ODAとは? 国際協力とNGO(非政府組織)

2004年(平成16年)度NGO・外務省定期協議会第3回ODA政策協議会・議事録

※NGO:非政府組織(Non-Governmental Organizations


日時 平成17(2004)年2月14日(月曜日)13時00分~15時00分
会場 大阪NPOプラザ
司会 外務省民間援助支援室 中野首席事務官

1. 開会
2. 五月女NGO担当大使の挨拶
3. 出席者自己紹介
4. 報告事項
(1)新ODA中期政策について
(2)アチェへの渡航に関する注意喚起
5.協議事項
(1)イラク復興支援について(30分)
(2)スマトラ島沖地震・インド洋津波災害支援について(30分)
(3)ODAの情報公開について(15分)
(4)対中ODAについて(15分)
6. 次回協議会の開催日程について
7. 閉会

配布資料:

1. 議事次第
2.論点
3.新ODA中期政策の策定に関する関係各方面からの意見聴取(主な実績)
4.政府開発援助に関する中期政策
5.スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害
6.防災協力イニシアチブ(概要を含む)
7.ODAとNGO(パンフレット)
8.防災分野における日本のODA(パンフレット)

出席者リスト 合計:36名

<外務省> 計:5名

1.五月女光弘 NGO担当大使
2.和田充広 国別開発協力第一課長
3.中野正則 民間援助支援室 首席事務官
4.正本謙一 国別開発協力第二課 課長補佐
5.藤井郁子 民間援助支援室 外務事務官

<オブザーバー> 1名

川路賢一郎 JICA大阪所長

<NGO側> 計:30名

1.荒田 有 ネパール教育支援ミトラ会
2.伊藤道雄 特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター
3.今井高樹 ODA改革ネットワーク・東京
4.今地裕美子 財団法人 大阪YWCA
5.馬谷憲親 ODA改革ネットワーク・関西
6.大野翔太郎 特定非営利活動法人 関西NGO協議会
7.岡島克樹 特定非営利活動法人 関西NGO協議会
8.加藤良太 ODA改革ネットワーク・関西
9.川村暁雄 特定非営利活動法人 AMネット
10.神田浩史 特定非営利活動法人 関西NGO協議会
11.黒沢健二 社団法人 日本国際民間協力会
12.後藤裕己 ODA改革ネットワーク
13.小林知津 チボリ国際里親の会
14.柴 和見 財団法人 大阪YWCA
15.大同敏博 ネパールNGOネットワーク
16.太平満恵 社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本大阪事務所
17.橘 秀郎 ODA改革ネットワーク・関西
18.横山浩平 社団法人 アジア協会アジア友の会
19.西井和裕 特定非営利活動法人 名古屋NGOセンター
20.平田 哲 特定非営利活動法人 アジアボランティアセンター
21.藤井大輔 NGO福岡ネットワーク
22.藤本伸樹 財団法人 アジア・太平洋人権情報センター
23.三井みどり 特定非営利活動法 人関西NGO協議会
24.三牧建一  ODA改革ネットワーク・関西
25.森 祐次 農業・農村開発NGO協議会
26.八代多恵子 ODA改革ネットワーク・関西
27.山本知恵 財団法人 大阪YWCA
28.和田みのり 財団法人 大阪YWCA
29.宮下和佳 特定非営利活動法人 関西NGO協議会(事務局)
30.榛木恵子  特定非営利活動法人 関西NGO協議会(事務局)


<議事録>

<敬称略>

1.開会


中野(司会) 
 それではこれより平成16年度第3回ODA政策協議会を始めたいと思います。
 本日司会を務めさせて頂きます民間援助支援室の中野と申します。どうぞ宜しくお願い致します。それでは、まず五月女NGO大使よりご挨拶を頂きたいと思います。

2.五月女NGO担当大使のあいさつ

五月女:
 外務省NGO担当大使の五月女です。本日は16年度第3回目のODA政策協議会を、大阪にて開催することができ、大変うれしく思っております。3回に1回ぐらいは東京を離れて、こういう協議の場がないだろうかということを随分前に提案がありまして、それが実現し始めまして、昨年の11月には名古屋で連携推進協議会ということで行われました。今回、平成16年度の最後の行事というか、政策協議では最初であり最後であると、また来年度には新たなものがスタートいたしますけれども、そのような感じで、両者の間での協議の場が広がっているのは大変喜ばしいことだと思っております。
 今年は、昨年、いろいろとお話しした中で、昨年は、ODA50周年記念、コロンボプランに加盟して、日本が援助国になってから50周年経つわけです。去年はそういったメモリアルというか、節目の年であるということを言っておりましたが、今年も、実を申しますと、新しい日本がスタートしてから60年、ちょうど還暦を迎えた日本ということでございます。
 それと、ひとつは、我々と非常に関係のある国際連合、国連の60周年ということで、日本というものは国連とともに歩んできたということでございまして、政府にしてもあるいはNGOの方々にしても、国連との連携というのは切り離せないものになってきているわけです。去年から今年にかけて、いろいろな事件、出来事、悲惨なことが起こりました。国内では勿論、新潟の中越地震がありましたし、それから、スマトラ沖の大津波、まさに原爆が落ちたに等しいような大被害を出しているわけでございますけれども、そのようなことが起こってきております。
 しかし、その中で、政府も非常にいち早くJICAからの国際緊急援助隊が、どこの国よりも早く出発して大変に活躍していただいたということは報道されていますし、大変喜ばしいことだと思っています。
 それからまた、日本のNGOの方々が、やはりいち早く、その現場を持っていらっしゃるNGOの方々も、現場に出かけていって活躍されたと、と同時に、国内で募金活動をされまして、そういった活動を支援されるNGOの方々がたくさんおられたということで、悲惨なことではありましたけれども、日本のNGOの方々あるいは政府の活躍の場がたくさん見受けられたということは、喜ばしいことだと思っております。
 昨年、一昨年に水の問題で随分議論されたわけですが、水というものがいかにやはり人間を不幸にするものであるか、あるいは人間を幸せにするものであるかということを非常に痛感いたしました。私も京都での国際水フォーラムのときに勉強したんですけれども、御承知のように、地球上に97.5%の海水があって、淡水が2.5%しかない、2.5 %の淡水というものは人間が生きていく上になくてはならないものである。海水というものも、ある意味では、そこからの海産物というのは人間にとって大事なことでありますけれども、同時に、今回のような悲惨な状態、人類を不幸な目に遭わせるような場面もある。ですから、我々はもう少し水について真剣に考えなくてはならないだろうなということを感じました。そのようなこともございまして、日本のそういった取り組み方として、いろいろと考えさせられることがございました。
 御承知のように、日本のODAの予算というものは、年々下がってきておりまして、現在、勿論第2位と言っていますけれども、そのうちにまた抜かれるかもしれない。ODAなんて少なくてもいいのではないかというけれども、しかし、ODAの予算の中には、国連との連携のお金もあれば、NGO支援のお金もあれば、無償資金もあれば、いろいろなもろもろのものを全部含んでおりますので、ODAが非常に不透明なところがあってけしからぬと言ってしまっても、それでは、ほかの部分までが同じような批判を受けることになってしまう。やはりそこは分けて、ODAというものをもっと真面目に真剣に考えて、それがいかに有効に使われるかということを考えていかなくてはいけないということを思うわけです。
 その中で、幸いにして、NGO支援のための無償資金、草の根無償というものはどんどん増えておりますので、それを我々といたしましては、皆さんといろいろと御相談しながら、使いやすく、そして、効率のいい使い方をするという方に話を持っていくということが大事ではないかと思っております。
 そんなことで、やはりこれまでのODAの考え方というのは日本の経済が右肩上がりをずうっと成長しているときにつくられたものがあったわけですけれども、今みたいに、やはり経済が停滞してしまっている、あるいはODA予算が下がっているというときには、やはりそこは見直していくということを考えなくてはならない時期に来ているのではないかと思うわけです。
 そんなこともありまして、私は、日本の顔の見える国際協力というものは、政府とNGOとの連携で、非常に効果を上げるものだというふうに信じておりますので、そういう面からいたしますと、このような会合が、東京・大阪・名古屋等の各地で開かれて、皆様からの意見を吸い上げて、かつ政府の方からもいろいろな面で皆様に御説明して、そこに風通しのいい状況をつくり出すということが非常に大事ではないかと思うわけです。
 そんなこともございまして、今日一日、2時間という短い時間ですけれども、忌憚のない御意見の交換が行われて、よりよきプロジェクトを立ち上げるあるいは政策提言がなされることを期待しております。
 簡単でございますけれども、最初に、一言ごあいさつを申し上げました。どうもありがとうございます。

3.出席者自己紹介

司会(中野)
 それでは、続きまして、出席者の自己紹介ということで、まず、私、本日の司会を務めさせていただきます、外務省経済協力局民間援助支援室の中野と申します。よろしくお願いいたします。

和田:
 経済協力局の国別開発協力第一課長の和田と申します。
 国別開発協力第一課というのは、昨年の8月の機構改革で新しくできた課でございまして、アジア地域に対する援助を担当しております。前職は、調査計画課長というところで、分野別の援助政策などを担当しておりました。

五月女
 今、ごあいさついたしましたけれども、現在は、外務省参与でNGO担当大使をしております五月女でございます。以前は、アフリカのザンビア大使、マラウイ大使をいたしまして、日本で初代のNGO担当特命全権大使ということをさせていただきましたけれども、その後、身分が変わりまして、外務省を離れまして、外務省参与ということで、そしてまた再びNGO担当大使を拝命いたしまして、皆様とこうやってお目にかかることになっています。どうぞよろしくお願いします。

正本:
 外務省経済協力局国別開発協力第二課の正本と申します。国別開発協力第二課は、先ほどの第一課と同じ時期にできまして、アジア以外の経協を担当しているというところでございます。よろしくお願いします。

藤井:
 外務省の民間援助支援室の藤井と申します。NGOと外務省の定期協議会の外務省側の窓口をしております。今後ともよろしくお願いします。

川路:
 JICA大阪の所長の川路と申します。皆さんとは、先ほど行われたワン・ワールド・フェスティバルで一緒に、共催してやらせていただきました。今後ともよろしくお願いします。

太平: 
 アムネスティ・インターナショナル日本大阪事務所のタイヘイと申します。よろしくお願いします。アムネスティ自体はそんなにODAについては直接かかわることはないのですが、こういう機会はめったにないので貴重な機会だと思いますので、参加させていただきました。
 今、お話がありましたように、ワン・ワールド・アムネスティにも参加しております。水フォーラムも私参加してまいりましたので、今日もなかなか興味深い話を聞けると思います。よろしくお願いします。

三牧:
 ODA改革ネット・関西の三牧と申します。よろしくお願いします。

黒沢:
 京都から来ました日本国際民間協力会の黒沢健二と申します。よろしくお願いいたします。

橘:
 名簿16番の橘秀郎と申します。どうぞよろしくお願いしま

荒田:
 ネパール教育支援ミトラ会の荒田と申します。どうぞよろしくお願いします。

岡島:
 関西NGO協議会の岡島と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 仕事は、大谷女子大学で教鞭を取っております。どうぞよろしくお願いします。

加藤:
 ODA改革ネットワーク・関西の加藤良太と申します。

八代:
 同じくODA改革ネットワーク・関西の八代と申します。よろしくお願いいたします。

伊藤:
 東京から参りました国際協力NGOセンター・(JANIC)伊藤です。よろしくお願いいたします。

西井:
 名古屋NGOセンターの西井です。よろしくお願いします。

森:
 東京から参りました農業・農村開発NGO協議会の森と申します。よろしくお願いします。

神田:
 関西NGO協議会の神田です。今日は、中野さんを補佐する形でもって、NGOの中での不規則発言を整理するという、憎まれ役を仰せつかっておりますので、皆さん、よろしくお願いいたします。

馬谷:
 ODA改革ネットワーク・関西の馬谷と言います。

藤本:
 大阪を事務所に活動しておりますアジア・太平洋人権情報センターの藤本と申します。よろしくお願いします。

平田:
 アジアボランティアセンターの平田です。関西NGO協議会代表理事もやらせていただいております。

川村:
 AMネットの川村と申します。よろしくお願いします。

後藤:
 済みません。不規則発言の大本であります後藤であります。基本的には私は地球の生き物だと思っていますので、以上です。

大同:
 ネパールNGOネットワークの事務を担当しております大同と申します。よろしくお願いします。

今井:
 ODA改革ネットワーク・東京の今井と申します。よろしくお願いします。

今治:
 大阪YWCAのイマジと申します。よろしくお願いいたします。

藤井:
 福岡から来ましたNGO福岡ネットワークの藤井と言います。よろしくお願いします。

大野:
 関西NGO協議会の大野と申します。よろしくお願いします。

山本:
 大阪YWCAの山本です。よろしくお願いいたします。

横山:
 アジア協会アジア友の会の横山です。よろしくお願いします。

柴:
 大阪YWCAの柴と申します。よろしくお願いいたします。

司会:
どうもありがとうございました。

4.報告事項

(1)新ODA中期政策について


司会:
 それでは、議題4の報告事項に移らせていただきます。外務省側より2つ報告事項がございます。
 まず最初に、和田課長から新ODA中期政策について報告をお願いします。

和田:
 中期政策でございますが、お手元の配付資料の中に、「政府開発援助に関する中期政策」という冊子が配られていると思います。それから、併せて、「中期政策の策定に関する各方面からの意見聴取の実績」という1枚紙があると思います。お手元の中期政策につきましては、2月3日の対外経済協力関係閣僚会議での了承を経まして、2月4日に閣議報告がされました。それを受けて、正式に策定、公表という段取りになっております。
 今回のODA中期政策の策定に当たっては、当然のことながら、政府の部内でのいろいろな協議を行いましたけれども、この1枚紙に示されておりますように、ODA総合戦略会議における議論を行いましたし、そのほか、NGOの皆様や、経済界の皆様との意見交換、更には、公聴会、そして、パブリックコメントのプロセスということで、可能な限り幅広い国民の皆様の参加を得ながら透明性の確保に努めて作業を行ってきました。
 この過程で、いろいろNGOの皆様からも御提案や御意見をいただいたわけでございますけれども、昨年12月に東京と大阪で公聴会を行いまして、この公聴会には合せて延100 名以上の方に参加をしていただきまして、活発な意見交換が行われました。
 大阪での公聴会の開催に当たりましては、関西NGO協議会の多大な御協力をいただいたというふうに聞いております。この場を借りて御礼を申し上げたいと思います。
公聴会の記録を公開せよという御意見もいただいておりまして、皆さんのチェックは得ておりませんが、外務省の文責の下で議事録を作成しまして、1月27日にホームページに掲載をしております。
 それから、パブリックコメントにつきましても、しっかりやるようにという御意見も多々いただいておったわけでございますけれども、昨年の12月3日から今年の1月7日まで、約1か月の間ですけれども意見募集を行いまして、結局、個人、団体、いろいろありましたけれども、75件の御意見をいただきました。それで、外務省といたしましては、寄せられた御意見に対する外務省の考え方というのをできる限り詳細に文書にいたしまして、2月3日に外務省のホームページの方に記載をしております。小さな字の表のものだったと思いますけれども、42ページに及ぶ文書となりまして、今日は配付はいたしておりませんけれども、大綱のときのプロセスでも、いろいろ回答が不十分だというような御指摘もいただいたこともありましたし、また、この中期政策のプロセスでもいろいろ御意見をいただいたことを踏まえまして、内容ごとに整理はいたしましたけれども、原則としてほとんどの御意見についてできる限り明確な理由を付けてお答えをするというふうな点で努力をいたしました。
 それから、原案についてもパブリックコメントの直前に出して、1か月でコメントしろということではなくて、なるべく早くきちんと公開をせよという御意見もいただいておったこともありまして、ODA総合戦略会議の議論などの過程も公開をしているわけでございますけれども、11月8日の段階で、パブリックコメント、さっき申し上げたように12月3日からやったわけですけれども、その始まる1か月ほど前の11月8日の段階で、その原案をホームページに公開するということも行いましたし、パブリックコメントの始まる前の段階から、NGOの皆さんとの意見交換会というのもやってきたということで、大綱のときよりも改善をした点、努力をした点がありますので、この点については御理解をいただければというふうに思います。
 それから、やや関連の問題ですけれども、中期政策策定のプロセスでODA総合戦略会議の議論についても、しっかり公開するようにというような御意見をいろいろいただいたわけですけれども、それにつきましても、これに限ったことではないんですけれども、議事録とか配付資料などできる限り迅速に公開するように努力をしてきたということでございます。
 中期政策の本体の中身については触れませんけれども、プロセスについてお礼とそれから若干の御報告ということで、以上、御報告とさせていただければと思います。

司会:
 これはどうしましょうか、御質問があれば、この段階で受け付けましょうか。

神田:
 今、和田課長の方から報告いただきましたように、中期政策ができていきまして、内容については、ここで議論するものでもないですので申しませんけれども、これだけ丁寧に、特にパブリックコメントに対して対処されたというふうなことに対しまして、ここでの議論というものが生かされてきたということで一言ちょっと申し上げたかったということです。今後も、こういった重要政策の改定におきまして、同様の措置がとられるというなことを望んでいきたいと思いますので、ぜひそういったことというのは、予算ですとか要員配置ということなども含めて、外務省の方で対処されていければ、より私たちも意見を言う、言いがいがあるというものになっていくのではないかと思います。
 提案、提言が余り採択されていないという不満は当然あるわけですけれども、それは、今回つくられました対照表を見ながら、私たちとしてもどこが至らなかったのかということを分析していくという必要があるなとも感じています。あればそれができるということで、今後もより前向きな政策議論の素材になっていくという意味での評価をいたしているということを申し上げたかった次第であります。

司会:
 伊藤さん、お願いします。

伊藤:
 私は、ODA総合戦略会議の委員も務めていますが、その会議でODA中期政策が取り上げられたとき、相手国のNGOの参加がとても大切だということを訴えました。しかし、その考えは、中期政策の草案には反映されませんでした。そして、昨年の11月18日、中期政策が最終的なものになる前ですが、外務省の依頼でJANICが外務省とNGOの意見交換会を開きましたが、そのときもいくつかの団体から、相手国の現地NGOや地域住民の参加の必要性が提案されたんですね。
 そのときに出された提案の資料が手元にあるんですが、財団法人オイスカの場合は、外務省が作成した中期政策案では、どこまで現地の実態や地域住民の基本的なニーズを汲み取っていけるか不安であり、もっと踏み込んだ表現やその他のシステムづくりについて言及し盛り込むべきではないかと提案しており、ジャクセスの方たちも住民参加の重要性を訴え、ODA改革ネットの方も、住民参加の確保を明記すべきと提案され、それから、チェチェンの子どもを支援する会やWE21ジャパンも、現地側によるモニタリング・システムの導入が必要だと提案されたんですね。NGO関係者がこのように現地側のNGOや住民参加を提案したんですが、今回まとめられた中期政策にはその提案が反映されていない。
 そこで、お尋ねしたいのですが、これはどういう理由または考え方があって受け入れられなかったのか、そして、NGO側によるこの提案は、外務省の中で実際取り上げ議論されたのかどうかについてご説明願いたいと思います。

司会:
 ほかに何かございますか。とりあえず、皆様の御意見または御質問を聞いた上で、後でまとめて答えていただきたいと思います。
 ほかにございますでしょうか。よろしいですか。

和田:
 まず、神田さんの方から、ある程度政府の努力を評価するという趣旨の言葉をいただきまして、ありがとうございました。今後とも努力していきたいと思っております。
 次に、伊藤さんの方からコメントをいただきました。まず、済みません、私直接の担当でなかった部分もあって、必ずしも完全なお答えはできないかもしれないですけれども、まず、現地の、日本の国内だけの意見聴取ではなくて、外国の住民の人とか、幅広く相手国政府とか、いろいろなところからのインプットもちゃんと得るべきであるという御意見、多々ありますし、我々もそれができれば勿論いいなとは思うんですけれども、なかなか現実問題としてそれをやるだけの体制がないですし、最終的にこの中期政策の出来上がったものについての英訳というのはつくっていまして、これはこれからの在外の大使館とか、そういったところにも送りまして、相手国政府にも提示をし、できるだけ日本の考え方を説明をする努力をしようと思っています。
 その説明をする過程で、勿論、相手国政府からいろいろなコメントや意見や次にこういうことをやるときはこういうふうにやってほしいとか、いろいろな意見が出てくることはあると思うんですけれども、そういったことは、当然きちんと蓄積をして、将来の援助政策の立案に生かしていきたいと思っている次第です。これは、大綱のときも同じようなプロセスを踏みまして、大綱をつくった後、相当いろいろなところで大綱の考え方を説明しましたし、DACの会議などでも紹介をいたしましたし、それに対して、相手国政府というのは、これはこうすべきだああすべきだという意見は実は余り出てこなかったというふうに記憶しておりますけれども、それでも、いろいろな意見交換をやっておりますし、そういったことも踏まえて、今度中期政策をつくっているわけなんですけれども、今回の中期政策についても、したがって、今後、きちんといろいろ各界、外国政府やいろいろな人と意見交換をやっていきたいと思っております。
 それはそれでもっと早く、中期政策をつくるときからやればいいじゃないかという御意見は勿論あると思いますけれども、ちょっとそこまではなかなかできなかったということです。
 中期政策の中に、今探しているんですけれども、例えば、2ページの人間の安全保障の視点ということで、真中辺に、「人間の安全保障の実現に向けたアプローチ」ということで、人々を中心に据え、人々に確実に届く援助をしましょうということが書いてあるわけですけれども、そういったところの2行目などでも、ODAの政策立案、案件形成、案件実施、モニタリング・評価に至る過程でできる限り住民を含む関係者との対話を行うことにより、人々に確実に届く援助を目指すといったようなことも書いてあります。
 我々も、援助をやるに当たって、いろいろな人の意見を聞きながらやっていきたいと思っていますし、その中には当然相手国の住民の御意見というのも当然含むという考え方でやっております。勿論、相手国の政府の意見も聞きますし、それから、ここには直接書いてなかったかもしれませんけれども、JICAやJBICも環境社会配慮ガイドラインということでいろいろな環境社会配慮の手続を整備しておりますけれども、そういったところでも、環境などに大きな影響を及ぼすような案件については、相手国、現地において事前に公示というか、こういったことをやりますよということをインターネットなどで公表し、それからまたいろいろ現地の住民の人たちとの説明会といったようなこともやるように努力しておりまして、そうした考え方は、この中期政策の中にも含まれているというふうに考えている次第でございます。

伊藤:
 どうもありがとうございました。私だけ時間を取ってはまずいのであと2分ほどで終わりますが、ODA中期政策の10ページから12ページに書かれてあります「効率的・効果的な援助の実施に向けた方策について」には、そういった、今、和田課長がおっしゃったようなことがどこにも書かれていないんですね。
 要するに、現地のタスクフォースの強化、大使館とJBIC、JICA等の強化を意味しますが、これと、もう一つは、現地援助コミュニティー、ここには国際機関とか先進国のNGOとの連携がうたってあるんですが、地元のNGOとの連携については触れられていないんですよ。結局、日本の援助の方策の方針では、援助する側の視点だけしか出ていない。そこで、私が聞きたかったのは、なぜ、現地住民・NGOの参加という考え方が中期政策では盛り込められなかったのか、その背景となっている考え方、そこを伺いたかったんです。
 ちなみに、第1回目のODA中期政策が、5年ほど前に作成されたときに、NGO側も非公式に招かれていろいろ提案しましたが、その結果、政策の文書には23か所ほどNGOという言葉が出てくるのですが、それは現場レベルでの(日本の)NGOとの連携ということで、政策レベルではNGOとの連携について触れられていなかった。それが今回のODA中期政策では、日本のNGOとのより積極的な連携をうたい、前進はしていますけれども、相手国のNGOの参加とか、連携については一言も触れていない。そこで相手国NGOの参加を明記されなかった日本政府の考え方についてお聞きしたかったのです。

和田:
 はっきり書いてないという御意見だと思いますが、11ページ、今、御指摘のあったところの「現地援助コミュニティとの情報交換等も行う」の前に、2行目なんですけれども、「現地関係者を通じて、現地の経済社会情勢などを十分把握する」と書いてあって、この現地関係者というのは、現地のいろいろなNGOを含む、住民も含む現地の人たちの意見などをちゃんと聞いて、その現地における経済社会情勢、それから援助ニーズというか、そういったものをできるだけしっかりと把握するようにという趣旨でございまして、勿論、これでは不十分だという御意見だと思いますけれども、決して政府外務省として現地のNGOや住民の意見を聞かないという考え方を持っているわけではございません。中期政策のここの部分で書いてあることは、特に、現地機能、我々の政府の現地の出先機関の機能強化をいかに図るかという視点でここのセクションを書いているわけで、その中で、若干、今、御指摘のあった部分についての重点が必ずしも明確ではなかったということではないかと思います。
 いずれにいたしましても、我々の体制上の問題もあって、なかなかどこまでできるかという問題はあるんですけれども、姿勢の問題として、現地のNGOの人たちと会わないとか、意見を聞かないというような考え方でやってはいないということは御理解いただければと思います。
 以上です。

司会:
 それでよろしいですか。

後藤:
 立ち会ったのであれなんですけれども、一体何のために何を議論しているのかというのが、すごくわかりにくい。それで、問題の1つとしては、こういうプロセスが、だれが議論して、だれがどういう形で意見を述べたらいいか、少し市民の立場から見えにくい、それも明らかにしてほしい。
 それで、実際に、最終的には外務省が責任を持って出されるのですから外務省あるいは日本政府の責任なんでしょうけれども、実際にこれは担当する人がほとんど、かなり決めちゃうわけですね、文書や何かも。文書がどうのこうのというより問題はともかくとして、実際に見ていてすごく矛盾する。例えば例ですよ、持続的経済成長と、さっき成長が続くような時代ではないじゃないと、日本がそうなっているのに、じゃあ、発展途上国に持続的成長を求めるのかという原理的な問題とか。原理的にこれをしていたらよけい差別というか貧富の差が激しくなるのではないかということに関して、ちゃんと議論できるような状況で設定されたかということを、例えば、実際にした議論は、我々と意見が対立するような人が来なくて、あ、そうですね、しかたがないですけど、というようなことで、少なくとも外務省の責任としては、議論が対立するような立場の人をちゃんと呼んできて、ちゃんと議論するような場を設定してほしい。それだけを述べておきます。
 以上です。

司会:
 今のは御要望事項ということでよろしいでしょうか。
 ほかにございますか。もしなければ、先に進ませていただきます。

(2)アチェへの渡航に関する注意喚起

司会:
 続きまして、2番目の報告事項ですけれども、これは海外での安全情報に関するものです。具体的に言いますと、これは領事局の方から託されまして、私の方から説明させていただきます。
 現在、津波、特にスマトラ沖の地震・津波の関係で、インドネシアのアチェ等でも、日本のNGOが活動しているというように承知しております。特にアチェに関連しまして、幾つかの政府から危険、注意喚起情報が出されていますので、ここで御紹介させていただきます。
 1つは、韓国政府からの注意喚起ですけれども、1月6日付で韓国政府がインドネシア等で活動している韓国の援助団体、職員に対して、テロの標的になっているとの情報があったと、それで、また、現地で宗教活動等により、イスラム過激派を含む現地人を刺激して、テロの標的にならないように注意していただきたい、という趣旨の注意喚起が韓国政府から送られております。
 更に、これも韓国政府からですけれども、アチェ州のナングル・アチェ・ダルサラム州において、海外の一部のキリスト教系の援助団体が、現地で賛美歌を歌ったり布教活動をしていると伝えられている。このような活動は、イスラム系急進派組織のみならず、現地イスラム系住民の反感を買う恐れがあるので、地元の反感を買わないように十分注意していただきたいというのが第2点目です。
 続きまして、デンマーク及びスウェーデン政府による注意喚起ですけれども、1月17日に、デンマーク政府及びスウェーデン政府は、アチェ州においてテロリストが人道支援団体に対する攻撃を計画しているとの情報を入手したとの声明を発表したということです。
 この情報の信憑性、攻撃計画の信憑性、具体的なこと等については不明な点はございますけれども、政府レベルでこのような声明が発表されたことにもかんがみて、NGO等の支援団体が現地で活動する場合には、万全の安全対策を講じていただきたく、よろしくお願い致します。
 特に、この点について何かございましたら、もしなければ、5番目の協議事項に移らせていただきます。

5.協議事項

(1)イラク復興支援について

司会:
まず最初に、「イラク復興支援について」、これはNGO側の西井さんの方からよろしくお願いします。

西井:
 名古屋NGOセンターの西井です。よろしくお願いします。
 既にお手元の方に論点の整理したものが皆さんのところに行っているかと思います。3つに分けて一応質問といいますか、提案をしたいと思っております。
 イラク復興支援については、この定期協議会のODA政策協議会の場においても過去に何回か協議しておりまして、その流れの中での質問だというふうに理解していただけたらいいかと思います。
 外務省、日本政府がイラク復興支援のために表明した復興支援額の50億ドル、そのうちの35億ドルが有償支援で、無償が15億ドルだというふうに発表されています。その15億ドルの使い道、どういうふうに使うのかということに関してなかなか情報が得られなかったんですけれども、先般12月の終わりぐらいに、政府広報ということで全国紙の紙面一面を使った広報が出まして、自衛隊と外務省、ODAとの車の両輪ということで広報がされていました。そこには、15億ドルのうちの約13億ドルについての使い道がざっくりとした形ですけれども載っておりまして、今日配られたこのカラーのパンフレットとたぶん同じ内容ではないかなというふうに思います。ここにも、自衛隊との車の両輪となってと書いてあります。それぞれ13億ドルの内訳について概要がここに紹介してあるわけなんですけれども、以前の政策協議会の場でも御質問したことがあるんですけれども、この援助プログラムの策定に当たって、どういうふうに現場の、現地のニーズを把握して、そして、それを評価して、ニーズの妥当性なり、必要性なりを判断して実施するのか、プログラムを策定して実施するのか、ということに関しても質問したことがあったんですけれども、その辺りの外務省が定めている援助のサイクルといいますか、流れを一般的に言いますと、まず案件形成調査をやってニーズを把握して、それから事前調査をやって基本設計をされてという流れがあるかと思います。どうも今回のイラクの復興支援に関しては、その辺りが治安の関係もあるということで、十分なされていないというようなことが見受けられるかと思います。
 そして、13億ドル、16年度の終わりまでには15億ドルに達するのかと思いますけれども、その援助がどういうふうに使われるのか、既に使われたのか、それから、今後使われるに当たって、その援助が十分に行き届いているのかということに関して、なかなか私たち市民の目から見ると不透明といいますか、見えにくいといいますか、やはりもどかしいものがあります。イラクにジャーナリストやマスメディアなども既に今はいないという状況で、実際のODAの使われ方を見てくることができないわけですね。それで、あくまでもこれは外務省が発表するものを受け取るだけになってしまっているわけなんです。ですので、なかなかそれを私たちの目から見て、明確なものになっていないという、そこをはっきりしていただきたいなというのが今回の趣旨の1つになっています。
 最初の質問なんですけれども、先ほど言いましたような援助のサイクルからいって、今回の復興支援のプログラムの妥当性や、実際に実施しているプログラムはどういうふうに動いているのかというモニタリングをどうしているのかという、それから、その効果をどう評価するのかということについての具体的なものがあれば、それを一度お聞きしたいなということです。
 それから2つ目が、1番の質問とも絡むんですけれども、実際に、これは今すぐにということではありませんけれども、外務省が行ったモリタリングなり評価なりの妥当性を、市民の目から、第三者の目からそれを評価していくことが必要ではないかというようなこともありますので、第三者からなる合同評価調査団を組織して、より透明性の高い評価をやってはどうかという提案です。その調査団には、イスラム教とか、イラクの現地についての専門性のある学識経験者とか、ジャーナリストとか、それからNGOというような人たちを構成してやる、そういったことも今後検討してみてはどうでしょうかという提案です。
 それから、全体としてのイラクの復興の支援の在り方を評価する場合に、やはり中期政策の中でも重点項目のところに挙げられていますけれども、貧困削減を含んでいるミレニアム開発ゴール、目標というもの、これがやはり1つの評価の指標になるのではないかということで、そういう視点からも、イラク復興支援をどういうふうに外務省は見ているのかというようなことについてお聞きしたいと思っています。
 以上です。

司会:
 それでは、正本さん。

正本:
 私の所属しております国別開発協力第二課でイラク復興支援の経済協力局内取りまとめをしているということもあり、私の方から、先ほどの御指摘も踏まえて簡単に御説明させていただきます。
 お手元に、カラーのパンフレットをお配りしていますが、これは、昨年の11月に作られたもので、その後も支援は進んでいます。写真や地図を盛り込んでわかりやすく、イメージがつかみやすいように工夫して作られたものですので、これについて紹介させていただきたく思います。
 まず開いていただきますと、真ん中に丸いイラクの地図が出ている見開きのページがありますが、左側に、「イラク復興は日本自身の問題、日本の国益です」とあります。イラクに対する武力行使に至る経緯については、いろいろ国会などでも議論がありましたが、今のイラクのあの現状を見て、イラクをテロリストの巣窟にしてはいけない、中東地域に石油資源の大半を依存している日本としては、イラク、ひいては中東の安定はまさに我が身の問題であるということですので、国際社会がイラクの復興支援を行う中で、日本として応分の役割を果たすということについてはおおむね異論はないものと理解しております。そのページの右側に、国際社会の取り組みについて紹介してあります。日本政府としましては、このような考え方の下、自衛隊とODAによる支援を「車の両輪」として実施しておるところです。
 1つ左側のページをめくっていただきますと、日本が実施しておる支援について、地図や写真で紹介したページがありますので、そこを見ていただければと思います。
 ODAによる支援については日本政府は、2003年10月のマドリッドでのイラク復興支援国会合において、「当面の支援」として15億ドル、中期的な復興事業に対しては、基本的に円借款によって、最大35億ドルの支援を実施することを表明しています。「当面の支援」につきましては、そこにありますとおり、電力、教育、水、衛生、保健など、イラク国民の生活基盤の再建につながる分野を中心に、雇用拡大効果にも配慮しながら、支援を実施しており、国際機関やNGOの方々とも連携をしながら、これまでに約14億ドルについて実施決定しています。これは要するに、各案件について、はり付けが終わって、正に支援が実施されていえる状況でして、既に済んだものとか、現地で動いているものとか、そこは程度はありますが、そのような状況です。
 中期的な支援については、当面の支援の重点分野に加えて電気通信、運輸などのインフラの整備も視野に入れて、現地の情勢も見ながら、可能な限り早く支援を行うことができるよう準備をしているところです。具体的には、調査団をイラク燐国のヨルダンに派遣しまして、調査を行っておったりとか、また、イラクに円借款を久しく実施していないということもあり、イラクの政府の関係者に対して、円借款の制度を説明するための協議の場を設けたり、セミナーを開くというようなことをやっております。
 先ほど御指摘もありましたとおり、イラクでは治安状況が厳しく、イラク全土に「退避勧告」が出されており、邦人の援助関係者がイラクに入ることができないという大きな制約があります。このような制約の中でいかに迅速に、かつ適正なプロセスを損わない形で支援を行っていくかということは重要な問題です。
 支援事業では、先ほども御指摘がありましたが、現地の事情を把握して、それに則した案件を発掘し、具体的な事業に結びつけていくこと必要となりますが、こうした流れの中で、現地の状況、それからニーズ、それから必要な資材とか機材が手に入るか、輸送が可能であるか、現地の技術者のレベルがどの程度であるかといったことを把握することは重要なことです。
 日本人が現地に入れないという制約の中で、このような情報を把握し支援を実施するに当たって必要な指示を出すということが課題になっており、これの1つの解決策としてやっているのが、いわゆる「遠隔操作」と言われるものです。
 例えば、案件の形成のために、JICAが調査に行く場合、邦人の援助関係者はイラクの国内には入れないが、隣国のヨルダンの首都アンマンやクウェートに滞在して、イラクで活動している現地のコンサルタントとかと連絡を取りつつ、必要な調査をしてもらって情報を手に入れる。また、支援を実施するに当たっても、現地で活動している企業と連絡を取り合って、現地の状況を把握しながら、必要な指示を出すといったことをしております。イラクに対する支援を行っておられる日本のNGOの方々も、こういったやり方を取られているものと聞いております。
 このような「遠隔操作」では、現地のサイトのデジカメの画像をはり付けての送付することなども含めて、Eメールとか、携帯電話で1日に何回も連絡を取って、できるだけ現地の「生」に近い情報を把握して、必要な指示を出すことにより物理的に現地にいないという制約を補っています。このように工夫をしながら、日本政府として、例えば、これまでに警察車両、1,144  台の供与ですとか、UNDP経由で実施していますウンム・カスルの港の浚渫、そういった支援を既に実施しています。また、UNDPなど国際機関を通じて実施している事業を通じて、これまでに延べ人数にして50万人以上の雇用を創出しています。
 また、自衛隊が派遣されているムサンナー県では、水に対する需要が特に大きいということもあって、給水車や浄水機などを供与することとしていますが、これが正に現地に続々と届きつつあります。このようなことで、まさに現地では具体的に物が動きつつあるという状況にあります。
 パンフレットに戻りまして、成果のところで、丸いイラクの地図が真ん中にある見開きの右上で、水・衛生、延200万人、イラクの電力の約10%に匹敵する量の復旧を支援するですとか、雇用延30万人以上というふうなことが書いてありますが、これらについては、御指摘のとおり、すべて今の時点で実現されているというわけではありません。厳しい治安状況の中で、支援を進めておるので、これからというところはありますけれども、こういったパンフレットを作るに当たりまして、金額ですとか事業名を羅列するだけではなかなか分かりにくいので、裨益の効果ということについて書いてみたものです。雇用については、これまで既に事業を実施しておるものを1人が1日働けば延べ1人、5人が2日間働けば延べ10人という延べ人数で数えておりますが、これが実際にパンフレット作成の時点で30万人、今の時点では50万人ということで成果が出ている状況です。あとのものは入札の準備中であったりということで、正に事業が進んでいるということであります。
 このような日本の支援が妥当なものなのか、現地のニーズにかなったものなのかというような御質問を頂くことがありますが、日本の支援は、そもそも2003年のマドリッドでの会議の前に、世銀と国連が行った包括的なニーズ調査に基づいて「当面の支援」と中期的な支援の重点分野が決められたものです。その後も、イラク政府との累次の協議ですとか、国際機関やNGOの方々から情報を頂いたり、イラクで昔活動していた日本の企業の方からヒアリングを行ったりして、このような形で具体的なニーズに沿うような形で支援をするように努めています。
 昨年10月で東京でイラク復興信託基金の第3回の会合が開催され初めてイラク政府から代表団が出席しましたが、彼らからは、イラク自身の将来の開発のビジョンが示されました。「国家開発戦略」という文書にありますが、そこでは、イラクがどういった課題を抱えているか、そのためには何が必要であるか、イラクとしてはどこまでできるか、そこで足りない部分について国際社会の支援を求めるということですが、そこでは、電力、教育、水・衛生、保健、医療などの分野が重点分野として掲げられており、また、この会合の時に、イラク政府から治安の改善や選挙の実施に向けた決意も示されているところです。
 日本が実施している支援というのは、正にこういった分野に重点を置いたものでして、イラクの復興事業に適合したものであると自負しており、イラク側からも、折に触れて感謝の意が表されております。パンフレットでは、先ほど申しました丸いイラクの地図が出ているページの右下に、ムサンナー県知事が、町村大臣に会っているときのことが紹介されています。
 頂いた御質問につきまして、簡単に回答させていただきます。まず質問の1つ目と2つ目は、妥当性と効果に関するモニタリング、それから第三者による評価のための調査団の派遣が重要であるということで御質問がございました。イラクに対する復興支援は、今まさに色々な工夫を行いながら、支援を実施しているところです。ですので、効果が出て、それを評価するというのはまだ少し先の話になると思われます。それに加えまして、現地の治安状況を考えると、評価調査団の派遣といったものができるような状況にはないと思われます。
 他方、ODA大綱には、評価の実施と充実ということが掲げられているとおり、当方としても評価の重要性は認識しており、また、イラク復興支援は平和の構築、大規模なケースでもあるので、ここで得た教訓は後々に生かしていく必要があるものだろうと思われます。ですので、案件の実施が進む中で、現地の状況も見ながらフォローアップしていくことが今後の検討課題であるのかなと思われます。
 そのフォローアップですが、現地の支援の進捗状況とかについては、先ほど申しましたように、遠隔操作で可能な限り映像とかも含めて把握するように努めておるところであり、また、自衛隊が派遣されているムサンナー県では、自衛隊とODAの協力案件については、プロジェクト・サイトの訪問ができるといったことでフォローアップすることはできています。なお、平成15年度末には、イラク復興支援に関する政策評価が実施されています。そこではイラクの復興支援が平和で安全な国際社会の維持に寄与するという外務省の重要な任務に合致するということが確認されているほか、この時点で既に行われていた復興雇用計画や学校再建計画といった事業について成果が確認されております。
 3つ目の御質問のミレニアム開発目標との関係ですが、ミレニアム開発目標は、貧困削減などの分野で具体的な数値と、達成期限を定めた国際的に合意された目標であり、日本政府としても重視しているところです。今年は、秋にその進捗状況の検討が行われるということで、開発にとって重要な年でありますが、イラク復興支援との関係につきましては、イラク復興支援を含めて、平和の構築に関する支援というのは、正にこうした開発目標の前提条件を整えるものと言えます。すなわち、紛争が起きれば、難民とか国内避難民が発生したり、また、開発の基盤であるようなインフラが破壊されてしまいますが、このようなことを防いだりとか、既にこういったことに苦しんでいる人々を助けるべく復興を進めるということは、開発の前提条件を整えるものであると言えると思います。
 また、ミレニアム開発目標では、普遍的初等教育の達成ですとか、幼児死亡率の削減、妊産婦の健康改善、安全な飲料水へのアクセスいったことが掲げられていますが、日本政府がイラクに対して実施している支援においては、学校の修復、学用品の供与、母子病院に対する医薬品の供与ですとか医療器材の供与、ムサンナー県において特に浄水とか給水とか、きれいな水にアクセスできるための活動というのをやっています。イラクでミレニアム開発目標に関するデータというのは、イラク政府自身も持っていないような状況ですので、量的にどのぐらいということは難しいのですが、日本政府が実施しているイラク復興支援は、直接的、間接的にミレニアム開発目標の観点からも意義が大きいのではないかと考えられます。
 以上でございます。

司会:
 何かございましたらよろしくお願いいたします。

岡島:
 大変丁寧な御説明どうもありがとうございました。ただ、多分、日本におりますと、このイラクの問題については、例えば、日本のマスコミの人たちも入れませんし、なかなか細かい情報がわからない状況にあると思います。
 また、1,500 億円ぐらいのお金を使って復興支援をやっておられる、その額の大きさということもあると思うんです。勿論、このパンフレットもその一環だと思うんですけれども、より一層情報公開といいますか、そうしたことが特にこの件では重要になってくるのではないかというふうに思います。
 特に、今日のこのような場でありますと、勿論、その1,500 億円の内訳、どういう案件にどのぐらいのお金を使っているのかということだけではなくて、例えば、実際、プロジェクトを行う際には、事前の評価表とか、事前評価を行って、通例の国際協力の場合でありますと、その評価項目とかを適用して、これは実際に地元の方のニーズにレレバントなのかどうかとか、あるいは、こういう緊急援助の場合は少し違うと思うんですけれども、通例の場合ですと、そういうプロジェクトがなくなった後も、持続可能性があるのかとか、いろいろな評価項目を当てはめて、あるいはほかの案件ではなくてこの案件、この土地を選ぶとか、いろいろな評価を行ってから実際に予算を付けて、実際に実施をするということになると思うんですけれども、今回のこういうイラクの場合だと、そうしたこともなかなか遠隔操作でいろいろ調査を行うというお話があったんですけれども、恐らくそうした細かい、どうしてこの案件だったのかとか、どういうニーズが具体的にあったのかとか、そういったことをもう少し詳細に示した文書などがあると、そうした公開が進むと、より現在政府が行われているイラクに対する支援ということについても、より一層理解が広がるのではないかというふうに思います。

後藤:
 正本さんの説明で大変気になった1点がありますので、特に、このイラク復興の意義に関してですが、イラク復興は日本自身の問題、日本の国益ですということが書いていますが、その復興を支援することが、合意を得ているみたいな発言が冒頭にあったと思いますが、まさにそこがある種のNGOとは対立しているところが問題だというふうに考えているわけで、そういうことを前提として話を進める限り、この会議の意味がないのではないかという気がします。
 確かに、近視的な意味では、日本の国益になることは事実です。しかし、石油資源を取るためにやったというのならば、罪のない赤ん坊まで、何百人、何千人の人殺しをして、石油強盗をしに行ったという、日本とアメリカの軍事同盟において取りに行ったというシチュエーションは変わらないわけです。そこで幾ら復興支援だと言っても、現地の人のある特定の人には喜ばれたとしても、国際正義としてそれが成り立つかどうかというところが最も対立するところであると、少なくとも私は考えます。
 ここで挙げられたテロリストの問題にしても、テロリストをつくった背景というのが一体何にあるのか、先進国と言われる人たちの勝手な領土の分断とか、テロリストを支援したお金とか、テロリストができるような背景にしたのはまさにアメリカでありイギリスであって、同盟国である日本であるということを抜きにして議論すること自身が問題であると、特に、今回のイラク戦争においては、日本の円高介入の資金が間接的に流れているというのは青木さんが指摘するところであります。
 そのような前提において、イラク復興支援ということ自身が間違いであって、イラクに対する軍事略奪の賠償金を支払うべきだという立場に立って考えるのが筋なわけでして、少なくとも我々が、国際正義の立場からそれが筋であって、日本やイギリスやアメリカに対しては、その戦争責任を求めるというのが少なくとも我々の立場であることを言っておきたいと思います。

神田:
 私自身のアイデアではなくて事前の打ち合せで出てきたアイデアで、西井さんの提案の2番目のところをちょっと補捉したいと思うんですけれども、合同評価調査団を今すぐに外務省でも入れないところに送るというのは、非現実的に思われるかもしれませんけれども、実際、日本国内で、関連書類ですとか、外務省が得られているデータなどを合同でチェックするという作業というのは、今すぐでもできることではないかと思うんですね。
 岡島さんが言われたことというのも、こういう場で、例えば、1つの事例があれば、もっと議論がしやすいのに、という意味合いでもあろうとも思うんですけれども、勿論、この場でイラクのことだけをお話しするわけではないので、十分に議論できるわけではありませんので、例えば、こういう違うところでイラクのことについてきちんとNGOと共同でチェックしましょうよというようなことで関連情報を出していただいて、そのことをNGO側で逐一見てみて、疑問点、質問点というのを出してみる。それに対して外務省の方でお答えいただくというぐらいまでの情報公開、そして、市民の参加ということが、このことはとかく私たちも色めがねで見てしまいますので、必要ではないか。広報媒体だけで済む問題ではないなと思います。
 私自身も、広報媒体で気になることが多々あります。後藤さんの御発言にもありましたけれども、気になることは多々ありますけれども、少しそこを置いておいても、日本がこういうことをやっていますよということを検証する作業というのを即座に始める必要がある。これは、円借款の供与ということが、メディアなどで取りざたされておりますので、より巨額の資金が流れるならば、今、小額の資金の段階でこれをやっておくべきではないかというふうに、補足的に提案したいと思います。

正本:
 では、簡単にお答えさせていただきます。情報公開が大事であるという点、マスコミが入れないイラクにおいて大規模な復興支援を行っていることから、情報公開が大事であるというご指摘は、それはまさに御指摘のとおりでして、政府としましても、外務省のホームページに、イラクの復興支援に関する情報、実施している案件会議がありましたら、その概要ですとか、そういうのを随時載せております。それで、細々した案件も多いので、どこまでアップデートで間に合うという問題はありますが、できるだけのことはやっておるところです。
 評価の調査団につきまして、関連の書類を出すだけでも出来るのではないかというところは、今後、ちょっと検討したいと思いますが、政府として関連の情報を公開して、それに対する御意見を参考にさせていただくということにも通ずるのではないかと思われます。
 もう一点、そもそも論の御質問がございましたけれども、石油資源の9割近くを中東に依存する日本にとっては、国益に直結するということは、イラクの人が嫌がるのに無理やり石油を取ろうとかいうことではなく、あの地域で戦乱が起きれば、その石油の資源とかを目茶苦茶になってしまう、また、テロリストの巣窟になれば、オイルマネーとかがテロリストの手に渡って各地でテロ事件だとかにも悪用されてしまう、そういうふうなことが起きないようにする必要があるということでございます。
 簡単ですが、以上です。

西井:
 済みません、急いでします。このイラク復興支援というのはやはり2つの見方というか2つの視点から見られるかと思うんです。
 1つは、この復興支援というのが急遽決まったということです。イラクに対する戦争が、アメリカの一方的な攻撃によって始まった、それを日本政府が指示するという、国際社会の中でも孤立した動きの中で日本政府がアメリカの政策を支えていくという構造の中で、イラク復興支援が行われているというそこの部分です。それに対する日本の市民の厳しい目というものもいろいろな意見があるんですが、厳しい目というものがありますので、そういった面から見ていった場合に、このイラク復興支援の妥当性というものはやはり問われるだろうと思います。
 それからもう一つは、今日質問に出しましたように、援助の在り方、援助サイクルといいますか、外務省とか国際援助機関が50年の歴史の中でつくり上げてきた援助の仕方みたいなものを、経験を自ら踏みにじるというようなところがややあるという、そこを外務省の方も踏まえて、多分もどかしいものを感じながらやっておられるんだろうと思うんですけれども、我々もそこはもどかしさを感じる。せっかくの経験が、この復興支援、それは確かに復興支援は必要ですけれども、そのために、それまで積み上げてきたものが何かないがしろにされるようでは、今後の援助の在り方によくない影響があるのではないかということを危惧するわけです。
 ですから、やはり、繰り返しになりますけれども、情報公開というものをもっともっとやっていただいて、議論の輪をもっと広げていただきたいというふうに思います。

和田:
 私の方から一言だけ。我々も適正手続を無視して、とにかくお金をばらまけばいいと思ってやっているわけでは全くなくて、イラクの支援も将来、いろいろ会計検査院にもチェックされますし、国民の皆さんにもチェックされますし、そこでいいかげんなことをやっていれば、そもそも外務省って一体何やっているんだという批判をされますし、ODAなんてやめてしまえという議論になるだろうと思いますし、だから、そういうことがないように、今の制約の中で最大限できることを一生懸命やっているということであって、決して何かいいかげんにやろうとか、これまで積み上げてきたことを無視してやろうとか、そういう気持ちは一切ありませんので、その点だけは我々を信じていただけないかもしれませんけれども、一生懸命やっていると、ただ、状況が非常に厳しい部分があるということだろうと思います。
 いずれにしても、また将来皆様に評価されることになるだろうというふうに思っております。

司会:
 それでは、かなりこの問題議論し始めると何時間あっても足りませんので、次の議題に移らせていただきます。
 第2の協議事項ですけれども、「スマトラ島沖地震・インド洋津波災害支援について」、これもNGOの方から。済みません、かいつまんでお願いいたします。

西井:
 済みません。何回もしゃべりますけれども。
 議題2番目の「スマトラ島沖地震・インド洋津波災害支援について」ということです。 御存じのように、地震と津波で歴史にないような大災害が起こって、二十数万人の人が亡くなったというような状況で、それに対していち早く国際社会は援助に立ち上がったわけです。これは、論点を整理した時点の数字ですから、やや数字が変わっているかもわからないんですけれども、国際社会が表明した支援として7億1,700万ドルというような拠出額を約束して、日本では、5億ドルを拠出するということを表明したかと思います。
 その5億ドルの使い道、これから順次決まっていくと思うんですけれども、緊急に必要なものもありますでしょうし、これから中期の復興支援というようなところも含んでのことではないかと思うんですけれども、その使われ方、やはりこれは短期間で巨額のお金が出ていきますし、現場が混乱している状況の中でお金が出ていくということですので、ちゃんと見ていかないと、それが本当に必要とする被災者のところに届いているのかというようなことが確認できないということがあります。それを確認するためにも、幾つかの提案なんですけれども、特にそのお金の使われ方で、ノン・プロジェクト無償というのでお金を既に幾つかの国には現金で渡したというような報道もありますので、そのお金の使い道が果たしてちゃんと行ったのか、必要なニーズの下にそのお金が使われたのか、それは正しく効果を上げているのかということに関しての評価、それをやはりすべきではないかということです。
 それから、もう一つは、透明性とか、効果の面から行きますと、現地のNGOあるいは日本のNGOも入っていますけれども、そういうNGOのきめ細かな働きというものに着目して、NGOを通じた支援をもっと増やしていく必要があるのではないかという提案です。
 それから、2つ目が、災害復興支援に関しては、国連の防災会議等も開かれまして、おおまかな、大きな方向性は示されているかと思うんですけれども、特に、よく言われているのは、日本が今後貢献するのは、ITを駆使した早期計画システムというようなものを構築する必要があるのではないかということがよく喧伝されています。それもある面では必要ではありますけれども、IT技術を今回の被災に遭った貧しい国々に普及させる、しかもその貧困国の中でも、海岸部に住んでいる更に貧しい人たちのところまで、IT技術が十分に行きわたるまでには相当の時間を要するでしょうし、お金もかかるでしょうし、かなり細かな配慮が必要になるかと思います。それ以外にも、お金もかけずにやれる方法というのを、やはり考えていくべきではないかということで、地域に根ざしたといいますか、地域の人々が昔から伝えているような言い伝えですとか、伝承ですとか、そういったものによって津波の災害を防ぐ、あるいは地震の災害を防ぐというようなことも、ある意味では必要なことではないでしょうか。そのための支援ができるのではないでしょうか。勿論、それを生かすためには、地域がばらばらになっていてはうまくいきませんので、地域の力、協力とか連携といったものを強化していくような働きかけ、そういうような援助の仕方も今後考えていくべきではないかというふうに思います。
 それと併せて、これも時間はかかるかもわかりませんけれどもハザードマップを作成し、より末端の地域まで普及を図るべきではないでしょうか。
 それから、新聞の報道によりますと、マングローブ林が相当破壊されていて、そのマングローブ林が津波を防ぐ役割を果たさなかった、逆に、マングローブ林に守られて助かったという地域もあるということもありますし、マングローブ林に限らないんですけれども、地域の災害に対する備えといいますか、力をより脆弱にしてしまうような開発の在り方を見直していく必要もあるのではないか。これも1つの提案ですけれども、地域の脆弱性を高めてしまうような開発は見直すべきではないかという提案です。
 それから3つ目が、貧困国で、どの国もアジアからアフリカの国々も、債務を抱えています。その債務の削減、債務の繰延べということをパリ会議においては、先進国が一応方向性を示してはいるんですけれども、繰延べということは結局また返さなければいけないということです。そうではなく、債権を放棄する、債務を帳消しにするということは、やはり必要ではないかというふうに思います。実際に、復興の支援のお金が行ったとしても、果たしてそれが復興に役立つのかという問題もありますし、復興支援を受ける人々の生活を助けるのかということもあります。もともと貧困の人々が更に貧困なところに追い込まれたという状況ですので、従来の債務削減の考え方とは違った視点で、今回の災害の復興支援に関しては取り組む必要があるのではないか、そのためには、債権を放棄するということを日本も表明し、なおかつ他の債権国に対しても働きかけをしていただきたいという、以上の提案です。

和田:
 ありがとうございます。私の方から、できるだけお答えをしたいと思います。 まず第一に、お手元に配付資料でございますが、「スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害」という外務省緊急対策本部作成の1枚紙、これは表、裏書いてありますけれども、それがお配りされていると思います。
 それから、先般の神戸の防災の会議のときに、日本政府が発表いたしました防災の協力に関する「防災協力イニシアティブの概要」とその本文、それから更に、『防災分野における日本のODA』というパンフレットがお手元にあると思います。これは全部御説明できませんが、是非お時間のあるときに見ていただければと思います。
 津波被害の1枚紙を見ていただければ、非常に簡単ではございますが、今回の被害の状況、それから、それに対する国際社会の対応、それから裏の方に行っていただいて、日本政府の対応というふうになっておりまして、裏の方の上の方から見ていただきますと、日本は、5億ドルの支援を表明しておりますけれども、その他、豪州が8億ドルだとかドイツが6.8  億ドルだとか、いろいろ各国はそれぞれ表明をしておりまして、それを単純に足すと50億ドル以上の意図表明になっております。ただし、日本は、とりあえず当面の措置として無償資金協力で5億ドル出しますと言って、現にもう資金の拠出は終わっているわけなんですけれども、ほかの国は、これから5年間でとか、これから3年から5年でということで、こういう額を提示しておりまして、やや額の性格が違いますし、現実にほかの国からどのぐらい実際にお金が出ているのかというのは全く別の問題だということでございます。
 (6)、その下に日本の実際の支援の内容で5億ドルの内訳が書いてございますけれども、5億ドルを半分ずつに分けまして、国際機関を通じた支援が2.5億ドル、それから、二国間ベースが2.5億ドルというふうになっております。
 NGO側の紙に書いてあった数字は、前のページの方の国際社会の対応の(2)のところでジュネーブで国連の機関が中心となった会議がありまして、そのときに緊急アピールということで、9.7億ドルのアピールが出されて、日本を含む各国が7.56億ドルの意図表明をしたということでございますけれども、その数字だと思いますけれども、このうち日本は、さっき言った5億ドルの半分の2.5億ドル、したがって、国際社会全体の3分の1ぐらいに相当するわけなんですけれども、2.5億ドルをUNICEFやWFPやUNHCR、UNDP、IOMなどのいろいろな国際機関が行う活動に対して、日本は資金協力をしているということでございます。
 それで、この裏の方の緊急支援の5億ドルの話に加えまして、二国間ベースの話については、2.5 億ドルのうち、若干最初の初動で出したものがありまして、その後出したものが246 億円で、インドネシアに146億円、スリランカに80億円、モルディブに20億円というふうに割振っているわけでございます。
 こういった資金協力のほかに、人的貢献ということで、最初にJICAの緊急援助隊が出ましたし、自衛隊もその緊急援助隊の活動の一環ということで、現在インドネシアの方に展開をしているという状況でございます。
 それから、ジャパン・プラットホームとの連携ということで、NGOの活動も行われておりますし、それから、ODAとはちょっと別の話ですけれども、民間企業や自治体が支援物資を無償で提供するという申し出がありまして、そういったことを「支援物資リレー」と書いてありますけれども、いろいろな民間の航空会社や自衛隊の協力も得ながら、そういう民間から供出された物資を運ぶというようなこともやっております。
 この5億ドルというのは、あくまでも緊急の当面の支援でございまして、やはり中・長期的な復興、復旧ということになってきますと、これもまた今後、できる限り協力するというふうに言っておりまして、通常の円借款や無償資金協力などの援助手法を通じて、今後やっていくということでございます。
 それから、公的債務の支払いについても、先ほど御議論いただきましたけれども、支払いのモラトリアムということで、一定期間の猶予ということをやる用意がありますよということを日本はわりと早目に表明をいたしまして、パリクラブの同様の趣旨の合意につながっているということがございます。
 それから、加えて、先ほど御指摘があったように、インド洋における津波の早期警戒システムの話についても、国際機関、ISDRというところが、ユネスコなどと協力をしながら、今後進めていこうとしているわけですけれども、それに関連する資金協力を日本としてやっているということでございます。
 それで、御指摘いただいた点に即して答えますと、まず、国際機関の方に出しております2.5 億ドルにつきましては、それぞれの国際機関はこういうことをやりたいので拠出をしてほしいということで国際社会に対して要請をしたのに応えて、2.5 億ドルを出しているわけでございますけれども、当然のことながら、国際機関が行った事業については、詳細にどういうことをやっているということを後で報告をもらうことになっておりますし、そういったことについて、国際機関の手続に従って、監査なども行われることになっておりますので、そういう意味におけるモニタリングというか評価は、今後しっかり行っていきたいと思っております。
 それから、二国間ベースにつきましては、大部分がノンプロジェクト無償資金協力ということで、相手国政府にキャッシュが渡る形になっているんですけれども、これは現金をそのまま渡すということではありませんで、相手国政府が開設される口座にお金を入れるわけですけれども、その入れられたお金は、相手国が100%自由自在に使うということではなくて、日本政府と相手国政府との協議によって審査をしながら使っていくということになっております。具体的には、ノンプロジェクト無償一般について言えることなんですけれども、調達管理機関という第三者機関が、相手国政府との間で、資金の管理、調達に関する委託業務契約を結んで、その調達管理機関が実際の物の調達や資金、お金の支出に当たるということになっておりまして、その際、入札とか必要な手続をきちんとやるということになっております。
 したがって、キャッシュが相手国政府に渡るんですけれども、それがどういうものの購入に使われたかとか、そういったことはすべて日本政府は、調達管理機関の報告を受けてわかることになりますし、そもそも何に使うかということも、相手国政府、日本政府、調達管理機関の三者による委員会の場での議論を通じて、一つ一つ議論しながら決めていくということになっております。こういう仕組みを通じまして、どのような形でお金が使われているのかというのは、きちんとモニタリング、把握をしながら、適正に使っていきたいというふうに考えております。
 具体的には、まだ実は話をしているところでございまして、スリランカにつきましては、第1号、さっき申し上げたように、80億円が供与されたわけですけれども、その80億円の使い道の第1号案件として、横浜市から提供を受けたバキュームカーをスリランカに提供する、これがスリランカ向けの第1号案件ということになります。
 それから、インドネシアにつきましては、まだ、これは最終決定されていませんが、医薬品や建設用機材の調達が検討されています。即ち、バンダ・アチェというアチェの一番はじっこの町とムラボーという町の間の道路がかなりぐちゃぐちゃになっているわけですけれども、その復旧の工事のために必要な資機材の購入に当てるべく今協議が行われている、例えば、そういうような状況がございます。
 いずれにしましても、そのほか、漁業関係のいろいろな損害への対応とか、教育、学校の施設修復とか、そういう一つひとつの案件内容を先方政府と協議をしながら順次使っていくということになります。この津波の関係については予備費ということで、通常のODA予算の外の予算をいただいて実施しておりますけれども、情報公開につきましても、できる限りやっていきたいというふうに考えております。
 それから、2つ目の御議論として、災害に備えた持続可能で地域に根ざした防災というか、そういったことをきちんとやるべきではないかということでございますが、まさに防災のイニシアチブを配付いたしておりますけれども、その中にもある通り(必ずしも十分ではないということかもしれませんが)、我々もそういう問題意識を持って防災協力をやっていますし、今後もやっていきたいと思っております。
 例えば、防災のイニシアチブの中の本文の4ページなどでは、災害予防の視点を取り入れた制度構築をやるとか、災害予防のための人材育成をやるとか、地域社会の防災意識の向上と能力強化に務めるといった、防災協力を行うに当たっての基本的な考え方が書いてございます。まさに、防災、災害が起こった後の緊急支援ということも勿論重要なんですけれども、災害が起きても、なるべく被害が軽減できるように、日ごろの開発計画を考える際から、防災の視点というものをしっかり入れて取り組んでいくことが重要というのは、まさに御指摘のとおりでございまして、そういう観点で、今後とも援助を行っていきたいというふうに考えております。
 このパンフレットの中にも、既に日本がやっているいろいろな支援の実例が書いてございますけれども、もう既に、例えば、24ページのバルバドスの技術協力の例などを見ていただいてわかりますように、ハザードマップの作成についてのノウハウの支援だとか、そういったことも既にやっています。これもちょっと御説明する時間がないので省略しますけれども、非常に幅広い、地震とか津波というのはまさに日本語が英語になっていることからもわかりますように、世界で津波の専門家というものの9割以上は日本にいるとかという話を聞きましたけれども、地震とか津波とか、こういう自然災害に関する知見という意味では、日本はかなり高いものがございまして、そういう観点から、これまでの日本の経験などを生かして、国際協力をやっていく考えでございます。
 勿論、その際に、日本のやり方を押しつけるということでは決してなくて、防災のイニシアチブの中の、例えば本文の3ページの6.などでも、現地適合技術の活用、という書き方になっておりますけれども、要するに、開発途上国の実状に即した技術、知見といったものをできるだけ採用していくということでやっていく考えです。
 この防災パンフレットの8ページのネパールの技術協力の例が書いてありますけれども、ネパールならではの、ネパールに適した工法の開発ということをそういう表現で盛りこんでいます。
 第三に債務の内容について、債権の放棄が必要であるとのご意見についてでございます。災害でも債務の問題が議論されたわけですけれども、我々、借りたお金を返すのは当然だというのが最初の前提でありまして、借りたお金を返さない、踏み倒すことを奨励するということはなかなかできません。今回につきましても、借りたお金はちゃんと返してくださいという前提で、ただ、非常に厳しい状況を踏まえて、一定期間支払いの猶予をしますというアレンジをしているわけですけれども、これは、例えば、インドネシアなどにおいても、相手国政府もそれがいいということになっております。それがいいということの意味は、債務をいったん削減したりなどしますと、その国は、要するに、債務不履行の国だということで、今の国際金融のルールでは、1回債務不履行を出した国に対しては、原則として新しい資金が流れなくなってしまうということがありまして、インドネシアなどで、例えば、債務削減ということになりますと、民間の企業などの資金の流れはほとんど止まってしまうということになると、それこそインドネシアが立ち行かなくなるという状況がございます。
 したがって、インドネシア政府も、債務の削減は求めない、求めないけれども、暫時待ってほしいということを向こうからも要請を受けて、我々としても、それに対応しているということでございます。
 勿論、だからと言って債務削減は一切しないと言っているわけではなくて、拡大重債務貧困国に対するヒピックス・イニシアチブなどに、国際的なルールとそういった考え方に基づいて日本政府は、例えば、平成16年度では2,675億円の円借款の債権を放棄したり、15年度においても2,494億円の円借款債権を国際的なルールに従って、実際に放棄しているのでございまして、それはほとんどがアフリカの重債務国なんですけれども、その国の状況状況に応じて、必要な場合は勿論そういうことも考えてやっているということでございます。
 とりあえず私の方からは以上です。

司会:
 今、和田課長の方から述べた件に関しまして、何か御質問等あれば、時間が非常に限られていますので、御質問はかいつまんでお願いいたします。

今井:
 今の話の中で、特に二国間のODA、約2.5億ドル分について御質問させていただきますけれども、先ほどのお話の中で、お金の使い道については、相手国政府と日本、それから調達代理機関ですか、私ジックスだと聞いておりますけれども、この三者が協議をして決めるという話ですけれども、実際の使い道において、今日の話の中でも最初の中期政策の話の中で、人間の安全保障という話がありましたけれども、その人間の安全保障の中で言われている特に社会的弱者の視点が非常に大事で、今回の津波の被災者も、沿岸地域の漁民ですとか、それから比較的貧しい層の人たちが非常に被害の中心になっているということがありまして、こういった人たちの生活再建のために本当に使われるということが重要だと思うんですよ。非常に援助が巨額であるがゆえに、私などが懸念しますのは、比較的大きなインフラ建設といったことに使われて、本当にきめ細かな貧しい人たちの生活再建にはなかなか回らないのではないかという懸念があるんですね、正直に言いまして。そういった意味で、先ほど言った相手国政府と日本と調達代理機関と三者の協議というときに、例えば、これがインドネシアであればジャカルタなどのペースで話をするのではなくて、いかに現地の状況、現地の住民グループですとか、現地のNGOなどのニーズも聞きながら、そういった支援の中身を決めていくということは非常に重要だと思うんですね。そういった視点から、具体的にどうやって現地の細かいニーズを吸い上げていくのかというような体制をつくろうとしているのか、現につくっているのかということを御質問したいということが1点。
 今のはどうやってニーズをつかむかということ。それからもう一つは、実際に本当に届いたかどうかのモニタリングですね。私たちODA改革ネット東京のメンバーの中に、インドネシア民主化支援ネットワークというNGOがありまして、そこのメンバーがいるんですけれども、今実際アチェに入っていますが、実際のアチェの現場では、援助というのが全体としては非常に大きな量の援助物資が入ってきていますけれども、アチェの個々の村とかに行きますと、入ってきている村もあれば、一方で援助物資が届いていないような村もある。御存じのように、インドネシアとアチェのガム、反政府勢力との対立というのがありましたから、インドネシア国軍が援助物資をなかなかある地域には流さないとか、ストップしているというような情報もあります。そういったような現地の状況も踏まえて、本当にアチェの人の手に届くかどうかといったモニタリング、これもどういう体制できちんとチェックをしようとしているか、それを公開しようと考えていらっしゃるのか、そこについて御質問します。

司会:
 それでは、もし今の方と違う御質問があれば、もう一つだけ受けて、それで回答したいと思いますけれども。
 すみませんが、簡潔にお願いいたします。

森:
 私の方からは、2.5億ドルの国際機関に渡した金のチェックの仕方をどうされているのかというところで、先ほど、国連機関のちゃんとしたいろいろな監査とかをやっているということなんですけれども、例えば、UNHCRにしろ、WFPにしろ、特に欧米のNGOに対して資金を出して、それで実際の援助をさせているというところもあるんですね。日本のNGOはなかなかそういったインフルメンティング・パートナーになっていないところがあるんですけれども、その辺もどの辺までちゃんとチェックされているかどうか、その辺についてお伺いしたいと思います。

和田:
 ありがとうございます。ニーズの把握につきましては、まずは日本政府としての力として、JICSが調査団を出したり、それに加えてJICAがインドネシア、スリランカ、モルディブ、それぞれに対して、調査をやっています。
 それから、JBICも、これは中・長期的な話でありますけれども、世銀やADBと共同して調査団を出したりしております。
 加えて、相手国政府、インドネシアなどの場合は特にそうですけれども、インドネシア政府が自らバぺナスを、国家開発企画庁という援助の取りまとめを行う政府機関ですけれども、そこが中心となって、インドネシア独自のニーズ調査をしておりまして、その結果が3月の末ぐらいに出るというような話もあります。スリランカも、スリランカ政府が自らいろいろ調査をした結果、日本に対して、これに使いたい、あれに使いたいというようなことを言ってきて、いずれにいたしましても、そういった相手国政府によるニーズの把握、それから我々や実施機関による調査、その他いろいろなドナーが入ったりしています。インドなどにおいては、NGOが相当活動していたりというようなこともございますので、そういったさまざまな調査やいろいろな情報を総合してニーズの把握をしていくということだろうと思っております。
 最後の資金の使用状況、どこまでとことんつかむかということなんですけれども、すべての物の配付先に日本人なり日本の関係者が行って、現実に物を見ることができれば勿論一番確実なんだろうと思いますけれども、実際的ではありませんので、それぞれの国際機関や相手国政府からの報告とか、そういったことにもある程度頼る部分というのはかなり出てこざるを得ないと思います。
 御指摘のように、村によって届いていないとか、いろいろな状況があると思います。道路が寸断されていてなかなか物資が届かないとか、いろいろな状況がありますし、インドネシアの国軍がわざとどこかの村に届けないということは考えにくいんですけれども、アチェが独立派の武装勢力が支配している地域で、国軍がなかなか入れないといったような状況、そういったことがあるかもしれません。いずれにいたしましても、そういった状況については、いろいろなルートで最大限できる限り把握していくということしかちょっと申し上げられないんですけれども、さっきのイラクの話と同じですが、こういった日本の支援についても、全然役に立っていないじゃないかというような新聞論調が出たり、いろいろなことになりますと、我々自身困ることになりますので、そういったことがないように最大限の努力をしていきたいと思っております。
 それから、国際機関の支援については、済みません、実際どこまで詳細な使用状況報告書というのが国際機関によってつくられるのかというのは、私自身ちょっと担当でもなくてよく知らないんですけれども、一般に国際的に必要だと言われているレベルのものは提出されるはずですし、第三者機関などの監査も入ったそれなりのしっかりした報告書が出ることは期待されていますし、我々もそれを求めていきたいというふうに思っております。

伊藤:
 今井さんの御質問をフォローしたいんですけれども、アチェにおいてもスリランカにおいても反政府グループによる独立運動が盛んな地域ですね。そこで、今回の事態をとらえて、日本政府はこれらの地域に平和の環境をつくりだそうとする考え方があるのかどうか。すなわち、いくつかのシナリオが考えられますが、第一に、その国の政府が言っていることを正しいものとして、そのままを受け入れて、援助を進めるのか、そうではなくて、第二の方法として、独立派側にも政府が積極的に支援するのか。第三の方法として、政府に対して支援をするんだけれども、平和構築の考え方に沿って、この機会をとらえて両者の間を取り持ち融和の方向に持っていくという戦略があって、この津波支援を考えておられるのか、あるいは第四の方法があるのか、日本政府の考えはどうなんでしょうか。

和田:
 そもそもこの地震が起きる前から、スリランカについては日本は平和の構築というか、和解に向けた努力を国際社会をリードする形でやってきておりまして、私の理解するところ、今回の津波災害においても、スリランカではいち早く、紛争をちょっと棚上げしてでもこれをやりましょうというようなことは、両当事者から言われたりしているというふうに理解しています。
 いずれにしても、やや停滞していた部分がございますので、日本は引き続きスリランカの和平については、努力をしていきたいというふうに考えております。
 アチェについても同様で、何年か前に東京で独立派と政府との間の話し合いの場をつくったり、いろいろなことを日本政府はやってきましたが、今度のアチェにおける地震においても、そもそも日本が言い出すよりも早く、インドネシア政府のユドヨノ大統領自身が、アチェの和平というのをやりたいということで、現に、北欧諸国、北欧の一部の国が仲介をして、今、政府とアチェの独立派との間の対話が行われたり、いろいろな動きがあります。日本も、従来からアチェの独立は日本は支持しないという明確なスタンスでありますけれども、他方で、紛争は早急にやめる必要があって、そのために必要なアレンジメントを両者間でつくるべしということで、両当事者に対して和平の働きかけを行ってきていますけれども、今回も、紛争のせいでなかなか援助物資が届かないとかいうようなことでは、まさに問題だと思っていますので、できる限りのことをしたいと思っているし、しているということだと思います。

司会:
 ありがとうございました。それでは、既に3時で、予定の時間になりましたけれども、若干延長させていただいて、あと、協議事項が2つございますけれども、それぞれ5分、10分ぐらいでやって、遅くとも3時20分頃までには終わりたいと思います。

(3)ODAの情報公開について

司会:
 それでは次に「ODAの情報公開について」、まず、NGOの方から御説明をお願いいたします。

馬谷:
 ODA関西の馬谷です。時間節約のためにペーパーをお渡ししますので、見てください。それから、朝の事前会議に出ておられない方は、それを見てください。裏表1?のものです。「ODAの情報公開と多言語化に関連して」というのを今配っていただいていると思います。
 まず「情報公開の理念認識」みたいな話は、私はここを飛ばそうと思っていたんですが、少なくとも今日の会議で外務省の方が言っておられる情報公開というのは、広報宣伝という意味です。情報公開ではありません。改めて言うことはないかと思いますが、ちなみに「ODA大綱の記述」となっております。国民に関しては、案件に接する。国際社会に対しては情報発信だというふうに書いています。これは明らかに広報宣伝と情報公開がごっちゃになっています。情報公開法のことは言うまでもないです。何人も請求権を有するですから、こういう表現は少なくとも日本国内では何でしょう、ということになります。
 「中期政策の記述」、現地ODAタスクフォースが頑張りなさいということになっているんですが、透明性向上を図るため、ホームページ等を活用した積極的な広報に努める、となっています。ここでも、中期政策の項目としては、「情報公開と広報」というふうに書いてあるんですけれども、広報のことしか書いていない。これは、あえて書いていなかったのかなとも思います。パブリックコメントの中では、情報公開はやめようという意見もないではなかったみたいなので、というふうに、やや善意に解釈したんですが、しかし、今日のお話だったら、広報宣伝では、情報公開ということで言っておられますから不安になりました。
 多言語問題、ODA大綱、中期政策、特段の言及はないと思います。政策評価の基本計画の中では、これは勿論ODAだけに限った話ではないんですけれども、ホームページで「外部(外国を含む)」というふうになっていて、「意見・要望等を受け付けるコーナーを設ける」なっていますね。これもコーナーかというような感じがあるんですが、まず何よりも多言語していなければ、アクセスがないでしょうと、意見の出しようもないのではないかということで、これはあと裏面の最後の方でまた申し上げます。
 特に強調したいところ、非援助国の現地の、私たちのことばで地域住民、「『地域住民』との意思疎通」のところです。「ODA大綱の記述」は、この当該の番号のところで、こういうふうになっています。状況の十分な把握、それから知見を生かすべく国内NGOだけではなくて、海外における同様の関係者というふうになっています。
 裏をごらんください。
 内外の援助関係者として挙げられているのは、これは文言どおりです。「NGO、大学、地方公共団体、経済団体、労働団体など」、私は、どんな人たちなんでしょうねというふうに思います。文書のほかの部分では、開発途上国における民主化の促進というようなことを、私に言わせれば非常に大胆なことを書いておられるんですが、これは、地域住民の当事者能力というのはないというふうに私には読めます。
 中期政策、現地ODAタスクフォースが、すごくたくさんのことをやらなければいけないというふうになっています。これは現地機能の強化というふうな方針があるから、それはそれで整合性はあるのでしょうが、まず何語でやるんだろうなというふうに思います。山ほど任務があって、ここに書いているようなこと、情勢を十分把握して、現地援助コミュニティーというのは私には非常にわからない言葉ですが、そこと情報交換やって、非援助国と認識を共有して、政策協議を実施するとなっています。
 それから、非援助国政府の政策の策定・実施過程に積極的に関与するとなっていまして、これらのこと、情報の多言語抜きにできるようなものではないと思います。仮にやれば、やったというふうなことを主張すれば、議論の前提にあるのは情報の質と量で、極端なハンディつきになりますから、一方的な聞き置きになるのではないかというふうに私は危惧いたします。
 そこで、例えば、現地ODAタスクフォースがそこでいろいろな協議なり調整をされるんですね。となると、どういうことをやったかというふうな議事録をすぐ多言語で出さなければいけないというふうに思います。逐語の訳でやる必要は必ずしもないと思います。一体何と何を話しして、こういうことになりましたかということは日本国民と言われている、日本国民だけがわかればいいという話では全然ないので、それを多言語的議事録をつくるべきだと思います。
 それともう一つ、中期政策の中でよく強調されていますが、現地タスクフォースはすごく任務を持つわけですけれども、最終的に決めるのは東京だよというのがありまして、東京という表現があるのもこれまた面白いんですが、東京との協議・調整、話し合い、それがどうなったかというふうな記録をこれも是非多言語化でつくっていただく必要があるだろうというふうに思います。
 それで、今、裏の真ん中の方を見ていただいておりますが、今回のパブリックコメントに対する外務省見解、これは非常に私はほかのパブリックコメントの回答から比べますと、かなり詳しく、時間とエネルギーを割いてつくられたなというふうに思います。それはそれで評価します、中身に関して異論はありますけれども。
 その中で書かれていること、「現地住民を他の人々とあわせて現地関係者と記載することは不適切ではない」、これは外務省側の主張です。
 それから、「現地の人々(それを代表するNGO、市民団体を含む)」というふうに書いてあって、その方たちの参加を求める場合もあるんだからということで、現地域住民との意思疎通ということも含めてやりますというふうな趣旨の回答でなっています。
 それで私は思います。日本語と英語を使えるものだけでやれば足りる、現地の、地元の言語しか解せない人々は、代理者を通じてやればいいのではないかというふうな感覚を外務省は持っておられるのではないかというふうに疑います。それでどんなことをやっていただきたいか申し上げておきます。
 基本姿勢です。繰り返しになりますが、日本語と英語がわかる者、これは例えば、日本のNGOは十分できますね。それでやっておけばいいのかということではないでしょうと、何が肝心かは、自身が影響を受ける当事者でないと判断できない、これはもうおわかりかと思います。情報公開請求、それは日本語でも同じですが、地域の情報ですから、ローカルの地名とかローカルの人名、これは日本のNGOが見てわかるわけがないです。だれそれさんとか何々村というのみで、そのことの重大さがわかるのは現地の人にしかわからないと思う、地元住民の方しか。
 そのようなことも含めて、是非、地元の方が使えるようなシステムをつくるというふうな気持ちで、準備していただきたい。そのためには、文書リストの多言語化、アクセスとかレファレンス体制も多言語を考えないといけないと思いますし、ちなみに、ここコンファーで書いていますのは、情報公開法で義務づけられていますね、容易かつ的確に開示請求できるようにしておかなければいかぬよというふうに言っています。そういう努力をしてください。
 それから、手数料、コピーですが、1件300円、1枚10円というふうなことが、外国にとって、為替レートの問題がありますから、どういう意味を持つかよく考えていただきたい。それから、公益の場合には、何と言いますか、公益だけではないでしょう。ここの情報公開法にも書いていますように、「経済的困難その他特別の理由があるときは」というのがありますから、その部分をフルに活用するのかと、今から考えて、ルールを整備しておいていただきたい。
 それから、不服申し立て、情報公開審査会ですが、これが、審査会でちゃんと議論できなかったら、情報公開制度は進みませんし使えませんね。これは日本の経験です。そのためには、日本語でしか受け付けられません、日本語でしか議論できません。これは少なくともODAに関しては困ったことだと言いますか、困ります。
 最後に、行政評価の多言語化というふうに書きました。これは、行政評価に関しては別途パブリックコメントもありましたから、意見も出しておりますが、ここでは、特に外国の方には、この行政評価がどういう意味を持つかというのがわからないと思うんですよ。こう言っては何ですが、日本在住の市民の方にもそれはなかなかわかりにくい、ちゃんと宣伝していないのではないかというふうに思います。
 これは、現在はまだそうなっていませんし、外務省の場合、3年間のいわばテスト期間中ですね、たしか。ですから、まだ予算とのリンクはそれほどできていないだろうというふうに想像しますが、これからは、予算とリンクするはずです。それだけのものですよ、この政策評価調書はというのを、外国の方にもわかるようにちゃんと伝えた上で、評価調書自身を多言語化していただく必要があるのではないかと思います。
 以上です。
 ごめんなさい、質問書、質問事項を出していましたでしょう。これは、時間がないと思うので、特に1番のところなどは、現在の運用がどうなるかみたいなところ、これはペーパーでください。今お答えいただく時間もないと思うので。2番、3番に関しては、今申し上げたような考え方の中の説明もしたつもりですので、そこの部分をお答えいただければと思います。

和田:
 いろいろご指摘をいただいていますのでできるだけお答えしたいと思います。まず、情報公開と広報とは違うだろうという御指摘はまさにそのとおりで違うんですけれども、ただ、重なる部分もあって、我々としては、情報をできるだけ公開することを通じての広報ということを一生懸命やっていきたいということを述べているわけでございます。
 それだけでは勿論不十分で、情報公開法というのが御指摘のとおりございまして、ODAに関するものについても、情報公開法の制度、法律にのっとって、情報公開を行っております。
 そして、JICA・JBICの持っている情報につきましても、独立行政法人等の保有する情報公開に関する法律というものにのっとって対応をしております。例えば、ちょっと御紹介すると、情報公開法が施行されてから、ODA関係では330 件の請求が寄せられております。平均の処理期間は、本来30日以内に開示決定を行うことになっているんですけれども、どうしてもできない場合延長ということになっていますが、これまでのケースを単純に平均しますと、約110 日ですから、3か月から4か月以内ぐらいには、決定を行っているということでございます。
 それで、審査会への付託状況でございますけれども、これまで10件付託されておりまして、不服について審査会は4件について棄却ということで不開示が維持されていますけれども、3件につきましては、請求者の不服が認められて、最初不開示だったのが、開示もしくは一部開示というふうに訂正をしたケースが3件。
 それから、2件については、途中で請求者の方が不服申立を取り下げたということでありますけれども、そういう形での不服審査も行われております。
 それで、日本国内での情報公開だけではなくて、外国の人がちゃんと情報公開制度を使えるようにすべきではないかという御意見ですけれども、それは、そういう考え方はわかりますが、そのためには、多言語化せよということなんですけれども、そもそも情報公開制度も始まってまだ数年間で、行政府としては、これへの対応だけでも相当な行政コストとエネルギーを要しているわけで、勿論、これは必要なことだからやっているわけなんですけれども、それに加えて、今の状況で多言語化して全部アクセスを可能にしろということは、なかなか行政的には厳しいのかなという感じがいたします。
 今の現状を御紹介すれば、申請についても、日本語での申請を受け付けることになっていまして、それから、外務省がどんな文書を持っているのかというのも、外務省のホームページ等で管理簿とか、そういったものが全部提示されているわけですけれども、それも別に英語にはなっておりませんで、日本語だけでございます。
 勿論、文書の中身が英語だったものはそのまま英語で出したりということになっていますけれども、それから、窓口でも、外国の人が来れば、窓口の担当官で英語ができれば勿論英語で対応したりしていますけれども、それを越えての多言語化というところはできていませんし、今の段階で、ちょっとそれを変えるということは、なかなか難しいのかなという現実がございます。
 それから、現地の人たちとの意思の疎通ということについても、外務省は、それぞれ国の言葉の専門家もおりますし、大使館などでは、カンボジアならカンボジア語、中国なら中国語、インドネシアならインドネシア語とか、その現地の言葉がわかる者がそれぞれの大使館におりますけれども、勿論、みんながみんな何でもかんでもできるというような状況ではないので、外務省としてできる限りの努力で現地の人の意見を現地語で議論したりということはやっていますけれども、恐らく、それでは全然足りないということなんでしょうけれども、では、だからと言って、すぐに全面的に対応できるようにしろと言われてもなかなかできないというのが実態で、もしそこまでやれということであれば、相当な人員の強化とか予算の増加とか、いろいろなことを併せてやらないとできない。外務省の予算も年々今の厳しい行財政事情の中で、毎年減っているような状況でございまして、なかなか予算も減り、人も増えない状況の中で、あれもこれもやれと言われても、現実問題としてなかなかできないということはわかってくださいと言っても、おわかりいただけないかもしれませんが、私としては、そういう状況だということは述べておきたいと思います。
 それから、海外のいろいろな意見を聞くやり方は別に住民を排除したりなどは私どもしているつもりは全くないです。できれば、相手国政府が民主的な政府であれば、民主的なプロセスで、相手国政府がその国の国民の意見を民主的に代表しているというのが一番理想で、そうすれば、相手国政府と話をすれば、それは民主的な手続で、まとめられた意見だということでいいわけですけれども、勿論、そういう国ばかりではないので、できる限りいろいろな人からいろいろな意見を聞きたいと思っていますけれども、その際に、国民全員、相手国のインドネシア2億人の人全員から意見を聞くことはできないわけで、やはり私もジャカルタにいたときに、どうやっていろいろな政府以外の意見を聞くかと言えば、現地のジャーナリストの人に会っていろいろと話を聞いたり、現地のNGOの人に会って話を聞いたり、それから、現地の学識経験者やいろいろな人から話を聞いたり、そんなようなことでやっているわけです。
 そして、現に、大使以下、現地のODAタスクフォースはインドネシアの有識者グループとの定期的な意見交換会をやってみたりとか、いろいろなルートで最大限インドネシア語も含めて、いろいろな人と意見交換をしながらやっているわけですけれども、勿論、それで本当にインドネシア人の全員の気持ちを分かりながらやっているのかと聞かれれば、それは無理なので、与えられた体制と与えられた予算と与えられた人員の中で、できる限りやっているということしか言えないんですけれども、もっとやれと言われても、なかなか今、みんな相当忙しい状況でやっていますので、精神論だけではできない、どうしていくのかというのは、中・長期的な課題だろうと思います。

神田:
 恐らく、優先順位の問題だろうと思うんですね。予算がないことは重々承知で提案しているわけですから、その中でどういうふうに予算などを知恵を絞ってそういうところに振り分ければいいのかというふうなことを今後も協議していく必要思うんですね。
 1例を挙げますと、世界銀行などでもそういう議論は常に行われていて、情報公開は今のままでは不十分だというNGOの主張はすごく強いんですね。それで、NGO財務省定期協議というのが一方であります。ここ外務省ではなく、財務省とNGOが議論している中で、その話になったときに、財務省から出てきた意見というのは、今の和田課長の意見よりもう少し前向きな発言をやったんですね。
 どういうことかというと、世界銀行にもその予算がないんです。それでどうしようかという話になって、ジャパン・スペシャル・ファンドというのが世界銀行に日本政府が出資してつくっている。それを活用して、まずやってみようという提案が財務省側からあったという過去の協議というのがあります。それが、どう実現したかまでは私もフォローはしておりませんけれども。
 ですから、予算が少ない中でもどこかで試験的にとにかくやってみようかというふうなことを考えていくとか。例えば、言葉の問題というのは、外務省がその職員の方を抱えると考えれば大変かもしれないけれども、通訳や翻訳ということを現地ベースで何かやっていくということであれば、予算が比較的少なくて済むのではないかというような工夫、そこでチェックするのは外務省の職員の方で、その言葉ができる方がチェックしていけば済むということでのアイデアの出し方。勿論、協力隊のOB、OGの方ですとか、NGOでも、その地域の言語ができる人間は多くいるわけですから、そういうところとの協働というものをどう考えていくかというふうな、いろいろなアイデア出しでもって、予算が少ないというところを克服できる術があるのではないか。そういうことをもっと前向きに議論していったらどうかなというふうに今感じました。

和田:
 今の点については、済みません、ちょっと私の説明が悪かったかもしれませんが、例えば、モンゴルの国別援助計画をつくったときに、モンゴル語に全部訳しまして、それをウランバートルで、モンゴル語でセミナーをやったりとか、いろいろやっています。それは、だから、先ほどの御意見の中で、情報公開と広報ちゃんと分けて議論しろと言われたから、私、情報公開の方について言ったわけですけれども、広報の分野では、我々広報予算を一生懸命活用して、カンボジア語でのパンフレットだとか、いろいろなことをやっているわけです。モンゴル語でもいろいろやっていますし、モンゴルの人たちとの意見交換とかやっているんです。
 ただ、要するに、情報公開で外国の人がいつでも日本に来て請求ができるように、全部、情報文書の名前から始めて全部多言語化せよということに対しては、それはなかなか厳しいということを申し上げたのであって、我々もできる限りやっています。

司会:
 少し補捉させていただきたいんですけれども、例えば、海外、私は民間援助支援室ですけれども、14年度から、現地で、日本のNGOと大使館、それからJBIC、JICAとの定期的な意見交換会を持っています。この中に、現地のNGOを入れているところもございます。ということで皆様が思われている以上に、現地ではいろいろな意見交換が行われているということは御承知していただけるとありがたいと思います。
 すみません。時間的になんですが、あと一つ、できれば協議事項、対中ODAがあるんですけれども、よろしいですか、進んで。

馬谷:
 されたのは、ODAの中でそれが担保されるように最初から計画して、それは外務省の仕事なんじゃないですか。
 ODAの中で一般資金が提供されるわけですから、そのときに、向こうとの、相手側の協議の中でこれだけの予算はこれに使うようにというような協議をすべき話であって、予算がないからできませんなんていうと、まさに逃げ口上でしかないわけであって、ODAの中で一定の部分は政策の相互理解のために使われる部分を担保すべき話であって、それは外務省がすることではないんですか。
 以上です。

和田:
 御意見は重く受け止めて、検討しますけれども、済みません、こういうことを言うとあれかもしれませんが、従来の援助は、一応基本的にGGベースで相手国政府といろいろ意見交換をして案件をつくり、案件を実施してきたと、その前提は、勿論、相手国政府が、相手国の国民の意見を代表しているものだからということだったわけですね。勿論、それでは不十分で、必ずしも相手国政府が完全に民意を代表していない可能性があるわけで、もっとそれだけではなくて、いろいろな人の意見も聞きましょうということだと思いますけれども、外国と関連するから、外国において行う事業だから、勿論、我々もできる限りのいろいろな人の意見を聞く努力はしていますけれども、情報公開制度について、相手国民の請求を相手国の言語で受け付けられるように、予算も含めて手当てすべきだというのは、それは1つの議論としてはそうかもしれませんけれども、そこまで絶対しなくては、それは外務省がおかしいというところまで言われると、ちょっと、そこまで情報公開法は求めていないのではないかと私は思います。
 そこはいずれにしても、国会での立法議論とかにつなげていただければいいのではないかと思います。

馬谷:
 ごく簡単に、おわかりだと思いますけれども、今、ここで議論しているのは、外務省全般の情報公開政策ではなくて、ODAだからODAだけでもやってくださいということなんですよ。だから、レファレンスの問題なので、要は、何がありますかに対してちゃんと答えればいいということと、それから、少なくとも私は、先ほどの減免ルールぐらいはちゃんと考えてやってほしい、そうしないと、実際に請求したって、日本語の文書でも構いませんよ、情報公開だから、文書自身は。でも、それのコピー代考えたらとても外国ではできませんみたいになる、そういうことを私は恐れているので、このメモにも書いていますでしょう、当面準備すること、当面ですよ。そういう趣旨ですので。

和田:
 外務省の政策は、勿論ODAも重要な政策の一部ですけれども、別にODAに限らず、外国に影響を及ぼす政策は多々あるわけで、ODAだけを特出しして、ほかはやらなくていいからODAだけやれというのは、1つの御意見かもしれませんけれども、必ずしもそうじゃない意見というか、外国人に影響の及ぼすものは、すべからくやるべきだという方が、もしかして筋なのではないかという気もします。
 いずれにしても、そこまでできないということをるる言ってきたわけですけれども、手数料の減免につきましては、情報公開法でも生活保護受領者等の情報公開手数料、要するに、手数料負担できない人については、減免できるという規定がありまして、外国人からの要請があった場合には、この規定を踏まえて検討することになると思います。ただ、今まで、そういう外国人からの手数料減免の要求はなかったと、そもそもそういう例は今までなかったということのようです。

司会:
 それでは、以上を持ちまして、ODA情報公開については終わらせていただきまして、次に、対中ODAに移らせていただきます。

(4)対中ODAについて

司会:
 NGOの方から簡潔にお願いします。

森:
 では簡単に。議題4番です。一応「対中ODA」と書いてありますけれども、本当は、たまたま中国を例にしただけです。最近、海外あちこち行っていますと、中国やインド、タイなど日本からODAを受給している国が、そのほかの国々に対してODAを出しているという例がたくさん見受けられます。特に、アフリカなどに対しては、中国はかなりたくさんの援助をしております。
 そういった、他国に援助をする余裕のある国に対して、日本の外務省がODAを出す意味は何があるのだろうかと、その辺の何か基準があるのかどうか。また、そういった情報も、すでに現地の在外公館を通して把握されているかどうか。そういったことについてお伺いしたいと思います。
 特に、中国は最近の政治的な状況、それから戦後賠償の問題、そういった問題も絡みますので、ちょっと事情が特殊になりますが、できるだけ一般化した形でその方針についてお伺いしたいと思います。以上です。

和田:
 我々援助をやっている目的の1つとして、途上国が発展を遂げて援助に頼らないでも自立して自ら発展できる、ということになることが望ましいと思っているわけで、途上国が援助の受け取り国から援助国になるというような事態は、基本的に喜ばしいことだというふうに考えております。
 日本も、先ほど最初に大使の方から話がありましたけれども、ODA50周年ということで、去年50年だと言っていたわけですけれども、日本も世銀とかアメリカの援助とかを戦後受けていたにもかかわらず、貧しいながらも技術協力から援助を自ら始めて、少しずつ少しずつそれを拡大をして今日に至っているわけでございます。
 したがって、他国からODAを、援助を受けているにもかかわらず、援助を行う途上国、中進国というかあるわけですけれども、けしからぬという意見もありますが、私どもはどちらかというと、そういった国のそういう援助に向けた努力というのはエンカレッジをしておりまして、南南協力ということで、日本とタイで組んで、ベトナム、ラオス、カンボジアに対して援助を行ったり、最近ではマレーシアの人を使って、東チモールに対して援助をしたりとか、そういうようなことをいろいろむしろ積極的にやっております。
 今後とも、そういう形で少しずつ成長を遂げて余裕も出てきた国に対しては、一緒に南南協力をやりましょうということでやっていけばいいのではないかと思っております。
 それぞれの国の、勿論資金が足りなくても、我々は例えば、東ティモール、何でマレーシアと一緒にやっているかというと、東ティモールの人たちは、インドネシア語というか、マレー語というか、あの辺の言葉ができるわけで、我々が先ほど多言語化の話もありましたけれども、我々が下手くそなインドネシア語でやるよりは、マレーシアの人がマレーシアの言葉でやった方が、東ティモールの人はわかる、というようなこともありますので、かつて日本がマレーシアで行った日本の技術協力で育ってきた人たちにお願いをして、東ティモールでマレー語でやっていただくというようなことは、むしろマレーシアはまだ援助を受け取っているのではないかというような問題とは別の問題として、いいことだというふうに考えております。
 中国につきましては、中国が第三国に行っている援助の全貌がよくわからない部分がありまして、中国に対してはもうちょっと中国の対外援助の状況について透明性を、それこそ情報公開をきちんとしなさいということを中国にも言っていますけれども、なかなかよくわからないところがあって、だからこそ、ちょっといろいろな批判もあるんだろうというふうに思っておりますけれども、中国に対しては情報公開を求めているところです。

司会:
 それでは、もし何か御質問があれば1つだけ受け付けまして、それでこの質問については終わりたいと思いますが、何かございますか。よろしいですか。
 では、以上をもちまして協議事項を終わらせていただきます。

6.次回協議会の開催日程について

司会:
 続きまして、次回協議会の開催日程ですけれども、次回は、東京でということになります。通常、大体3、4か月に1回ということですので、例えば、6月はどうでしょうか。
 では、一応、6月の中旬ということで、あとは具体的な日にちについては、事務的に詰めさせていただきたいと思います。

7.閉 会

司会:
 では、最後に、NGOの方から一言最後にごあいさつをいただければと思います。

平田:
 それでは、関西のNGOを代表しまして、この代3回のODA政策協議会を関西に持っていただきまして、本当にありがとうございました。遠方はるばる、貴重な時間を費して、今日は本当にキーワードを言えば、しばしば使われたことは何か御存じですか、時間がない、ですよね(笑)。ですから、十分ディスカッションをできたとは思いません。それで、やはりこれだけの内容はこのぐらいかかるんだという予測も立たないかもしれないけれども、しかし、できるだけ十分議論できるように、今後ともお互いに努力していきたいと思います。随分激しい御意見もございましたし、私もしゃべらんでよかったと思います(笑)。
 今後ともお互いに、顔と顔が見える関係というのは、NGOでは一番大切にしているんです。現場のNGOともあるいは我々日本の中でも、顔と顔の見える出会いを今後とも積み重ねていきたいと思います。
 どうもありがとうございました。(拍手)

司会:
 では、締めくくりとしまして、五月女大使より一言お願いいたします。

五月女:
 どうも皆様活発な御意見ありがとうございました。我々も東京から参りまして、皆様とこうして顔を見合わせて議論ができるというのは大変すばらしいことであり、かつ非常に刺激的な場面でもあります。
 そんなこともございまして、今日は特にイラク問題、それから、スマトラ沖の問題、あるいは中国問題、アジアに特化したような話でありましたのが、ちょっと若干、私はアフリカの応援団としては残念なんですが、この間のスマトラ地震も、25万人の人たちが亡くなるという大変悲惨な状態でありましたけれども、アフリカではその20倍の人たちが、毎年500万近い人たちがHIV、エイズとかスーダンの内戦の問題とか、あるいは水の問題等で亡くなっているわけです。ですから、やはりマスメディアの表れ方というのは非常に少ないところで非常に苦しんでいる人たちがいるということも是非知っていただきたい。
 勿論、日本はアジアの国ですから、アジア支援というのは大変大事なことであります。でも、やはり国際的な社会で、品位のある国家として見られるためには、そういう見捨てられた地域の人たちのことも忘れずに議論していただけたらありがたいなと思うわけです。
 今日は、1つイラク問題で、西井さんからお話しがあったことで、最初に出した15億ドルの問題、やはりぴしっと透明性を高めて、それをフォローするというのは大事なことであると思います。国民の税金ですから、これをしっかりと有効に使われることを見ていくということは大事だと思います。政府としても、非常に努力して頑張っているんですが、何分にも非常に難しい問題を抱えている中、遠隔操作でそういったことを調べなければならない、あるいは日本でいろいろな情報を集めてやらなければならないと、いろいろな問題があるわけですけれども、やはりそこは政府も努力しておりますし、それに更にこういった場でいろいろな意見を聞かせてもらいまして、更に改善していくということが必要なことだと思います。
 それから、スマトラの津波の問題も、日本が5億ドル出したと、援助合戦みたいにあっちの国が8億ドルとか、こっちが6億ドルとかと言っていますけれども、私自身はそういうのは非常に疑問視しております。日本の場合は、この問題に特化して援助を表明したにもかかわらず、ほかの国々は、5年先の借款までの話とか、いろいろなことを言っている、それを言い出すと、日本はその10倍ぐらい出すことになってしまう。そういったことも、やはりしっかりと見極める必要がある。
 ですから、私はマスメディアの役割というのは非常に大事だといつも言っているんですけれども、報道ぶりによって、日本の国民の考え方が左右されてしまったり、影響を受けるということは、ある意味では非常に危ないことがある。ですから、私もメディアが、正確にかつ国民の世論を間違った方向に持っていかないようにしてほしいと願っていますけれども、そういったこともありまして、私は、やはり冷静な目で見ていくということが大事であると思います。
 それから、皆さんとのこういう意見交換という場がやはり数多くある、先ほども平田さんがおっしゃったように、時間がないというのは残念なことなんですが、時間は何とか工夫してつくり出すということと、各人が努力して的確に短く簡潔に話をするということを心がけるということで、何とか乗り切るということも必要ではないかと思われます。
 そのようなこともございまして、今日も非常に活発な御意見がありまして、我々も大変参考になりましたし、皆様にもいろいろな面で外務省の考え方、あるいは外務省が今何をやっているかということもお伝えできたのではないかと思うんです。ですから、今日の議論をまた1つの参考資料といたしまして、いろいろな面での改善、改良を進めたいと思っております。そんなことで、この後また皆さんとの懇談会があると思いますので、そのときにいろいろとまたお話をお聞きできるかと思いますけれども、今日は長時間にわたりまして御意見、続いて意見交換ができたこと大変うれしく存じます。
 どうもありがとうございました。また、6月にお目にかかりたいと思います。

司会:
 それでは、これをもちまして、第3回ODA政策協議会を終わらせていただきます。また次回、よりよい意見交換をやりたいと思います。よろしくお願いいたします。
 どうもありがとうございました。

以上
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