ODAとは? 国際協力とNGO(非政府組織)

2004年(平成16年)度NGO・外務省定期協議会第2回ODA政策協議会・議事録

※NGO:非政府組織(Non-Governmental Organizations


日時 2004(平成16)年10月15日(金曜日)14時00分~16時30分
会場 三田共用会議所 会議室
司 会 神田浩史(NGO側コーディネーター)

1. 開会
2. 五月女NGO担当大使の挨拶
3. 出席者自己紹介
4. 「実施要項」の改定について
5. 報告事項
(1)ミレニアム開発目標について
(2)アフリカ開発会議について
6. 協議事項
(1)イラク復興支援について
(2)新ODA中期政策の策定について
7. 次回協議会の開催日程について 8. 閉会

配布資料:

1. 議事次第と参加者リスト
2. 実施要項(2004年度版)
3. 「イラク復興支援について」の論点(NGO)
4. 「新ODA中期政策の策定について」の論点(NGO)
5. 政府開発援助に関する新中期政策の策定について(外務省)
6. 新ODA中期政策の策定(論点整理)(外務省)
7. イラク復興信託基金ドナー委員会拡大会合(議長総括・仮約)(外務省)
8. ミレニアム開発目標(MDG)について(外務省)
9. 第3回アフリカ開発会議のフォローアップについて(外務省)

参考資料

1.政府開発援助(ODA)中期政策の評価ならびに改定プロセスに関する意見書
(「環境・持続社会」研究センター 石田恭子作成)
2.イラク復興支援信託基金ドナー委員会会合及び拡大会合(東京会合)に際し:日本政府によるイラク復興支援の適切性:透明性への懸念 (ODA改革ネット東京作成)

出席者リスト 合計:24名

<外務省> 計:13名

1.五月女光弘 NGO担当大使
2.和田充広 国別開発協力第一課長
3.河野 章 国別開発協力第二課長
4.岡庭 健 開発計画課長
5.鈴木秀生 無償資金協力課長
6.中野正則 民間援助支援室 首席事務官
7.大場雄一 アフリカ第二課 首席事務官
8.北浦康弘 国別開発協力第一課 課長補佐
9.小林久美 国別開発協力第一課
10.安田国彦 民間援助支援室 外務事務官
11.清水謙一 民間援助支援室 外務事務官
12.斉藤憲二 民間援助支援室 外務事務官

<オブザーバー>

12.細野恭平 JBIC 開発業務部企画課
13.松尾沢子 JICA市民参加協力室

<NGO側> 計:11名

1.磯 公美子 ネパールNGO連絡会
2.小川 信夫 特定非営利活動法人パレスチナ子どものキャンペーン
3.河内 伸介 アフリカ日本協議会
4.児玉 光也 特定非営利活動法人 Health and Development Service
5.鈴木 瑛子 チェチェンの子供達を支援する会
6.石田 恭子 特定非営利活動法人 「環境・持続社会」研究センター
7.神田 浩史 特定非営利活動法人 関西NGO協議会
8.高橋 清貴 ODA改革ネットワーク
9.西井 和裕 特定非営利活動法人 名古屋NGOセンター
10.竹崎 希 特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター(連携推進委員会事務局)
11.榛木 恵子 特定非営利活動法人 関西NGO協議会(事務局)


<議事録>

<敬称略>

司会(神田)
 第2回ODA政策協議会をこれから開催します。私はNGO側のコーディネ-ターを務めております関西NGO協議会の神田と申します。今日は、私の発題のところ以外は司会を仰せつかって進めていこうと思っています。私の発題の所は、ODA改革ネットワークの高橋さんの方に司会を委ねるという形で、2人で分担しながらやっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは早速ですけれど、冒頭、五月女大使の方からご挨拶を頂いて開催したいと思います。よろしくお願いします。

【開会の挨拶】

五月女
 皆様、こんにちは。もう前から何人かの方と、定期協議で皆様と顔を合わせるのを楽しみにしております。今年は皆様もご承知のようにODA50周年という年でございまして、この間日比谷公園で国際協力フェスタが行われまして、そこには政府ばかりでなくNGOの方々の参加も頂きまして、各国際機関、JICA、JBIC、その他関係機関の参加を頂いて、雨の中でしたけれど盛況に終わって大変よかったと思っております。今年はそういう面で日本のODA、あるいは国際協力を見直す時期かなと。一回過去を振り返って、これからの50年どういうふうにやっていこうかなと、振り返ってみるにいい機会ではないかと思われます。今日も外務省とNGOの定期協議、今日は政策協議ですけれども、実りある議論であることを期待しております。
 ご承知のように50年前、まだ日本が被援助国、援助を受けながらも援助国としてスタートした記念の年でありまして、当時の日本がいかに貧しかったか。よく言われていますのは、私はアフリカにおりましたけれど、アフリカのガーナという国が独立したのが50年前。ガーナとか、アジアのアセアンの中進国であるフィリピンなどに比べても日本は貧しかったというような時代だったということが事実としてあるわけです。それから50年たって、日本は他の国と比べまして、50年前にどういうことをしていたのか歴史を振り返りますと、当時の記録を見ますと、その頃のODAというのは、先ず始まったのはアジアからの研修生の受入れと専門家の派遣という技術支援をしていたということです。16人のアジアからの研修生の受入れと、28人の日本からの専門家の派遣ということで、予算的にもわずか3840万円。非常に小さなODAで始めた訳です。その時委託していた団体が、外務省認可の社団法人でありますアジア協会でございまして、そこに委託事業として始まったわけです。アジア協会が後に他の団体と合体してJICAに発展したということがあったわけです。つまりその当時の日本というのは、資金的な援助をするようなゆとりはなかった。けれども日本の持っている技術力をもって途上国を支援しようという、情熱と意志の高い日本人がそこにいたわけです。私も振り返りますと、やはり日本の基本は、日本の技術力を活かして、途上国の自立を助けるということに目的を絞って行うことが大事なことではないかな、と思うわけです。ですから援助というものは、やはり途上国が自立できるような環境にしてあげるのが、それはとりもなおさず50年前の日本の姿、そして日本が学んだこと、経験したことを途上国の人たちに伝えていくということが非常に大事なことだと思うわけです。今日も色々議論される中で、ODAの中期政策、ODAの大綱についても議論されると思うんですけれど、これまでの日本の50年を振り返って、これからの50年をどうやるかということを一度初心に返って考え直すには良い節目の年ではないかなというふうに思っております。
 そんなこともございまして、今日は外務省の経済協力局を中心に課長が出席され、NGOからも東京はもとより関西、名古屋の方からも参加頂きまして、活発な議論が行われることを期待しております。これからの2時間ですけれど、実りあることを期待して最初のご挨拶とさせて頂きたいと思います。

司会(神田)
 ありがとうございます。それでは早速でございますけれど、各自の自己紹介を簡単で結構ですのでお願いします。(中略)
 まだ外務省側もNGO側も若干空席がありますけれど、おいおい来られるということで進めていきたいと思います。
 それでは早速ですけれど、議題4.に入っていきたいと思います。実施要項の変更についてという点でありますけれど、配布資料2.を付けていると思います。厳密に言えばこれは実施要項の改訂案とすべきものであって、この場で確認していこうというものでもあります。というのはODA政策協議会の基本的なルールをどう決めましょうかというので、従前、NGO側と外務省側との経済協力局の政策課の間で作成した文章だったものが、外務省の機構改革に伴って主管される課が変更になると伺いました。政策課から国別開発協力第一課の方に移設されるということで、その部分だけを変更したというものでもあります。ですから変更の点は、上から2行目の外務省経済協力局国別開発協力第1課という部分と、それから3.の2)外務省側:議長は原則として国別開発協力第1課長とする、いうところの2点が変更点なんですけれど、その当たりの経緯につきまして和田課長の方からご説明確認していきたいと思いますのでよろしくお願いします。

【実施要項の改定案について】

和田
 以前、どこかでご説明したことがあるかもしれませんけれど、外務省は8月1日付けをもちまして色々な機構改革をやったわけです。経済協力局におきましても、割と大幅な機構改革を実施いたしました。行政改革の観点として課の数を増やすということはなかなかできないということで、制約があるなか、そういった制約条件を踏まえながら、他方より良い援助を行うためには、こういう機構が望ましいという観点で一生懸命考えまして、それで従来の調査計画課と国際機構課を統合して一つの開発計画課というものをつくる一方で、国別の援助アプローチを強化するという観点から、従来一つの課でやっておりました国別開発協力課を第1課、第2課と、2課体制にしました。
 その際に、民間援助支援室、緊急援助室という2つの室が従来政策課に付属する形で設置されていたんですけれども、もう一度そこを見直すということで、結局国別1課のもとに民間援助支援室が移管されるという形になりまた。主旨としては、民間援助支援室というのは、基本的に他の無償資金協力課とか有償資金協力課とか技術協力課のように援助のスキームを実施している、いわゆるスキーム課としての性格がある一方で、政策的な部分もかなり含んでいるということで、色々な議論があったんですけれど、政策を担当している課に付属させるべきである。そしてその際、正に強化をしようとしている課の下に付属させるべきだという考え方に至って、国別1課、2課どちらにするか、どちらでも良かったのですけれど、結局1課の方につけるということになりました。いずれにしましても政策面での対応を強化するということで、政策課、国別1課2課、開発協力課が一体となって連携しながら物事を進めていく中で、民間援助支援室もその中に絡めてやっていくということでございます。その機構改革に伴って、このNGOとの協議会においても経済協力局国別開発協力第1課が担当するということになりました。

司会(神田)
 ありがとうございます。NGO側から何か確認、ご質問があれば伺いたいと思います。特にございませんようでしたら、この改訂実施要項でよろしいでしょうか。

<質問>

 質問というか、簡単に教えて頂きたいのですが、今後そうしますと政策課に関する担当分野というか、問題について、私達が政策課の人たちと話しをしたいと思ったら、どういう対議(案)の問題に対応して頂けるのでしょうか。

和田
 政策課というのは、援助政策全般についての担当ということになっており、政策面での対応がどんどん膨れあがってきている中で、従来は政策課が一手にやっていたのが、とても政策課1つではできないようになってきて、政策課の業務がどんどん膨らんでいったのに伴って幾つかの課で分担して作業するということになってきているのだと思います。政策課は引き続き全体を見渡して総合的な調整をするという位置づけなんですけれど、個々の業務については各課が分担してやるという形が多くなる。政策課が今後ともやっていくだろうと予想されるのは、特に予算面での対応、国会での対応、そういったことが中心になると思うんですけれど、個々のテーマで政策課として持つテーマというのが、どういうテーマをやるかというのは、よく分らない。その時その時の状況でやるということになると思います。この会議との関係においても政策課が出ていって話しをするということは必要に応じて考えていきたいと思います。

司会(神田)
 ありがとうございます。もしなければこれを改訂実施要項としてご確認頂きたいと思うんですけれど。外務省側、NGO側、どちらもよろしいですね。そうしたら承認頂いたということで、この実施要項でもって今日以降、会合を重ねていきたいと思います。
 引き続きまして、5番目の報告事項ということで、外務省からの報告を受けて、NGO側から若干の質問を頂くという場を作っていきたいと思います。いきなりMDGに入ってよろしいですか。議題に入っています通り順番にしていきたいと思います。

【報告事項1 ミレニアム開発目標(MDG)について】

司会(神田)
 (1)のミレニアム開発目標について、岡庭開発計画課長からご説明頂いて、時間が10分という中に質問も入れていますので、簡潔にご説明頂いた後で、いくつか質問も入れたいと思います。よろしくお願いします。

岡庭
 MDGが何かということは皆さんご存知だと思うので、その内容については省略しましたが、このMDGについては、UNDP、国連開発計画という国連の開発グループが取りまとめ役、推進役であり、また達成状況の確認をする役割を担っております。国連開発計画UNDPが途上国を支援して、途上国はMDGの達成状況についての報告を、各国が途上国について達成するのを支援するということでございます。もう一つMDGの関係ではミレニアムプロジェクトというものがありまして、これはジェフリー・サックスというコロンビア大学の教授が、国連事務総長の依頼を受けてMDGを達成するためにはどういう施策をとる必要があるのかということについての報告書を現在作成中です。彼の元に聞くところによると250人位の執筆者がかなり分厚い紙を書いているという状況で、これについては色々なところで日本の考え方を彼に伝えていますが、現在、中間報告室では我が国の意見は必ずしも十分反映されていません。
 それで前回申し上げたMDGの作成状況に関する各途上国の報告書の作成状況について、今日特に説明を受けたいということだったので、それはそのお配りした紙に書いてあります。ちょっと読みにくいのですけれど、ここに書いてある国についてミレニアム報告というのは32ページ目以降に、いつ頃この報告書が発行できるのかの予定が書いてあります。ボリビア、カンボジア、カメルーン、チャド、マダガスカル、東チモール、タンザニア、ベトナム、ネパールそういった国については既に報告書が完成しているということでして、今日は完成した報告書全てをコピーするのは大変だったので、今日は一つの例としてベトナムのミレニアム開発目標の報告書を配布させて頂きました。これら報告書では各目標に沿って達成状況と課題について書いてある。MDGの報告書については、一時的には国連が途上国を支援していく作業なんで、細かいことをお知りになりたければ、むしろUNDPは東京に事務所がありますから、そこに聞いて頂ければ色々な形で資料を提供してくれるだろうと思います。

司会(神田)
 ありがとうございます。NGO側からご質問を受けるという感じで。

<質問>

高橋
 ODA改革ネットワークの高橋です。1点だけ質問させて頂きたいと思います。達成状況に対する報告ありがとうございました。途上国の側も貧困削減に努力するということですが、MDGの中には、特にGoal8のところ、パートナーシップの問題として、「北」の先進国側の責任が問われていると思っています。提出されたベトナムの資料の3枚目裏側にもincluding a commitment to good governance, development, and poverty reductionと書いてあります。これに関して、いわゆる先進諸国の側のMDGへのコントリビューション、貢献の程度を示すようなレポートというのは作られていく予定はあるのでしょうか。既に作られている国があれば、どの国で、それから日本はどのようにそこら辺を考えているのか、日本もレポートを用意するつもりであるのかを教えてください。

岡庭
 開発途上国については国連の協力も得てMDG達成に関する報告を作成することになっていますが、Goal8について先進国が報告書を作ることは国連の決議で求められているわけではありません。自主的に作るという国はあって、今既に作成している国はオランダとデンマークです。他にはもしかすればあるのかもしれませんが、まだ出来てない。日本はどうするんですかということについては、まだ検討中ですけれど、少なくとも材料は当然集めなければいけないので、そういう作業はこれから少なくとも始めようと思っています。

司会(神田)
 他の方如何でしょうか。MDGのことは他の議題の中でも出てくるかもしれませんが、今の報告に対する質問はこのくらいにしまして、次の報告事項に入っていきましょう。2つ目の報告事項はアフリカ開発会議についてということで、外務省の方から大場さんお願いします。

【報告事項2 第3回アフリカ開発会議(TICAD III)のフォローアップについて】

大場
 ご報告申し上げます。昨年の9月29日から10月1日まで開催した第3回アフリカ開発会議(TICAD III)から約1年が経過しておりますので、この1年間におけるTICAD IIIのフォローアップ状況を中心に、日本のアフリカ支援の取り組みについて報告させて頂きたいと思います。その上で今後予定されている行事について簡単にご説明させて頂きたいと思います。昨年のTICAD IIIで小泉総理が基調演説で日本の対アフリカ支援イニシアティブを発表しましたが、そのイニシアティブは、「平和の定着」、「人間中心の開発」、「経済成長を通じた貧困削減」の3つの柱からなっております。それぞれの柱に従って、これまでの取り組みについてご説明申し上げます。
 まず「平和の定着」については、ここに書いているのは一例に過ぎませんけれど、例えば、世界で展開する14の国連平和維持活動(PKO)のうち7つがアフリカに展開されています。日本は、PKO活動経費の約2割を負担しており、アフリカで現在活動している国連PKOにおいて約5億3000万ドルの貢献をしております。また、コンゴ民主共和国とかシエラレオネ等の紛争後の平和定着の促進のために、DDRRの支援や地雷除去支援などの形で支援を実施しております。さらに、人道支援の面では、最近新聞などでも話題になっておりますが、例えばスーダンのダルフール地方につきましては、先般追加的な支援を決定し、総額2100万ドルの貢献を行うことを決定しました。この他、「人間の安全保障」の概念をTICADの中で推進しておりまして、大きく分けて2つのスキームに基づきこの概念を推進しております。一つは国連に設置しました人間の安全保障基金というのがございます。これにつきましては、99年3月からこれまでにアフリカ全体で27件約2,900万ドルの支援を実施しております。もう一つは草の根人間安全保障無償というのがございますが、これをアフリカに積極的に活用しております。最後に、地域機関を通じた支援ですが、アフリカは53カ国ございますが、国境というのはある意味人為的に引かれた線でございますので、国と国の関係は勿論大事なんですけれど、より広域的、面的に見ることが重要であるという観点から、地域機関を通じた支援を進めております。例えば、エチオピアのアディスアベバに本部があるアフリカ連合(AU)については、ちょうど今週コナレ委員長が訪日していますけれど、平和・安全保障理事会の設立とか、全アフリカ議会の創設等、統合の動きが進んでおります。こうした中、AUとの協力関係を軸としたアフリカ全体に対する広域的支援を積極的に進めているところです。
 2つ目の柱の「人間中心の開発」につきましては、TICAD IIIの開会式の小泉総理の演説において今後5年間で保健医療、水、教育、食料等の分野で10億ドルの無償資金協力を実施していくことを発表しております。この1年間で約3億ドルを実施しております。1年間でいくら実施しなければならないという数字はないのですが、10億ドルを5年間で単純平均すると2億ドルということになりますので、比較的早いペースで着実に実施しているということが言えます。
 3つ目の柱として「経済成長を通じた貧困削減」がございます。この中で特に重点的に取り組んでおりますのは、アジアの開発経験を踏まえたアフリカの開発をどう考えていくかという観点から、特に貿易投資の促進を進めております。その際、特にアジア・アフリカ間の貿易投資の促進に力を入れています。なぜアジア・アフリカの貿易投資促進かと言うと、まず全般的なこととして、TICADのプロセスの中で南南協力、特にアジア・アフリカ協力を進めておりまして、その一環として貿易投資面でアジア・アフリカ協力を進めていきたいという考え方がございます。また、実体面で申し上げますと、アフリカと域外の貿易関係を見ると、アフリカの最大の貿易パートナーはヨーロッパでして、アフリカの対外貿易の5割以上はヨーロッパ向けとなっております。アジア向けは16%程度であり、シェア的には少ないのですが、貿易量の伸び率で見ると、アフリカからアジアへの貿易は過去10年で大体2.5倍伸びています。この伸び率は、ヨーロッパ、アメリカ等他の地域と比べても相当大きいものであり、アジアとアフリカの貿易投資関係をより拡大することによってアフリカの経済成長、ひいては貧困削減を実現したいと考えております。この文脈で、本年4月にはセネガルで、UNDPとの連携の下、第3回アジア・アフリカ・ビジネス・フォーラムを開催し、アジアとアフリカのビジネスマンを集めまして、商談の機会を提供してビジネスマッチングを実施しております。また、本年5月にはマレーシアで、後程説明しますTICADアジア・アフリカ貿易投資会議の準備会合として、アジア・アフリカ官民合同フォーラムを開催しております。このフォーラムは、アジアの中でも特にアフリカとの関係の深いマレーシアとの協力で開催したものであります。さらに、貿易投資とは異なりますけど、ネリカ米の開発・普及を進めております。ネリカ米というのはご存知の通り、アジアとアフリカの米の良いところを掛け合わせたものでして、今まで西アフリカ中心に展開していたものですが、ウガンダにも専門家を派遣して東アフリカとか地域でも普及・促進を進めている状況です。
 一枚めくって頂きますと、「TICADアジア・アフリカ貿易投資会議の開催について」という紙がございます。この会議につきましては今朝、町村外務大臣が開催につき正式に発表しておりますが、本年11月1日~2日、赤坂プリンスホテルで開催する予定です。参加者としては、アジア・アフリカの貿易投資関係省庁が中心になれますけれど、この他、国際機関、アフリカ地域機関(例えばAUとかNEPAD事務局)、アフリカ及びアジアのビジネス関係者等も招いて、官民合同の会議にしたいと思っております。目的は先ほど申し上げた通りです。また、会議と平行する形でアフリカ物産の展示をはじめとするサイド・イベントですとか、主要国と対象とした投資セミナーを予定しています。詳細につきましては、本日の正式発表を受けて、外務省のホームページに特別のコーナーを設けておりますのでご参照頂ければと思います。なお、サイド・イベントは、どなたでも参加自由ですので、是非積極的にご参加頂ければと思います。私からは以上でございます。

司会(神田)
 はい、ありがとうございます。この件に関しましても、NGO側から何かご質問がありましたら。

<質問>

河内
 アフリカ日本協議会の河内と申します。実は、TICAD市民社会フォーラムという団体にも所属しています。昨年のTICAD IIIに際し、日本とアフリカとアジアのNGOが集まった場で、TICADのフォローアップも含めたモニタリングシステムを作ろうというアイデアが出され、立ち上がりました。日本側の団体は、今年の6月1日に出来ました。
 今回は、2点質問があります。
 一つは、1年前にこの協議会の場で他のNGOの方が質問したことなのですが、その回答をお願いしたいということです。昨年のTICAD IIIで使われた予算のことです。「現在集計中」という回答を昨年の時点で頂き、ホームページにも載っている内容ですけれども、これが今どうなっているのでしょうか。
 それから、もう一点は、アフリカ連合の話です。先ほどコナレ委員長の話が出ました。大場事務官は、「アフリカ53ヶ国」と言われたんですけれど、コナレ委員長自身は「アフリカは54ヶ国」だと明言しているわけです。西サハラというモロッコが占領している地域がサハラアラブ民主共和国という国家としてアフリカ連合に加盟している。TICADはNEPADを支援し、NEPADの実施主体は、アフリカ連合である。紛争を解決するに当たっては、双方の当事者の意見を聞いて解決するべきだと、日本が支援を表明しているアフリカ連合のコナレ委員長自身が言っているわけです。TICADでは、そうなりませんでした。この点についても、回答をお願いします。

大場
 まず1点目のTICAD IIIの開催経費についてですが、私は昨年の協議会に出席していなかったので詳しい経緯は承知していませんが、その後回答する機会がなかったということだと思います。TICAD IIIを開催するに当たっては、予算要求をして、約2億1000万円の予算の承認を受けて、その枠内で実施しております。2点目の西サハラの問題ですが、本件については昨年のTICAD IIIの際にも同様のご指摘があったと思います。アフリカは53カ国だと申し上げましたけれど、53ではなく54だという意見をお持ちの方も確かにいると思います。それでは、今回のTICADアジア・アフリカ貿易投資会議にアフリカを何カ国招待しているかと申し上げますと、50カ国を招待しております。日本政府として、まだ政府承認していない国、例えば最近暫定大統領が選出されたソマリアについては、招待しておりません。その結果、今回の会議のアフリカ被招待国は50カ国となっております。

司会(神田)
 他の方からご質問はございませんか。先ほどのMDGもそうですし、アジアアフリカ会議に関連して協議事項の中で色々な意見が出てくると思いますので、またよろしくお願いします。報告事項が終わって直ぐに協議事項に入るんですけれど、今日外務省の方で広報のテレビ撮影が入るということを皆さんにご報告しておくことを伝えずに入ってしまいました。申し訳ないです。それでその撮影がこの時間をもって終わるということで、従来一番最後に五月女大使にもう一度お話しをという機会を作るのですが、今日は二度、そういう機会をということで、ここで五月女大使の方に、報告事項までを受けてのメッセージをということでお願いします。

五月女
 アフリカ2課からお話しがございましたけれども、私もTICAD IIIには参加いたしまして、特にNGOの方々と一緒に、その準備期間を含めまして数ヶ月に渡ってNGOと外務省との協議を続けて参りまして、そしてTICADの本会議に臨んだわけです。そんなこともありましてTICAD IIIのその後の動きにつきましては、私も極めて感心が深い。当時私はザンビア大使とマラウイ大使、両方やって帰ってきまして、両国の在京大使からアフリカに対する支援を緩めないで欲しいと強く言われまして、日本はアフリカを支援するためにこういう国際会議を開いて、総理もこういった発言をされているので、我々としても一生懸命アフリカを支援して参りますよ、と申し上げた記憶があります。最近JICAの方々と話しをしたんですが、緒方理事長が就任されて以来アフリカに対する支援を強化するということをはっきりと明言されていらっしゃって、予算の配分、青年海外協力隊の派遣等につきましても、アフリカに対する支援を強めたいとおっしゃっている。かつターゲットを設けまして、予算等につきましてもJICA自身、もちろん日本政府も、アジアは大きなターゲットですから、アジアに対する予算の配分は大きいんですが、一方アフリカをこれまで以上に重視していきたいということで予算を増やしていくということをはっきりおっしゃっていたと思います。それで外務省としてもアフリカ2課、経済協力局も含めまして、アフリカ支援というものを今後どういうふうにやっていくのか。つまりターゲットを儲けてその予算の増加、プロジェクトの拡大とか、そういった面の何か具体的な方策というものが定められてきているのかなと思います。説明して頂ければと思います。

司会(神田)
 どなたか。

五月女
 外務省の例えばアフリカ2課の予算や経協などの予算で、TICAD IIIのフォローアップとして、アフリカ支援の強化が行えるのかどうかについてお聞きしたい。

大場
 TICAD IIIのフォローアップという観点から説明するとややスコープが狭くなってしまいますので、より大きな話をさせて頂きますと、我々はより大きなターゲットを設けてアフリカ支援なりアフリカ外交を展開しております。
 今年はアジア・アフリカ貿易投資の促進ということで、今11月1日及び2日の会議をターゲットにして、それを重点にやってまいりました。勿論平和の定着とか人間中心の開発も併せて進めておりましたけれど、今年は特に貿易・投資に力を入れてきました。
 ただ一方で、当然ながら我々は来年以降の動きを見ながら、予算要求を含めた対応を考えなければいけないのですが、来年はアフリカの年になるのではないかと思っています。と申しますのは、先ほど説明があったミレニアム開発目標(MDGs)についてレビュー会合が来年の9月に予定されていますが、MDGsの観点から最も深刻な問題を抱えているのはアフリカです。MDGsとの関係では、アフリカ支援を重視していく必要があると考えております。また、来年の大きな会議なりプロセスとしましては、日本は来年1月から2年間国連安保理非常任理事国となる見込みです。安保理の議題の約7~8割はアフリカ問題に充てられているということですので、安保理のメンバーとなればアフリカ問題への対応を更に強化していかなければなりません。もう1点は来年のG8サミットはイギリスで開催されますが、既にブレア首相は来年のサミットではアフリカ問題と気候変動を議題とすることを表明しております。このようなプロセスを見ても、いかに来年がアフリカ開発の観点から重要な年かということが言えると思います。

司会(神田)
 ありがとうございました。今大場さんのおっしゃったようなポイントというのは、この場でも今年度の3回目、来年度の1回目、議論していこうというテーマが多く含まれていると思いますので、今後ともよろしくお願いいたます。
 引き続いて、協議に入ります。

【協議事項(1)イラク復興支援について】

司会(神田)
 名古屋NGOセンターの西井さんから説明をお願いします。

西井
 名古屋NGOセンターの西井です。よろしくお願いします。「配付資料-3」ということで皆さんの所には論点をまとめたものがいっていると思います。今も神田さんから紹介がありましたように、名古屋NGOセンターが作成したということになっていますけれど、ここに集まってきているNGO側の皆さんの意見を代表するわけではありませんけれど、ある一つの問題意識として、代表して質問させて頂いて、それに付随して、後から色々な切り口から補充して議論して頂きたいと思います。
 イラクの状況については非常に治安状況が悪化しているということが未だに続いていまして、今朝も米軍の車列がロケット砲によって攻撃されるという騒動がありましたけれど、非常に治安状況も不安定でありまして、政治状況もまだ安定していない。暫定政権の元でこれから来年1月の選挙に向けて動いていくわけですけれど、未だに非常に不安定な状況が続いている。その中で特に日本のマスコミなどもほとんどイラクから撤退して、バグダットの方を中心にしか動いていない。日本のNGOの人たちはイラクから撤退している。外国のNGOはまだいますけれど、イタリアのNGOが人質に取られたりして、外国の目、外部の目は届きにくい状況にいると思います。密室化してきている状況かと思います。その中で日本も15億ドルという非常に巨額な援助が行われているわけですけれど、15億ドルの無償資金援助をどのようにやっていくのか。その詳細は外務省のホームページなんかで、ある一定の報告はされていますけれど、詳細の報告は載っていないという状況で、今私たち一般市民が、イラクの中はどうなっているのかを知ることは非常に難しい状況だと思います。
 イラク復興支援はいくつか特長があると思うのですが、1つは1年間で15億ドルという非常に巨額な額を、ある短い期間の間に特定の地域に注ぎ込んでいくというのが1つあると思います。そして今言いましたけれど、治安状況、政治状況が悪い中で外国の目が届きにくい。いわば密室化したブラック・ボックスのような状況の中で行われるという状況です。3つ目の特長としては、その中で従来ODAを実施してきたプロセスといいますか、あるいはODA実施のサイクルといいますか、援助の必要性を探ってその方法を見つけて、実施して評価していくという、ODAの正当なプロセスが実施できないような状況になっている。そういう3つの特長の中で行われているイラク復興支援ではないかと思います。そこを踏まえて5つの項目について質問なり、提案をさせて頂きたいと思います。
 (1)でODAの実施プロセスから見た場合、イラク復興支援、援助というものは非常に実施しにくい状況ではないか。特に案件の発掘、事前調査、実施、評価といった場合に、援助の充分な効果を果たして確認出来るのか。適切な援助を確保できるのかという問題が残っています。さらにそこで実際どういう援助が必要か。例えば外務省の職員の方達がイラクに入っていって確認のための活動をしようとすると、身の危険を冒さざるを得ないという状況。そういう場合に果たして、そういう状況の中で援助を実施することの必要性なり妥当性をどう確保していくのかという疑問があります。
 第2項目では、予算のことですけれど15億ドル。細かい内訳も6月に外務省のホームページを通じて国際機関にいくら、NGOにいくら、直接支援にいくらとか報告されていましたけれど、あれだけ大きな額が短い期間にイラクという国に投入される。しかもそれは日本の無償資金予算の8割に及ぶ額が投入されていくという状況。そのことが果たして、どういう影響をイラクの市民社会に及ぼすのか。慎重に検討した方がいいのではないかと思います。どうしても15億ドルを全部消化しようとして、何でもかんでも予算をつけていけば、援助の垂れ流し、ばらまき援助が出てきますし、かといってきめの細かな援助をしようとすると、先ほども言いましたけれど、治安の問題もあるので難しいという。ジレンマのような状態に陥るのだと思うのですけれど、その中で有効な援助というものをどうすべきなのか。その辺についても考えをお聞きしたいと思います。
 3つ目ですけれど、復興支援と損害賠償についてちょっと考えてみた方がいいのではないか、ということです。ご存知かと思いますけれども、イラク戦争の開戦の理由であった大量破壊兵器はもうないということをアメリカのパウエル国防長官が表明しましたし、それを受けて、国連のアナン事務総長もイラク戦争は違法であったという表明をしております。今のイラク社会、政治の混乱を招いた原因といいますか、発端といいますのはやはりイラク戦争による攻撃であり破壊であり殺戮であるという状況で、その中で実際に破壊されたものを建て直す賠償は米英軍が行わなければならないでしょう。それとは別の、イラク社会に元々からある貧困などの問題に対処するのは日本なり国際社会の責任であると思うのですが、そこの区分けを明確にすべきではないか。実際に援助する場合にどういうふうに区分けをしておられるのか、そういう考えを持っておられるのかということをお聞かせ願えればと思います。
 4点目は、これはサマーワで行われている自衛隊とODAとの復興支援についてです。車の両輪というふうに政府では言っていますし、そうマスコミの方も取り上げているのですけれど、実際サマーワの状況も自衛隊の敷地の中に砲弾が着弾するとか、ロケット弾が打ち込まれた状況で、やはり悪化してきていると思います。先日、サマーワのある県の県知事が日本に来まして、日本の援助に対する感謝の言葉はあったのですけれど、その一方で電力が不足していると言われていましたね。そこに対する要求だと思うのですけれど、今サマーワで行われている援助が有効な援助として生きているのかどうか。イラクの国内の治安の状況もひっくるめてのことなんですけれど、一度、立ち止まって見直してみることも必要なのではないか、ということも考えております。時間をかけるということではないのですが、来年1月に選挙が行われますけれど、選挙でどこまで治安が回復するのか、ということも疑問ではありますが、やはり社会的に落ち着いて、日本として取り組む援助の形なり理念なりが生きるような援助ができる状況になるまで待つべきではないか。その間に色々な援助の考え方を整理し、議論していくことも、頭を冷やしていくことも必要ではないかという質問です。
 5番目になりますけれど、債務問題。これは去年のODA政策協議会でも質問させて頂いたと思うのですが、債務問題に関しては日本政府としてはまだはっきりした方向の議論が煮詰まっていないと思います。それがために、日本政府が表明した35億ドルの有償資金協力が先に進めなくなっているというような報道がありましたけれど、それは解決すべき問題ではないかと考えている次第です。
 以上5点ですけれど、相互に関連しあっていますが、別々に答えて頂ければと思います。とりあえず問題提起ということで名古屋NGOセンターから質問させて頂きました。

司会(神田)
 ありがとうございます。5点に分けていますけれど、イラクの状況が改善されていない中でのODA供与が、ODAが送り込まれているという実態が私には見えにくいというふうなことに対する懸念が多く出されているというふうに思います。前回も議論した話しですけれど、状況が改善させるどころか悪化していると思われる中、供与自体は進んでいるということがありますので、その当たりにつきまして、今問題提起されました5点について答えて頂いた後に、それに加えて色々な方からの質問、意見が出てくると思いますけれど、先ずは外務省の方からよろしくお願いします。

河野
 経済協力局の中で私の国別2課のところでイラクを見ていますので、私の方から全体について、お答えになるかどうか分かりませんけれど、今、西井さんからご提起のあったことについて私共の方からの答え、コメントを簡単に申し上げたいと思います。
 お手元に、後で参考として見て頂ければと思いますが、イラク関係でいくつかの資料を配布させて頂いております。
 1つは日本の対イラク支援を地図上に表したもので、これは10月中旬、大体現在までに実施、ないしは実施を決定したものを地図上に形態別に載せたものです。件名だけですけれど、どんなことをしているかというのも書いております。一言で言えば、広くかつ様々な案件について実施しているということで、右肩の方に色分けしておりますけれど、それぞれどういった形態で行っているかも書いております。それから後で今の5点についてお答えするときに少し言及したいと思っていますけれど、イラク復興信託基金のドナー委員会拡大会合の議長総括という、始めの方に日本語が、後ろの方に英語がくっついている、これは一昨日東京で行われましたイラク復興信託基金の議論をまとめたものです。一昨日の話ですから、いわばイラク復興支援に取り組む国際社会、及びイラク自身の考えというものが集約されているものということで配布させて頂きました。後、ご参考として英語のパンフレットも、この会合のために作成したものです。英語のNATIONAL DEVELOPMENT STRATEGYという小冊子を配布させて頂いておりますけれど、これは今回の会合用にイラクの政府自身が作ってきた、彼ら自身の国家開発戦略です。こういうのをイラク自身が作ったのは初めてということで、具体的にイラク自身の手によって示されたビジョンということができると思います。これについては必要な範囲内で若干言及することに留めたいと思います。
 今の5点について若干のコメントを言わせて頂きたいと思います。おそらく西井さんの方でまとめて頂いたものは、イラクの治安情勢が厳しい中で、ODAは適正にかつ効果をあげる格好で実施できるのかと、そういうご関心を幾つかまとめて頂いていると思います。そういうご懸念というものは極めて最もであります。それは我々自身がODAを実施していく上で同様に気にしている話しであって、かつ我々は今それをなんとか出来る限り乗り越えるやり方を見出しながら実施していく、というのが現状であろうかと思います。ですからご関心自体は真っ当なものだと思っております。他方、今のご指摘のあった5点のうち最後にあった債務について、早急に片をつける、解決を見出すべきだというところは、全くその通りというショートアンサーで、国際的にも今年中に債務問題の解決を目指すということが合意としてあって、現在正にパリクラブでこの債務の問題の最終的な解決方法について議論が進められているという状況です。それも今年中に決着を目指すという方向でやっております。5点目についてはその通りと申し上げることができるのですが、1から4につきましては、多分、考え方、見方が違うところがあるんだろうなという気がします。
 イラク国内でODA実施プロセスに必要な手続きを踏むことが非常に困難ではないか。援助に充分な効果が出にくいんじゃないかというご指摘がありました。さらに援助の必要性と妥当性について再検討すべきではないかとご指摘を頂いております。それに関連する話として、イラク市民を援助漬けにするのは如何なものか、というご指摘もありました。この辺については、ちょっと後で目を通して頂ければわかりますが、一昨日開催されたドナー委員会の拡大会合、議長総括の中に幾つかの答になるような話しがあるのではないかと思います。この議長総括を読み上げることはしませんが、今回の会合でポイントとなったのは、先ほどちょっと申し上げた国家開発戦略というものをイラク自身が作ってきた。そういったものを作ってきて、イラク暫定政府が出てきた初めてのドナー会合であったということです。6月28日に主権委譲が行われて、今やイラクの復興開発について一義的な責任を有するのはイラク人自身である。暫定政府ではありますが、これはイラク自身が責任を持って進めたいという意思を現わすものとしてNATIONAL DEVELOPMENT STRATEGYというものが作られています。一昨日の会合の中でもイラク人、副首相がヘッドでしたけれど非常に強いオーナーシップが発揮されたと思います。正に自分たち自身で復興していくんだ。そのためにこの国家開発戦略の中に書かれた、確か約15の分野に渡ってどういった具体的な対策が必要か、そういったものをアイデンティファイして、それについての取り組みというものを明記したものを作ってきた。NATIONAL DEVELOPMENT STRATEGY(NDS)の後半の方に分野別に、プライオリティーとして何があるかが書いてあります。その前半の方にはイラク自身の歳入歳出の見通しについて書いて、その中で国際社会からの支援としてこの位の額が必要ということも、マクロ経済的な記述ではありますけれど、そういったものも、分析しています。ここでイラク人自身が強調していたのは、イラクというのは本来であれば援助を受ける側に立つ国というよりも、むしろドナーとなるべき国である、というのは自分たちも分っている。ただ今この時というのは20年30年に渡る圧政のくびきから解き放たれて、その期間において非常に無視されてきた色々な事情において停滞した社会というものを現代にあった社会、それは民主的で市場経済を発展した、かつ国際社会の中に統合されたイラクというものを創るために努力が必要だ。そのために当面の間、国際社会からの支援を要請しますという、そういう位置づけのものとしてあります。
 援助漬けという話しがあるんですけれど、イラク政府の方から表明があったのは国際社会からの援助の実施を求めるということについて、非常に強い要望がありました。それは20年以上に渡って、基本的には豊かな国ではありますけれど、様々なインフラ、社会の基本的な所が無視されてきたことによって、今取り組まなければならないことに沢山のお金がかかる。だから援助を必要としているということだろうと思います。従って援助のニーズというものはそこにあり、それに必要なプロセスとして、ご指摘にあるように非常に制約というものがあるのは事実です。安全を第一に考えますので、イラクの国内に入っていって調査をするというのは、確かに色々な日本のミッションが入っていくということはやっておりません。しかし、詳細についてはセキュリティーに関わる話なので控えますが、第三者的な機関を利用しながら、出来る限り通常のODAプロセスに近い形で色々なチェックを行い、色々な調査を行うということをやってきています。通常で出来ないからやらないというのではなくて、通常ではできないということを承知の上で、その中で出来る限りの工夫をしながらやっていくというのが、援助の需要のあるところに対して我々が取り組むべき立場であろうと考えています。
 それから戦争による破壊に対する賠償と復興の関係ということについてのご指摘がありました。この一枚紙の地図で復興支援について日本が行っている場所が、件名だけですけれど挙げております。我々がやっているのは非常に多岐に渡っていますけれど、例えば水の供給であるとか、病院の修復であるとか医療器材の供与、あるいは電力関係の復旧とか、そういう人々の民生の安定に直結するような部分をやっていこうとしています。この賠償と支援の関係については、頭の中では理屈としては一つ考えられるというか、頭の体操としてはありえるのかなと思いますけれど、率直に申し上げて、我々が今やろうとしている支援の中で、あまりこういった関係を立ち止まって考えて、これは右、これは左というふうにやるというのは、現実に即していない感じがします。そういう意味で、こういった問題が直接的に惹起されるような側面というものは、私共の実感として起こってこないというのが正直なところです。更に若干蛇足として申し上げれば、例えば平和の定着というものを考える際、そこにはやはりそれに先立つ破壊というものがあったわけです。破壊というものがどういう形で行われたものか、多分色々な形があり得るかと思います。ただ平和の定着というものは、復興の局面においては和平の良さといいますか、平和の配当という言い方をすることもありますが、そういうものを住民に対して示すことによって紛争の状態が再発することを防ぐということを基本的な考え方としていますから、例えば、破壊の形態というものが、どういったものに起因にするかということは、確かに全く無視するというのは良くないかもしれませんけれども、ただそれによって破壊されてものを修復することによって、より大きな意義があるのであれば、それは取り組む価値があるのではないかという気はいたします。例えばボスニア・ヘルツェゴビナの紛争の時に、ある町で、ムスリム・コミニティーとクロアチア人コミニュティが全く別れて生活していて、そこを繋いでいた橋が壊されたということがあります。この橋を壊したのが戦争犯罪かどうかという議論があるかもしれませんけれど、例えばその場合でも、その橋を修復することが2つのコミュニティの融和に資するのであれば、それはやる価値はあるだろうと思います。ですから、そもそも私共がイラクでやろうとしているのは、こういった賠償云々というのは若干実感しにくいなーというのが正直なところです。先週サマーワのあるムサンナーの県知事が来て、日本の支援に関してムサンナー県には電力不足の面がまだあると、そういった面での支援がまだ必要であると言っておりました。それは正に現地における支援の必要性を当事者が訴えたということであって、私共色々な制約がある中で、そういった訴えに対してはできるだけ答えて行こうとして、先ほど申し上げたような色々な工夫をしながら調査を進めていくことをやっているところです。
 イラクの政治情勢が安定した後で取り組む方が、実のある援助を実施できるのではないかということは、そういったお考えもあるというのも、確かに色々な意見があって当然ですから、理解しております。しかし、まさに今回の会合でもイラク人自身が言っていたのは、民生の安定というものが治安の改善に資するというところもあるんだと、従って国際社会が約束してくれた援助というものについて感謝しているけれども、より円滑な実施を求めたいということを言っていたというのが、やはり今対応が必要であるということの答になると思います。

司会(神田)
 ありがとうございます。5点に関して、いくつかの点についてはまとめて、それで5番目の点に関しては同感という形でお答え頂いたと思います。
 多くの方から追加のご質問があると思います。なぜイラクにこれほど急ぐのかということ。まず、みんなに中に納得できる形で浸透していない。
 司会があまりしゃべりすぎのもなんですが、私の方から一点だけコメントというか質問したいなと思うのは、圧政20年という話がありました。今のイラクの暫定政権からすれば、そういうふうな観点になると思いますけれども、しかし80年代のサダム・フセイン政権に巨額のODAを出していた日本政府の立場として、圧政20年でその間に停滞していたというふうな片付け方、そのことに対することはどう考えるのかということを、ここは是非聞いてみたいなと思います。サダム・フセイン政権は確かに圧政でしたけれど、そこに対して80年代最も多額のODAを出していた日本政府があり、社会主義的な色彩の強い政策でありながら一定の経済成長はしていたということ。そして民生に対する手当もある程度あった、ということが91年の湾岸戦争並びにそれに伴う経済制裁によって徹底的に破壊されてきたという流れがあって、その原因の元はと言えば圧政かもしれませんけれど、そこを20年という形で片付けてしまっていいものか。過去のODAをどう総括するのか。日本政府のご判断は。こういった点はイラクの復興会議では全く議論されないのかどうか。

河野
 一番最後の、過去についてどう総括するかについて議論が行われたのかどうかという点についてだけ申し上げれば、そういったことは議論の中では特に出なかった。むしろ今必要な支援は何か、今後どういうふうに進んでいくかという言い方であって、勿論そこは過去どうであったかということは検証する必要はおそらくあるんでしょうけれど、今回の会合でそれが問題にされたということはなかったということだと思います。日本として過去の体制下においてしてきたことをどう総括するのかということについては、多分色々なその時々の状況というのがあったんだろう。後から見てそれが正しかったかどうかということは、現地点において私が評価を下せるだけの材料は持っておりません。あれが誤りであるという見解は勿論あるでしょうし、当時においては必要なものだという判断もあるだろうし、そこは色々な歴史の判断、評価はあるだろうと思います。

司会(神田)
 今現在のご見解ということをお聞きするだけではなくて、そういったことは随分難しいだろうという問題提起をさせて頂いたわけですが、司会がべらべらしゃべるのもなんですから。他の方のご質問は。

鈴木
 鈴木です。イラクへの支援について1つ具体的に提示してみたいなというものがございます。それはイラクでこのような開発戦略を書いてくる、というのを見ても、またイラクが1970年代、非常に国内においては医療や保健施設、教育等が充実していて非常に優秀な人々だったんです。イラク自身が言っているように彼らは直ぐにでもドナーになれる人々だと思うんですけれど、それがこの20年間の戦争で非常に荒廃してきているし、若い人たちが未来に対して展望が見えないという状況になっていると思うんです。一種の戦争文化みたいなものが形成されてきて、そういうような状況というのは、イラクの5年後10年後を考える時に一つの不安材料になると思うんです。そのために日本が15億ドルも無償資金を出そうと考えているんですが、例えば今のイラクにおいて青年達、女性も含めて、海外に留学できるようなシステムを日本が提示したらどうかなと考えました。日本でも明治維新の時に日本の優秀な人材を海外に送って、それが5年後10年後、明治維新の国造りに役立ちましたよね。戦後においてもそうだった。そういうような長期的中期的に渡ってイラクの人たちが中心になって国造りを担うシステム。そういったことを日本側が率先してやってくださったらいいんじゃないかなと思いました。

河野
 どうもありがとうございます。人材育成の重要性だと思うんですけれど、それは正にその通り。今回出来たイラクの暫定政府自身も、当面必要なのは色々な意味での人材育成、それから制度の構築であるということは強調していました。かつ今なかなか治安状況ということで限界がある部分がありますけれど、実際に始まっている援助には人材育成が多くのポーションを占めていると思います。日本自身もテレビで若干報道されたのでご覧になった方もいらっしゃるかと思いますけれど、色々な準備を経て、最近ではイラクの若手外交官に日本に来てもらって、日本で色々講義を受けてもらって、テレビ番組の中では最高裁判所視察が写っていましたが、そういうことをやったりとか、今月にも医療関係の、これは無償資金協力の方も少し連携した格好での技術研修をやったり、実は今日もこの会議のために来日したイラクの援助の受入れ担当者たちに、JICAで日本のODAシステムについて研修を受けてもらっているんです。そういう研修のコンポーネントというものは非常に重要と思っていて、出来るところからやっていこうと。でも一部、日本まで来るのはなかなか大変なこともありますから、エジプトにあるこれまで日本が供与した、協力した実績のある病院を使っての医療関係の研修とか、あるいはヨルダンでの統計とかの地道な研修なども始めているところです。例えば留学生みたいなものをというようなことも、ありえるのだろうと思っています。日本が行う援助を全部それに振り分けるかというと、やはり水が来ない、電気が来ないという現実にも対応しなければならないということもありますので、そこはやはりバランスを取りながらということになろうかと思います。ただおっしゃる通り、特に若者の育成については非常に重要であるというのはおっしゃる通りですし、NDSの中にも従来無かったものとしてYouthとかGenderとか、そういったことにも今後取り組もうと示されています。

司会(神田)
 今ご説明頂いたことは、このカラーの紙には載っていませんか。

河野
 こういう表を作るとプロジェクトサイトの明示という感じになって、技術協力に当たるものというのが、なかなか表われにくいのは事実です。一部は日本でやり一部はエジプトでやり一部はヨルダンでやりというのがあるので、確かにそういったものも、分るようにした方がいいかもしれません。

司会(神田)
 はい、ありがとうございました。

高橋
 ODA改革ネットの高橋と申します。今の西井さんの質問を少し補足するような形で具体的な形でご質問をさせて頂きたいと思います。今、配って頂いていますのが私たちODA改革ネットワークとして、今回イラク復興信託基金ドナー委員会拡大会合及び拡大会合のタイミングに合わせて、私たちのイラク復興支援に対する提言というものを表明させて頂いた文章です。これは主に今回の会合が復興支援信託基金についての会合であり、マルチの部分に関するものですけれど、私たちの提言では特に懸念を持っているのはバイ、2国間で行われる無償資金協力に対するものです。この日本円で約866億円にも上る無償資金協力を、今西井さんの方からご質問があったのと同じような問題意識から何を支援することを約束したのかということよりも、実際それがどういうふうに効果的に実施されているかということに対する疑問です。これらは、緊急無償資金協力という扱いになっていますけれども、私たちが調べた情報ですと、これまで政府が実施を決定したプロジェクトは11件で、金額にして570億円です。しかし、実際に実施されている案件は警察車両、自動車整備工場機械の供与の23億円と、消防車などの配備が21.9億円でしかありません。結局、570億円のうち実際に実施されているのは53億円にしかなりません。つまり、イラクに対して非常に多額のODAが約束されて、それも緊急無償資金協力ということで実施されるということで、イラクの人たちの緊急ニーズに適切かつ迅速に対応していると期待したのですが、どうも調べる限り、そうなっていなくてほとんど実施されていない。また、ある情報ですと、書簡交換は今年度中に行われるけれど、ほとんどの案件が来年度に持ち越される。それで果たして緊急無償資金協力と呼べるのでしょうか?昨年の10月に私がイラク関係について、やはり定期協議の場でご質問させて頂いた時には、予備調査というものを12月から今年の3月にかけてやり、案件はその結果に従って計画され、緊急に実施されるという話しだったかと思うのですが、1年経って今だに実施されているものが少ない。これでは、本当にイラクの人たちのニーズに応えていると言えないのではないでしょうか次に、実際に実施されている警察車両と消防車なんですが、今日頂いた資料を見ていくと、これはムサンナー県サマーワに何故だか集中している。つまりこれが「車の両輪」という話しかと思っていますけれど、なぜ消防車とか警察車両というものをムサンナー県サマーワ、そういう所の案件が優先されているのかという感じがしないでもない。つまり、民生の安定を考えれば、移動式の発電設備を必要なところに供与するなんていうのは、やろうと思えばできるものだという気がしているのですが、そうなっていない。つまり、そういう問題を含めて総合的に判断すると、「車の両輪」ということに、強い政治的意図があり、そういう援助は様々な問題を波及的に引き起こすという懸念を持っています。
 今回、無償資金協力が緊急で行われたということで、色々な手続きが簡素化されています。社会環境ガイドラインの適用にしても、業者決定のプロセスにしても不十分で、貴重な税金のうち15億ドルという非常に大きな金額が適正に使われているのかどうか疑わしい。緊急の議論にも繋がるんですけれど、1年くらい待たされの実施ということでは、緊急に適切に応えているとは言えないのではないか?つまり、先ほどのMDGの話しがでましたけれども、今貧困で亡くなっていく人が一日3万人いて、一年300日と考えた時、約1,000万人での人が亡くなっている。もちろん、日本で全部の問題を引き受けられるわけではないですけれども、緊急といって相当額をイラクに振り分けて、この貧困問題をへの対応を後回しにしたことは事実です。これが果たして日本がODAでやりたいことなのでしょうか?そして、その政治的意思決定を、NGOですとか市民に対してきちんと説明しているでしょうか?そういう疑問から、今回こういうレターを書かせて頂いたわけです。
 物事の考え方だと思います。つまり今イラクに行けばそれはたくさんのニーズがあるでしょう。私は、日本国際ボランティアセンターのスタッフでもあり、イラクにも行きましたけれど、ニーズは本当にたくさんあります。つまりニーズを見てフォアキャスティング、これからこの問題を解決なければならないと説明していけば、イラクに相当な金額を振り向けざるを得なくなります。だけど私たちが日本のODAに求めているのは、10年後20年後に国際社会にこうなってほしいと考える社会のあり方に向けて、適切に使っていくことです。それはミレニアム開発目標や貧困削減を実現するために構造的・根本的課題にしっかりと取り組んでいくことだと思っています。つまり、貧困がなくなった社会を目標にして、そこからむしろ今の地点までバックキャスティングして、今何をなすべきかということを考えるという中でODAを位置づけることです。それが僕は、ODAに対する外務省とNGOの考え方の根本的な違いかと思っています。そういうことも含めて、世論を無視して政治的判断からイラクへの支援額がきめられらことに対して、外務省はどう考えていらっしゃるか意見を聞かせて頂ければと思います

司会(神田)
 はい。よろしくお願いします。

河野
 実際に実施されているのはまだ少ないんじゃないかということについては、例えば色々な警察車両でも消防車でも発電機でも、今回の会合でとある参加者が言っていたことを申し上げると、残念ながらそういうものはセブンイレブンには売っていない。つまりオーダーメードで作らなければならない。そのためには時間がかかる。調査も必要だ。そういうことなんです。確かに緊急に何が必要かというところを特定しそれについて援助をしたいわけですが、実際のデリバリーについては時間がかかるということは現実としてあるということだろうと思います。日本は早い段階から積み重ねてきて、今の15億ドルのうち13億ドルについて実施ないし決定済みですけれど、現在はそれを着実に実施してきていているということです。早い段階で決めたものについては、徐々にこの秋くらいからデリバリーもされていくと期待しています。警察車両と消防車について、サマーワですねという話しだったんですが、真ん中のバグダット及びその周辺を見て頂くと防弾車両供与とか消防車整備とか、警察車両1,150台というのがイラク全土というところにあります。これはムサンナーも対象になっていますけれど、対象としては全土ということになっています。この表から分かるとおり、ムサンナー県というのは優先されていることはありますが、決してそこに全てやるというわけではありません。全体の規模の配分からいけばムサンナーというのは、そこに大半が行っているというのではなくて、むしろ全土に渡っているという方が正確であると申し上げておきます。
 ちょっと緊急無償の実施の方法は、通常の方法とチェックの仕方とか、そういったところがどう違っているかということですが、これにつきましては無償資金協力課長の方から報告して頂きたいと思います。

鈴木
 無償資金協力課長の鈴木です。緊急無償が緊急・・になっていないじゃないかというわけですが、私たちも一刻も早くやりたい、やりたいと思いながら毎日を過ごしているわけです。色々な問題があって、手続きの透明性とか、ちゃんとした調査、ニーズに合ったものをやらなければならないというご指摘の点は、いわばスピードと若干トレードオフなんです。もっと早くやりたいと思えば、世界中探して、在庫のあるものを取り集めてくれば早いわけですが、そうはいかないわけで、ニーズ及びスペックをきちっと調査をして、それで入札も行います。緊急無償に於いてもちゃんと入札も行ってやるわけです。そういったことをやっているとなかなか時間がかかる。我々ももっと早くやりたいんですけれど、イラク側の問題もある。先方とのニーズの調査も、しょっちゅうアンマンに来て頂いて、電力局長だとか向こうの担当者に来て頂いて、うちのアンマンの大使館員と会議をやったり、私も参加しましたが東京アンマンでテレビ会議をしましたり、イラク側、JICA、コンサル、外務省4者併せて会議をやったり詰めをやったり、色々なプロセスを経た上でやってきているわけです。なかなかそこは二律背反という形で緊急といえどなかなか思ったように直ぐにはできない。一般無償でやったらもっとかかるわけです。更なる手続きが必要なわけですし、更に言えば財政当局との協議も必要です。我々も明日、明後日ということになっていないかもしれませんが、適切な手続きを踏みつつも緊急にやっていると私は自負しております。2番目にムサンナーに多いんじゃないか。車の両輪。表を見て頂くと確かにムサンナーが多いように見えるんですけれど、よくご覧頂くとその多くが草の根なんです。草の根、人間の安全保障。件数は多く見えますが一つ一つは小さい案件ではある。小さいけれど地元の人たちに直接役立っている案件です。私は先週サマーワに出張に行って実際に経協サイトを見てきましたけれど、浄水施設をサマーワの田舎の更に田舎、車で1時間も2時間もかかるところで設置して浄水しているとか、あるいは農村に道路を造っている。私は何でこれができるかというと、自衛隊の警備があって奥地まで警備についてきてくれるからこそ出来るんです。そういうことができて、ある意味でバグダットや他の所と比べたら、非常にキメの細かい援助ができているわけで、いわば人間の安全保障そのものなんです。学校を建て直したり、小さな病院に機材?げたり、地道な援助ですけれど、ある意味ではニーズに密着した、正に人間の安全保障の実例そのものだと、ムサンナーについては私は自負しております。

司会(神田)
 色々コメントはまだあると思いますが、これは議論をし出すと尽きないと思いますので、高橋さん以外の方でコメントを。ここで是非発言したいという人があれば。

児玉
 児玉と言います。先日新しく政策課長さんになられた上村さんだとか自衛隊でイラクにいっていらっしゃった上村さんと話をする機会がありまして、車の両輪ということで、うまく日本はカンボジアだとか色々な所の経験を踏まえて自衛隊が出た時に、ODAとリンクしていくということで、多少は成長しているのかなというふうにも判断できると思うのですが、今回外務省で4人か5人イラクに行かれて、その後実際の実施を自衛隊の方でサマーワに関してはやるということを伺ったんですけれど、今後JICAとかJBICの方で、あの治安状況の中で専門家を出さないということで、確かにそうですけれど、JICAの専門家という名前ではなくて、外務省の大使館の専門家なり、雇い方、援助の専門家、本当に専門家が行った方が効率性、透明性など色々上がっていく可能性が高い。その中にNGOも1つのオプションとして考えて頂ければ有り難いなというコメントです。

河野
 私共としても、中に人を送って調べたい。その中で色々な工夫というものを考えていきたい。これはずっと思っている話ではあります。そのために色々な工夫しなければいけないというのは、正しくその通りなんですが、やはり今のような治安状況を前提とするならば、人の安全には最大限注意しなければならないと思っています。イラクに対する支援の実施方法については、まさにその状況を踏まえて相当フレキシブルにやってきているところであり、かつ現地になるべく負担をかけないという考え方でやってきている。普通であれば大使館なら大使館に、バグダットならバグダットに、必要ならば地方にも出張してもらって、ものを確認する、探す、議論をする、ということをするわけですが、我々がそうすることによって発生するかも知れない人的な被害、リスクは極小化したいと考えています。それはサマーワにいる人たちについても同様です。従って普通ではやらない、東京とイラクで関係する機関との間で、先ほどテレビ会議とありましたけれど、テクノロジーを使って何とかなる話しであればそれを使うということです。そういう工夫をしながらやっている次第です。調査に関しても、現地で動いても大丈夫な人というのを見出して、そういう方に中で調べてもらう。それを報告を受ける。そういうやり方でやっている。そういうのを今やって、お話しの通り、状況が改善して人を送れるようになれば、是非人を中に入れてやっていきたいと思っています。

小川
 小川です。今の質問とも関連があるんですが、自己責任という言葉が一時非常に色々議論を呼びまして、考え方が大きく2つに分かれて戦わされた時期がございます。その後、海外の考え方、国内でも少し時期がたって落ち着いて見てみようという時期もあったと思いますが、その後、外務省といいますか日本政府といいますか、そういう民間の人間が、NGOなんかの人間が、あえて言うなら危険を冒して入って行く、しかしそうしなければ得られない情報があって、それが大きく国の方針、その他にも影響していかざるをえないというふうな環境というものが実際にあるんだということが認識をされてきていると思うんですが。確かに危険であり、守るということを最優先するなら、外務省といいますか日本政府の立場としては、行くなということがどうしても出てくるんですけれど、その辺りに何か新しい工夫とか、国のネットワークから別の所でそういう情報を得ていくということのために、側面支援をしていくという方法で、何か新たな考えとか方法が生まれて来てはいないでしょうか。

中野
 民間援助支援室の中野と申します。今おっしゃられた話はイラクとか一部地域の退避勧告が出されている地域において、日本のNGOが活動する場合、政府としてどう関わっていくか、どう支援していくかという話しなんだと思いますが、まず邦人保護という観点からすれば、退避勧告地域というのはやっぱり危険な地域なんで、そこには入らないで頂きたいということだと思います。他方でNGO活動について見ますと、NGO自身が自立的、かつ自らの判断と責任において活動される団体ですので、退避勧告地域に、あるNGOがどうしても入るといった場合には、そこはギリギリ詰めていくと、自らの判断と責任において入ることには、政府としては止められないということだと思うんです。しかしながら、政府としてはそのような場合にもできるかぎりの安全を確保するために、邦人保護の観点から出来る限りの支援はしていくということで、情報提供とか現地の大使館としてできることも、イラクについてはむずかしい面があると思いますが、支援はしていくということではなかろうかと思います。

河野
 ご参考として付け加えさせて頂くと、人が入ることに係る問題は、日本だけでなくイラクの復興に関わる全ての国、国際機関共通の問題意識としてあって、昨日の会合の場でも折に触れてその話は出ました。その時に何人から出た話として、こういう支援、いわゆる人道支援とか開発援助とか、こういった世界に関わっている人々、そういった機関に職を求めて来た人々は、当然ながらリスクと無縁ではないということは承知の上で彼らは来ている。だからリスクそのもの、リスクがあるということが問題で中に入らないというわけではない。ただ、リスクを犯して中に入っていって、何かあった時に、そのことがその後のオペレーションに影響を与えることを考えた場合には、それは破滅的なものになる。そういうことを考えているんじゃないかという議論があったことをご紹介させて頂きます。

高橋
 もう時間もないので直ぐに次の議題に入らなければいけないんですけれど、一言だけ。何もイラクの話を私たちが持ち出しているのは、何も難癖をつけようとしているのではなくて、よいODAにしていきたいという同じ気持ちで質問させて頂いているということを、先ず一言申し上げておきたいと思います。冒頭五月女さんがおっしゃったように、この50年間のODAを振り返って、次の50年をどうしていくんだろうと極めて大事な時期に来ていて、今回のイラクのODAというのが、ある種ODAの将来を占うケースだとするならば、どうもその観点から私たちが見たときに、このイラクへのODAの使い方はどうも望ましい方向ではないんじゃないかということです。先ほど課長から「サマーワでの案件は人間の安全保障ですよ」という話がありました。確かに復興・平和構築は、治安の問題と政治プロセスの問題と民生支援の問題、この三本柱をどう組み合わせるかということが大事です。しかし、治安、政治プロセス、復興の間の調整が重要だということと、軍に人道支援が協力をするということの問題を混同してはいけないと、1つ申し上げておきたい。詳細は議論しだすとなかなか大変な問題ですので、別途時間を作って話し合いたいと思っています。次の議題の中期政策でも「人間の安全保障」ということがあり、それを日本のODAがベースするとはどういうことかということにも繋がって来ますので、引き続き機会がありましたら、議論させて頂きたいと思います。
色々な言い方があるようですが、外務省側の表記に従って『ムサンナー県』『サマーワ』という言葉に統一させて頂きました)

司会(神田)
 ということで、引き続き。時間がないんですけれど、大丈夫でしょうか。

【協議事項(2)新ODA中期政策の策定について】

司会(高橋)
 この問題を関西NGO協議会の神田さんからご説明願います。

神田
 突然司会を変わりましたけれど関西NGO協議会と「環境・持続社会」研究センターの共同提案という形で、新ODA中期政策の策定についてということで、大きな3点について議論していきたいと思います。
 ODA中期政策の策定、改訂作業が進んでいることに関しては、あえて触れませんけれども、その中で1つは現行ODA中期政策の評価についてで、特にこの場で確認していきたいなというふうに思っていることというのは、現行ODA中期政策が99年に策定された時に、ODA・NGO定期協議会の中で不十分とはいえ、外務省から原案、こういったポイントがあるよといったふうなことが提示され、それに対してNGO側から必死になってコメントしたという経緯があります。特に当時NGO・外務省定期協議会の下に、長ったらしい名前ですけれど、「21世紀に向けてのODA改革懇談会最終提言フォローアップ小委員会」などというサブグループが設けられておりまして、これは外務省側は政策課長が担当されており、NGO側から6名だったと記憶しておりますけれど、ここで相当細かく現行ODA中期政策の策定において議論してきたということがあります。実はこういった所の議論の蓄積というものが、どのように外務省で取り扱われているのかということが、私は非常に懸念、大きな関心事でもあります。と言いますのも、この定期協議会自体も8年目に入っておりますけれども、おそらく外務省で8年前のことをご存知の方は、五月女大使は別にして他の方でご存知の方はまずないでしょうし、またNGO側も、私も途中からの参加で、今の顔触れの中で最古参になっておりますけれど、それでも最初から知っているわけではありません。ただODA中期政策に関しましては、私が関わってからの議論でしたので、ある程度の記憶があったりしますけれど、その中で特に評価を拝見して、色々なポイントについてコメントしたい点もあったんです。ここは評価のことについてやることが主眼ではありませんので、NGO・外務省定期協議会の絡みで申し上げますと、NGO側から現行中期政策に対する評価として出されたポイントとして、「環境影響評価に基づいて事業を停止、中止する」という文言が私達の側から見て、日本のODA政策関連文書の中で初めて実施されたのが現行中期政策であった。
 それに対してこの3月に出ました現行ODA中期政策の評価を読ませて頂きますと、そういった記述がないんです。99年の、その表現がいかに大事かということは、その後JBICやJICAで環境社会配慮ガイドラインが作成されていったことに、私などは少なからず影響はしていると見ているんですけれど、そういったことに関しても、おそらくJICAやJBICへのヒアリング、あるいは当時のNGOの関係者にヒアリングをすれば明らかに、今の中期政策のポジティブな評価として挙ってくるはずではないかと思うのに、そういったこともなかった。その1つはここでの議論がどういうふうに外務省内で取り扱われているのか、蓄積されているのか、あるいは全くこんなものは当時の担当者のファイルに眠ってしまっているよという懸念があります。そういったことも含めてですけれど、提言として3つ入っております。政策評価を限られた委員の方々で構成するんじゃなくて、委員を公募する。これは色々な委員会に対して私たちが提案していることでもあります。評価プロセスを公開するということも大事ではないか。そして私なんかは日頃遠方に暮らしておりますから、東京に再々来られるというわけではありません。オブザーバー参加を認めていましたよと言われても、そのためにわざわざ東京に行くというのは考えずらい。意見書表明というのは容易にできるということもあります。そういった手続きを採用するということは大事じゃないかと思います。3点目は評価の中で特に定性分析的に留まっているところがあまりに多いというのがあります。定量分析できる可能性のあるところも、その模索がされていないんじゃないかという懸念なんかもあります。その辺をやるべきという提言に留めておきますけれど、先ほどの定期協議会との関係とこの提言に対するコメントに対してはお答え頂きたいと思っております。
 2点目。これからは今後の話しになってきます。中期政策の改定プロセスというのはODA大綱の改定プロセスと同等のことくらいは想定されているというふうに、岡庭課長に9月に大阪がお越し頂いてお話しを伺っておりますけれども、ODA大綱というものがパブリックコメントや公聴会をやられた割りには、意見がどういうふうに反映されたのか分りにくい、あるいは全く反映されなかったというふうなことで、NGO側の間でも不信感が広がっているというのが現状です。ですから中期政策に対して今ひとつ関心が広がりにくいなというのは、もう大綱の時に疲れたよ、言っても変わらないじゃないか、というふうなところがあります。それでも私のようにへこたれずに出てくる者だけがこういうことを繰り返すわけですけれど、今現在原案を外務省で執筆されているというふうに伺っておりますけれど、こういった原案作成段階でもう少し公開性を確保すべきではないか。もちろんこういった場を活用するのも1つであろうかとも思います。そして原案作成に、市民・NGOの参加を受け入れていくことによって、従前とは異なった視点、見識がそこに反映される可能性があるのではないかという期待があります。これは提言の1つ目です。2つ目は、これも是非実現していきたいところですけれど、パブリックコメントと公聴会に色々な提案、提言が出てくると思いますけれど、外務省においては作業が大変かと思いますけれど、かつてJBICが環境社会配慮ガイドラインを作成したときにやられたように、出てきた意見を全て並べて、それの諾否、どういうふうに反映されたか、されなかったかを入れて、その理由づけというものをきちんと後付けでも結構ですので、報告して頂きたい。これによってパブリックコメントと公聴会に対する臨む姿勢というものが相当変わってくると思いますし、どういうふうにすれば私たちの意見が、こういう場に反映されるのかということを市民側が学習していく上で大事なプロセスではないかと思います。このことを踏まえた上で、現在考えておられますODA中期政策改定プロセスのついて、詳細に、公聴会を何ヶ所考えています。パブリックコメントの期間はこの位の期間を考えていますといった点まで含めてご説明願いたいというのが2つ目の点です。
 3つ目は内容に関しまして、これはいくつも論点があります。今日お配りしたペーパーの中にも多くの論点がありまが、今日は時間が越えてしまっていますけれど、3つのポイントに絞ってご説明頂けたらと思っています。1つ目は先ほどから出ています「人間の安全保障」ということに関して、これを優先的に打ち出されてきたということに関しては歓迎したいとは思うんですけれど、人間の安全保障というものは考え方、その扱い方によっては諸刃の剣といったような色彩も含んでいるのではないかと思います。人、コミュニティなんかを中心に人間の安全保障を考える概念の一方、カバナンスを強化しようという中での治安、軍隊、軍というのは大袈裟かもしれませんが、治安の強化とか国家の権限評価という意味で、逆に人の自由ですとか民主主義というものを制約してしまうというふうな考え方も他方あるという懸念があります。これから先外務省の方で、この人間の安全保障を中心課題としてODAを実現していこうとする中で、外務省の方ではどういったところに重心を置かれるのか、ということのお考えを伺いたいのが1つ目です。2つ目は優先課題として当初は「貧困削減」と「平和構築」が盛り込まれると伺っておりました。そのことに関しては私共は異論のないところではありますけれど、その後、大綱には4つの優先課題があるのに、中期政策に2つの課題しか載せないのはおかしいという議論があったと伺っておりますけれど、4つに復活しまして、特に「持続的成長」ということが入り込んできたということがあります。実は貧困とか戦争・紛争というのは勝手に生まれてくるのではなくて、色々な人為的な理由ですとか外因的な側面というものがあって生まれてきている。そして成長を極端に追求していくあまりに、色々な軋轢が生まれてくるというケースが世界中に多々あるということを考えますと、その当たり、余程記述を上手い具合に考えなければ、1つの政策の中で矛盾したものが併記されるんじゃないかという懸念があります。特に持続的成長ということを考える中で、従来型の開発経済で謳われてきたトリックル・ダウンという、国家の経済のパイを大きくしていけば、やがてはその利益が底辺層まで裨益していくよというふうな発想での持続的成長というものの限界、あるいは矛盾が多くの現場で指摘されてきていることですけれど、その当たり外務省において、新しい機軸というものを考えたかどうかということを中心に伺いたいと思「ます。
 最後に、実施に向けた方策という中で「現地機能の強化」ということが強く謳われております。現地化していくということに関しましては、私個人としては歓迎したいと考えております。その現地のNGO、現地の地域住民が開発の主体となるべきである。開発協力の主役は向こうであるよという観点からしても歓迎したいんですけれども、一方で現地の機能を強化していけば出先の大使館ですとか、JICA、JBICの出先機関なんかの能力ですとか裁量なんかに左右される恐れがあるんじゃないかという懸念があります。そうするとODA供与国によって全く違ったODAの姿が出てくるのではないかというような懸念が一方ではありますし、あるいは受け取りの国政府の民主主義の度合いによってもこれが相当変わってくるのではないか。地域住民が主体となる、住民が参加して開発協力を行うという中では、情報公開が不可欠ですけれども、国によってはそういうことが全くないという国、例えば中国なんかそうですけれど、そういった国がそこで現地主導でというふうになった時に、どういったODAが生まれるのか、むしろいびつな構造が生まれるんじゃないかという懸念があります。ですから現地機能の強化と併せて徹底すべきことは現地における公開と参加の徹底というふうなことが、より重要になってくると考えます。けれども外務省から頂いた資料によりますと、透明性と効率性の議論ということが書いてございます。透明性と効率性の議論というものに関して、すごく逡巡する表現で書いてあって、国際的な開発の理論と少しずれているように見受けます。開発というものは透明性を確保して進めていくことによって、長期的な観点に立てばより効率性は増すというのは色々な開発機関、NGOだけではないです、世界銀行、国連機関なんかで共有認識として醸成されてきている認識であろうというふうに考えているんですけれども、短期的に、例えば3年間で終えなければならないという観点に立った時に、開発実施が遅れるという意味で見れば、透明性、効率性が、効率性は何を持って意味するかによりますけれど、損なわれるという考え方があるのかもしれませんけれど、あまりに日本の都合、日本政府の都合、あるいは近視眼的な見方ではないかと思う次第ではあります。ですから効率性の確保のために是非徹底した透明性というふうなことを、今回のODA中期政策において盛り込んで頂き、前回のODA中期政策の中で環境配慮ということが謳われてそれが実現して「ったということに並んでこの事が実現していくことを強く希望する次第でもあります。この事に関しての現段階での検討状況なんかを教えて頂けると幸いです。
 多くをお話ししましたけれど、ODA中期政策の評価、改定プロセス、内容に関して説明させて頂きました。「環境・持続社会」研究センターからの意見書というものも後ろにつけておりますのでご参照ください。

司会(高橋)
 10分ほど予定の時間を過ぎていますけれど、もうしばらくおつきあい願えるでしょうか。それでは岡庭課長の方から、お願いします。

岡庭
 政策評価の部分について、NGOからも委員を公募してほしいという意見があるというのは前から聞いています。色々な意見を反映することは重要だということは理解するんですけれど、同時に高度の専門性も必要なので、2つの観点から慎重に考えなければいけないと考えています。NGOにおいても評価というものをやっていると聞いているんですけれども、そちらの方で委員を公募しているというような例があるのであれば、実際公募する場合、どういう基準、どういうやり方で公募しているのかを参考までに教えて頂けると、我々も参考になると思います。定量的な評価について、計画の段階で定量的な目標等を設定していないと実際評価の段階で定量的なことを言うのはかなり難しくて、むしろ後付でその定量的なことをやろうとすると、評価側の恣意的形で行われるというような恐れもあると思います。従ってこれもやり方の問題だと思いますけれど、例えばNGO定期協議会の元にある連携推進委員会で、これを詳細な議論をいただくことも考えられます。ODA中期政策改定プロセスにつきましては、基本的に広く国民の声を聞いて進んで説明するという基本姿勢で対処したいと思います。今の時点で要望は色々伺っておりますけれど、具体的にいつどういう形で何をプロセスとして盛り込んでいくか、まだ詰め切っていない。何ができるかということを真剣に検討中ですので、今日何をやるとかやらないとか、いつやるかとかは申し上げられません。できる限り、できることはやりたいと思っています。
 内容の面について第1点、人間の安全保障。これは基本的に個人、地域社会を保護して強化し、自立ができように助けるという考え方です。一方、政府の存在を否定したり、国家の安全保障と対立する概念として捉えているわけではありません。持続的な成長を取り上げるということになっていますけれど、これを取り上げること自体が、貧困削減を進めるということと矛盾するとは考えていません。勿論成長が貧困層の犠牲のもとに進められるということは勿論避けなければいけないことで配慮するという考えを持っています。貧困の要因に色々あるというのは、構造的要因、人為的要因など様々な要因があるということです。各国の政治的、社会的、経済的状況も踏まえて対処しなければならないということは、全くその通りです。

河野
 実施に向けた方策のところについては、私の所で担当していますので、私の方からお答えさせて頂きます。ODAの実効性を高めるために受け取り国住民、NGOが実施レベルのみならず政策策定レベルでも参加することが重要である、ということはその通りだと思います。同時におそらく政策レベルでのこういった人たちの参加というのは、一義的には被援助国の政府とその国の住民、あるいはNGOの間でまずやってもらうんだろうなと思います。PRSPを始めとする国の開発計画を作るときも住民参加、パブリックプロセスが必要であるというのはその通りであって、我々もそういうプロセスを経て作られたその国の開発計画に対して我々の援助をアラインしていくという発想でやっています。それが1つの大きな枠としてあって、具体的に我々の側でそういった受け取り国の住民であるとかNGOとかをどうするのかという、このことについては、これは皆様の中でご存知の方もあるかと思いますが、昨年来現地機能の強化ということで現地ODAタスクフォースというものを、その現地の大使館とかJICA事務所であるとかJBICの事務所であるとか、さらに必要な所ではジェトロも入ってある種チームという格好で、その国に対するODAを検討するようにしてきたわけですけれど、そこが例えば国別援助計画を作るときに、必ず現地のNGOとか国によっては学者、経済界、様々な人と意見交換をしてきております。今後ともそういった国別援助計画を作っていくに際しては同様にやっていきたいと思っています。そういった計画を作る時に限らず、もう少し広く現地のNGO(日本のNGOである場合もあるし、現地のNGOである場合もあれば、そこで活動する国際NGOである場合もある)や、広い意味での援助コミュニティの中での意見交換、情報交換を活発にやっていこうと考えていて、すでにやり始めております。
 中期政策の中でも色々なステイクホルダー、援助コミュニティの中の関係者との協議を活発にしていくという話しはなるべく盛り込みたいと思っています。他方神田さんからご指摘のあった現地の方に機能強化となると、現地によって対応がバラバラになるのではないかというところについては、これは率直に申し上げます。全く同一にはならないと思っています。正直に言って。同一性を確保するのは、おそらく残念ながら不可能だろうと思っています。それは平たく言えば現地にある日本側の体制が千差万別であり、ODAタスクフォースというチームで色々な智恵を集めるにしても、全く同じことを全てでやるわけにはいかないだろうということで、現実問題として若干の差が出るのはしょうがないと思っています。ただ一定のガイドラインみたいなものは我々から出して、ODAタスクフォースは何をすべきかという中で現地のコミュニティとかステイクホルダーにどう関わるべきかということは何か示したいと思っています。

司会(高橋)
 ありがとうございました。そうしましたら時間もないので、NGO側で言いたいことがたくさんあると思いますが、どうしても言わなければならないという方だけにお願いします。それでは、石田さん、お願いします。

石田
 「環境・持続社会」研究センターの石田です。共同で議案を提案させて頂きました。3点あります。
 1つは今お話しがありました現地での意見交換を活発にされたいということはすごくいいと思って伺っていたのですけれど、更に透明性に関しまして、やはり現地の住民にとっての情報公開はとても重要だと思います。例えば先ほどJBICの話がありましたが、実際現地のそこに住んでいる人にとっては、そのプロジェクトが行われるかどうかが一番必要な情報なので、どういったプロジェクトを今案件検討しているかということを、英語でホームページに載せるということが重要です。これは他のNGOなどJBICに話しはしているのですが、実はそういうのがまだできていない状況なんです。ですから、そういった意味での現地の住民に対する情報公開も、是非中期政策の中に入れ込んで頂きたいと、こう思っています。
 2点目は岡庭さん宛に要望書を出させて頂きましたプロセスに関してです。これは色々ご検討頂いているみたいで、どうもありがとうございます。ただ次回の定期協議が3、4ヶ月後ですとパブリックコメントが終わった位になってしまうのかなと、あせっています。是非、検討の結果を教えて頂きたい。パブリックコメントが終わった後にどういったコメントが寄せられたか、それに対するコメントなども是非きちんと公表して頂きたいと思います。最後3点目ですけれど、今日も充分議論が出来ませんでしたので、もし可能であれば、外務省定期協議の別の委員会みたいな形で中期政策の論点について、今論点整理のペーパーが出されていますが、それについてもう少し意見交換の出来る場を、3ヶ月後の定期協議では遅いので持てたら、という希望です。よろしくお願いします。

神田
 色々とありがとうございます。お答えいただかなかった点と、外務省の方でちょっと勘違いしているのかなという懸念がありました。その点だけ申し上げておきます。1つはこういった協議での議論の蓄積をどういうふうに考えられているのか、活用されているのか。これは和田課長の方にお願いしたほうがいいポイントなのかなと思います。少しお話し願えればと思います。
 評価について。おそらくNGO外務省共同評価というものをやってきていることと、この中期政策の評価と混同されて開発計画課の方で捉えられているんじゃないかと思います。共同評価というのは、連携推進の方に移したというふうな内容であってNGO側が誰が行くのかということは、そこに参加しているNGOの方で広く募ってやっているわけですけれど、ODA中期政策のような包括的な上位政策に関する評価というのは全く次元の違うことであろうと思っております。ですからこの枠組みの中で共同評価をどうしましょうということではなくて、ODAの大きな政策を評価するときに公募というプロセスがあってもいいんじゃないか。それは誰が手を挙げてくるかわからないと言われていましたけれど、そんな誰も彼もが手を挙げないと思うんです。ODAに関心のない人が絶対手を挙げるわけがないとは思います。JICAは環境社会配慮ガイドラインに関する、チェックする委員を公募されたそうですが、あれも無茶苦茶人が応募するわけがない。どういう役割が求められているかを明記された上で公募された時には、そんな無茶なことはないだろうと。公募の大事な点というのはこれはプロセスの透明性ではないかと振り返って申し上げておきたいなと思います。後ろの方は誤解を解いておきたかったということでお答えは結構です。和田課長の方から、今後協議を進めていくという上でも、私たちでどういうふうにしていけば、こういう所での協議が色々な意味でODA政策にとってプラスになっていくのかということを考える上で、ポイントとして少しお話し願いたいと思います。

和田
 提起して頂いた問題は結構大きな問題だと思っています。外務省とNGOとの協議における1回1回の議論はそれだけでも有意義だと思っていますけれど、単にその場での議論に留まらないで、もうちょっと制度的により良い援助を行うために、どうしたらよいかという点については、考えさせて頂きたいと思います。

司会(神田)
 ありがとうございます。過去のこういった協議の中での議論なんかも、外務省内でも色々検討して頂けたらなと思います。
 次回の協議会、今日は2回目です。3回目の協議会ということで年明け1月2月ということですが、第1回目の協議会において東京以外での開催をお願いしましたところ、五月女大使の方から前向きな回答を頂いたということもあって、開催は可能だろうと、準備をNGO側では進めていて、次回の協議会を大阪の方で2月の後半当たりに行えたら、と考えています。色々スケジュールもあるでしょうから、わざわざ大阪まで来て頂くのであれば、何月なら好都合かということと、平日にやる方がいいのか、土曜日にやるほうがいいのかということ、外務省側でのご都合をお聞かせ願えればと思います。

和田
 この場で確定的なことは申し上げられないですけれど、中期政策のプロセスもパブリックコメントの話とか、最終的にどういうタイミングでまとめるかということも考えると、2月の後半というよりは、もし中期政策について議論するのであれば、もうちょっと早く1月くらいにやった方がいいのかなという気がしております。岡庭さんの方でまだ検討中で確かなことは申し上げられないんですが、場合によっては関西で公聴会みたいなこともあるかもしれない。そういった時にそれとバックツーバックということでこの協議会を関西の方で開くということもありうるかもしれないと思います。差し支えなければ、こちらの方で議論させて頂ければと思います。

中野
 1つ確認したいんですけれど、ロジスティクな面なんですけれど、今回関西でやる場合、次回は外務省側が担当ということで、場所を借りる必要がある場合、これは借用など費用はうちが経費負担ということになるという理解でよろしいですか。その点も含めて今和田課長が言われましたけれど、検討した上で事務的に詰めていきたいと思います。アレンジの面で関西のNGO協議会の方にお世話になると思いますがよろしくお願いします。

司会(神田)
 もちろんそれは大阪開催となれば関西NGO協議会の方で、場所の確保は最大限、それ以外のことも含めて準備をやっていきたいと思っています。
 司会の不手際で多分に時間を超越して申し訳ありません。最後に五月女大使の方から締めのご挨拶をお願いします。

五月女
 11月5日に連携推進の外務省・NGO定期協議会を名古屋でやる。そういう時にも、なんかの機会に他の問題も併せて協議できればいいかなということを考えたことと、関西でやる場合、東京でやる場合担当課長に出席してもらえるということがあるんですが、東京を離れた場合それぞれの課長さんが出席できるかどうかなかなか難しい。ですから私は実質的なものをとって、それぞれの課長が無理なら、首席事務官、担当官が出席できるという幅を持たせてやるということが必要だなあと思います。そういうことで実を取ってやっていくということも考えなければならない。東京でやる場合、課長の出席も頂けると思いますが。そういうことを考えなければならないということを1つ。それから時間が超過するということをもう少し考えて、テーマに対する時間の振り分けもやった方がいいのかなという気がします。後になるものが時間が無くなってはしょってしまう。最初の方に時間をたくさんとってしまうということがあって、司会者の裁量で30分なら30分と区切っていった方がいいのかなと、そんなことを考えました。長い間、どうもご苦労さまでした。

中野
 民間援助支援室で皆さんとの間を取り持っていた斉藤憲二事務官が、アフガニタンに転勤になりますので、挨拶をいたします。

斉藤
 今日付けで辞令を頂いてアフガニスタンのほうに赴任することになりました。2年半、今の民間援助支援室に勤めさせて頂きました。丁度定期協議が年に4回ペースというところから今の全体会合と小委員会とに枝分かれをするというタイミングでした。それから2年、協議会に関しては順調に育ちつつあるのかなという印象を持っています。昔よく言われていたNGOと政府は対立関係だというような状況で、私も今の民援室に来るときにはそんなイメージを持ちつつ入ったんですが、実際皆さんと色々お話しをさせて頂く中で、大部そういう印象も薄れて、そんなこともないかという形になっています。かつその印象というのは外務省員、みんなも共有しつつある印象だと思っています。これから一層の対話が深まっていけばいいなと思います。有り難うございました。

以上
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