ODAとは? 国際協力とNGO(非政府組織)

2005年(平成17年)度NGO・外務省定期協議会第1回ODA政策協議会・議事録

※NGO:非政府組織(Non-Governmental Organizations


日時 平成17(2005)年7月20日(水曜日)14時00分~16時15分
場所 外務省南庁舎 396号室
司会 川村暁雄(特定非営利活動法人 関西NGO協議会)
記事録 NGO側ODA政策協議会事務局

議 題:
1.五月女NGO担当大使の挨拶 
2.自己紹介
3.報告事項 
(1)保健関連MDGsに関するアジア太平洋ハイレベル・フォーラムの報告
(開発計画課)
4.協議事項 
(1)アフリカ支援について
(2)MDGs中間レビューについて
(3)MDGs達成に向けた取り組みについて 
(4)第2回全体会での提案のフォローアップについて 
5.第2回ODA政策協議会の開催について 

≪配布資料≫
<報告の部>
1.保健関連MDGsに関するアジア太平洋ハイレベル・フォーラム(概要と評価)(PDF)
 パンフレット「保健と開発」に関するイニシアティブ~2015年のゴールをめざして~
<協議の部>
1.議題の論点(PDF)
2.日本政府の対アフリカ開発支援~G8サミットに向けた小泉総理大臣からアフリカへのメッセージ~(PDF)
3.2005年は「アフリカの年」(PDF)
4.「MDGs達成にむけた取り組みについて」(PDF)
(1)MDGs概要と達成状況
(2)我が国のMDGs達成に向けた支援
(3)アナン事務総長報告書
(4)国連改革:日本の優先事項
(5)パンフレット「ミレニアム開発目標~2015年に向けた日本のインシアティブ」
5.政策議論の深化にむけて~議論のさらなる深化のために求められるもの~(PDF)
<参考資料>
(1)グレンイーグルズ・サミットに関する市民社会共同声明(PDF)
(2)「日本政府の対アフリカ開発支援」に関して(PDF)

出席者リスト 計:30名
<外務省> 外務省計7名
1. 五月女光弘 NGO担当大使
2. 和田充広  国別開発協力第1課長
3. 南  博  国際社会協力部政策課長
4. 城守茂美  民間援助支援室長
5. 小野日子  開発計画課 企画官
6. 品田光彦 国別開発協力第2課 首席事務官
7. 藤井郁子 民間援助支援室 事務官
<オブザーバー> オブザーバー:計3名
1. 岩井雅明 JICA国内事業部 市民参加協力室 連携促進チーム
2. 竹崎希  同室、市民参加支援事務局
3. 福田綾子 JICAインターン
<NGO> NGO:計20名
1. 川村暁雄 特定非営利活動法人 関西NGO協議会
2. 高橋清貴  ODA改革ネットワーク
3. 熊岡路矢 特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター
4. 伊藤香奈子 TICAD市民社会フォーラム
5. 高瀬国雄  TICAD市民社会フォーラム
6. 長島美紀  TICAD市民社会フォーラム
7. 石川尚人  東方科学技術協力会
8. 保崎彰吾  東方科学技術協力会
9. 土井昌子 特定非営利活動法人 日本口唇口蓋裂協会
10. 浪瀬佳子 特定非営利活動法人 WE21ジャパン
11. 初沢美香 財団法人 ジョイセフ (家族計画国際協力財団)
12. 原 征治 特定非営利活動法人 NGO福岡ネットワーク
13. 松山恵子  認定NPO法人 難民を助ける会 
14. 内海宙大  日本リザルツ
15. 野呂貴子  日本リザルツ
16. 高橋良輔 特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター
17. 小堀優井 特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター
18. 永淵芳法 特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター
19. 片田さおり特定非営利活動法人 関西NGO協議会
20. 榛木恵子 特定非営利活動法人 関西NGO協議会(事務局)


<議事録>

<敬称略>

1.開会

司会:
 関西NGO協議会の川村と申します。今まで関西NGO協議会は神田さんがずっとやってきたんですが、今年から私が交代します。とても神田さんと同じ役目は負えませんが、ベストを尽くしますのでよろしくお願いします。
 先ず始めに、五月女大使からご挨拶をお願いします。

2.五月女NGO担当大使のあいさつ

五月女:
 皆さんこんにちは。はるばる遠くから、九州方面からも関西方面からも多数お越し頂きまして有り難うございます。本日ODA政策協議会、第一回目でございますけれども、NGOと外務省の間ではこれまで何度も、この政策会議と連携推進協議会を平行してやってきていまして、大変にいい結果を残していると私は思います。今年また、新しいメンバーの方もおられますようで、それから川村さん、一つよろしくお願いします。
 一言ご挨拶申し上げたいと思います。この間スコットランドでグレンイーグルズサミットがございましたけれど、その時に大きなテーマとなったのがアフリカ支援でございました。 
 ご承知のように日本にとってアフリカ支援というのは大変遠い所の話ということになっておりまして、本当に予算の上でも活動の上でも、大変にアジアと大きな差があることは否めません。私は2年半程前までアフリカのザンビアとマラウイの大使をしておりまして、現地におきまして日本のNGOの方々、青年海外協力隊の方々と日本の顔の見える貢献をやってまいったのですが、その時に感じたことは、大変にアフリカのニュースが日本に流れにくいと感じました。特にあちこちでも聞かれるのですが「なんでこんなにアフリカのことが報道されないのか」というときに、実は私がいました時に、アフリカ53ヶ国に日本からの特派員がわずか4名しかいなかった。それがカイロと南アフリカ、ケニアに一人二人と常駐しまして、一人で20ヶ国くらいをカバーするというようなもので、とてもアジアにおける日本の特派員の報告とはえらい違いだなと思いました。とくに一昨年、日本、アジアでサーズの問題がかなり大きく取り上げられまして、1ヶ月間に500人亡くなった。700人亡くなったと大きなニュースになりましたけれど、アフリカではその時期に50万人近い人たちが亡くなっている。感染症とか色々なことで。でもほとんどニュースにもならない。つまりアフリカのニュースはアジアの1000分の1位しか流されないということを感じまして、やはりこれは何とかしなければならないと感じました。
 ご承知かと思いますが今から50年前、日本がコロンボプランに入りました前後、アフリカというのは東アジアよりも一人当たりのGDPの金額は高かった。その頃、戦後一番最初に独立したのはガーナ共和国だったんですが、ガーナは実は日本より一人当たりのGDPが高かった時代があった。今から50年以上前ですけれど。そのような状態だったのですが、それからアフリカはずっと横ばいが続きまして、あまり進展がなかった。けれど一方アジアは、低かったにも関わらず1983年にGDPでは逆転しましてアジアはアフリカを上回るようになり、更にそれはどんどん続きまして、この50年間でアジアはほぼ5倍以上のGDPになっているにも関わらず、アフリカは1.2、1.3倍くらいにしかならない。ほとんど横ばいの状態であることが言われています。
 それは私が考えるに、日本のアジアに対する貢献が非常に大きかったと思います。同時にヨーロッパのアフリカに対する貢献、支援があまり上手くいっていなかったと思うのですが、そういうのを見ましても日本のODA、活動は日本の経験を生かして非常に良くやってきたと思います。そんなこともございまして、今回ここにいらっしゃっている皆さんの中にはアフリカ支援をされている方もいらっしゃいますし、是非これを拡大していくようにしてもらいたいなあと。アジアは自立できるような状況になっていますけれど、アフリカはまだまだ支援が必要である。日本のノウハウを入れていくべきじゃないか。小泉総理も日本のODAをアフリカについて2倍にすると言っているので、それに向かって突き進むのかなあと期待しているわけですが、それにしましても日本のODAが下がっていますので、なかなかその大きな期待ができるかは分りません。それだけに我々としては、それを工夫して、より効果的な効率のある使い方をしていきたいと思っています。
 そんなこともありまして、今日はアフリカに対する支援についても大きなテーマになっているようですので、NGOの方と外務省の方との連携を更に密にしまして、ODA予算、NGO支援予算を効果的効率的に使えるようなアイデアが生まれてくることを期待しております。途中で発言させて頂くかもしれませんが、最初のご挨拶として申し上げます。

3.出席者自己紹介

 まず、自己紹介ということで、計算しますと一人あたり8秒程度ですので、名前と所属のみしか言えないと思いますがお願いしたいと思います。
 それでは、やはりこちらからお願いします。

和田:外務省経済協力局国別開発協力第1課課長の和田です。

城守:私は、外務省経済協力局民間援助支援室室長の城守です。

藤井:民間援助支援室の藤井です。

高橋:国際協力NGOセンター(JANIC)事務局スタッフの高橋です。 

片田:本日、関西NGO協議会からの参加で、南カリフォルニア大学の片田さおりです。

松山:NPO法人難民を助ける会の松山です。

初沢:ジョイセフの初沢です。 

土井:日本口唇口蓋裂協会の土井です。

浪瀬:神奈川にあります、市民の皆さまより品物をご寄付して頂き、その売り上げでアジアの女性のエンパワーメントの向上を行っておりますWE21ジャ パンの浪瀬です。

保崎:東方科学技術協力会は満鉄を中心とした組織でして、活動しているほとんどの方はは80才近いです。主に中国で緑化事業を行っています。保崎です。 

石川:東方科学技術協会で一番若いメンバー石川です。

内海:日本リザルツの内海です。マイクロクレジット支援、グラミン銀行支援、ここ2~3年は感染症対策など、今年は、結核対策をテーマにしております。

川村:関西NGO協議会、ODA改革ネットの川村です。仕事は神戸女学院大学教員です。

高橋(清貴)日本国際ボランティアセンター、恵泉女学園大学教員の高橋です。

熊岡:JANICの熊岡です。

高瀬:TICARD市民フォーラム理事の高瀬です。 

長島:TICARD市民フォーラム事務局の長島です。宜しくお願いします。

榛木:関西NGO協議会の榛木です。宜しくお願致します。

原:NGO福岡ネットワークの原です。宜しくお願いします。

伊藤:TICARD市民フォーラム事務局の伊藤です。宜しくお願いします。

野呂:日本リザルツの野呂です。宜しくお願いします。

福田:JICA国内事業部市民参加協力室でインターンをしております福田と申します。
宜しくお願いします。

竹崎:JICA国内事業部市民参加支援事務局の竹崎です。宜しくお願いします。

岩井:JICAの岩井です。宜しくお願い申します。

品田:外務省経済協力局国別開発協力第2課の品田です。

小野:外務省開発計画課企画官小野と申します。宜しくお願い申します。

南:外務省国際社会協力部政策課の課長をしております南です。宜しくお願いします。 

司会:
 早速問題に入っていきたいと思います。先ほど事前にNGO側で議題の進め方について議論しまして、協議事項の(2)ですが、他の会合に出られるということで、これを先にしようという外務省側からの提案に沿う形で、先ず報告をして頂いて、その後に協議事項の(2)に入りたいと思います。
 まず報告事項の(1)を開発計画課の方からお願いします。

4.報告事項

(1)保健関連MDGsに関するアジア太平洋ハイレベル・フォーラムの報告

小野:
 保健関連MDGsに関するアジア太平洋ハイレベル・フォーラムの報告をいたしたいと思います。お手元にお配りしました資料について、まず簡単にご説明します。始めの資料が会議概要と評価、次の資料が、その会議で日本が表明しました「保健と開発」に関するイニシアティブの概要、3番目の英文のものが、この会合の議長サマリーです。これは会合でも協議をし、参加者のコメントも入れた最終版です。
 最初の資料に戻りまして簡単に説明させていただきますが、先ず、この会議がなぜこの時期に開催されたかについてですが、ご案内の通り9月には国連ミレニアム開発目標のMDGsに関する中間レビュー会合が控えており、MDGsに対する取組に対し関心が高まっているわけです。特にMDGsの8つの取り組みの中で3つを占める保健分野の重要性が認識されており、それに対する取り組みが、非常に重要な課題になっています。特に、先ほどの話にもありましたけれど、MDGsの進捗という意味ではアフリカが非常に遅れておりまして、国際社会の注目が集まっているわけですけれど、他方アジア太平洋地域も、未だに世界の貧困人口の2/3を占める地域であり、それぞれの国が発展段階に応じた課題に直面しているわけです。そういった背景を踏まえ、今回日本政府がイニシアティブを取りまして、WHOやUNDPとの協力を得て、この地域の保健関連のMDGsに関する取り組みを協議していこうということで開催の運びに到りました。
 こちらにございますように、24ヶ国から副首相1名、保健大臣、財務大臣、天然資源環境大臣など官僚クラスが多数参加しまして、またドナーにつきましても、地域に対するODAの約8割を占める13の主要ドナー国から高官が出席して活発な議論が行われました。日本からは逢沢外務副大臣、西厚生労働副大臣が出席しました。冒頭のセッションにおきまして逢沢副大臣より「保健と開発」に関するイニシアティブについて発表し、参加国・機関より高い評価を受けました。
 「保健と開発」に関するイニシアティブについて簡単にご説明申し上げますと、これは2000年の沖縄サミットの時に発表した「沖縄感染症対策イニシアティブ」の後継として打ちだしたものとお考えいただければいいと思います。2003年に終了したことを受けて、MDGsを念頭に置いて「保健と開発」ということで、より広い見地から保健分野に関し、どのように取り組んでいくべきか、具体的な方針を明らかにしたものです。後日、そのイニシアティブ達成のために今後5年間で50億ドルを目処とする資金協力を行うということを打ち出しております。
 議論の概要につきましては、議長サマリーを読んで頂ければお分かりになると思いますので私の方からはご説明申しあげません。我々としては今回の会合では各国それぞれ発展状況は異なりますが、自国の保健分野のMDGsの取り組みを行っていく上での、成功例ですとか、あるいは国難を抱えている点等を率直にご紹介頂いて、意見交換する中で、自国の取り組みに活かして頂きたいというのが主旨でしたが、他国の参加者からは積極的に自国の施策をご紹介頂き、それに基づいた議論が行われまして、非常に有益な情報になったのではないかと思います。実際会合終了時には各国の代表から今回の会合は非常に有益だったので、これを9月のMDGs達成に向けたアジア太平洋からのインプットとして、是非活かして行くべきだというご提案を頂きまして、我々としても今回の議長サマリーを国連の正式な文章として登録して、アジアからの情報発信ということで広く提示していく予定であります。
 時間的な制約で私からの報告は以上とさせて頂いて、もし資料をご覧頂いたうえで何かご質問などございましたら、私の方に連絡頂ければ、出来る限りお答えしたいと思いますので、宜しくお願いします。

司会:
 関連した議題として(4)MDGs達成に向けた取り組みについてということで、議論を継続してできると思いますが、特に今の報告について、これだけ確認しておきたいというようなことがありましたら、どうでしょうか。よろしいでしょうか。
 引き続き協議事項の(2)アフリカ支援について。これは外務省提案の議題でありますので、外務省の方からお願いします。

5.協議事項

(1)アフリカ支援について

品田:
 国別第2課の品田です。
 アフリカの支援について、最近の動きについて説明させて頂きたいと思います。配った資料の先ずは“2005年は「アフリカの年」”というのを見て頂けますか。この1枚目の紙“2005年は「アフリカの年」”というのは皆さんご存知だと思うのですが、今年は色々アフリカ関連の大きな行事があります。まず日本が今年初めから国連安保理非常任理事国になっています。これがアフリカとどういう関係があるかというと、今国連安保理における議論の6~7割りがアフリカ問題で、アフリカには7つの国連PKOミッションが展開されている。そして4月にはインドネシアでバンドン会議50周年記念が行われて、その時小泉首相が出席しましたけれど、そこで今後の対アフリカ支援の方針を示しました。7月にはG8グレンイーグルズ・サミットが行われて、アフリカと気候変動というのが主要議題でありました。9月には国連「ミレニアム宣言」に関する首脳級会議が行われるということです。
 2枚目はアフリカの現状のごく一部をグラフで示したもので、上の方でアフリカ53ヶ国は世界の28%を占めていて、GDPでは世界のわずか1.8%しかない。下の段になりますと、アフリカには色々な問題がありまして、後発開発途上国の割合としては全世界50ヶ国中34ヶ国を占めている。HIV/AIDS感染者では全世界の67%をアフリカで占めている。アフリカに展開するPKOは7つありますが、経費はアフリカだけで73%を占めている。その内の多くを日本から出しているということであります。次のページには主要ドナーの対アフリカ支援実績推移というのがありますが、日本を含める主要国からアフリカにどの位過去10年間、一番新しい数値はこのグラフで2003年なんですが、その推移を示してあるわけですが、このグラフで申し上げたかったことは、残念ながら日本の対アフリカ支援は、ピーク時においては1995年ぐらいですが、世界で2番目ぐらいの規模を占めていた。ちょうどその後ぐらいから日本のODA予算が年々減ってきてまして、それのあおりもあって、アフリカに対する日本のODAも減ってきている。2003年の時点ではアメリカ、フランス、ドイツなどG7の国の数値を大きく下回って、ベルギー、オランダ等ヨーロッパの比較的大きい国でない国のアフリカ支援を下回っている。これについては色々な見方があって、何も日本がアフリカ支援の一番二番になる必要はないという意見もあるかもしれませんけれど、先ほどのアフリカの現状を見た場合に、果たして日本の対アフリカ支援はこのレベルでいいのかという問題意識はあります。
 それでもう一つここに資料がありまして、日本政府の対アフリカ開発支援という資料。2枚ありますが、今申し上げたような問題意識もあって、G8サミットに向けて小泉総理から以下のようなメッセージをアフリカに送りました。日本はアフリカに対する支援をTICADプロセスを基軸にしてやる。また今後5年間のODA事業量を100億ドル積み増すことを目指します。アフリカ向けODAについては今後3年間で倍増します。アフリカ諸国に対し全債権国中最大級の債務削減を実施します。力を入れてやっていく分野としては、最初は保健分野。保健と開発に関するイニシアティブを実施します。世界エイズ、結核、マラリア対策基金、グローバルファンドですね、そこへの拠出を増額し、当面5億ドルの拠出を行います。それからもう一つ目玉として考えているのは、これは蚊帳なんです。これは住友化学、これは保健分野では近代来まれに見る作で、マラリア対策用の、この蚊帳の中に殺虫剤が塗り込んで、染み込ませてあるんです。有効期間は5年間くらい。これを2007年までに1,000万個、アフリカに。具体的にどの位どの国にというのはまだ決まっていませんけれど。
 次は平和の定着。いうまでもなく紛争が行われていないということは開発の一番の前提で、難民支援とか、DDR、元兵士の武装解除、動員解除、社会復帰の支援です。次のページ、農業、農村開発。アフリカの場合、人口の7割ぐらいが農村で生活しているので、農産物を市場まで運ぶアクセス道路だとか、市場がちゃんと整備されていないとかありますので、そういったインフラ面についてもやっていく。それからアフリカン・ビレッジ・イニシアティブ、AVIですけれど、コミュニティー全体を支援する。それからサックス教授率いる国連ミレニアム・プロジェクトが実施するアフリカン・ミレニアム・ビレッジも支援していく。
 次に貿易投資促進。ODAでどんどん金をつぎ込むだけではなかなか上手くいかないので、民間部門の力を使って、ODAと貿易投資を車の両輪として支援していく。具体的にはここに書いてあるとおりに、アフリカ開発銀行グループと協調して、中小零細企業育成や投資基盤整備などの支援を考えています。最後にアジア・アフリカ協力を強化。アジアのいくつかの国々は日本のODAで発展していて非援助国から援助国になりつつある。
 タイ、マレーシアなどそういった国々と協力してアジアの経験をアフリカに生かす。今後4年間でアフリカに1万人を目標としてアフリカの人々の人材育成を実施する。下にもありますが、青年海外協力隊のアジア版みたいなものを作って、日本だけでなく他のアジアの国々の青年を巻き込んでアフリカに行って、そこで青年を支援する「アジア青年協力隊」を創設する。そういったものも考えています。
 以上が日本がアフリカの開発支援に対する説明と報告です。もし質問がありましたら。

司会:
 質問なりコメントなり、いかがでしょうか?

高瀬:
 我々としてはNGOの「特定非営利活動法人アフリカ日本協議会」「TICAD市民社会フォーラム」「ほっとけない世界のまずしさ」キャンペーン、この3つのNGOが記者会見をやりました。上の方に2005年7月13日とありますが、これはまとめた時であって、実際に新聞記者会見をやったのは7月8日です。これはG8イギリスのサミットに合わせて記者会見をやったわけです。ここにある1.2.3.4.は要約でして、本当は6ページくらいありますけれど。1.2.は品田さんからご説明があったように、0.7%。アフリカに対してはどの位の量が行っているとかですが、今までの日本の非常に少ないあれから言えば非常に格段にこれ以上できないくらい、多分大きな医薬品を入れたと思います。一番私共が今重点を置きたいのは3.です。今までは日本政府、アフリカ政府がODAですから政府同士がお互いにやるというのは当たり前なんですが、その中にNGOとか市民社会の考え方がどの位入っているか、それが非常に問題ではなかったかということで、4行目くらいにありますように「アフリカの市民社会のエンパワーメントと参画の拡大。これを是非拡大をして頂きたい。例えば下にカギ括弧で書き込みましたが、G8諸国のほとんどがODAの10~40%をNGO経由で出しているのに、日本は3%以下。これも今までの経路から言えばしょうがないと思うのですが、これもできれば10%位に、できれば40%くらいになってくれれば、政府とNGOの協調によって一番有効に使いたいという願いが、この3番目のところに強調されております。
 TICAD市民社会フォーラムというのはTICAD I、II、IIIと10年間やってきました。それを今度は、アフリカの研究者とか、コンサルタントとか、民間の企業、JICA、JBICとか、そういう所と全部含めた団体で市民社会フォーラムというのはやってきました。アフリカに対する市民社会白書というのを9月には間に合わないかもしれませんが、今一生懸命書いております。そういうものができましたら外務省の方にも渡しまして、NGOの人たちはどういうふうに考えています。こうしたらどうでしょうかという提言を、日本国内はもとよりグローバルに向かって出したいと考えておりますので、是非ご紹介させて頂きます。

司会:
 今、市民社会フォーラムの方からありましたけれど、これについて外務省の方は如何でしょうか。もうそれは既に計画の中に組み入れているとか、違う考えだとかありましたら。

品田:
 アフリカ支援に限らず、オールジャパンでやることが必要であって、政府だけではどうしようもない部分もある。NGOに対する予算の配分など私は申し上げられませんが、例えば開発に1,000万使うとしたら、その内の一部をNGOの方に使って頂いて、草の根レベル、現地と密着した、実際NGOの中では経験のあるところもあるでしょうし、そういうところで一緒に協力してやって頂くとか、アフリカン・ビレッジ・イニシアティブでも政府とNGOが一緒になってやっていく余地はあると思います。私としては、入れたいと思うし、そうあって欲しいと思う。

城守:
 民間援助支援室の城守です。アフリカ支援におけるNGOの活用ということですが、これは前から私も申し上げた通り、私共がやっております日本NGO支援無償で今年は是非アフリカの方にバイアスを置きたい。是非皆様からの提案を歓迎しているということを申し上げております。
 確かにODAのどの位のパーセントを出すべきかという議論はありますけれど、それは逆に言えば、今皆様に30%出すと言っても皆様の実施体制というものがありますでしょう。それよりは少しでも日本のNGOに頑張って頂いて、それを私共の方で支えていって、より良いアフリカ支援に色々協力していきたいと思っております。

五月女:
 実はこの前に行われた連携推進委員会の際にも出たような話がありまして、ただこの回答はリンクしていないので皆様方と同じ情報を共有出来ないかと思ってちょっとだけ補足しますと、先ほど高瀬さんからありましたように、今アメリカは現在30%。高いときは40%位がODAの中からNGO支援に使われていたということで、日本は3%弱なんですが、そもそもが、政府としてのシステムというか、使う場合のシステムが全然違うので、必ずしもアメリカと同じになるというのは無理なんです。アメリカの場合、政府主導のプロジェクトに対してNGOの方がそれを引き受けて行いたいというのでやるのと、日本のようにNGOの方が自主的な判断で自分のプロジェクトを立ち上げて、それを政府が支援するという形。そのやり方が違うんです。それで必ずしも同じように金額を増やすというのはなかなか難しい。勿論理想的なことは、お互い歩み寄って両方で妥協というか、納得するラインを見つけて行うということであれば、更に増やすということも可能だと思いますので。そういうこともあって、数字だけの比較は危険かなと思いました。
 そしてもう一つは、その時にも問題になったのですが、政府が行うODAプロジェクトに対して、その一部分をNGOが担うということよりも、そのプロジェクトに付随してくる色々な問題点について、その部分でNGOの方々のノウハウとか知見をもって行えるものについて、それを行う。フォローアップすることはできるんじゃないか。例えば私がザンビアにいた時、政府のODAプロジェクトで給水事業、大変大規模な給水事業を、ある地域20万人に水道を提供するというプロジェクトがありましたけれど、その時にも、大型プロジェクトについてはODAが直接やっているんですが、その後の水をいかに有効に住民達が協力しあって使っていくか、保持していくかということについての教育とか、それについての指導というのは、当時CAREというNGOがザンビアにありまして、CAREザンビアとCAREアメリカと、他のNGOも協力してやりました。そこに日本の政府がNGOを無償資金でサポートするということをやっていました。ですから、本体となるODAの前後にNGOの人たちが参加出来るようなプロジェクトがあるんじゃないかということを感じた。そういうことでの連携プレイということが、アフリカでも行えるんじゃないか。
 ですからODA本体に政府とNGOが関わるのではなくて、本体についてはODAで行われても、その前後の教育問題、給水問題、遺漏問題というのは、まさにNGOの方々色々な知識をもっていらっしゃるので、それをフォローしてより良く効果的に行えるようなプロジェクトを立ち上げる。そうすればそれが繋がって、全体とすれば政府とNGOの連携によるプロジェクトの成功ということが期待できるんじゃないかというふうに思います。

司会:
 そのテーマにつきましてはおそらく連携推進委員会の方でも継続的に議論されているということでよろしいですか。TICADの方は連携推進委員会の方に参加していらっしゃるんでしょうか。

高瀬:
 7月8日の前回の会合には出ようと思っていたんですが、たまたまこの記者会見と同じ日に重なってしまったので出られなかったのです。今後はそれにも出たいと思っています。

司会:
 今後はそちらの方でも議題にしていただければと思います。

高橋(清貴):
 グレンイーグルスに行き、アフリカの人たちと色々な話しをしてきました。質問の第1点はG8サミットで発表された支援策の2ページ目、アフリカ諸国の貿易・投資のため、包括的支援を実施しますという記述に関してです。アフリカの人たちが言っていたのは、先ほど五月女さんがかつてのアフリカは豊かだったというようなことを仰っていたと思いますが、彼らも「貧しくさせられた」原因は、植民地時代の負の遺産と世銀・IMFによって進められた構造調整だと言っています。これらによって資源や医療や教育、水などの基本的サービスへのアクセスが脅かされたことが原因です。今でもどんどん制限されてきているそうです。この状況に対し、日本は今回、貿易投資の促進ということを支援コンセプトとして謳っているわけですけれど、これは民営化を促進するということを意味しているのでしょうか。また、それは基本サービスのアクセスの問題にどのように影響を与えると考えていらっしゃるのか。アフリカの人たちに公共サービス、基本的な水や保健、教育へのアクセスということをどうやって補償していくのか、この辺りの政策方針もなければいけないと思っています。そうでないと「教育支援」として学校を建設しても、充分な教員が手当できなければ、教育のアクセスは確保されないと同じことです。この問題についてお考えを聞かせて頂きたいと思います。
 2点目は援助の「質」の問題なんですけれど、今年の3月のOECD・DACで援助の「質」に関してハイレベルの会合がありました。援助の効果を上げるために、相手国政府の政策との「アライメント」が重要だと謳っていて、その中で、特に国別のプライオリティにどうやってドナーがアライメントを良くしていくかという議論がありました。おそらく日本は、これからアフリカ各国の国別援助戦略や援助計画を策定していくと思いますが、単に援助資金を倍増するだけでなく、その金額を効果的に使うために、きちんと「アライメント」を良くして、有効的に進めていかなければなりません。そこで、どういうふうにこれからの国別援助計画策定スケジュールを考えられているのか、教えて下さい。日本政府は、特にプライオリティが高い国はどこなのか。例えば、「ミレニアム・プロジェクト」の報告書の中でジェフリー・サックス、優先的に取り組み国々(Fast Track Countries)を提案していますが、その基準を考える参考にした資料には米国のミレニアム・チャレンジ・アカウントがあります。しかし、それは米国が戦略的に支援したい国を選ぶ基準であり、果たして客観的指標として有効かどうか疑問が残ります。こういうことを踏まえて、日本としてはどの国を優先的に進めるのか。どういう取り組みを優先的にやるのか。日本としての考え方が反映されるであろう国別援助計画の策定予定について教えて頂きたいと思います。

品田:
 私の方で解っているだけお答えしたいと思います。先ず最初のご質問で、水とか保健とかのアクセスをどうやって確保していくのかということですが、これはインフラだけを整備しても、アクセスの問題があって、そのための工夫の一つが、例えば、さっきも出ましたアフリカン・ビレッジ・イニシアティブ。ご存知かと思うんですが、AVIというのは簡単に言うと、アフリカの農村部にコミュニティーがあって、そこに先ずコミュニティーの必要な場所に井戸を掘る。水へのアクセスというのは非常に難しくて、水を取りに行くのに往復2時間3時間かかるので、先ず井戸を掘る。その井戸の近くに小学校を作る。そうすると子供が今まで水汲みの遠くまで行かなければならなかったが、学校に行くついでに水を汲んで帰ることができる。学校で給食を出します。そうすると給食を食べに学校に来る。帰りに水を汲んで帰るという。学校が充実すれば基礎教育はもちろん感染症に関する啓蒙も行える。そういうふうにコミニティレベルで段階的に底上げしていくという支援もあります。
 2番目のご質問。援助の質のあり方。アフリカの国別援助計画ですが、今のところ全世界で国別援助計画を立てているところは19ヶ国くらい。今年作っているのがアフリカではエチオピアとガーナとエジプトの3ヶ国。どういうプライオリティでやっていくかという、なるべく多くの国で国別援助計画を作るにこしたことはないのですが、予算との関係などもあってあまりいっぺんに作ることはできない。援助協調が進んでいる国などは一つの基準になるでしょう。来年以降どうするかということはまだ決まっていないんですけれど、先ほど言われたDACの議論なども踏まえながら考えていきたいと思っています。
 断片的ですけれど、そういうところで。

司会:
 そろそろ時間をかなりオーバーしているので、これからはコンパクトに質問回答して頂きたいと思います。

石川:
 今のところで質問したいんですが、農学の分野では緑の革命というのは歴史的に失敗だったということを学生に教えていて、人口増加、更なる貧困を起こしてしまった、もう少し色々なことを考えて行うべきだったと考えてます。そこでアフリカのケースなんですけれど、その辺の戦略というか、比較的短期間でこういう協力をやりますと、おそらく人口増加が農村部で集中して起こる。更なる問題を引き起こす可能性もあると思うんですけれど、その辺の戦略をお聞かせ下さい。アジアでもインドでも失敗した例があると思うので。

品田:
 難しい質問で、緑の革命という言葉を使って、失敗だという意見があるのは承知しています。しかし一つ言えるのは日本の対アジア支援の経験で、農村、人口の大部分を占めている農村の生活を向上させたことが社会全体の発展に繋がっていったというのは東南アジア諸国には確かにあるんです。そういう意味でここでは、緑の革命といういい方をしています。ご指摘の点は参考にさせていただきます。

司会:
 有り難うございます。今の指摘は今までのアジアにおける援助の成功例をどのように評価するのか、良いところ悪いところどのように考えるのか、大きな問題に繋がってくると思います。けれどこの問題をやっていくと、この何倍かの時間を必要とするので、今日はこの辺で次の議題に移りたいと思います。ですが南課長の方が3時40分くらいに出なければいけないということですので、ちょっと議題の順番を変えさせて頂きたいと思います。
 (3)のMDGの中間レビューについて、簡単に説明して頂いて、それからMDG達成に向けた取り組みについてということで、進めさせて頂ければと思います。
 MDGの中間レビューについてということで、私の方から説明させて頂きたいと思います。
 資料の第3議題、MDGの中間レビューについてというものがあります。これはどういうことかというと、これまでの定期協議の中でもミレニアム開発目標の実施状況を検討するための中間報告というものを日本政府が作成しているかどうかという問いかけがNGO側からされた。実際昨年の第2回の定期協議でも出されて、日本ではどうするか検討中である、資料集めを行っているということでご回答を頂いております。それについて、実際どのようにされてきたのか、先ず確認させて頂きたいというのが一点です。
 もう一つは中間報告というのは、先ほども報告がありました9月に行われるMDG+5のサミットの中で具体的に議論されると思うんですけれども、この報告というのをもし作成されるのであれば、どういう形で作っていかれるのか。その中で是非NGOとの協議の場、あるいは意見を募集する場を持って頂きたいというのが、次の提案の部分です。というのはこれまでのMDGに関してどれだけのことをやったのかということを評価するということが、逆にいうと、これからどういうMDGに向けて取り組みをしていくかにも繋がってくると思いますので、そのためにもどの様な視点で何を評価するのかということについては、是非幅広く意見を聞けるという形で進めて頂きたいというのがこちらからの提案です。
 この資料にも書きましたけれど、現在少なくともベルギー、デンマーク、フィンランド、イギリス、オランダ、ノルウェー、スウェーデン及びECが報告書を出されています。それもネットで閲覧ができるようになっています。これについて外務省としてはどの様なお考えか聞きたいと思います。

(2)MDGs中間レビューについて

小野:
 本件につきましては私の方からお答えしたいと思います。
 現在は作成する方向で作業を行っています。具体的な内容については、まだ形にはなっていない段階にあります。基本的なスタンスといたしましては、これまでの日本の特にMDGの達成に向けたODAを通じた取り組みをファクトして、国際社会に発信していくものとする予定です。ご提案頂きました点につきましては、いわゆる中期政策ですとかODA大綱の時はフォーマルな形で皆さんのご意見を賜る機会を頂いておりますし、またネットを通じたパブリックコメントもありましたけれども、今回の文書は政策文書として、今後の方向性について言及するものということよりは、むしろ事実を事実としてアピールしていくという性格のものにするということで作業をしていますので、そういったフォーマルな形でのパブリックコメントのようなプロセスは計画しておりません。ただ内容的にこういった点に言及すべきだというようなご意見等がございましたら、こういった機会もありますので、ご呈示頂ければ、それを検討させて頂きます。

司会:
 確認なんですけれど、大体いつ頃これは作成されるのでしょうか。

小野:
 9月の会合ですので、8月の後半までにはと思っております。

司会:
 作成されてから公開するんですよね。

小野:
 はい、します。

司会:
 大体いつ頃を目処にしているんですか。私たちとしても、何かこういう点をという形でコメントする。ドラフトでもいいから皆さん見ていた方がし易い。そういう意味でも早めに出して頂くということはできるんでしょうか。

小野:
 まだ作業中でございますけれど、予め先に皆様にお見せするという形でやるかどうか分りません。いずれにしてもできるだけ早く作成させたいと思っています。

高橋(清貴):
 それに関連して少し。1つは日本の提出するカントリー・レポートの目次立てとかアウトラインとか、どういった案件をどういう基準で評価するのかという考え方についてだけでも教えて頂きたい。もう1つは今、来月のサミットではレビューが中心になるということをおっしゃっていましたけれど、逆に、これからはもっとこういうことをしていったらいいんじゃないですかというような「提言」について議論されるのでしょうか。それならば、NGO側からの意見・提案を聞く場というのが必要かと思うのですが、その辺はどういうふうにお考えでしょうか。

小野:
 先ず第1点目なんですが、現在こちらが念頭に置いているような形ですと、個別案件を紹介するものではなく、むしろ例えば昨年の白書の冒頭にありますように、過去の我が国のODAの実績を概観するもので、個別、具体的な案件にまで踏み込んだような形にはしない方針です。
 2番目の点については、9月の会合におきましては、当然日本は今後こういうふうにやっていく、といった方針についても発信することになりますが、今回のこのレポートは、バッグランドペーパーと申しますか、ファクトペーパーと申しますか、そういったものとして考えております。

南:
 後の議題と関連しますけれど、私の方の国際社会協力部の方で考えておりますのは、9月の14日から16日に国連サミットがある。それに向けて当然我々準備をしていくわけですが、市民社会と何らかの対話、パブリックフォーラムのようなものは必要であろう。先般JVCの高橋さんからそういうご提案をいただきましたので、そういう方向で考えております。日にちなんですけれど、今正式に省内決裁を取ったわけではございませんので変更はありえますが、8月30日を考えております。半日使って議論をさせて頂きたいと思っているわけですが、一つやり方で考えなくてはならないのは、今現在国連で行われておりますミレニアム宣言のレビューということであれば、クラスターは4つあります。
 第1は開発、第2は平和と安全保障。第3は人権、第4は国連改革ということになっています。それをそのまま4つのクラスターを分科化していいのか、それとも別の分け方があるのか。例えば、ここにいらっしゃっているNGOの方はそれほど関心がないかもしれませんが、軍縮問題であるとか、そういうクラスターを設けた方がいいのか、それとも安全保障理事会の話は平和と安全ということで話をしていったらいいのか。どういう分け方をしていったらいいのかは、よくよくご相談させて頂きたい。またご意見があれば承りたいと思っております。

司会:
 逆にいうならば、このフォーラムを使ってMDGsの中間レビューについて、勿論ペーパーが出来ていないというのであれば、口頭で頂いて、それを少し議論するようなことも可能性としてあるということなんですか。

南:
 可能性は排除しませんが、その意見についてまだきちんと省内で議論していません。

司会:
 その辺も考えて頂ければ、あるいはMDGについては別途、それ以前に議論の場を設けさせて頂くことも考えていただけば、むしろ良いと思います。

小野:
 報告書自体は、いわゆる会議への対処方針といったような性格のものではないので、その書きぶりを検討するために時間を割いて頂くのは余り適当ではないと思っています。フォーラムで口頭にて説明する等々については持ち帰って検討します。

司会:
 私たちが提起させて頂いたのは、これまでをどう考えるかということと、今後どうするかということの課題につながっていくだろうという理解からです。またこの辺のところは議題の(5)の所にも出てくると思いますので。次の議題に移りたいと思います。

(3)MDGs達成に向けた取り組みについて

南:
 MDGs達成に向けた取り組みについてということで、プレゼンテーションさせていただきますが、MDGsは今年はミレニアム宣言から5年で見直しの年ということで、9月に国連サミットがあります。このように重要な年であるということは、去年あたりから強く認識していたことであります。そこで我々として危機感を持っていたのは、他の国、先進国は今急激にODAを増やしている。しかしながら日本は増えていないどころか毎年何パーセントかマイナスになってきているという状況がございました。
 9月の国連サミットを頂点としていくつかの国際会議があります。4月にはバンドン会議50周年記念としてアジア・アフリカ首脳会議があり、7月にはグレンイーグルズ・サミットがあり、このサミットはかなり早い段階から議長国のイギリスから議題はアフリカと気候変動であるということを言っておったのはご承知の通りだと思います。従いまして、我々が考えていたのは、そこに到る幾つかの国際会議において、どういうものを打ち出していっているかということでありました。打ち出していくにあたって、当然のことながら国際的に評価される、批判されないようなものにしなければいけないということを考えていたわけです。
 一方正直申し上げて1月にはジェフリーサックス率いるミレニアムプロジェクトの報告書が出て、3月にはアナン事務総長の報告書、In Larger Freedomが出て、その2ついずれにおいても、先進国は0.7%のODAの対GNP比を達成すべきであるということがかなり強い提言として出したことはご承知のことだと思います。MDGの見直しと言いながらも、こういう流れの中では結局、先進国はODAを増やしてさっさと0.7%の目標を達成せよというのが国際的な流れになってしまったのが、残念ながら認識であります。残念ながら日本においてはGNP比ということでは0.19%という非常に低い数値であって、それを上向かせるというのは困難なことです。他の国々、イギリス、フランス、ドイツは既に2015年までに0.7%という目標を達成するということで、現実にそのための予算を増やしているという状況がございます。他方、アメリカとカナダは0.7%目標を2015年までに達成することはできないと言っていて、そのコミットはしていませんが、しかしODAの予算は増やしているという状況でございます。
 結局皆様方ご承知の通り、バンドンの会議、グレンイーグルズ・サミットにおいて小泉総理の方からODAの総量を拡大していく、向こう5年間で100億ドル増やす、そしてアフリカのODAについては3年間で倍増するということを発表してまいりまして、とりあえずは日本として出来る限りのことはするということを明らかにしてきました。そのために今のところ国連の場などで、ものすごく強い批判を受けているという認識はしていません。しからば今後でございますけれど、ご承知の通り、今や国連の場において、安保理改革に議論が集中しているところがございます。今正にG4、インド、ブラジル、日本、ドイツが提出している安保理改革案と、アフリカ連合が提出している改革案、この2つを調整できるかどうかというところで議論がなされております。今日が7月20日でございますが、おそらく金曜日22日にピン総会議長の方から9月の首脳会合にむけての成果文書の案というのが出てくることが予想されます。それをもって7月27、28日は国連総会の場で、その成果文書。先ほど申し上げた4つのクラスターを全部カバーするものがおそらく議論されると思います。8月半ばは国連は休みになりますので、8月22日頃から、また国連総会が立ち上がりまして、そこで9月14日から16日に向けてのサミット、そこに向けての議論が最終段階として進んでいくだろうと思われています。
 そこで先ほど申し上げましたパブリックフォーラムでございますが、これから9月に向けての流れの中で日本政府としてどのような考えの基に、どのようなことを9月のサミット、総会で言うのかということで、立場を決めていく上で、NGOの方々、市民社会の方々とのパブリックフォーラムが重要であると考えていて、現在そのための準備をしているところでございます。その中味については先ほど申し上げた通り、分科会みたいなものを設けるとして、その分科会の分け方をどうするのか。それから今一応考えていますのはトータルで4時間くらいなんですが、午後いっぱいを使った形でやりたいと思っていますが、それで果たして十分と思われるかどうか。その辺のことを現在考えているところでございます。今後これはご相談させて頂きたいと思っております。

司会:
 皆さんの中で質問はありますでしょうか。

高橋(清貴):
 ODAが直面する今の問題は、どうやって市民の信頼と支持を得るのかということだと思います。これは政府とNGOで共通するものだと思うんです。しかし、どういうふうにやるのがいいのかというやり方において若干違うようです。例えば、今年9月のMDG+5国連総会に向けて、「貧困問題」をどうするのかということで、日本だけでなく国際的に盛り上がっています。この風は市民に貧困問題に目を向けさせています。この風を利用して市民に、日本のODAが何をしていて、何を改善しなければいけないのか、ということを率直にアピールすることがODAの信頼と支持を得る早道だと考えています。
 7月のG8サミットもまさしくそういった場でもあったわけですけれど、日本はとりあえず提案を出した。そこで質問なんですけれど、今回、ODA量の話が他のドナーでも盛り上がっていて、日本もこれに対して何らかのことを言わなければならないというものがあり、それで苦労して出されたものが「5年間で100億ドル」という「ODA事業量の戦略的拡大」です。この提案を外務省側は一体どう評価をしているのでしょうか。私は誤りを認め、改善案を提示することは、逆効果ではないと思っています。つまり100億ドルの中味はなんなの。国民はきちんと見ていきたい。特に今の財政状況厳しい中で一体何に使うんだろうか。今朝の朝日新聞にもありましたが、もしイラク向け貿易保険の緩和でこれに対応していくのであれば、逆効果ではないでしょうか。
 私はこれまでの定期協議の中でも、イラクに50億ドル、無償で15億ドルを決めたとき、じゃあアフリカへの援助はどうするんですか、という質問をしました。そういうODAの割り振りをすることに市民が納得いくだろうか、何故イラクなのかの説明が十分でないからです。また、イラク戦争のためにODA資金を回してしまうと、もっと国民はODAへの信頼や支持から離れていってしまうのではないでしょうか。100億ドルの中味を開けてみたら、イラクの貿易保険の求債権の放棄というのことで、果たして市民は納得するでしょうか。
 私が関わっている「ほっとけない世界のまずしさ」キャンペーンがありますが、この中でホワイトバンドを1本300円で提供しています。既に100万本近く売れていますが、購買者はどういう気持ちで買っているかというと300円の一部がアフリカの人たちのために使われるんだったらということです。つまり、世界の貧困問題に何らかの形で貢献したいと思っている人たちが少なからずいるのです。これに、政府は応えるべきではないでしょうか。質問は、この100億ドルの中身の使われ方についてどう考えているのか教えて下さい。
 2つ目は、日本は今、援助の金額でアピールしていくことに限界があり、それを悩んでいらっしゃると思います。日本のODAのあり方は私たちNGOも一緒に考えたいと思っていますが、今の時点で外務省が、これは是非国際社会に訴えていきたいというものがあったら教えて下さい。「人間の安全保障」という概念は、この観点から言ってどうなのでしょうか?

南:
 先ず何をアピールしていくかということなんですが、1990年代日本はODAの量ということでアピールできたけれど、現状では出来なくなった。他の国がむしろ量だ量だと騒いでいるという状態にあります。それで人間の安全保障という視点、これはODA大綱にも出ていますので、もう一つのアピールポイントではあると思います。ただ、人間の安全保障の難しいところは、まず第一に、この概念に反対している国が依然としてある。国連の場において完全に認められた概念ではない、というのが一つの欠点である。それから人間の安全保障の一つの最大の悩みは、人間の安全保障ということを訴えた時に何が実現できるのか、そういうことを必ずしも提出できていないというところに一つの疑問がございます。我々はここ一年くらい悩んでいたのは、ODAについてしまった日本国民の一つのイメージ、今高橋さんがおっしゃられたような、一本300円でアフリカの貧困のために役に立つんならといってお金を出す市民がたくさんいるのに、ODAについてはおそらく良い印象を持っていない、というところが問題だと私個人的に思っています。これをどうやって直せるのか。私自身智恵がなくて、経済協力局一同悩んできたところだと思います。
 今回100億ドルが逆効果なのではないか、という点について、これをどうやって実現していくかということについて、私は担当ではないので無責任には申し上げられないと思っています。経済協力局の方で何かお考えなり、説明があれば。

小野:
 私も直接担当しているわけではございませんので、公的な評価ということは申し上げられませんが、ご指摘の通りかなり大きな額ですので、これで何をやるんだろうということは一般の方々が関心をもってしかるべきだし、個人的にはこれが一つの契機として、一般の方のODAに対する関心が高まっていけば、それだけ実施体制なり、効果・効率といった面で、改善していくチャンスになるのではないかと考えています。実際過去何年かに渡りまして、皆様方と相談しながらODAの実施体制も改善しつつあるわけです。
 他方、残念なことにODAに対するネガティブなイメージは依然として根強いというところから、何とかこれを機に逆風としないように我々としても努力していきたいと思います。いずれにしてもODA予算は低迷傾向にあったので、なんとか外務省としてはこれを押し留めたいと、苦肉の策かもしれませんけれど、相当な苦労でもってここまで持ってきたというような次第があります。

和田:
 おっしゃられたような趣旨でODAの量的拡大を測りたいと考えています。それに対して財務省としても財政再建という非常に重要な政策目標があって、そういう観点からODAについて増やすわけにはいかないという向こうの立場もありますので、色々議論した結果、ああいう形になってることなんですけれど、これについて今の段階で評価を下すのは早いと思います。これからシーリングに向けた議論も行われていますし、年末に向けて来年度予算編成をどうするかという議論がずっと続いていくわけで、まさに高橋さんがおっしゃったような点を、今日の新聞に出ていたようなことではいかんのではないかということを、是非市民社会の方からも発信していって頂くことが、我々にとっても非常に助かるということがありますので、是非協力してやっていきたいと思っています。

内海:
 今日は品田さんの話を伺っていて思い出したんですが、前からそうなんですけれど、日本政府のODA、特に我々、感染症対策をやってきて痛感しているのは、予算の量が増えた。今後日本が進めなければならないのは質の問題であって、直線的投資と間接的投資という形でのお話しは解ると思うんですが、日本は間接的投資に非常にお金を使ってきている。ところが肝心の薬であったり、医療スタッフを派遣して現地の人たちを直ぐに助けるという行為については及び腰であった。これを逆に言えばグラフの上で間接的投資がこれだけ大きいものを占めていれば、今後は直接的投資に対して重点的に予算を配分してやっていこうということですね。2005年以降打ち出して頂ければ、かなり国際的信用も得られますし、それから現地の人たちにとって、現場では確かに水とか学校とか大事なんですけれど、目の前でどんどん死んでいる人が多いわけですから、これを即座に緊急部隊を動かして救っていくということに対して日本政府がやってほしい。やってほしいと言うと、人がいないという話が出ます。
 これもSARSの時に問題になったんですけれど、日本においては国際緊急医療、国際医療という活動するための人材を育成するための場所も学科も学校も不足していると思うんです。今までODAというのは外国の人に対して蚊帳を配る。外国の教育をするということばかり言っていたんですが、これは今後議論すべきだと思うんですが、現地の医者を増やすためにお金を使うのか、日本において海外でちゃんと働いて頂けるような医療スタッフをどうするのか。抗エイズ薬を配布してちゃんとした医療を施せる日本人のスタッフを増やすということにお金を使うべきだと聞いていて痛感しました。
 国際協力の医療の面では、日本では優秀な研究者だとか研究所とかあるんですけれど、それに対するプロジェクトがない。一つは学生も現場の医療スタッフもお金が非常に無いし、行ってメリットがあるのかで別かれてしまう。弁護士でいうと地方になかなか弁護士は行かないのというのと一緒で、NGOであれば安くやってもらえるのではないかという話はやめて欲しいんですけれど、やっぱり海外に行って長期間成果がある作業をしようとなると、それ相応の報酬は絶対用意すべきだと思います。これはモチベーションを高めることにあって、優秀な人材が海外で活躍するという根拠になりますから、それは国がイニシアティブを取って頂かないと、NGOにしても人は集めたもののお金が無くて、安く行って感染症にかかりながら「頑張ってね」は無茶です。そこさえ考えを変えて、お金の配分を変えて頂ければ、多分相当の成果は出ると思います。

小野:
 医療部分での直接的な支援の重要性というのは我々も認識しておりまして、今回のイニシアティブでも、ポリオに対する経口ワクチンの供給やはしかに対する予防接種の実施について明示的に言及し、重点的な柱の一つとして位置づけています。今ご提言頂いた実施体制の強化ということは、我々としても痛感しているところでございまして、そういった意味でも政府として考えているのはちょっと迂遠かもしれませんけれど、いわゆる開発教育の強化ということで、情報発信をするだけではなくて、教材にも、例えばODAの役割等々国際協力の重要性といった点を書いて頂くなど、そういった取り組みを通じて、ODAに対するご理解と支持を頂くというのみならず、将来に渡って取り組んでいこうという日本の人材の育成に必要じゃないかと思いまして、そういった方向で開発教育にも力を入れて行きたいと思っております。

内海:
 ただそこのところで抜けているのが、例えばエイズ開発の場合一つとっても、他の国は薬を製薬会社にお金を投じてメリットができるようにしているんですけれど、日本の場合は武田とか大きな製薬会社に対して日本政府が「エイズ開発をやってくれればこれだけメリットがでますよ」と助成金を出せば、方向性はそっちに向くのに実際はやらない。「儲からない」ってやらないわけです。
 そうすると結局日本は持ち玉がないんで、実質的に直線的投資をするネタが無いんじゃないかということに直ぐなっちゃうんで、そっちにお金を出す方が、僕は無駄がないんじゃないかと思います。そういう方には出せないんですか。

小野:
 ODAを使ったエイズ・ワクチン開発への支援は非常に限定的にUNエイズに対する拠出を通じた間接的な支援を行っているのみです。それは費用対効果という意味でも、ワクチン開発支援には莫大なお金がかかってくるわけで、ワクチン開発を直接支援するODAスキームは設けていないという事情があります。我々としては費用対効果の高い施策、例えば抗エイズ薬の供与やコンドームを配るという方向に今までODAを使ってきている。
 ワクチンの開発では厚生労働省ですとか科学技術振興事業団の研究支援等で対応していくことになっています。

内海:
 でも、冒頭では病院とか建物を造っても効果がなかったと認識されているのであれば、その累計と今言った投資額とはかなり違うと思う。小さくても相当な成果が得られると思う。

小野:
 病院を作って効果がなかったというふうに申し上げたつもりはありません。ODAをどのように使っていくのが一番いいのかということで、我々としては検討しながら進めているという状況ではありますが。

司会:
 医療の援助についてまた別に議論されていることがあるんです。ジョイセフみたいな。あそこは日本リザルツが参加することはできるんですか。

初沢:
 (注・GII/IDIに関する外務省とNGOの懇談会)規定がありまして、先ずオブザーバー参加する。明日ちょうどありますので、もしあれだったらオブザーバーとして参加して頂きたい。

司会:
 その場の方が、より詳細な議論ができるというふうに考えてよろしいですか。

初沢:
 その時の議題によって多分異なると思うんですが、定期協議会の方も、予め議題を出して後で聞くということなので、今回関連した議題があればお話しできると思います。

司会:
 南課長が、もうじき出なければならないということで、少し南課長に関係のあるような質問があればいかがでしょうか?実は私自身1つあるのですが。
 人間の安全保障で、JICAにおいても外務省においても言っておられることなんですけれど、これに対して反対している国があるとおっしゃった。どのような国がどのような理由で反対されているんですか。何ができるか提示できていないという部分は分りやすかったんですが。

南:
 反対している国は、いくつかありますが、一番の典型例はキューバです。キューバは例えば国連の文書で人間の安全保障という、この2語が入ってくれば、絶対これは削除しろと言って頑張っております。何故彼らが反対するかというと、結局人間の安全保障という概念は人道的介入を導き出す概念になりうるからダメなんだと言っています。ですから我々の考えている人間の安全保障というのは、「保護と能力強化」であって、人道的介入するところまで持っていこうなんていう考えは無いよと言って、くどく説明はしております。しかしながらキューバの方は「日本はそうかもしれないけれど、他の国がそういうことを考えているからダメなんだ」というふうに言っています。
 今年の9月の首脳会合の成果文書の中に、なんとかこのヒューマンセキュリティーという言葉が入れられないかと思って今いろいろやっております。それがもし入ることに成功しましたら、これはかなりの進展になるのではと思っています。

司会:
 勿論「人間の安全保障」ということで具体的に何ができるかということと、本当はセットでなさないと、その言葉を入れることによって世界のODAがどう良く変わるかということが実際よく分らないと思っているんですけれど、その議論は置いておきまして、他にありますか。

原:
 さっきお金の話がちょっとあったんですけれど、例えば九州で考えれば、ODAというのは税金を使っているということは、みんな知っているわけです。しかし何に使われているか分らないとか、「ほっとけない」キャンペーンもこのお金が全部アフリカに行くというのは勘違いであるとかいう認識があって、例えばG8にしろ日本政府にしろMDGsを考えた時に、実際の当事国とどのように連携をしてやっていくかとか、当事国の意見をどれだけ採り上げて、どれだけ協調してやっているのか見えないんです。やっぱりお金の面だけが強調されてしまって。
 非常にこういうことをやっているんだという内容が踏み込んで見れない、小泉首相が予算を勝手に決めてきたみたいな私たちの税金を使っている。一方の、例えばホワイトバンドは自分の善意を、自分の意思で300円出しているので、例えばアフリカの声ということで、どのように聞いてどのように協調してやっているかということを個別として、全体的な問題として、どう捉えているか教えてください。

小野:
 相手国との政策対話を通じて相手国の発展段階に応じたニーズにあった協力をきちんと実施していくことが重要だと認識しています。これは実施体制の話にも繋がるんですが現地機能を強化するということで、現地の大使館に加え、JICAやJBIC等の日本側の援助関係者がチームを組んで相手国と協議していく体制を強化していくという方向で進められています。現地でのODAタスクフォースの提言を我々としても、より重視していくこととしています。

原:
 それの積み重ねで100億ドルになったわけですか。それとも100億ドルが最初にありきというところなのか。

小野:
 100億ドルということは積み上げではありません。現地からの話があって、それを全部足して5年間で100億ドルという数字が出てきたわけではないので。財政当局とのギリギリの折衝を経て出てきた数字であったわけで、今後どう使っていくかという意味では、今ご提言されたように当然現地の声、相手国政府からのニーズというのをきちんとした検討なしには使われないわけですので、こちらとしても十分留意していきたいと思います。

司会:
 一つだけコメントさせて頂きたいことがあるんですが、先ほどMDGの中間レビューの事とも関係してくるんですが、これまで日本のODAに対して悪いイメージを、マスコミだとかNGOのキャンペーンだとかで生み出されてきたところがありますよね。問題は、それをどう変えていくかということなんですが、それを変えようと思ったら、既にやってきたことは基本的にはOKなんだ。だけどもちょっと微調整して修正してやっていくんだということをいくらやっていても、なかなかイメージはおそらく変わっていかないだろう。実際何が必要かというと、論点となっている部分について確実に事実を確認して、この部分については変えていくんだ。これまでは悪かった、だから変えるんだ。これからより質の良いODAを行うんだという転換をはっきり示さないと、おそらく支援を得られる状況にならないんじゃないかという気がしております。これは企業なんか不祥事を起こしたら必ずそうしますよね。過去のことは決別しますと。過去の調査を行ってこれはまずかったので決別してこうするんだということをやられる。
 ところがこの数年間のODA大綱修正の動き、中期政策の策定の動き、これからのMDGの中間報告の動きもそうだと思うんですけれど、これまでやってきたことに対して、しっかり分析を行って、色々な論点になっていることについて整理をして次に進んでいくという形を取っているとは思えない。
 今日も色々出てきたんですが、直接間接の話もそうですし、アジアに対する支援というのが、どこまで妥当だったのかという議論もそうです。それがずっと疑問となって残っている。さっき高橋さんが出された、それこそ構造調整と例えば人間の安全保障とはどう関係するのか。民営化と水だとか医療だとかアクセスとかがどう関係するのかという議論。色々な議論がずっと積み残されているんじゃないのか。それらをどこかできっちり整理するような事実確認と議論をやっていかないと、いつまでたっても変わらないんじゃないかという気が私はしております。
 先ほどのMDGの中間報告のレビューというのは実はそういう問題意識もあって出させて頂いたということを一言付け加えさせて頂きます。
 後他にどうでしょうか。

和田:
 ちょっと今の点について後で一言言わせてください。

初沢:
 成果文書に関して、7月22日議長から案が出てきて、27、28日で議論するということと、「人間の安全保障」という言葉がはいるかどうかというお話がありましたが、「女性のエンパワーメントとリプロダクティブ・ヘルス・サービス普及の重要性」については、入っていますか?

南:
 リプロダクティブヘルスが入るかどうか正確には覚えていませんが、入るような方向性だったと思います。

初沢:
 それが後日、7月28日以降の会議で話されたのでしょうか。

南:
 リプロダクティブヘルスについては、我々としては反対しておりません。某大国が疑問を呈するかもしれませんが、詳細については承知しておりません。

和田:
 先ほど厳しいご批判がありましたが、これまでの日本のODAになんら落ち度もありませんというつもりはないんですけれど、何か今までやってきたODAが全部問題だらけだと言わんばかりのご意見には反撥を感じまして、一言申し上げたい。ODAは比較的早い段階から第三者評価とかをやって、それを拡充していったり改革をしていったりしなければならない部分はまだたくさんあるんですけれど、それなりの工夫はしてきていますし、会計監査とかもしっかり受けて、問題のあるものは国会で決算委員会で報告されて批判されたりしてきていますけれど、総じて大多数の案件は、それなりに成果を上げ、それなりに現地においても感謝をされ、相手国政府からも日本の援助については高い評価を得ているというのが、我々の認識です。だからこそ途上国はもっと日本がODAの量も含めて貢献してほしいという声をしょっちゅう聞きますけれど、逆に日本がこれまでやってきたことはあまり意味がないので、もうこれ以上日本はしゃしゃり出て来るなという途上国は私の知る限りないので、やや先ほどのご発言はちょっと全体のバランスから言うと、言い過ぎではないかなあと感じます。だからといって、我々が何もしないでこれまで通りビジネス・アズ・ユージュアルでやりますと言っているのではありません。日本国民から見ると、やや外国で行われていることでもあるので、解りにくかったり、我々の広報不足、説明不足というところもあって理解頂いていない部分もあります。それから外務省の不祥事だとかもあって、政府に対する不信感もよく分っています。正に財政が厳しい中で増税をするとかしないとかいろいろな議論がある中で、我々は更にODAの量も拡充させてくださいということをお願いしているわけで、その中で当然自ら改善すべきところは改善し、改革していくところは改革していかなければならないという問題意識も持っています。
 正に過去にやってきたことを評価しながら、その結果を踏まえて変えていくということも必要だということはよく分っています。分っているので、勿論お金や事務的な体制の観点でなかなか思うようになっていない部分もありますけれど、我々出来る限り努力をしながら今後とも国民の皆様のご理解を得られるよう頑張っていきたいと思っていますので、是非引き続き意見交換させていただきながら、協力していければと思っています。

司会:
 私が行ったのはODA自体を批判するということではなくて、むしろODAの色々な論点についてどのように議論をしていたのか、あるいはどういう形で合意を作っていくのがいいのかという提起として理解して頂ければ有り難いと思います。ODAはたくさんありますから、その全てがどうしようもないという議論をもちろんする気はありません。
 ただ色々な考え方が違うだろうということはあるだろうし、その部分をどうやって確認していくのかというプロセス、その部分というのが多分もうちょっとないと、理解がなかなか得られないのかなというのが、一番言いたかったことです。それでご理解頂けたでしょうか。中味について違う意見もお持ちかと思うんですけれど、私としてはそういうふうに考えているという提言です。

石川:
 中国みたいな国がどんどん伸びてきて、アジアのODAが難しくなっていると思うんですが、是非考えて頂きたいのは貧困と環境問題は中央アジアに集中してありますので、その中にはチベット、ウィグル、内モンゴルそういう砂漠化地帯、そういうところの貧困とかありますので、国レベルで貧困かどうかいう問題を捉えないでほしいということです。 
   特に中国みたいにあれほど多くの民族を抱えているところはないので問題は多いですし、これからのアジアとのおつきあいの中で、単純に中国なら中国だけで計算してODAの配分を決めるのではなくて、もう少し大きな目で見て、最終的にはアフガニスタンに繋がるように、そういう視点で戦略的に援助を考えるべきではないでしょうか。

和田:
 今の点も重要なご指摘だと思うんですけれど、さっきの国民の理解という点で申し上げると、今一番国民の理解が得られない分野というのは中国に対する経済協力ということなんです。外務省のホームページなり公聴室といって色々な意見を聞くところがありますけれど、大半の抗議、ご意見のほとんどが「いつまで中国に援助をやっているんだ」というものなんです。で、私は必ずしもその意見と同じ考えではないんですけれど、でも何度ご説明しても、我々が受け取る意見の大多数が、いつまで中国に援助をやっているんだというものなんです。
 石川さんの意見というのはかなり少数派で、そういう状況の中で、さきほど川村さんからも色々どうやって新しいより良い援助を作っていくかという過去の反省に立ちながらやっていかなければならないという、全くその通りなんですけれど、我々としてどういうふうに対中援助について、そういう国民の意見の中でやっていくというのは本当に難しい問題で、むしろ智恵があったら教えて頂きたいところです。

石川:
 川村さんも同じ意見だと思います。説明責任とか、これからどうしなければいけないかと考えるのは、自分達の問題だとも考えているので一緒に考えて行かなければならないという認識です。

高橋(清貴):
 今の話と南さんがおっしゃるキューバの「人間の安全保障」に対する懸念は誰のための援助なのかという点で全く根が同じ話なんです。ODAが「国」ではなくて、人々を支えるものなんだということが、どこまでキチンと分かり易く市民に説明がされていて、そしてきちんとその通り実行できているかということじゃないかなと私は思っています。
 確かにODAは「政府」対「政府」の関係の中で行われるので制約がいくつかあります。しかし、それを乗り越える工夫というのを、考えなければいけない。その点、多分市民やNGOと政府が対話をすることで色々なアイデアも出てくるのではないでしょうか。

内海:
 12月に予算を確定するのであれば、我々の会議でなんらかのコンセンサスが予算に反映されてもいいですし、プロジェクト支援に反映されなければ意味がない。その辺のスケジュリングはいかがですか。

和田:
 コンセンサスを作るのは難しいのではないかと思います。

内海:
 枠組みとか方針の転換とかについて、我々の意見もあったことが出てこないと議論がむだになると思う。

(4)第2回全体会での提案のフォローアップについて

司会:
 この協議会の位置づけに関わることでもあるでしょうし、協議会に出た議論をどういうふうにお互いが確認していくのかという話にも繋がるので、議題の(5)協議会のフォローアップにむしろ関連しているのかなという気がしますので、そちらの方に論点を移させて頂きたい。これからどのようにこの協議会を運営していくのか、2時間でこれだけのテーマをやっておりますが、この短い時間で具体的な提案をだせるように、どうやって改善していくかということを含めてちょっと(5)の議題と次回開催の議題に移っても良いでしょうか。時間は若干のびても宜しいでしょうか。ご協力下さい。
 (5)について提案された神田さんが今日は欠席なので、関西NGO協議会の私の方から説明させて頂きます。
 経緯を言いますと確か2月の全体会において、神田さんからODA政策協議会から政策協議の今後の進め方について提案されました。まず参考資料の後半の3点をご覧頂きたい。
 第1点は協議会を行う上での準備のことですが、NGOの方が改善しなければならない部分がありますが、できる限り早く議題(案)を合意して、事前準備のために、議題の関連資料を外務省から提出して頂きたい。公文書になってなくてもよいので、当日の議論に使える資料を、なるべく早い段階で提出して頂き、具体的な議論を進めていくということ、そして、NGOも議題提出については、早く行うことが重要であると思います。
 第2点、議題として充分に議場で取り上げられなかった部分、必要な部分の議題に関しては、別途会議を開催できないかどうか。フォローアップできるような体制ができないかどうか。
 第3点は、本日の議論についての確認になりますが、いろいろな論点を充分に議論したが納得できない場合は、後日に書面で確認できないかと提案がされています。そうすることから、議論され内容が具体化されていくのではないでしょうか。

和田:
 この場で、政策協議の議論の深化をはかることは賛成です。第1点については、議題もですが、NGOから問題意識と政府に対する質問事項を早いタイミングで頂ければ、事前に対応できます。今のような状態、つまり前日に議題の論点を提出されるような状態では、それに沿った資料を用意することは難しい。早くから事前準備ができれば、資料の交換も可能な範囲で対応できます。
 第2点の充分に議論をつくせなかった場合のことですが、必要であれば、別途会合をも設けることも検討可能です。できる範囲で対応します。しかし、まずはこの協議会を与えられた時間で議論を充実させていくことが先決で、その上で必要があればということだと思います。
 第3点の、協議の公開性の担保については、個人的な意見ですが、率直に言って外務省としては、記録の全面公開には、プレッシャーを感じる時があります。常時ではありませんが、時には、双方でフランクな議論を行い、腹をわって話し合うことにより、互いの考えを解り合えるということもあるのではないでしょうか。ケースバイケースで対応してはどうかと思います。

城守:
 外務省のオーガナイザーの立場から発言させて頂きます。議題に関してですが、ODA政策の場合は、幅広く議論の切り口も多様なので、皆さんの要求がなかなか解らない。 連携推進委員会の場合は、議論が予想できる部分があるのですが、政策協議会は想定しにくい。お願いしたいことは、次回からは、議題の論点を早く絞って頂きたく、だいたいこういうことを議論するということを、少なくとも1週間前にはお知らせ頂きたい。
 今回のように間際では、外務省としても関連資料を作成して提出することはできない。また、2時間枠の議論の場が効果的に進んで行かないと思う。
 又、今回から、配布資料についてもHPでクリックして頂ければ、全文が読めるように掲載できますがどうでしょうか。

司会:
 掲載については、NGO側では基本的には問題はありません。他に、関連してありますか?

熊岡;
 本日の議論テーマからはずれますが、今までODA政策協議会で議論されてきた、イラク復興支援について質問します。6月下旬の外務省の発表でイラク復興支援において15億ドルの無償資金援助を使い切り、有償資金の段階に入るという発表がありました。
 JVCは、昨年4月までイラク国内で活動していて、今は、ヨルダン側から国境越しに支援を続けています。イラク一国で、またあの悪い治安状況の中で15億ドルを使い切るというのはたいへん難しいこと、あるいは不可能にちかいことだと思います。具体的にどのように使われたか詳細に、どの担当課に行けば資料をえられるか教えて頂きたい。外務省ではどの担当課で聞けばよいのでしょうか。

司会:
 いかがでしょうか。

和田:
 国別開発協力第2課の品田さんに、今の質問について対応するように伝えてください。

熊岡:
 では、改めて外務省を訪問します。

5.第2回ODA政策協議会の開催について

司会:
 外務省からも前向きな議論がありました。これからNGO側では、より豊かな議論ができるようODA政策協議会の参加者MLを活用して、事前にどういう議論が出そうか、それに関連して他の方から質問がないかどうかということを少し集めるような形で、なるべく早く外務省の方に議題の論点をお伝えできるようにNGO側も頑張りましょう。皆さんのご協力を宜しくお願いします。
 最後の課題に移ってもよろしいですか。第2回ODA協議会の開催についてですが、これは、榛木さんのほうから、これまでの議論を紹介して下さい。

榛木:
 2004年2月に初めての地域会合を開催させて頂きました。その後、民間援助支援室の藤井さんとも話し合い、一年に一度の地域会合を外務省も進めて頂くとのことで、できれば3回ある中の第2回を地域会合として開催してはどうであろうかと案を話しておりました。
 次回は第2回目になりますので、NGOといたしまして、開催地域の候補地を絞りまして、開催の可能性をNGO福岡ネットに問い合わせましたところ、開催受け入れが可能であるとのメールが今届きましたので、ここで報告いたします。もし宜しければ、第2回を、地域会合ですのでNGOが担当するということで、お考え頂ければと思います。
 ただ、この政策協議の議題に関しましては、重要な議題がありますので、その議題との関連と、地域会合になりますと、外務省の担当官が参加されるかどうか制限があるので、その判断は平行して頂ければと考えております。いかがでしょうか。

原:
 NGO福岡ネットワークの会合が、本日の夕方に福岡の事務所で運営委員会があります。
 但し事務局サイドとしては今連絡が入って、一応受ける形で話を進めるということで連絡があったことをお伝えします。

城守:
 次回、福岡ということで我々も調整させて頂きますけれど、地方でやるということですからNGOの主催ということ順番を変えて頂きます。第3回目は外務省がまたやるということにさせて頂きたいのと、おっしゃられたようにだいぶ遠いので外務省側のメンバー全員が移動できるとは限りません。その辺はNGOの方でもご配慮頂いて、非常に重い会合にするというのであれば次の会合にして頂くとか、ご配慮頂きたいと思います。私共の方でもそういうことで検討させて頂きたいと思います。

6.閉会:

司会
 これで2005年度第1回ODA政策協議会を終わりにさせて頂きたいと思います。この協議会は3年目になります。今までの議論を踏まえてより豊かなものに協力しながらやっていけたらと思っています。ご参加、ご準備して下さった皆さん有り難うございました。

以上


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