※NGO:非政府組織(Non-Governmental Organizations)
日時 | : | 平成17(2005)年12月2日(金曜日)15時00分~17時35分 |
会場 | : | 福岡YWCA3階ホール |
司会 | : | 瀧本 昌平(債務と貧困を考えるジュビリー九州) |
記事録 | : | ODA政策協議会事務局(特定非営利活動法人 関西NGO協議会) |
<議事録>
<敬称略>
1.開会
○司会(瀧本)
司会を勤めさせて頂きます『債務と貧困を考えるジュビリー九州』の瀧本昌平と申します。よろしくお願いします。
会議を始める前に、いくつか皆さんにお願いがあります。一つは携帯電話の方をマナーモードにしてください。二つ目は、タイムキーパーを私の隣に座っています重田さんにお願いします。チンと鳴りますので、よろしくお願いします。
今回は参加者とオブザーバーということで、資料の二枚目に記してあると思うんですが、ここにある参加者、オブザーバーという枠にとらわれずに、オブザーバーの方も積極的にご発言いただければと思っています。
それでは第2回ODA政策協議会の方に移らせていただきたいと思います。
最初は五月女NGO担当大使にご挨拶をお願いします。3分ほどで短くお願いします。
2.五月女NGO担当大使の挨拶
○五月女
皆さん、こんにちは。久しぶりに福岡にやってまいりまして、皆様方とお話をする機会を得て大変うれしく存じます。ご承知のようにNGOと政府外務省とは、ここ数年お互い近い関係で、情報を共有したり協議したり、あるいは知恵を出し合って、より良い国際貢献の方法を考えるということが各地で行われているということは素晴らしいことだと思います。東京で行われ名古屋で行われ、大阪で行われ福岡で行われる、ということで、そういう面ではお互い近い関係でこういったことに取り組めることは素晴らしいことだと思っています。
今年はご承知のように戦後60年。還暦を迎えた日本ということで、私が感じますのは、節目である今年の年に、最後の締めくくりの会議でございまして、活発な意見交換がされることを期待しております。
この間G8がスコットランドで行われました際にアフリカ重視ということが大きく出まして、小泉総理が言われていましたように、ここ2、3年のうちに予算を倍増する。新しいプロジェクトをどんどん立ち上げてほしいということもございまして、私も直前までザンビア大使、マラウイ大使、アフリカの大使をやっておりましたものですから、アフリカの応援団としてとてもうれしいことです。そんなこともございまして、皆さん色々な面で途上国の深刻な問題であるHIVの問題とか、紛争予防、そういったことについて、たくさん意見が出ることを期待しています。
実は先般、一橋記念講堂で大学とNGOの連携を探るということで、私も出ておりまして、私の向かいにおります重田さんも学者としての立場から出席されていましたけれど、その時も色々話題になりましたけれど、今やNGOだけで、政府だけで、国際貢献、国際協力を考えるときではなくて、みんなで協力しあって意見の交換、人材の乗り入れ、情報の総合共有ということで、力をつけていきたいというふうになってきているわけです。そんなことで、これからはNGO関係者も大学関係者も政府の人たちも国民の理解を得るために、国民の人たちからサポートを得るために、色々な面でお互い協力し合って裾野を広げる必要があるのではないかと思っています。
そんなこともございまして、この会が成功することを祈っているしだいです。この会議の中でもパキスタンの問題が出て参りますけれども、私は昔パキスタンにいたこともありまして色々感じたことなんですけれど、大地震が起こった時に鉄筋も入っていない。非常に弱い建物の中であっという間に崩れてしまった。こんなことは絶対日本では起こらないと思っていたわけなんですが、昨今の話を聞いていると愕然とするものがありました。これは国際的にも日本の評価を下げるということで、非常に残念だと思います。これもやはり情報が流れない、情報の共有ができないということが、色々と行政にも民間にもあったんだということで、これは我々政府NGOの方も、お互いに情報を共有しあいましてお互い力を付け合うということに精を出すべきではないかと思います。
今日の会議が活発で積極的な議論がされることを期待しています。最初のご挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。
○司会
続きまして、NGO福岡ネットワーク代表の吉野さんから挨拶があります。
3.吉野あかね特定非営利活動法人福岡NGOネットワーク代表の挨拶
○吉野
皆さん、こんにちは。今年度よりNGO福岡ネットワークの代表として活動しております吉野と申します。よろしくお願いします。この度九州で初めてこのNGO外務省定期協議会を開催されることになり大変光栄に思っております。NGO福岡ネットワークには、17のNGOが参加して活動しています。活動の中には政策提言委員会も設置しておりまして、ODAの政策についてみんなで考える場を設けております。今回このように外務省の皆様方、そして普段なかなか顔を合わせて一緒に活動することができない関東や関西のNGOの方々と福岡のNGOが、同じ場で顔を合わせて活発に議論ができるという機会を何より重要だと思っております。
普段私は開発教育の活動をしておりまして、地球規模の課題を一般の人たちと考える場というものを作っておりますが、なかなか私たちの生活がいかに世界の人々と繋がっているかということを身近に実感することなく生活している人が大半であると思っています。私たちの税金をもとにODAのお金がありますけれど、そのような自分たちの出しているお金の使い道というのも、一般の皆さんが理解する必要があるのではないかと思っています。そういうのを少しでも分かりやすく、皆さんに知ってもらうお手伝いをNGOとしてもやっていきたいと思っています。まだまだ構造的暴力の中で貧困や様々な問題に苦しんでいる人々がいるこの現状を少しでも外務省、そしてNGOのみんなで協力して少しでも問題解決できるよう望んでいますので、今日の会議も少しでも新しい協働の場に繋がっていくことを願っています。どうぞよろしくお願いします。
4.参加者自己紹介
○司会
どうもありがとうございます。それでは出席者の自己紹介をお願いします。
私は先ほど申しました債務と貧困を考えるジュビリー九州で、福岡大学法学部四年の瀧本昌平と申します。よろしくお願いします。
JVC九州ネットワークという団体、NGO福岡ネットワーク、九州国際大学で教員をしている重田といいます。
○川村と申します。関西NGO協議会の提言専門委員、ODA改革ネットワーク関西で活動しています。神戸女学院大学で教えています。
○日本国際ボランティアセンターの高橋です。よろしくお願いします。
○日本国際連合協会福岡県本部から参加しました村岡と申します。よろしくお願いします。
○女性エンパワーメントセンター福岡の松崎と申します。今フィリピンから3ヶ月の予定で自立のための研修に来て頂いたり、普段は移住女性、日本に住む女性たちの支援活動を行っています。アフガニスタンの女性団体とも交流しています。
○福岡国際交流協会の佐藤と申します。主に国際協力の方を担当しています。よろしくお願いします。
○福岡国際交流協会の中川と申します。よろしくお願いします。
○NGO福岡ネットワークの事務局をしています藤井といいます。
○同じくNGO福岡ネットワーク事務局の木村と申します。今年度外務省NGO相談員をさせていただいております。お願いいたします。
○ODA政策協議会事務局の榛木です。関西NGO協議会です。今日は皆さんありがとうございます。
○JICAA九州の山崎と申します。NGO連携事業を担当しています。
○外務省民間援助支援室の井實と申します。よろしくお願いします。
○外務省経済協力局国別開発協力第一課長の和田と申します。国別開発協力第一課というのは、NGO関係の仕事も担当しておるんですけれど、主たる業務はアジアに対する援助政策の企画をやっております。ただここに来る前の前職が調査計画課というところで、もう無くなってしまったんですけれど、分野別の援助政策だとかODA白書だとかを担当しておりました。福岡にこれまで来ることはなかったんですが、今日はこういう機会を作っていただいてどうも有り難うございます。
○五月女です。
○外務省民間援助支援室の鈴鹿です。
NGOの皆様にはいつも本当にお世話になっております。本日もよろしくお願いします。
○特定非営利活動法人国際協力NGOセンターJANICの高橋良輔と申します。調査協力提言活動を担当しています。この委員会と、もう一つNGO外務省定期協議会の中にある連携推進委員会の事務局をしております。
○特定非営利活動法人NGO福岡ネットワークの小田真之介です。よろしくお願いします。
○同じくNGO福岡ネットワークで参加している玉井美希と申します。よろしくお願いします。
○債務と貧困を考えるジュビリー九州の井上伸二といいます。普段はイラストレーターをやってます。
○明日のカンボジアを考える会の西嶋と申します。NGO福岡ネットワークの事務局も担当しています。
○久留米海外ボランティアサークルの井上と申します。モザンビークの平和構築に関することをやっております。よろしくお願いします。
○債務と貧困を考えるジュビリー九州の寺嶋です。よろしくお願いします。
○同じく債務と貧困を考えるジュビリー九州の大倉です。よろしくお願いします。
5.報告事項
○司会
どうも有り難うございました。一つ、参加者名簿の中で原田君子様は、今日は欠席されています。
それでは報告事項に入りたいと思います。質疑応答を合わせて10分程度を考えていただければと思います。それではよろしくお願いします。
(1)イラクとアフガニスタンへの渡航状況
○鈴鹿
それでは最初に私の方から報告事項というか、お願い事項について申し上げたいと思います。イラク、アフガニスタンへの渡航状況についてでございますが、今日このようにお集まりの皆様が直接イラクとかアフガニスタンに乗り込んでいかれることはあまりないのかもしれませんが、皆様と普段から色々な関係をお持ちになっている事業を行っておられるNGOの方々がいらっしゃいましたら、イラク、アフガニスタンへの渡航については、注意をしていただければと思います。
ごく短く状況を申し上げますと、イラクについては全面的に退避勧告、これは外務省の安全渡航情報における4つの段階の内の一番危険度の高いレベルであります退避勧告が発令されております。アフガニスタンにつきましても主要都市の市街地については、それより一つレベルの低いレベル3、渡航延期勧告が出されています。けれどその他全域には退避勧告が発令されているということです。両国とも極めて危険であります。イラクにおきましては十分な備えをしておっても組織された武装団によって制圧され、その中で人質に捕られてしまう、物品が強奪されてしまうというようなことが日常的に起こっております。従いましてイラクに渡航されることはたとえどのような目的であれ、絶対に見合わせるように切にお願いしたいと思います。またアフガニスタンにつきましても、未だに武装勢力が活動を盛んに行っております。最近では政府関係者のみならず外国人、外国のNGOの皆様を問わず、攻撃対象、誘拐の対象になっている状況でございます。また皆様のご記憶にもあると思いますけれど、今年の9月にはパキスタン方面からアフガニスタンに旅行しようとした日本の方が二人行方不明になり、数日後に死体となって見つかるという極めて痛ましい事件も起こっております、従いまして、渡航延期勧告が発せられていますアフガニスタン、イラクにつきましては、くれぐれもご注意なさって渡航を絶対にしないように皆様にお伝え願えればと思います。以上でございます。
(2)ODA点検と改善,
(3)パキスタンに対する我が国政府とNGOの連携
○和田
私の方から『ODA点検と改善・報告書』について、それとパキスタンの地震の後の復興復旧支援の話、二つをご説明させていただければと思います。
お手元に分厚い『ODAの点検と改善~より質の高いODAを目指して~』という冊子をお配りしていると思うんですけれど、これは正式に今日東京の方で世の中に出したというか、出しつつあるというか、多分、もう出ていると思いますけれど、今日発表になった紙です。これは今日発表ということで事前にお渡しできなかったんですが、4ページを開いていただくと、参考1-1という四角で囲んだものが上のほうにあります。我々政府で経済協力をやっている者としては、近年の貧困問題が国際的にも重要な問題になってきていること、それにミレニアム開発目標を始めとする国際的な0.7%目標だとか、色々国際的な努力の中で、日本としても更にODAを強化してやっていかなければならないということで、国内的にも国民の皆様のご理解を得ながら、ODAの拡充ということをやろうとしているわけです。他方でご承知のとおり非常に厳しい政府の財政事情というのがあって、過去8年間くらい続けてODA予算は3割以上削減されています。そういう中で、我々は増やしたい。けれど「そう簡単にはいかないよ」という政府部内のやり取りの中で、今年の前半に4ページの上で囲ってある、経済財政運営と構造改革に関する基本方針、いわゆる骨太の方針が日本国政府において決定されたわけでございます。その中にODAの拡充、わが国にふさわしい十分なODAの水準を確保するということが一方で謳われたわけですけれど、同時に四角の下のほうに書いてございますが、ODAの事業の改革を図る、その際、重点地域及び重点分野を明確化し、官民パートナーシップを強化すること。更にODAの適正な実施を図る。具体的には費用対効果を高め第三者による客観的評価を行い、その結果を公表するとともに、ODA政策の企画・実施に反映させるサイクル(PDCAサイクル)を確立させる。特に無償資金協力等について、プロジェクトに要したコストを含む定量的な事後評価の実施を徹底し、調達コストの縮減を含め、より効果的な執行に改善するということが明記されています。このように、一方で戦略的拡充を図ると言いつつも、しっかり改革すべきところは改革しましょうということで、今年の前半にこの骨太の方針が閣議で決定されたわけですけれど、それを受けまして外務省の内部でODAの点検と改善を進めようということで、ODA総合戦略会議というものがあるわけですが、そこで有識者の先生方にも作業グループに入っていただいて、議論をしまして、4ページには参加していただいた先生方のお名前も書いてありますけれど、外務省はここ数年ずっと、ODA改革は色々やっているわけですけれど、そういってやってきたことをもう一度踏まえた上で、至急に改善すべきこと、今申し上げたような閣議決定などの表現も踏まえながら、改善できることを取りまとめて今回発表したわけでございます。
この報告書の目次の次に本報告書のポイントとして『ODAの10の新たな改善措置』という一枚紙の表があります。報告書の中には色々書いてあるんですが、世の中に短時間でご説明するときには、この10の新たな改善措置というところで、ご説明させていただいておりますが、大きく言って3つございます。一つはODAの政策部分の戦略性の強化。選択と集中ということで、従来の日本のODAというのは、ややもすると、これはこれで重要なことなんですけれど、相手国政府からこういうことをやってほしいという具体的なプロジェクトの要請というものがあって、それに対して日本としては何ができるかという、実際の現場での何ができるか、どんな要請があるか、というようなところから援助のやり方を考えてきたわけです。これに対し、もうちょっと、そういう個別の案件から発想を起こすんじゃなくて、もっと上流部分の、途上国AならAにとってどういう開発ニーズ、どういう開発分野があって、日本としてこの国との関係からどんな援助をやっていくべきなのか、というのを個別の案件というよりは先ず大きな戦略というのか、ストラテジーというのか、そこを先ず考え、具体的には1.で書いてあるわけですが、ここ数年国別援助計画というのを順次作っているわけですけれど、もうちょっと国別援助計画というものを色々な国について作っていきましょうということです。個々の案件だけじゃなくて、先ず大きな絵を描きましょう。それを拡充していきましょうということです。更に2.に書いてございますけれど、計画を作ったら、それを実際の援助に具体化していくために、もうちょっと時間軸、当面3年間はこういうことをして、その後こういうことをしてといったような時間的な将来に向かっての展望、計画をもうちょっと具体的に作って、現地の大使館やJICA、JBICの人たちが中心となって大枠である国別援助計画をもっと具体化するような実行指針を作りましょう。作ったうえで3.に書いてありますけれど、円借款、無償資金協力、技術協力、NGO支援無償など色々の援助のためのスキーム、手法があるわけですけれど、そういったものを、これまではややもするとバラバラに行われる傾向があったと思うんですけれど、そういったものをもっとしっかり連携させて、一つの目的に向けて、複数のプロジェクトを重ね合わせてプログラムという形で、実際によりよい成果が出るような援助をやっていきたい。そのためにプログラム化をもっと推進するような仕組みを導入しましょうというのが3.です。
というようなことで、ここで言っていることは、援助を今までの個別のプロジェクトから発想するのではなくて、より政策面、戦略面で、目的を先ず明確化して、それからスタートして案件に落としていくという、発想の転換を図ったうえで、もっとより良い援助をしましょうという政策性、戦略性の強化をやりたい。そのための道具立てを導入しますというのがここに書いてある。
そして、それが更にやりっぱなしに終わらないようにPDCA、さっきの閣議決定にも書いてありましたけれど、「plan do check act」ということで現地ODAタスクフォースという、現地の援助関係者達が毎年レビューをやるということも導入します。もちろん別途議論があると思いますけれど、個別のプロジェクトの評価というものはJICAやJBICが色々な形でやっているんですけれど、それとは別に、援助戦略という政策部分での上から下への発想ということがきちんと動いているかどうかをレビューする、そのレビューを新たに毎年やるということを4.で書いております。それから加えて一連の政策面、戦略面の強化を行うに際しての官民の連携の一層の推進を含め1.から5.までが援助の戦略性の強化という一連の改善措置でございます。
二つ目の大きな柱が効率性の向上です。コストの縮減と書いてありますけれど、もうちょっと短い時間で、また低いコストで援助ができるんじゃないかというような議論も色々あるところでございますので、既にJICAなども独立行政法人化に伴って10%のコスト削減という目標を掲げてやっていると思いますけれど、そういったものに加えて、有償資金協力、円借款についてはもっと期間の短縮に努力をする。6.ですね。それから7.の無償資金協力についてもコストの縮減をもっと数値目標などの設定などの形で、できる限り努力をしていくということ。更に8.ですけれど、従来の一般無償資金協力の一番中心的なスキームは日本企業タイドということで、日本の企業に落とすということが原則でやってきたんですけれど、そういうことだとどうしてもコストが高くなってしまうので、コミュニティー開発無償という新しいスキームを来年度から予算要求をして、もうちょっと日本の企業にこだわらないで、現地の業者をもっと積極的に活用するような新しい型の無償資金協力なども導入しようということで、全体としての効率性の向上に努めていくというのが8。最後にチェック機能の強化ということで、評価の話で無償資金協力の事後評価を新たに導入するということ。評価に国内の大学研究機関の幅広い参加を求めるということで、以上の10の改善措置というのを出させていただいて、PDCAサイクルを入れて、より質の高い成果重視のODAをやっていきたいと考えております。これは我々の気持ちとしては、改革を進めているので、その分我々の努力も認めていただいて、予算を増やしてくださいと別途お願いしているわけですけれど、そこは非常に厳しい折衝を財務省とやっているわけです。
それから『パキスタンに対する我が国政府とNGOの連携』という2,3枚の紙が配られていると思うんですけれど、これは説明はしませんが、要するに地震の後パキスタンで色々なNGOの皆さんが、ジャパンプラットホーム関係のNGOの皆さんが活動されているのに対して日本政府も資金協力をしたり、日本政府が物資の支援を行ったわけですけれど、そういった物資の現地における配給などにNGOの人や国際機関の人と連携しながらうまく結構できた。それから自衛隊が緊急援助隊、JICAの緊急援助隊として現地入りし、ヘリコプターを使って物資輸送をしたわけですけれど、そういった関係者の連携が非常にうまくいった一つの例としてご紹介したいと思って資料でお配りしました。
説明は省略させていただきます。
○司会
どうも有り難うございました。参加者の皆さんから何か質問はありませんか。
○寺嶋
この文章はホームページからとか、ダウンロードは可能なんでしょうか。
○和田
今日発表で、今日か来週早々には外務省のホームページに載ると思います。
○司会
他にありませんか。
○高橋(清貴)
おそらく後で、NGO側の議題として評価に関して川村さんのほうから提案があるので、そこで集中的に議論させていただきたいと思うのですが、外務省の説明を伺っていて、今どうしてもひとつだけ聞きたいことがありますので質問させて頂きます。先ほど、「ODAの拡充」ということをおっしゃっていて、その中でやはり人を育てなければならないという議論というか、方針が出てきました。私たちとしてはODAを拡充したいのであれば、質の良いODAをキチンとやってODAそのものに対する信頼性と支持を高めることが必要だと思うのです。その観点からいって、効率性という観点でODAを議論することで本当に信頼性と支持の回復につながるのに十分だというふうなお考えの下で、この議論が出てきているのでしょうか?単なる効率性だけでなく、もう少し目的との整合性とか、援助としての目的の正当性とか、その辺りの議論はどうなっていたのでしょうか。
効率性を議論することは、歓迎されるべきことだと思います。しかし、援助の場合、効率性だけではなくもう少し全体で見たいところがある。例えば、効率性を高めて援助を拡張していくとなると、今いる人材だけで十分なのだろうかという議論もありますよね。本当に肌理細かい援助をやると、人材は絶対に足りない。恐らく、そういう議論の中で現地タスクフォースやODAタスクフォースとの連携という話があるのだろうと思いますが、きちんとしたODAをしていくためには人材にもきちんとお金をつけなければならないのだという議論をしていったとき、果たして援助というのは効率性や低コストという視点での議論だけでよいのだろうかと疑問に思います。例えば、国別援助計画とを拡充していくというふうにおっしゃっていますが、迅速に進めていくということになれば、誰がどういうふうに進めていくのか?「効率的」にやるために、広く市民の意見を聞くということを後回しにしていくのではないかという懸念が生じるのです。こういう議論を一つ一つ丁寧にやっていくことが、大変とは思いますけれど、必要です。言いたいことは、効率性も透明性を持った形でやっていただく必要があるということです。議題(2)の中で川村さんが言うと思いますし、その時に改めて議論したいと思っていますが、今の時点で何かご返事をいただければ一言お願いしたいと思います
○和田
全く同じで、正に予算も財政状況も厳しい中で予算を増やしてくれと言っても国民の納得も得られないわけですから、我々としては正に質の高いODAをやるためにはどうしたらいいか。そのためにODAの信頼性を高めるために何ができるかということで日々悩んでいるわけです。先ほど来申し上げている通りコストの縮減だけがポイントではなくて、やっぱりPDCAのサイクル、政策を作りそれを実行し、その後にきちんとチェックをして、チェックの結果を政策なり実際の実行に反映させていくというPDCAサイクルをキチンと確立して、より質の高い援助をやっていくということが目的でありまして、コストを縮減するための縮減ではないわけでございます。従ってそのために、より質の高い援助をしようとすれば当然人手もいりますし、その分いろんなお金のかかることもありまして、そういったこともお願いしていかざるを得ないということでございます。とりあえず今回急いでやるべきと思われることをまとめておりますけれど、これで当然終わりではなくて、ここに書いていないような項目についても引き続き今後点検と改善をし続けていく。我々も少ない人手の中で大変な努力をして一生懸命やっているつもりですので、是非ご支援いただければと思っています。
○川村
一点だけ簡単な確認だけさせていただければと思うんですが、この報告書の性格と、どういうペースでこれからこういう報告書を出されるんですか。そういう計画は今のところ具体的に無いのかというようなことを聞かせていただければと思います。というのも、今日この報告書を頂きまして、非常に多様な内容で、もしこの報告書が1週間前1ヶ月前に出されていたら、今日の議題は全く変わっていたという感じを持ったんですが、本来はこの報告書に書かれる内容というのは、こういう場で議論できた方が良いと思う。その方が建設的な議論ができるかと思うんです。そのためにはいつ頃こういうものが出てくるのかということが事前に分かれば、こちらも事前にもっと色々考えたり勉強したり、NGO間で考えをまとめたりすることが可能になるかと思うんです。そういうことをするためにも今後、こういうものを更に出していかれる予定があるのかということを確認させて頂きたいと思います。
○和田
別にこれはこれでファイナルということではなくて、日々点検と改善を進めていく中での第一歩というか、ずっとやっていますので、決して第一歩ではないんですけれど、一つのステップであるということでございます。我々も予算が今大詰めの時期でございまして、そういうタイミングで出したいと思って一生懸命努力をしてこのタイミングで出したんですが、これで終わりではございません。この中に書いてあることも、外務省の考え方ということで、これは色々な役所の関係者や色々な人たちにも「これは外務省の考え方だけれど、どうだ」とぶつけていって議論をしていく。外務省の中でも色々な改革改善措置についてはとりあえずできることをやってみましょう。でもそれは試行的にやってみて、それが不十分であったり、もっと改善すべきであったら改善すべきだと思っているので、皆さんからのご示唆、ご意見などございましたら、いつでも大歓迎でございまして、それについては将来の作業の中で生かして行きたいと思っています。ただ次の報告書をいつ出すのかとなると、今決まっているのかというと、今は何も決まっていません。とりあえず多くの内容が来年の3月までにできることをやってみましょうという、試行的にやってみましょうということが書いてありますので、その試行の結果を踏まえて、来年度以降4月以降、また書いてある中身をレビューして見直すということになると思います。
5.協議事項
(1)「ODAの拡充」
○司会
どうも有り難うございました。
それでは協議事項の方に移らせて頂きたいと思います。(1)ODAの拡充について、ですけれど、皆さん発言される前に、所属団体、お名前を言っていただければと思います。では高橋さん、お願いします。
○高橋(清貴)
予定の時間が既にオーバーしているので、できるだけ手短にしたいと思います。議題(1)ODAの拡充についてですが、既にペーパーとして外務省の方に渡っているのでご覧になって頂いていると思います。NGOの側も、先ほど議題についての共有ということで説明をしましたので、できるだけ説明は手短にしたいと思います。
要はさっきの議論とも関連するのですけれど、ODAはどうやって信頼性と支持を市民から得るかということを念頭において、評価や点検の見直しを行って、新しい方法論を打ち出すということが重要なことだと言いました。しかし、本当に重要なのは、言っていることとやっていることの齟齬をなくし、キチンと整合性のあるODAを市民に納得できる形で説明をできるかどうかということだと思います。その意味で今年のG8サミット、イギリスで行われた、そこで日本がODA拡充に関して発表した2つの大きなポイント、アフリカ向けを3年で倍増、そして5年間で100億ドルの事業量の戦略的拡大がどうなるかということに注目しています。拡充に関しては、骨太方針の中でシーリング枠をはめていて、一般会計すなわち無償を増やすことは困難な現実があることは理解しています。しかし、アフリカODAを3年間で倍増、ODA全体を5年間で100億ドル「事業量の戦略的拡大」と言った以上、それをどういう形で行うのか、キチンと市民が納得できるものとなるのか、正しい目的で正しく使われるODAになるのかどうか、ということがODAの信頼性と支持を回復する上で極めて重要なことだと思います。
この観点から質問をしますので、お答えを頂いて議論をしたいと思います。まず、アフリカ向けODAの予算。事前の質問への回答では、「国別地域別に予算立てはしていません」というお答えがありました。事実そうだとしても、アフリカ向けODAがどうなるかという関心が高い中で、シーリングの枠の中でも「アフリカ向けは、こういう内容で確保していきますよ」という説明があってしかるべきだと思いますが、如何でしょうか。これはそれほど難しいことではないかと思います。
次に、100億ドルのODA事業量の戦略的拡大を5年間で行うことについてですが、これは多くの市民が関心をもって見ていながらも、未だにどうなるのか良く分かりません。正直言って疑心暗鬼という感じになっています。なぜ疑心暗鬼という強い言葉で言うかといえば、今年のG8サミットでODAを増すと言った事の真意に対して疑いをかけているからです。今、国際社会では、貧困、環境、感染症がいかんともし難い状況がある中で「やっぱり国際社会が一丸となってこれらの問題にキチンと取り組まなければいけない」という認識とコミットメントを各政府は表明しています。そういう中で、日本が100億ドルをいい加減な使い道しか示せないことは、貧困、環境、感染症への日本の問題認識のレベルを疑われることになるからです。ODAの拡充とは、日本政府に対して国際社会問題の認識レベルを問うものであり、それにキチンと応える姿勢を示して、それを多くの市民に納得してもらうことが重要なのではないでしょうか。その意味で100億ドルの戦略的拡大の内訳を、一体何のために使うのか、目的の正しさ、国際社会の要請との整合性に置いてきちんと説明をすべきかと思います。そうでなければ、ODAに対する信頼性と支持はますます失われていく可能性があると思います。
もう少し具体的に言えば、今、新聞で報道されているところでは100億ドルをイラクへの債務救済で充てると言われています。もしそうならばその目的は何なのか?既にイラクに総額50億ドルのODAをプレッジ、約束をしてありながら、その中身が決まらずまだまだ不透明な部分があることをどう説明するのか?「またイラクなのか」という疑念に対して、なぜイラクの債務を救済することにしたのかという説明を市民に納得できる形でできていると考えているのでしょうか?外務省の考えをお聞きしたいということです。
G8サミットというのは確かに政治の場であり「それなりに日本国もやっていますよ」ということをG8や他の国々を見ながら政治的発表をする必要があるという説明があるかと思いますが、それではODAを先進諸国との外交を行うためのツールとして活用したのであって、途上国の、ましてや住民のためとはなり得ないでしょう。昨年、日本には安全保障理事会の常任理事国入りを果たしたいという外交上の戦略がありましたが、結局、未だ実現できていません。これに対して、外務省はODAを増やすという約束が外交上十分な効果を発揮できなかったと評価しているのでしょうか。外務省の外交的な観点からの評価、見解をお聞きしたい。というのは、この問題に対して「ODAというものをもっと政治的なツールとしてもっと信賞必罰的に使うべきだ」という意見が一部の議員、一部の政府援助関係者の中から出ていると聞いています。そういう議論があることに対して、外務省はどう考えているのか?「いやそうではない。こういう政治目的を優先させてODAを使うべきではない。国際人道目的にキチンと特化して使うべきだ」という風に考えることはないのでしょうか?そのあたりについてご意見を伺いたいと思っています。
○和田
色々な論点があって、3分でお答えするのは難しいのですが、先ずODA予算を拡充することについて、正しく使って信頼感を高めないといけないということは正にその通りでして、そのために努力していることは申し上げたとおりでございます。ただ外交をやっている我々としてはG8サミットもそうですし、今年は国連のミレニアム宣言の中間レビューの会合も秋にあったりということもあって、先進国はGNPの0.7%までODAを拡充しなさい。それをしっかりタイムテーブルも示して一刻も早く道筋をつけなさいと国際的に求められている状況の中で、ここ数年、先ほども申し上げた通り、日本は先進国の中でどんどんODA予算を減らしているという状況があって、0.7%目標に対して、ちょっと前は0.3とかあったのが最近は0.19まで下がっている状況の中で、外務省としては「それではとても日本としては国際的な責任を果たせない」という観点で、「本当は0.5%にしたい」とか、もっと言わせてもらえればあり難いと、政府内部でも色々議論しているわけですけれど、なかなかそうは言っても難しいという状況の中で、何が言えるかということを議論した結果、出てきたのが5年間で100億ドルの拡大に努めますということだったわけです。でもこれも予算の拡大ではなくて事業量の拡大というふうになっていますけれど、事業量というのは端的に言って円借款というのは、国民の税金というのは簡単に言ってしまうと優遇利子をつけている部分についてだけ、国民の税金が入っているわけで、その他の部分については郵便貯金などの財政投融資の資金から借り入れているわけです。それは最終的に相手国が何年か経ったら返す。そのお金をまた元に戻すわけです。ですから国民の税金という意味では利子の部分だけ入っているわけですけれど、そういう形で、貸し出しの量を増やしていくことによって、ODAの量を拡充していくということです。「一般会計予算は増やさなくても事業量の拡大はできるよね」という、財務省の議論などもあって事業量の戦略的拡大という表現になっているわけです。外務省としても日本政府全体として、とにかく日本として、今年においてG8サミットの場において総理が「日本のODAを今後増やしていく」ということを言わないと、とてもではないけれど、国際的には済まないと判断した中で、何が言えるかということをぎりぎり検討した結果、これを言ったわけでございます。言った以上日本政府は真面目ですから、総理が言ったことはなんとしてでも実行しようと努力するわけです。どうやってやるかについては、何も決まっているわけではないんですけれども、債務救済も一つでございますけれども、円借款の供与もありますし、無償資金協力や技術協力といった税金を直接投入するような形での贈与という形での援助などもあります。こういったことを全体として組み合わせて、日本としてODAの事業量を5年間で全体として100億ドル積み増していくということを今後やっていくわけです。そのためにたとえば来年度のODA予算も増やしたいと言って、外務省は今財務省と折衝をしているところでございます。但し非常に厳しい状況で、来年度もODA予算は減ってしまうという可能性もかなり高いのではないかというのが今の現状でございます。そういう厳しい予算の状況の中で何ができるかというのは我々としても考えていかなければならないというふうに思っているわけです。
それから若干議論が錯綜するかもしれませんが、イラクばっかりやっているではないかというようなご指摘だと思うんですが、イラクとの関係では当面の15億ドルの無償資金協力ということと、加えて35億ドルまでの円借款で合計50億ドルの支援を行うということを日本政府は言っておりまして、それについては15億ドルの方はもう既に全て実行をしているわけです。この辺のことは外務省のホームページにもイラクに対する支援の概要ということで出ておりますけれども、15億ドルの無償については国連と世銀の管理下に置かれている信託基金への拠出が5億ドル、イラクに対する二国間の直接の支援が9億ドル、国連などの国際機関を通じてのイラクに対する色々な支援が1億ドル、計15億ドルの無償資金協力については既に実行がなされております。今後更に35億ドルの円借款については今、調査をしたり検討を行っておりますけれど、電力、教育、保健、医療、水、衛生などの分野に加えてインフラ整備なども視野に入れて進めていこうとして、今イラクと話をしているところでございます。なお、イラクに対する債務救済はこれとは別個のものでして、今おっしゃった通り、つい最近パリクラブでの合意を受けて、イラクに対して76億ドルに及ぶ債務について今後3つの段階を経て、順次債務を救済していくということでございますが、これは76億ドルが全部ODAかというとそういうことではなくて、円借款などで日本政府が貸しているものについて、それを免除する。たとえば100億円貸している場合に、100億円分お金をあげて、それを返してもらうという形になりますので、実際にはそういうお金の動きはないんですけれども、論理構成上は100億円あげて、それを返してもらうということになりますのでプラスマイナス相殺されて、ODAとしてのカウントは彼らの利子についての若干のカウントがなされるということでございます。たとえば円借款などの負債を免除した場合ですと、そういう形でのODAカウントになるわけでございます。そういうことでイラクの債務の救済というのは、それはそれでイラクにとっては助かる話でありますので、日本のODAの実績としては、勿論DACのルールに従ってカウントされますけれど、50億ドルの支援ということで従来から言ってきているものとは別のことでございます。
イラクだけを我々やろうとしているわけではないわけでございまして、アフリカにつきましては先ほど来からご指摘がありますように、それとは別の話としてアフリカに対するODAを3年間で倍増する、その中でグラント(贈与)の部分を中心に倍増するということを、日本は国際的に公約しておりますので、こちらのほうはこちらで別途やっていきたいと思っております。そのために今正に予算要求ということで、色々要求をしております。最初ご指摘があったように、アフリカ向け予算というふうに、地域ごと国ごとに予算を作っておりませんので、一般無償資金協力とかコミュニティー無償資金協力とか、色々な形でのスキーム毎の予算になっておりますので、我々が認めてもらっていただけた予算の中からアフリカに対する配分を増やしていくことになります。アフリカに対して最近年間5億ドル位の金額が行っていますけれども、3年で10億ドル位にまで増やしたいと思っております。ODAの予算が増えないと結局アフリカに増やすためにはアジア向けの予算を減らしてアフリカに持っていくとか、その中での遣り繰りというものをやらざるを得ないわけですけれど、我々はどこかを犠牲にしてアフリカだけを増やすということはしたくないので、是非とも予算を増やしたいと一生懸命努力をしているところでございます。
とりあえずこの辺でよろしいでしょうか。
○司会
何か意見はないでしょうか。
○大倉
イラク債権の放棄についてちょっとお伺いしたいんですが、さっき新聞で調べたときに、円だてで書いてあったんですが、日本がイラクに持っている債権8890億円中8割の7100億円を新聞では帳消しにすると書いてあった。8890億円の債権中8000億円が貿易保険となっていて、これは非ODA債権なんですが、新聞では帳消しされる7100億円の内、貿易保険の割合が書いてなかったんですが、今ご説明があった、先にお金をあげてそれを返してもらって帳簿上でやり取りをして実質的帳消し。だけどこれは一旦お金をあげているからODAにするよということは、非ODA分もそういう処置をなさるんですか。
○和田
非ODAの商業上の債務というものでイラクが抱えているものについてそれを免除すると、その分はODAの措置になると思います。そういう意味で、イラクに対する債務救済というものは大きなODAとしての支援ということなんですけれど、今後3段階に分けて毎年毎年長期的に免除をしていくという形になっていきますので、どのくらい日本のODA実績にこれがカウントされていくのか、今のは段階ではよく分からない面があります。
○大倉
7100億円を全部5年間に増額する100億ドルの中に入れてしまうと、ほとんどがそれで消えてしまうということになるんですが、たとえ100億ドルの100分の71が、100分の60位なのかな。それがイラク債権放棄をODAに回したということにならなくても、先ほどのMDGs達成は債務帳消しプラスのGDPの0.7%の援助が必要だということになっていると思うんです。
ODA分の帳消しした分をODAにカウントするということにも国際的NGOの中には批判がありますが、特に非ODA分を帳消しにすることもODAにカウントするということは、これはなんのために0.7%を達成するのかということを考えると、やはり問題があるのではないか。勿論非常に予算の上で苦しいことがあるというのは分かる気もするんですが、これを国民が聞いたときに「えっ」と思うと思います。
○和田
私、イラクの個別状況については必ずしも良く分かっていないんですけれど、債務削減というもの自体が、なぜODAなのかということについては、OECD DACの方での議論になるわけですが、要するにイラク政府は、本来であれば外国に対して何千億円、何百億円とか支払わなければならない義務があるわけですが、それを払わなくてもいい。となればその分のお金を国内の貧困や教育や色々なインフラ整備や自国の発展のために使えることになるわけです。イラク政府だけではなくアフリカ、例えばナイジェリアの債務救済もありますし、最近はフィリピンも債務救済してくれと言ってますし、この間の地震の後で、インドネシアもスリランカも債務の返済を待って欲しいと言って来ています。
災害等がおこれば政府は自分の国内を救済するためにお金が必要なわけです。そのお金が、債務免除ができないと先進国に返さなくっちゃならない。それを待ってくれ。国内で使わなければならないお金があるからということです。それに対して先進国は本当は返してもらえるものだけれど「あなたたち国内でそんなに大変なのであれば国内の方に使ってください」というのが債務救済なわけです。債務救済だけでいかがなものかという議論は立場によってはあるのかもしれないけれど、我々は債務救済であれ円借款であれ、無償資金協力であれ、相手国の発展のためにそれが使われるということであれば何も問題はないし、日本のODAとして、0.7%目標に向けてODAの実績を積み上げることは必要だというのは我々の判断としてありますので、国際的なパリクラブのルールの中で、イラクに対する債務を免除しましょう、また、ナイジェリアでも途上国の債務を免除しましょうということが決まっていけば日本もそれに従って免除していくということでございます。勿論それでイラクに対して、債務を免除したからそれで他は何もやりませんと言えばそれでいいのかという議論はあると思います。我々としては、色々な国、アフリカや他の途上国に対しても目配りをして支援をしていかなければいけないと思っているわけです。
○大倉
ちょっと質問してもいいですか。2002年までは債務救済無償という方式で債務救済がされていました。それが2003年以降はJBICの債権放棄という形に切り替わったと思います。2003年と2004年は、アフリカのいくつかのHIPCの国とTDBの国に対して債権放棄をされていると思うんですけれど、そのどちらもODAにカウントされているんですか。
○和田
債務救済の方式は、おっしゃるとおり昔は外務省の無償予算で措置をして、その無償予算を一回相手国にあげて、本当にお金をあげて、そのお金で返してもらって、その結果返済は終わったということにしていました。ODAというのは円借款もそうなんですが、日本から途上国にいくら資金が流れているのかというのがODAなんです。向こうから返済されますと、それはマイナスのODAとしてカウントされますので、従って無償で100億円あげて、それを100億円返してもらうとプラスマイナスゼロになるわけです。日本のODA実績としてはゼロになります。今は、その渡して返してもらうというのは向こうも手間だし色々手続きも大変なんで、直接債務を帳消しにするという方式に変えました。その結果、今度は外務省がJBICに対して、彼らの利子分の損失を補填するための予算を外務省がJBICに渡すというふうに予算が変わっています。変わっていますけれども、昔は向こうに渡して返してもらっていた形が、外務省がJBICに利子補給分を補填するという形に変えました。ODAカウントとしては、円借款の債務を帳消しにする場合は向こうから返ってきたということになります
○高橋(清貴)
今日は、本当は福岡の方々が主役なので、色々質問をしていただくといいのですが、一点だけ。質問の趣旨は、2003年の10月にイラクの復興会議で日本は約50億ドルのODAを約束し、パリクラブではイラクへの債務救済を約束したことと、今年のG8サミットで「100億ドル拡大しますよ」という話は別ではないのかということです。時間的にも、文脈としても違うからです。G8サミットの時はアフリカの問題が中心であり、100億ドルは、この貧困の問題に応えるために「日本もキチンとそういう問題を受け止めて、ODAを増やしましょうよ」という議論から出てきたものと普通は理解すると思うのです。しかしもし、二つのことを一緒にするならば、「貧困問題の解決」ということの中にイラクも入ってくることになるのですが、それは妥当なことなのでしょうか。その辺りの議論を外務省としてどう整理しているのでしょうか?この二つを一緒にしてしまっていいのでしょうか?
○和田
一緒にしていいのかという趣旨が必ずしもよく分かっていないのかもしれないんですけれど、我々が「100億ドルのODAの実績を5年間で積み増します」と言っている時は、別にどこかの国を対象として言っているのではなくて、要するに0,7%目標について全先進国が努力している中で、日本もODAの実績、イラクでもアフリカでもアジアでもどこでもいいんですけれど「ODAの実績をとにかく日本としても増やしていきます」ということを言ったわけです。それを目指して我々は努力しているわけです。これはアフリカで増やそうがアジアで増やそうがイラクで増やそうが、勿論それぞれの意味が違ってくるのかもしれませんけれど、とにかくODAの実績を増やさなくっちゃいけないということにおいて、その点においてはどこで増やそうとかまわないわけです。毎年毎年、色々なことが起こるわけです。イラクの債務救済がこのタイミングで合意されるとは我々全く思ってもみなかったんですけれど、インドネシアで地震が起こるということも思っていなかった。あの地震が起こったために、インドネシアに対する債務を1年間モラトリアムしたり、スリランカに対する債務もモラトリアムしたり、そういうことが起きるなんて想定していなかったですけれど、そういう事態が生じて、必要があれば一生懸命議論して「モラトリアムしましょう」とか色々な措置をとるわけです。そういう措置をとれば、そのうちODAカウントされるものについてはカウントされていくわけです。ODAの当初予算としてはなかったけれども、予備費から持ってきて贈与でインドネシアやスリランカに送ったりしましたけれど、そういうことも起こる。その結果日本のODAの実績が増えたり減ったりするわけで、我々の思った通りにはならない色々な状況の中で、結果として今年はこの位のODAの実績があったとかなかったとかいうことが起きてくるわけです。それはそれで仕方ないという面もあるので、別に一緒くたにしているのかと言われれば、そういう認識はありません。
(2)「ODAの質と評価」
○司会
次の議題に移りたいと思います。ODAの質と評価です。川村さんお願いします。
○川村
この議題を出した理由なんですが、私たちとしては、外務省の方で主にプロジェクトについての評価体制の見直しをおそらくされているのだろうという想定がありまして、その想定を元に先ず発言していくことが、意見交換していくことが重要であろうということで、このプロジェクト評価ということを出させていただきました。
先ほど和田課長の方からありましたように、本来なら国別援助計画のあり方、作られ方等も含めて、どうやってODAを良いものにしていくのかというのが本来の議題であるべきだったのかなあという気はしております。ただ私たちとしては、これだけ立派な点検と改善という報告書が出てくる。これだけ幅の広い内容の報告書が出てくるというのは想定外でございまして、ある意味ちょっとびっくりして、今日はどういうふうに議論していったらいいのかと考えていたところなんですけれど、問題意識としてはどちらにも当てはまる。
なぜプロジェクト評価のところで第三者機関、あるいは明確な基準といったことを提案させていただいているのか。現地の市民社会の関与というのを指摘しようとしているのか、という問題意識自体は、国別援助政策のあり方とも係わることですので、先ずその問題意識の説明をさせていただいて、議論させていただければと思います。
どういう問題意識かというと、先ほどから日本のODAは予算的に厳しいものがある。厳しい状況にあるからこそ、予算折衝に間に合わせる形でこの報告書を作られた。そういう流れがあるからこそ私たちがこれを読んでびっくりしてしまうという、事前のコミュニケーションができなかったということがあるんだろうと思っています。そういう状況を無くしていくためにNGOとしても自信をもって日本のODAはいいんだ。財務省に対しても「もっとODAを増やしてもいいんじゃないか」という声を上げていけるような状態になりたいなと考えております。残念ながら若干悪循環があるようで、予算が無い、予算が無いからバタバタと動いてしまわざるを得ない。その中で十分な協議、ODAの評価だとか見直しについて開かれた議論をするような体制もなかなかできないということで、ちょっと残念な関係であるのかな。その残念な関係というのが、我々にとってこの報告書が想定外であったということにも繋がっているのかなという気がしております。どうしていくべきなのか。この報告書にあげられている色々な論点については、先ほど高橋さんがおっしゃったように色々な質問があるのかと思います。けれどそれは次の協議会でということにさせていただいて、今日はODAの評価について議論できればと思います。
一応二点論点を挙げさせていただいております。その論点というのは、今日の資料にもありますけれど、一つ目は具体的に、今日の報告書を踏まえましてプロジェクトレベルだけにこだわっていただかなくてもいいと思うんですけれども、ODAの国別援助計画の評価についても同じことが言えると思うんですが、どのように第三者の関与、明確な基準といったものを作っていって、透明性を作っていくのかというのが一つ目です。二つ目、これはより大きな本質的な議論になるかと思うんですけれども、先ほどの報告書の点検と改善の説明でもありましたけれど、プロジェクトを行ったらPDCAのサイクルを回していって改善していくというのは重要だと思うんです。ただ、今のこの報告書の視点にも抜けているし他のJICAやJBICの評価の視点にも抜けているのが、フィードバックは結局何のためにやるのかということだと思います。日本の今までの援助のやり方は要請主義。これは色々問題がありましたけれど、相手の主体を重視するという思想自体、私はそんなに間違っていなかったと思います。ところがPDCAのサイクルを日本の国内が中心になって回していくとどういうことになるかというと、援助の失敗、あるいは一つ一つのプロジェクトの成功や失敗から学ぶ機会というものを、下手をすれば日本が独占してしまうということになりかねない。そういう言い方をするときついかもしれないけれど、本来は、援助の計画立案の過程、その成果の失敗から学んでいくという過程が、日本国政府も強調されている相手国のキャパシティーの評価という意味でいうならば重要なのではないか。日本の要請主義に基づく援助というのは、そのキャパシティーを作るのは相手国政府ですから、色々な問題があった。だからこそ市民社会の参加というものが必要になってきているというのが今の国際社会の議論でもあると思うんですけれど、その視点を入れたときに、これはプロジェクト評価にしても国別援助計画の評価にしてもそうなんですけれど、計画立案、評価、それをチェックしてもう一度行動に繋げていくサイクル自体に、どうやって現地の市民社会を巻き込んでいくのかということがとても重要になってくると思います。これはまさにそうだからこそ、世界銀行などもPRSPの貧困削減戦略ペーパーというものを、現地の国と市民社会とが協議しながら作るべきだ。その大きな枠組みの中で援助をしていくべきだということを議論しているわけです。そういう視点をもう少し、日本の援助の中にも入れていくべきじゃないか。現地の援助コミュニティーからのヒアリングという言葉も出てきますけれど、それをもっと戦略的に位置づけて、どうやって相手国の政府だけじゃなくて市民社会も含めたキャパシティーを作っていくのか。そのために日本から送られる援助がどうやって役に立つのかという視点があってもいいんじゃないのかというのが論点の趣旨でございます。
この二点ついて、必ずしもプロジェクトレベルにこだわっていただかなくても、より広く意見を聞かせていただければと思うんですけれど、外務省で今、どのようにお考えになっているかどうかということをお伺いできればと思います。
○和田
お手元にお配りした「点検と改善」の冊子の33ページ以下が評価に関する部分なんですけれど、読んでいただくと、今評価が、どこまで何ができているのかということも、簡単ではありますが触れておりますので、是非後で読んでいただきたいと思います。
正におっしゃられた通りでありまして、この評価をキチンとやって、しかも客観的かつ透明な形で評価をやって、それを失敗なら失敗を次の経験に生かしていくということは非常に重要なわけでございます。なかなか十分なところまではいっていないんですけれど、かなり前から一歩一歩充実すべく努力をしてきております。その辺のことは33ページ34ページ辺りに書いてございます。今回の10の措置の中の一つの目玉としては、そういった中で色々充実をしてきたのですが、ややというか、かなり立ち遅れていた無償資金協力のプロジェクトの事後評価を導入することとしました。技術協力はJICAがしっかりやり、円借款に関してはJBICがしっかりやってきた中で、無償資金協力については大分立ち遅れていたところが正直あったわけですが、今回「無償資金協力についてもやります」ということをしっかり打ち出して、予算要求も来年度に向けてしておりますけれども、今年度は予算も無い中でとりあえずできるところをやろうということで、プロジェクトの実施が終わって3年位経って、現実に効果が現れ始めているようなプロジェクトを50件位選びまして、大使館を中心に評価をやりました。実はこれも今日、その結果が報告書の形で発表になります。これも発表になると来週あたりホームページにも出ますので是非ご関心のある方は見ていただきたいと思うんですけれど、予算も無い中で、みんな一生懸命やってくれまして、これまでやってきた無償資金協力の問題点などを整理して出しております。
我々も当然のことながら客観性を高めるためにどうするかということで、この報告書の中にも評価のガイドラインというものをしっかり書いて説明しております。評価のガイドラインについては外務省に評価の有識者会議というのがあるんですけれど、学識経験者の先生方にも事前に評価のガイドラインを見ていただきましたし、無償資金協力については無償資金協力適正会議という有識者の先生方からなる会議がありますが、そちらでも議論していただきまして、色々外部のご意見も頂いた上で評価ガイドラインというものをそれなりにしっかり作りまして、そのガイドラインに従って各在外公館に評価をさせました。一生懸命評価をやった所と忙しくて十分できなかった所とばらつきが多少ありますが、十分できなかったところは「もっとしっかりやれ」と言ってお尻を叩いたりして、なるべくキチンとできるように東京サイドでも努力して、我々は画期的だと思っていますけれども、初めての試みとしてはそれなりのものになったと思います。是非来週くらい見ていただけると思いますので見ていただきたいと思います。
その報告書の中にも書いてありますけれど、例えば学校案件であれば、こういうケースでこういう成功例があるとか、他方でこういう失敗もあるなどと類型化して色々な教訓というものが評価の中から出てきております。評価をやって良かったと我々も思っていますし、そういった評価の結果を今後の新しい案件の実施に当たってフィードバックしていきたいと考えております。そういうことを通じて援助の質を高めて行きたいと考えております。
その報告書を見ていただくと分かるんですけれど、各大使館は例えば学校を作りました、病院を作りました、道路を作りました、上水道を整備しましたという色々な案件がありますけれど、それが本当に現場においてどういう成果が出ているのかという点も評価しています。無償資金協力をやる前には事前にJICAの方で詳細設計といって色々とプランを作るわけですけれど、そのプランを作る際には、これを作ることによってこういう成果が出ますというような成果の見通しも事前にチェックをするわけですけれども、事前に想定していた成果がしっかり出ているのかという点もチェックもしていますし、それから他方想定しなかったインパクトが「これをやったおかげでこういうふうな変化が現地で起きていて、全く想定していなかったけれども、今はこういうことになっている」というようなことについても可能な限り書くようにしています。そういうようなことも見ていますし、そういうことを書くにあたって、大使館は現地の市民の声とか実際に裨益をしているコミュニティーの人たちの意見、相手国政府、地方自治体の意見、それから住民の意見ということを可能な限り聴取したうえで書く、評価するというようなことをやっております。勿論もっともっと改善して強化をして充実をさせていかなければならないという意味で、これで100点満点だというつもりは全くございませんが、それなりの努力はしているつもりですので、是非見ていただきたいと思います。
今のは今回の目玉としての無償資金協力についてのプロジェクトレベルの評価の話でございますけれども、お配りした報告書の34ページの上半分のところで、まとめて書いてございますけれども、ODAに関する評価につきましてはその政策レベル、プログラムレベル、プロジェクトレベルというふうに3段階に分けておりまして、外務省は主に政策レベルを、JICA、JBICは、今回新たに無償資金協力の評価というのができましたけれど、それを除けば、プロジェクトレベルを中心に行うということで役割分担をしながら評価をやってきております。
その下の表にありますように、JICA、JBICの評価、外務省の政策レベルの評価につきましては、もう既に何らかの形で必ず第三者の視点を入れるようにしております。JBICなども全て評価の主体は外部の有識者なり外部の方々にやっていただいておりますし、外務省の政策レベルの評価も外部の評価有識者会議というのがございますけれども、そういう外部の人たちに必ず入ってやっていただくということでやっております。ただどうしても外部の方にお願いして評価をやっていただくと、そういった方たちへの謝金だとか色々な予算措置も必要になってきますし、色々な意味でもっとたくさんやりたいんですけれども、外務省についていうと数が限られてくるという部分がございます。国別の援助計画についても年間せいぜい3,4件くらいしか評価できないというような状況でございまして、もっともっと拡充しなくてはと思っているしだいです。
ただ今回の無償のプロジェクト評価は予算が無い中第三者にお願いできないので、自己評価でやったわけですけれど、評価というのは本来、評価のガイドライン、きちんと評価の基準があれば、それに基づいて誰がやっても同じ結果が出るというのが本来客観的な評価でありまして、本来は誰がやろうと同じ結果にならなければ評価として意味が無いわけです。第三者の方々にも入っていただきながら、評価のガイドラインをなるべくきちんと作るなどの形をとりながら自己評価という形であっても、結果として客観性の高い評価はできないわけではないと思っています。予算が無いなら無いなりに評価をやりながら、人に言われるまでもなく自分のことは自分で正していくということが、より良い援助に繋がっていくと思っています。そういう観点で先程の点検と改善の報告書の中でも現地ODAタスクフォースによるレビューというのが10の改善措置の中の4.に一つの改善策として入っております。具体的な内容は、報告書の18ページくらいに書いてございますけれども、要するに各現地の大使館を中心としたJICA、JBICで現地にいる現場に最も近いタスクフォースの人たちは、毎年その国に対する日本の援助についてしっかりレビューをしましょうということを、これはこれからやろうと思っています。これも各国に対する援助が国別援助計画に基づいて妥当な形で行われているか、効率的な形で行われているか、有効な成果が出ているか、色々なことを事前に示した上でなるべく客観的なレビューをやって行きたいと思っていまして、こういったことを通じて援助の全体的な質の向上に努力をしていきたいと思っています。
当然のことながら可能な限り現地の人たち、相手国の政府は元よりですけれど、現地の人たちの声もできるだけ聞いていけたらいいと思っています。
○川村
ありがとうございます。これから出てくる報告書を非常に楽しみにして、ゆっくり読ませていただきたいなと思っています。ただ一つ思いましたのは、確かにガイドラインがはっきりしていれば、達成目標に対して、それがどのように達成できたのかというレベルでの評価は誰がやっても本来は同じにならなければいけないことですが、しかし実際行政の中で、個々のプロジェクトの評価をしていくということは、そのプロジェクトが良かったかどうかだけに終わらずに、実はそれが巧くいかなかった構造的な問題がその中に出でくる。より高次の政策レベルに反映していくということも、日本国内でやっていれば当然出てくるわけです。一つ一つの政策が巧くいかなかったとき、それは他の関連する政策に影響があるかもしれない。連関していますから繋がっていく。評価するということは個々の事業を良くするだけじゃなく、政策自体をいかに良くしていくのかということにも繋がっていかなければならない。そういう視点で言うならば、誰がやっても同じ答えになるというのは、連関を切った所での話しであって、その国の、例えば学校の授業が巧くいかないのは、その国の教育政策全体の問題と係わっているかも知れない。その中で日本のODAのチームが一定の形にしかなっていない。この中でも色々なスキーム間の連携をすると議論もありましたけれど、それがなかなか巧くいかなかったり、スキーム全体が足りなかったりするようなこともあるかもしれない。そういうふうに色々なことに波及していくことがあるんじゃないかということも考えられると思います。そういう意味でも、評価自体をキャパシティービルディングなんだという視点でもっと現地の市民社会、あるいは市民を巻き込んでいくという視点がいるんじゃないかなと思うのが一つです。
もう一つは具体的な提案なんですけれど、これは予算が取れたらなんですが、例えば現地と日本のNGOが参加するような形での評価のパイロットプロジェクトというものをいくつか回してみるというのも可能ではないかと思います。実際援助の現場を見ていて何が起こっているかというと、現地の関係者の意見を聞くということになっているんだけれども、どこにどういう関係者がいるのかということは、必ずしも現地の援助関係者、特に政府系の人たちが全部把握しているとは限らない。例えば教育については現地で教育問題に係わっているすごく優秀なNGOがあるかもしれない。コミュニティー開発であるならば、そういうNGOもあるかもしれない。けれどそういうところと必ずしもJICAやJBICが巧くコミュニケーション取れているのかというとそうとは限らない。
実際私も去年マニラに行って住民の組織化をしているNGOの人たちと話をしましたけれども、「JBICに行ったら、JBICの人たちは誰も視線すら合わせようとしなかった。会話をしている間ずっと下を向いているだけで聞き置きましたというふうに言って、それで終わったんだ。あれは一体何だったんだ」と怒られて来ました。そういうことは実際現場では起きているわけです。勿論人によって色々あって、評価の高いJBICスタッフのいる国もあります。けれどそういうことも含めてより質のいい評価、ガイドラインを作っていくためにもそういったパイロットプロジェクトをいくつか動かしてみるというのはどうかなと、具体的に提案させていただきたいと思います。
○和田
ありがとうございます。私の理解しているところでは、既に外務省の政策レベルの評価に置いては、開発計画課の評価班というのがそういうことをやっているんですが、年に一回くらいだと思いますが、NGOとの合同評価というものを毎年やっていると思います。それからJBICとかJICAもおそらくそういう試みというのは、少しずつだけれどもやっているのではないかと思います。JICAによりますと、国内の市民社会との交流にも取り組んでおって、平成13年度から草の根レベルで現場経験の豊富な「NGO-JICA評価小委員会」というのを作って、NGOとJICAで評価に関する共同学習や合同評価を実施しているというふうに書いてありますので、少なくともJICAはそういう試みをやっているんだと思います。勿論もっとこういうことを拡充していくことを考えたらいいと思います。
もう一つ現地との関係でも言われていることに異論はなくて、我々とりあえず世銀なんかが一生懸命PRSPという形で現地で組織している動きがありますので、当然それにも参加しておりますし、それはそれで重要なことです。
途上国の政府、相手国の政府機関が、そもそも評価ということに対する認識がまだ低いところが多いし、彼らの評価に対するキャパシティーを上げていくということも大事なので、そういった相手国政府と一緒に合同評価をやりながら、彼らのキャパシティーも上げていくという努力をしています。それから日本が一方的にやっているような評価についても、極力相手国政府を巻き込んでセミナーを開いて内容も開示して議論をするということで、勿論相手国と議論をするということ自体も目的の一つなんですが、同時に相手国政府のキャパシティービルディングも考えながらそういうこともやっているという努力をしております。
相手国の市民社会となると、ちょっとそこまでは行っていないわけですが、そういうことも中長期的な課題としてやっていかなければならないし、今ご指摘のあったフィリピンのような場合の、現地にしっかりしたNGOがあるような国についてはもうちょっと考えてもいいのかなという気もしていまして、現にフィリピンに対する国別援助計画を改定する作業の中で、NGOの関係の先生方も委員会に入っていただいているわけですけれど、そういったところからフィリピンのNGOの意見をもっと取り入れられるようなシステムを作るべきではないかというようなご指摘も頂いております。現地の大使館も現地のNGOと色々と話し合いを強化しようとしていたり、色々なそんな動きはございます。
色々とやらなければならないこととか、やったほうがいいことはたくさんあるんですけれども、一歩一歩できるところからやっていきたいと思っております。
○松崎
評価に関してなんですけれども、この10の改善措置の見易い表を見まして、ちょっと怖いものがあるなと感じるんです。戦略性とか効率性とか、そういうことによって、やはりこの前の建築構造なんかのニュースにしても、効率性の追求とかいうものから出てきたものですし、ですから改善するためには、これまで指摘されてきたことが今日も出ましたけれども、NGOの評価というか、現地の評価というか、NGOや現地住民とのパートナー関係というものを充実させていくことがODAの改善措置に繋がるんではないかと従来私も考えていることなんです。JVCさんとか色々なNGO、本当に現場に入って、勿論JICAの方も頑張っておられますけれども、そこから見えてくるものを引き上げて戦略性の効果ということは、戦略を立てていく段階からNGOの活動、現地の活動を見ていく中から何か必要なのかを見ていく必要があると思うんです。詳しく中を見させていただいてませんけれど、印象だけで語るのは申し訳ないんですけれども、私すごくそういうところを感じるものです。
特に今フィリピンから二人の女性に3ヶ月間研修にきもらっていますけれども、彼女たちが被服を作って自立をしていこうといているんですけれども、フィリピンに対しても戦後賠償から始まって50年60年のODAがあるわけですけれど、フィリピンには被服を作るための布とかボタン一つ、インドネシアではできるしゃれた布とかボタンとかの材料が無い。ミンダナオでも材料となる植物はあるんですけれども、それが布とかいう製品に生かされていない。そういうのを作れなかった援助のあり方というのはなんだろうかというのをすごく感じているところなんです。現地の人たちの目で見ると本当に何が必要かということが見えてくると思います。ですから立派に冊子もできているところなんですけれども、ちょっと感想として受け止めていただければと思ってご意見を申し上げました。
○司会
どうしても言いたいことがあるので言ってもいいですか。プロジェクト評価の第三者ということをおっしゃっていたんですが、ここの人選のプロセスの段階において、どれだけの市民社会の現地の声を巻き込めるかが大事だと思っています。現実的にNGO、市民社会、マルチステイクホルダーからなるプロジェクト評価は難しいというのであれば、先ずは第三者を選ぶ選定プロセスにおいて、透明性のある、なおかつ客観的な人選プロセスに市民社会を巻き込んでいくという視点が大事かと思っています。
国別援助計画に対して、NGOという言葉をおっしゃっていましたけれども、NGOといっても様々なセクトがありますし、対立関係もフィリピンの場合などあります。その辺のローカルポリティックスにどれだけ理解を深めていくか。昨年1年間私はフィリピンにおりましたけれど、JBIC、JICAの方々、そういうことを知りません。そういうことを知らないと、なかなか政策を実施していくうえで巧く進まないという現象が実際起こっていますので、より学者ですとか、NGOですとか、マルチのステイクホルダーの中から意見を汲み取るシステムを是非作ってもらいたいと思います。
すみません。それでは議題(3)に移らせていただきます。MDGs目標8の評価と今後の方針についてです。これは高橋さんにお願いします。
(3)「MDGs目標8の評価と今後の方針」
○高橋(清貴)
国連外交におけるODAとして、MDGs目標8の評価と今後につい質問します。こういう議題をここで議論するのは適切ではないという意見もあるかと思います。本来だったら、国連外交とODAは別扱いで、経済協力局は二国間援助の管轄であり、民間援助支援室もNGOとの関係を扱うところなのですが、私たち市民やNGOは現場に立ったりすると、問題は二国間援助だけの話ではなくて、貧困や環境や感染症の問題を国際的な視野から包括的に考える必要があると実感しており、そのことからここで国連外交のあり方も議論したいと思っているのです。つまり、ODAをよりグローバルな課題に応えていくものに変えていくということを議論しなければいけないと考えています。私も長年ODA改革の問題に携わってきましたけれど、正直ODAはなかなか良くならないという印象を持っています。特に、国内の経済的な状況とか、政治的思惑だとか、民間企業の関心だとか、アジア外交とか、特定の国との二国間関係とか、色々なしがらみがある。しかし、私は今、グローバルな課題をグローバルな視点できちと議論して、それにどう応えるかということを真剣に考えなけれならない時期にきているのではないかと考えています。ODAの問題を、二国間外交や通商産業目的に狭めずに、やっぱり国連を中心に包括的に国際社会の問題として日本の取り組む姿勢をあきらかにしていく議論が大事になってきていると思っています。これが議題の背景としてあることを、まず説明しておきます。論点は一つだけです。貧困問題解決にどうやって今後国連外交を進めていくのか。担当は国際社会協力部や国連政策の方だと思いますけれど、今後開かれた国連外交を進めるために、どのような市民との対話をやっていくのかということについてのご意見を伺いたいということです。
今年、国連改革ということで色々議論がありました。安全保障理事会だけが改革の論点ではなくて、もっと大事な論点がたくさんありました。日本ではあまり報道されませんでしたけれど、昨年の12月出されたハイレベルパネルのレポートが、今年1月にはジェフリー・サックスによるミレニアム・プロジェクトの報告書が出されました。それを受けてアナン事務総長が3月にレポートを出して、改革の青写真が出たので、その辺りから国連でたくさんの議論が行われ、いくつもの重要な論点が話し合われてきました。特に私は、今、貧困や感染症や環境問題を解決していくことを真剣に考えなければならないという問題提起を重く受け止めていて、私たちNGOも積極的に市民に働きかけをして貧困削減の世論を盛り上げようとしています。また、国連改革に対するパブリックフォーラムというのも今年の8月30日、国際社会部の方たちと協力して開催することができました。これは国連外交を市民社会に開かせていく機会として非常に良かったと思っていますが、外務省の側がとても協力的にしてくださったので、非常にあり難いと思っています。実は第2弾を来年の2月に行うことになっています。そういう意味で国連外交の問題に関して市民との対話が増え始めてきています。これに関しての質問なのですが、国連のことを考えていく上で、市民と政策対話をする機会があったとしても、これをもっと活用して、国際社会の議論の場に働きかけていくことについてどう考えているのかということが1点目。2点目は、どうやって国連のあり方について市民に説明していくのかということ。説明の仕方も含めて。そして、この2点目に関連して、日本が国連に拠出するお金の使い方について。これまで日本では国連に拠出しているお金の使い道に関してあまり関心を持っていなかったと思うのですが、改革論議が進めば、この問題は重要になってくると思います。これをどうするのか?この3つに関して、まだまだ改善すべき余地があると思っています。
一点目の国連政策を一緒に考えるということに関してはパブリックフォーラムである程度はできていくと思うのですが、二つめの市民に対する説明ということに関して、特に「開発」分野ではMDGsの目標8についての説明が果たして十分なのか、適切なのか疑問があります。今年、開発問題が主要な改革議題のひとつだったと思います。ODAとの関係で言えば、MDGsの目標8に関する評価をカントリーレポートとして日本も提出しましたが、それが適切な内容だったのかということに疑問があります。今回、外務省からの資料ということで、ミレニアム開発目標8に関する報告書の和文概要が資料として出されていますが、これはまず英語で作られたと聞いています。そして、その概要を和文として作られた。国連政策に関して市民との対話を今後どうしていくかということを、より具体的に検討するという意味で、この経済協力局で作成されたMDGs目標8についてのレポートには問題があると思います。
印象レベルで申し上げるとまずこれが一体誰に向けて書かれた報告書なのかということが良く分かりません。おそらく国連総会という場でこれを出したということは、日本がこれだけODAとして貢献していますよということを示そうとしているわけですけれど、書きぶりとしてどうも他のG8国や先進援助ドナー国に向けて書かれているという印象を受けます。多分それは違うと外務省はおっしゃると思うのですが、例えば、ODAの量に関する記述で『世界最大のドナーであり』という書き出しから始めていますが、これは一体何の意味があるのでしょうか?それを言うことが途上国の人たちにとって、適切なことなのでしょうか。そして、全体として、レポートは日本のODAの貢献を評価しているのですが、その理由が非常にインプット・オリエンテッドなのも違和感があります。「ここにこれだけ投与しましたよ」ということで書かれていますが「住民の生活がどれだけこういうふうに改善されましたよ」という書きぶりにはなっていない。それは先ほども議論があったODAの評価のあり方とも繋がるのかもしれませんが、それではODAが役に立っているのかどうか分からない。「これだけお金をつぎ込みましたよ」ということは、誰にアピールするものなのでしょうか?特に、途上国の誰のことを考えてこのレポートを書かれたのかよく分からないと思うのです。ガバナンスの問題、人権の問題についても、あまり触れられていません。つまり、総じて日本から出て行くお金のところでの説明があるのですが、それが受け取り国でどのような効果を発現しているのかということについての説明がないのです。
そう思いながらこのレポートを読んでいくと、これはやっぱり経済協力局が作ったものだなと感じるのです。これを国連改革を議論する国連の場で発表して、誰にどういう風に受け止められると思っていたのでしょうか?つまり、どういうふうにグローバルな課題に今後貢献していこう、そのためにODAを改善していこうとする考えが見えてこないレポートは時代遅れであり、むしろ途上国市民を含む国際社会の反発を買ってしまうのではないでしょうか。ですから今後はこういうレポートは、前もって広く公開して、市民やNGOと対話しながら作っていく方が良いのではないかと思うのですこれについてどう思われているか、教えていただければと思います。
○和田
直接の担当ではないので、色々事前に聞いてきたんですけれども、ちょっと今のご指摘に対して答えられないので持ち帰って聞いてみたいと思います。ゴール8に関する報告書については、そもそも出すことが義務付けられているものではなくて、一部の先進国がそれぞれの考え方に従って出しているわけです。日本もできる限りの説明をした方がいいと思って、日本なりに考えてまとめたものだと思っています。
国連総会の特別首脳会議の機会にこれを発表して、国連の中でもこれを配り、各国の外務省、これは先進国だけじゃなくて途上国も含めてですけれど、東京にある各国の大使館にも配って説明をし、MDGsの達成に日本がいかに貢献しているのかということのアピールに使いました。住民にとって意味が無いのではないかというご批判があるのかもしれませんけれども、少なくとも我々、手前味噌になってしまいますが、各国から日本はこういう報告書を作って配布し説明をしたことに対して、そういうことを一切やっていない国もある中で、「日本は一生懸命やっているね」というふうな評価も頂いたというふうに理解をしております。勿論インプットの議論が中心であるとか、色々ご批判はあると思いますけれども、それをいったらGNP比0.7%目標だってインプットの目標であって、という議論もあるわけですけれども、私は当事者じゃないので推測に基づいて言ってはいけないんですけれども、この報告書の中にはそれなりに日本の思想もあると思うんです。すなわち単なる貧困削減への直接的な対応だけじゃなくて、経済成長を通じた貧困削減という視点も重要だとか、そういったことも強調してあると思いますし、ODAと貿易とか民間資金の流れとの関係だとか、そういうものも含めて色々書いているので、ちょっと正しくないコメントかもしれませんが、日本なりの主張は入っているのではないかと私は期待しています。いずれにしても改善の余地はあるでしょうし、頂いたコメントの多くは正当なご指摘かも知れませんので、その辺は、また今後こういう報告書を作る機会があるのかは分かりませんけれども、更に良いものにしていくべきなんだろうなと思います。我々がやっていることをキチンと説明することの必要性ということは全く異論は無いところでございますし、我々も更に努力をしなければならないと思っています。
最初に色々言われていた国連の問題での対話について、パブリックフォーラムとかの努力について高く評価すると言っていただいてありがとうございます。国際社会協力部も今回平和構築委員会だとか、人権理事会だとか、色々国連改革の動きがあるんだろうと思いますけれど、引き続き可能な限り皆様の意見を伺いながらやって行きたいと思っていますので、またよろしくお願いします。
○司会
終了時刻が迫っておりますけれど、このまま5時30分まで延長させていただいてよろしいでしょうか。最大5時30分までです。意見質問などございますでしょうか。
○高橋(清貴)
外務省内部のことは口出しをすべきことではないのですが、つまり国連改革の色々な議論の中でも、例えば「開発」分野に関しては新資金ファシリティーの問題、「平和」分野に関しては平和構築委員会というイニシアチブ、「人権」に関しても人権理事会という考え方ができて、より強く人権という視点から途上国住民のことを考えていく方向性が出てきている。それらは全て、日本のODAのあり方に影響を及ぼすべきものだと思うのです。つまり、国連を通しての「援助」のあるべき形とか、国連というマルチの場を通して途上国住民の生活をどうやって良くしていくということと、日本と途上国のバイの関係でODAや経済協力をやっていくこととが、巧く連携をとっていかなければならなくなってきていると思います。国連も、今、役割が変わってきています。単なる大国間の調整を安全保障理事会でやって行きましょうということだけではなくて、貧困とかの国際的な課題に対して国際的に応えていくということにおいてのグローバルガバナンスを中心的に担うような情勢になってきています。この中で、日本のODAも、ただ単に二国間の経済関係や安全保障関係、ましてや国内の経済的見返りや通商産業的な関係にいつまでも引きずられるべきではなく、もっと国際人道的なところでODAを使って国際社会と一緒になってどういうふうに取り組めるかというところをより一層強くしていく、掲示していくべきではないかと考えています。これは全く一市民としての個人的な希望として勝手なことを申し上げているのですが、一言コメントさせていただきました。
○五月女
ちょっと一言コメントさせていただきたいんですが、私は来週からアフリカに行くんですが、アフリカに対する援助を強化したいということで、プロジェクトを見つけるということもあるんですけれど、実はご承知のように、ここ50年間を見ますと、1950年代というのは、アフリカ地域とアジア地域の経済格差というか、一人当たりのGDPはアフリカの方が上だったわけです。アジアはその半分よりちょっと上くらいであった。ところがアフリカというのはほとんど横ばいで今も昔とそんなに変わらない。1.5倍くらい。しかしアジアの方は1983年にアフリカを抜きまして急速に経済発展をしていった。初期の段階から見ると5倍から6倍のGDPになった。その時に日本という国は、経済協力というのを強化していって今でも5:1か6:1くらいでアジアを支援してきているわけです。その日本のやってきたODAというのはアジアの発展に貢献したということは、実際以上だと思います。けれどアフリカというのは撤退しているという中で、日本の持っているノウハウですとか、日本のやり方とかをここで生かしたいということもあるし、3年のうちに倍増するというお金の面も大事だと同時に日本の持っているノウハウを、欧米諸国がアフリカにやったことはあまりの巧くいっていなかったということが言われているわけで、やはりそこに日本の持っているノウハウというものをそこにつぎ込むということも大事な時期になってきていると思っています。ただ単にお金を増やすという問題だけじゃなくて、日本が50年間やってきた色々な面での経済協力のノウハウをアフリカでも生かしたいということもあって、小泉さんが言ったことばかりじゃなくて、やはり外務省の中でもそこは強化しなくちゃならない。最近の問題であるHIVのことも、サハラ以南の問題を解決しない限りは世界的なものとして解決できないわけですから、アフリカの問題として捉えるのではなく、世界の問題として採りあげなければならないし、NGOと市民社会というのはアジアに向ける発展とアジアに向ける発展とは全然違う。アフリカではなかなかそれが育っていない。現場のNGOというものが。それを我々がなんとかアジアで得たノウハウを使って発展を助けるようなことをしてあげられないか、ということもありまして、今回私もアフリカで活躍するNGOの人たちと一緒に考えていこう。新しいプロジェクトがあければそれを立ち上げて予算的にもこれから増えるので、それを何とかアフリカの方の強化に使いたいと思っているわけです。ですからアフリカとアジアの根本的な違いを理解したうえで考えていかないと、一般的にグローバルに考えてもちょっと違うなと感じました。
情報の流れということをよく言いますけれど、やはりアフリカ53カ国の中に日本からの新聞の特派員はたったの4人5人しかいない。一人の特派員が20カ国30カ国をカバーして報道する。情報量が全然違う。アジアでは何百人という特派員がいるわけで、それだけでも情報量の差もありますし、経済協力の額の違いもありますし、認識の違いもあるし、NGOということの考え方も違うし、全てが違うので途上国の支援を一つに考えてやってしまうというのは間違いで、地域的なことも組しなければならないと感じます。
○川村
今のこと、よく議論されることなんですが、一言だけ、こういう言い方もあるということを言っておきたいと思います。アジアは日本のやった経済協力援助が成功し、アフリカは欧米の人道的な支援が失敗したんだという議論はよく言われます。ただその中身というのがどこまで検証されているのかということは、ちょっと抑えておかないと、色々な議論がありますので、ちょっと危ないかなという気がしております。
アジアの成長の理由についても色々な議論があって、日本の援助がうまく機能した部分もあるかもしれないけれど、同時に識字率だとか政府の基本的な機能の仕方だとか色々な側面があるわけです。逆にアジアを見た場合も、フィリピンだとかインドネシアのように必ずしも日本の円借款、経済協力ベースの方法が成功していないところもあるわけです。簡単にアジアとアフリカを対比して日本的なやり方が良いんだ、日本は経済協力型をやって、それが無条件に良いんだという議論になってしまうとちょっと拙いかなという気がしております。
○和田
エンドレスの反論をするつもりはないんですが、それこそフィリピンやインドネシアの円借款が失敗だったと十羽一からげに言われることもいかがなものか、やっぱり一個一個見なければいけないと思います。
○司会
私からも一言いいですか。GDPが上がったといってもフィリピンの今年の新聞に報道されているんですけれど、自分が貧困層だという意識のパーセンテイジは増えているんです。グローバリゼイションが進んでいく中で裕福層と貧困層の格差が広がっているという現状があります。裕福層がもっと豊かになればいいのかというとそれは違うと思うし、そういったノウハウを今度はアフリカに持っていこうというときに、正しくそういうときにこそ、アジアの援助を振り返る機会にしなければならないというふうに思っています。
○五月女
私は長くアフリカにいるんで、最近のアフリカの流れを見て、100点満点ということはありえないので、全体的に見たときに結果としてGDPが横ばいであるのと、ある程度経済発展がされたということを見れば、ここには何が必要だったのかなということを分析する必要があるということです。
○司会
どうも有難うございました。皆さん長時間に及ぶ議論をどうも有り難うございました。一旦、協議事項については終わらせて頂きます。
次に、次回協議会の開催日程についてなんですけれど、まだNGO側としても整理されていないものですから、今後コーディネイターの方々を通じて日程調整の方を進めて頂ければと思っています。
それでは、閉会の挨拶をNGO福岡ネットワーク副代表の重田康博さんにお願いします。
○重田
皆さん3時から2時間半の間、ODA政策協議会にご参加いただきどうも有り難うございました。NGOの方も外務省の方も、関西、東京から福岡にお越し頂きまして感謝しております。最初に、吉野代表からもご挨拶があったように、このNGO・外務省定期協議会がこの福岡で開催されたことは、非常に意味深いものがあったと思います。ちょうど1996年から始まって、NGO・外務省定期協議会は来年でちょうど10年になります。かつて私も、定期協議会の事務局担当として97年から2000年まで、3年弱係わりましたが、来年で10年続いたということは、NGO外務省定期協議会がNGOと外務省の双方でその役割を認め合い社会的にも認知されてきたことを意味します。これを、NGOと外務省間の政策協議を深め、相互の信頼関係を築いていく一つのステップとして、今後も継続していくべきじゃないかと思います。私はこの事務局を離れ、本日6年ぶりにこのNGO外務省定期協議会に参加させて頂いたわけですけれど、感じたことが3つあります。
最初に、事務作業が迅速化したことです。当時は質問事項を提出しても、外務省からの回答が来るのが遅く、回答が来るのが前日だったり当日だったりすることがありました。当日の定期協議会開催前に、NGOがその回答を事前に読み込んで更にその議題の内容に関して深めたり協議をするというところまではいきませんでした。そういう面で、事務作業が迅速化したということは、それだけ当日の議題の内容を深めることができ、大変評価できることであると思います。
第2は、透明性です。外務省のホームページに定期協議会の議事録を公開したことは非常に良かったと思います。議事録を当時作成しても、当時はなかなかホームページに公開するまではいかなくて、公開は一部の人に限られていたと思います。やはり、議事録を作成して、ホームページに出して多くの人の目にふれることは、この定期協議会の透明性を高めていくことだと思います。
第3に、公開性です。このようなODA政策協議会の場に多くのNGOIが参加できるということは、大変意味深いことです。私が事務局を辞めた6年間の間に、定期協議会がODA政策協議会と連携推進委員会の2つに分かれ、それぞれNGO支援とODA政策について話し合えるようになったということは、協議を非常に効率的・効果的に進めることができるようになったのではないでしょうか。関西や東京のNGOの方々や外務省の方々にも、今日は福岡まで来て頂きましたけれど、このような協議会を福岡のNGOの方々にも参加する場を開いていただいたことは、福岡のNGOにとっても意味深いことだったのではないかと思います。
今後の課題ですけれど、先ほど川村さんが話していらしたのですが、この協議会で話すこと、ここで協議したことを文書化して、それをさらに政策レベルに繋いでいく。そのような具体的な努力、成果、ケーススタディがあればいいのではないでしょうか。
NGO連携支援の方では、NGOの支援策を増す、とか支援額を上げるとか、数字による成果が分かりやすいのですが、政策協議会の場合その成果が見えにくい部分もありますので、そのような成果、ケーススタディがあると外部にもその成果がわかりやすいものになるのではないでしょうか。
また、福岡での課題ですけれど、我々政策提言委員会は、私も含めていつも2、3人で開催しているような状況です。今年、政策提言委員会主催で、報告会を3回開催しましたが、人は沢山来る時もあれば来ない時もあります。福岡の政策提言委員会を月に1回開催しておりますので、今日ご参加頂いた福岡の皆さんもご関心があったら、是非政策提言委員会の方にも、これを機会にご参加頂ければと思います。
最後に、今日事務局として、この準備をして頂いた関西NGO協議会の皆さん、特に榛木さん、福岡で協議会が開催ができたのは榛木さんのお陰です。皆さん榛木さんに拍手をして頂きたいと思います。また、NGO福岡ネットワークの事務局の木村さん、藤井さんにも準備のお手伝いをして頂きましたので、拍手をして頂きたいと思います。
この後、懇親会があります。外務省の方、JANICの方、関西NGO協議会の方もご参加いただきますので、是非ご参加下さい。これを機会に、更に友好を深めて頂ければと思います。皆さん本日はどうも有り難うございました。
○司会
それでは今日は皆様お疲れ様でした。
以上
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