏のお話にもございましたとおり、皆様がカンボジア市民フォーラムとして人権状況の調査に1月に行かれた時点から、カンボジアではかなり大きな動きがありました。
資料に書かれた状況から、かなり変化があった点としては、一部訴えられていた人たちの告訴が取り下げられたりですとか、あと、一番大きい動きが、これは外務省からも声明を出しましたけれども、2月に入って野党議員のサム・ランシー党首ともう一名に対して恩赦が発せられて、長らく国外に滞在していたサム・ランシー党首がカンボジアに戻るという出来事がございました。
御指摘の、いわゆる合法的な方法で野党や反政府活動家に圧力をかけるという問題については、外務省としても十分に認識しております。今後カンボジアが多党制民主主義の下、法の支配にのっとって健全な発展を遂げていけるように、外務省側としても見守る必要があるし、また、御指摘のとおり、この問題についてODAを含め適切に対処していく必要があると感じております。
とりあえず今まで大きな問題とされてきたところは、ある程度の解決を見たと思っておりますけれども、2008年に総選挙もございますし、今後とも皆様方と協力して状況を把握してまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○鈴鹿 どうもありがとうございました。
これで、こちらの方の考え方を具体的にお話ししたわけでございますけれども、ほかに何か御提起になりたいポイントはございますでしょうか。
どうぞ。
○木村 市民外交センターの木村と申します。今回、人権と人間の安全保障が議題に入っていたので、我々、人権関係をやっているNGOですけれども、我々の方で、これは情報を入手するのが1週間ぐらい前だったので、文書にできなかったんですけれども、先住民族の件について問題提起をさせていただきたいと思います。
ODAに関して、人権の分野で一番重要になってくるのは、先住民族の権利だと思います。というのは、まず、今までに大規模開発、ダムなどで権利が侵害されてきたところの多くが先住民族の土地で、被害を受けた住民の大部分も彼ら(先住民族)であったということ。インドのナルマダ・ダムやフィリピンのサンロケがそうです。
それから、大規模開発以外にも教育や保健などに関しても、やはり先住民族はマイノリティーなので、今までの国民国家の中での意思決定プロセスに参加できないで、そういうことで分配がなされないとか、最後に彼らの意思に反する形であったりすると。そういう事例が多いんです。
こういった事態を受けて、国連のECOSOCの下にある先住民族問題に関する常設委員会では、今までのようなやり方であれば、MDGにこういった形のものは我々は要らないと。そういう勧告を出しています。これに関して、日本政府が、外務省がどういう対応を取るのかというのを私たちはお聞きしたいと思っています。
去年、先住民族問題に関する常設委員会において、そういう議論があること。これを、我々も帰ってきて幾つか外務省の方に問い合わせをしたりしたんです。人権人道課の方はこういうのはあるということはある程度わかっていらっしゃいます。しかし、例えば、インドネシアの問題に関して、南東アジア第二課の方とお話をしても、アジアに先住民族はいるんですかとかそういう基本的なことから、人権人道課とか、あと代表部の方に問い合わせていただければわかるようなことから話を始めなければいけないので、とてもそれが難しいんです。ですから、外務省として、こういったものに対してどこまで国際的な議論を把握していて、今後、どういう対策ができるかということ。
特に、今までマルチラテラルな援助機関に関しては、例えば、世界銀行やアジア開発銀行に関しては、先住民族の権利に関するガイドラインというものを既に持っています。しかし、JBICもJICAも、今までのところ何もないということで、彼ら先住民族の団体からは日本に援助に対する評価が非常に低いんです。環境配慮ガイドラインの中に、先住民族の件に配慮するという1行があるだけですけれども、世銀のガイドラインは先住民族に関するものだけで10ページはありますから、やはりそこら辺のところの対策が遅れているのではないかと思います。
最後に、先住民族の方では、今までのような開発は要らないと言っているだけで、全く開発が要らないという意見ではないです。例えば、北欧諸国のノルウェーやデンマークの政策に関しては、ネパールや、そのほか、バングラデシュの先住民族の一部から評価を得ています。こういったところを考慮して、外務省の方でも対応をお願いします。
○鈴鹿 先住民族についての御指摘でございました。どうもありがとうございました。
ただし、本件については、以前からお伺いしております問題ではなかったものの、やはり、先住民族の問題というのは十分対処すべき重要な問題であると。そのように考えております。
このことにつきましては、和田国別一課長の方から御説明いただきたいと思います。お願いいたします。
○和田 済みません、先住民族の問題ということではないんですけれども、いろいろ問題点を御指摘いただいたと思いますけれども、各国の、途上国の人権問題に日本政府としてどういう対応をすべきかというのは、ODAも勿論関係しますけれども、やはり人権人道課を中心に人権外交というのかどうかわかりませんけれども、人権の改善に向けた全体的な日本としての政策をどうするのかという文脈で考えるべき問題だと思います。
それは、相手国に対する直接的な働きかけもあるでしょうし、国連の人権委員会、あるいは今度は人権理事会とか、更に人権問題への対応を強化しようという動きがあると思いますけれども、そういう国際機関を通じてどういう決議を出して、どういう圧力あるいは対話をしていくのかといったようなトータルな人権政策の中で考えていくべき問題だろうと思います。
ODAの方も、勿論、そういう全体的な人権をめぐる政策の中で絡んでくるわけですけれども、私、ODAをやっている者としては、余りODAに期待をしないで頂きたいということです。ODAを切り札みたいに思われるのかもしれないんですけれども、ODAだけで問題を解決することには限界がございますし、単純に人権状況が悪化したから援助を止めるとかそういうことをやれば、その援助を受けて裨益している困った人たち、貧しい人たち、苦しんでいる人たちにいろんな外国の支援が届かなくなるということもありますから、そういったことをいろいろと総合的に判断しながらやっていくんだろうと、やっていくしかないのかなということで、そこら辺に難しさがあるという点は、是非御理解をいただきたいと思います。
正直、私の個人的な感じを言わせていただくと、日本は民主主義国ですから、やはり国民の皆様の声を踏まえて政策が決められますので、例えば核実験の問題だとか、核の問題というような問題であると、日本の国民はものすごく敏感に反応します。それを受けて、日本の援助なども、核の問題が絡むと非常に大きく動くという側面があると思います。
それに比べると、人権の問題というのは、日本人の国民の声として我々のところに届く度合いが核の問題などと比較すると比較的弱いといったような事実があることも現実としてありますし、そういった日本の外交の中で人権というものをどのぐらい重視して対応していくべきかといったことも含めて、皆様方からの御意見とか、そういったものをいただきながら考えていかないといけないのではないかと思っております。
それから細かいことですけれども、日本がカンボジアに対してやる支援が全くコンディショナリティーがないという御発言があったんですけれども、実は日本は相当資金の適正利用とか、変な使い方をしないとか、わいろに消えてなくならないとかそういうアカウンタビリティー、トレーサビリティーと、そういった点についてはものすごく厳しいコンディションを付けていますし、逆に、カンボジアなどからは日本のコンディションは余りにも厳しいので、中国から援助をもらいますみたいなことを言ったりするような人もいるという状況があって、そういった点も、結構、難しさがあるんだという点は御理解をいただければと思っています。
○鈴鹿 どうも、御説明ありがとうございました。
次に、五月女大使の方から一言御説明をいただきます。
○五月女 先ほど、熊岡さんと田坂さんからカンボジアの話、それからネパールの話も出ていまして、実は私も去年にネパール、それからカンボジアを回りまして、私の場合はNGO担当大使と言っている関係で、NGOの方々にもお目にかかれるし、それからプレスの方にも会って、実際上、何が起こってどうなっているのかという話はお聞きできました。それで、確かにおっしゃるようなことがあるというのは理解しています。
実は、先ほどネパールとかカンボジアで、いわゆる国家予算の50%近くが援助国からの支援予算で占められているということをおっしゃっていまして、実はアフリカもそうなんです。私もザンビア、マラウイの大使をやっていたときに、そこの国の国家予算の半分は日本を含む援助国と、それから国際機関のお金であるということであって、アジア、アフリカにかかわらず、どこでも大体途上国はそういう形なんです。ですから、そういう面ではネパール、カンボジアの例というのは、必ずしもそこの2つの国だけの話ではなくて、アジア、アフリカすべての、特に共通なものではないかと。
ですから、逆に考えますと、そういうことであるということは、いわゆる援助国の影響力を行使できるものではないかという感じがあります。
おっしゃるように、ある国にはトップドナーのところはたくさんありますので、そういうところでの日本の影響力を発揮するということは、今、和田課長がおっしゃっていたけれども、かなり条件を付けてやるということをやっていますし、そうすべきだと思うんです。
ただ、問題点は、先ほど話があったように、私がアフリカにいたときには、アフリカには中国の影響が猛烈に増えておりまして、日本がコンディショナリティーというか、コンディションをたくさん付けるのなら中国から受けようかということは、実はそういう傾向があるんです。ですから、それがいいのか悪いのかというのは難しい問題で、我々としては、やはり国民の税金を使ってのODAですから、それは透明性を持って、かつしっかり影響力を持って、人権問題とかそういうことの抑圧のないような、極めてきれいな形での執行を求めるというのは当然なんですけれども、同時に、そういったジレンマがあるということもありまして、逆に言えば、そういうことによって日本のいい意味での影響力が消えてしまうというのも残念かなということを感じるわけです。
ですから、そういうこともありまして、私はやはり今後のことを考えますと、日本だけの問題ではなくて、国際機関、それからほかの援助国との協調という下にやるべきものがかなりあるのではないかと感じているわけです。
○鈴鹿 どうもありがとうございました。人権とODAの関係といいましょうか、関わりというのは極めて難しい問題でございまして、議論百出するとは思いますが、本日は大幅に時間も超過しておりますので、議題についての議論は、これで終わりにさせていただきたいと思います。
最後の議題でございますが、「(ホ)その他」でございます。通常、その他の筆頭に扱われるのは、次の会議の日程を調整すると。日程の提案を申し上げるということでございます。
今日の第3回ODA政策協議会をもちまして、本年度のNGOの皆様とのいわゆる協議会はすべて終了いたしました。来年度におきましては、まず、両方を併せた全体会合から始まるわけでございます。
NGOの側から御提案をいただいておりますのは、全体会合の日程を6月2日ないしは9日にしてはどうかという御提案をいただいております。また、来年度の第1回目のODA政策協議会。これを7月4日ないしは5日にしてはどうかという御提案をいただいております。具体的な日程につきましては、外務省の側でもアベイラビリティー等を勘案しながら調整を進めさせていただきたいと思います。
そのような方向でよろしゅうございますでしょうか。よろしゅうございますね。
(「はい」と声あり)
○鈴鹿 わかりました。それでは、本日、長時間にわたりましたけれども、皆様、どうも御来席いただきまして本当にありがとうございました。
これで、本年度の協議会、すべて終了ということになります。ありがとうございました。
以上
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