ODAとは? 国際協力とNGO(非政府組織)

平成16(2004)年度NGO・外務省定期協議会第1回ODA政策協議会議事録

※NGO:非政府組織(Non-Governmental Organizations


日時 平成16年6月18日(金曜日)14時00分~16時00分
会場 外務省南庁舎 396号室
司会 城所民間援助支援室長

1. 開会
2. 五月女NGO担当大使の挨拶
3. 出席者自己紹介
4. 報告事項
(1)ODA中期政策の見直しについて(15分)
(2)アフガニスタン復興支援の現状について(15分)
5. 協議事項
(1)危険地域におけるODAとNGOの協力関係について(30分)
(2)イラク復興支援について (45分)
6. 次回協議会の開催日程について
7. 閉会

配付資料:
1. 議事次第+参加者リスト
2. ODA中期政策評価結果概要
3. アフガニスタンに関する国際会議の概要と評価
4. 我が国のアフガニスタン支援
5. G8サミットの開発関連の成果文書

出席者

<外務省> 計:15名

1. 五月女NGO担当大使
2. 渡辺課長 政策課
3. 和田課長 調査計画課
4. 山田課長 無償資金協力課
5. 城所室長 民間援助支援室
6. 内川室長 通常兵器室
7. 松澤首席事務官 国別開発協力課
8. 中野首席事務官 民間援助支援室
9. 阿藤課長補佐 国内広報課
10. 河野事務官 政策課
11. 久保田事務官  国別開発協力課
12. 永瀬事務官 邦人保護課
13. 安田事務官 民間援助支援室
14.藤井事務官 同上
15.清水事務官 同上

<JICA> オブザーバー  1名

竹内 康人 国内事業部 市民参加協力室
      連携促進チーム、開発教育チーム

<NGO側> 計:17名

1. 伊藤文美 ODA改革ネットワーク東京
2. 江尻三郎 いきいき健康法普及協会(前若い芽の会)
3. 尾関葉子 アフリカの開発のための対話プロジェクト
4. 河内伸介 アフリカ日本協議会
5. 熊岡路矢 (特定非営利活動法人)国際協力NGOセンター
6. 国枝光雄 (認定特定非営利活動法人)カスパル
7. 鈴木瑛子 市民平和基金
8. 田辺有輝 (特定非営利活動法人)「環境・持続社会」研究センター
9. 野口瑞恵 (特定非営利活動法人)ネットワーク『地球村』
  10. 杉野歌子 (財団法人) 日本YMCA同盟
11. 石田恭子 (特定非営利活動法人)「環境・持続社会」研究センター
12. 神田浩史 (特定非営利活動法人)関西NGO協議会
13. 高橋清貴 ODA改革ネットワーク
14. 西井和裕 (特定非営利活動法人)名古屋NGOセンター
15. 森 祐次 農業・農村開発NGO協議会
16. 渡辺龍也 (特定非営利活動法人)国際協力NGOセンター
17. 榛木恵子 (特定非営利活動法人)関西NGO協議会(事務局)


<議事録>

城所室長: 皆さん、こんにちは。それでは、本年度のNGO・外務省定期協議会の第1回ODA政策協議会を開会いたします。
 それでは、最初に五月女NGO担当大使からごあいさつをお願いします。
五月女大使: どうもこんにちは。お暑い中、たくさん来ていただきましてありがとうございます。座ってお話しします。
 今日は久し振りに昔、お目にかかったことがあって、しばらくごぶさたしていた方々にもお見えいただきまして、非常に懐かしい気持ちで今日参加しております。
 私もNGO担当大使になりましてから1年半たちまして、皆様と御一緒に仕事ができるのは大変にうれしく思っております。今年は御承知のとおり、コロンボプランに日本が加盟いたしましてからちょうど50周年に当たります。御承知のように1954年10月8日にコロンボプラン、アジア・太平洋諸国の途上国を支援するためにできた国際機関に加盟いたしまして援助国としてのスタートを切ったわけですけれども、御承知のように当時の日本というのは依然としてまだ援助を受けている立場にあった国でありました。国際NGOでありますケアとかララとか、それから国連機関であるところのユニセフとか、そういった機関からの援助がまだ続いていた時代でありましたけれども、当時の日本はお金はなかったけれども技術を持っていた。その技術を使って、何とか途上国を支援したいという非常に強い情熱と意気込みを持って開始したということでございます。
 当時のODAの規模たるや、本当に微々たるもので、最初の年の1954年というのはわずか16名の研修員を受け入れたということと、それから専門家を28名派遣するというような、今から見ると本当に小さな形の援助でしたけれども、とにかく日本の技術を使って援助をするということで、お金はないけれども技術がある。その技術を使って途上国の人たちを助けようという意気込みから始まったわけです。そんなこともございまして、本当に数千万円かそこらの小さな援助でしたけれども、日本がODAを開始する。つまり、援助国としてのスタートを切った年から50年という節目の年であります。
 それともう一つ、皆様と御縁のあるところのNGO支援予算、無償資金と、それから補助金のスタートが今から15年前、今年がちょうど15周年に当たりますけれども、政府予算をNGO支援に使い始めてからちょうど15年になります。
 それともう一つ、私も関係しておりました民間援助支援室が創設されてから今年でちょうど10年になります。
 そんなこともございまして、今年は我々にとりましては50年の節目、15年の節目、それから10年の節目という面は、非常に一つの意義のある年になっているわけでございます。そういうこともありまして、今年の第1回目の政策協議が行われるということで、皆さんたくさんお集まりいただいてこういう会議が持てたことは大変うれしいことであります。 外務省の方も関係の各課長、室長、担当官も含めまして皆さんそろって出席しており、またNGOの方々もいろいろな分野にわたるNGOの活動分野からお見えになっていただきまして、積極的かつ建設的な議論がなされることを期待しております。
 特に、最近いろいろコントラバーシャルなことがたくさんございますし、意見はそれぞれあります。御承知のように政府の見解あるいは外務省の見解、あるいは外務省の中でも各部局ごとにそれぞれの考え方がありまして、それはなかなか難しい問題を抱えておりますけれども、今、言った建設的な意見の交換をもってそれを乗り越えていっていただきたい。そして、実りのあるいろいろな結果が出ることを期待しております。そういったこともありまして、今年はそういう節目の年であるということを念頭に置いて、そしてまた更によきプロジェクト、よき支援活動、よき予算の活用ということで、皆さんの意見を取り入れまして、いろいろとまた改善が行われるのではないかと思っております。
 去年もいろいろな国際会議が開かれました。アフリカ開発会議、それから水のフォーラム、いろいろな面で日本が絡む国際会議がどんどん増えてきております。皆様方にも政府の代表団に参加していただいていろいろと議論をしていただいたこともございますし、これからも政府とNGOの人たちが一致していろいろな問題に取り組んで解決していくということで、積極的な意見交換ができることを期待しております。
 お暑い中、たくさん御参加いただきまして本当にありがとうございました。簡単ではございますけれども、ごあいさつといたします。
城所室長: どうもありがとうございました。
 それでは、次に自己紹介になるのですが、約40名いますので時間を省略して、質問のセッションのときに質問をされる方はお名前と所属の団体を言っていただくということで割愛させていただきます。
 それでは、4番にございます報告事項に入らせていただきます。最初にODAの中期政策の見直しについて、調査計画課長の和田さんからお願いいたします。


<報告1:ODA中期政策の見直しについて>
和田課長: 調査計画課長の和田でございます。中期政策の評価について、現状その他いろいろ御質問をいただいておりますのでまずお答えして、要すれば更なる質問にもお答えしたいと思いますけれども、お手元に配布資料で「ODA中期政策評価結果概要」という3ページ物の紙が配られていると思います。この紙の1ページ目の1.に書いてございますが、東京工業大学の牟田先生を座長とする5名の有識者の先生方からなる中期政策評価検討会というものがございまして、そこが昨年度、約1年間をかけまして99年にできました現行中期政策についての評価をしてもらったわけですけれども、その結果の概要をまとめた紙でございます。この紙は外務省のODAホームページに既に出ておりますし、これは概略版の3枚物ですけれども、報告書本文も既にホームページに載っておりますので、そちらで全文ごらんいただくことが可能でございます。
 ちなみに、外務省のホームページはわかりにくいかもしれないのですけれども、外務省のホームページを開いていただいてODAホームページを見ていただきますと最新のものについては最初のページにずらっと並んでいまして、その中にも出ています。
 それから、ODAホームページの左の方にODA政策というものがありまして、そこから更に事項別政策というところにいっていただいて、その次に評価というものがあって、その次に評価報告書というふうにだんだん下りていけるんですけれども、その評価報告書のところをクリックしていただくと中期政策についての評価の全文も載っていますので、必要があればそちらで見ていただければと思います。
 結果の方についてはこの紙に簡単に書いてあるとおりなんですけれども、この5名の先生方に5回検討会議を開催していただきまして、私も途中からでしたが、参加しましたし、各省庁やNGOの方々もオブザーバーとして参加していただいた会合でございますけれども、会合の結果、現行中期政策については1ページ目の真ん中辺に書いてありますように、現行中期政策の「重点課題」、「地域別援助のあり方」についてはその妥当性と有効性、それから「援助手法/実施運用上の留意点」については適切性という観点から検証をして、2ページ目に書いてあるような結果が出たということになっております。
 ここに今、立ち入るのは差し控えますけれども、基本的にそれなりに有効あるいは妥当なものであったという結果になっておりますが、今後新しい現行中期政策の改定を行うに当たって、今回の評価の結果も踏まえて幾つか提言をいただいております。それが3ページ目に書いてありますけれども、例えば中期政策の位置付けと役割をもう一度考え直してはどうかとか、それから「結果重視のアプローチ」をより強調すべきだとか、「選択と集中」を重視すべきだ、MDGSへの取り組みに言及すべきだといったような提言もいただいた次第でございます。
 それで、実は5月24日にODA総合戦略会議というものがございました。その議事録はまだ作業中で7月くらいにならないとホームページに出てこないようですけれども、5月24日に行われたODA総合戦略会議で牟田先生の方からこの評価の概要について報告がなされまして、本当に簡単だったんですけれども、若干の意見交換が総合戦略会議のメンバーの間で行われました。その際に一部の先生からは、特にこの評価の提言の1番にありますところの中期政策の位置付けをもう一回考えるべしという点について興味深い指摘だという御発言があって、そもそも中期政策というものが必要なのかどうかというところから検討をすべきではないかとか、それから99年の中期政策と昨年つくったODA大綱とがだんだん性格が似たようなものになってきているような感じがあるので、今度もし新しく中期政策をつくるのであれば、大綱との関係をもう一度きちんと整理をした方がいいのではないかというような御意見がありました。
 それから、別な先生からはもともと中期計画というか、中期目標というような形で、かつては当面5年間でODAの総量をどうするというようなものがずっとあった時代があって、99年につくられた現行中期政策はどちらかというと量というよりは理念を中心にまとめた紙になっているんだけれども、また量の方向性を示すようなものをつくった方がいいのではないかというような御意見も出ました。
 いずれにしましても、若干そういうやり取りがありまして、最後に外務省の経済協力局の局長の方から、牟田先生を始めとする検討会で出していただいた評価の結果も参考にし、またODA総合戦略会議でのいろいろな御意見等も参考にして、外務省の方で中期政策の改定についての考え方を検討した上で、できれば次回以降の総合戦略会議で御報告をして、またそこで議論をしていただいてはどうかというような提案をした経緯がございます。そういうことで、中期政策につきましては一応評価の結果が出ましたので、これを踏まえて外務省の方で今後どうするのかということを今、検討しているところでございます。
 今後の流れは、ODA総合戦略会議での議論とか、そういったことを踏まえてどうなるかということは今の段階ではなかなかはっきりしていない部分もありますが、いずれにしても我々の当面のとりあえずのターゲットとしては、次のODA総合戦略会議は恐らく7月かなと言われていますけれども、それまでに中期政策の改定についてどうするかということを考え、これはもちろん原案とかそういうものではなくて、どういう考え方でやるかという大きな話だと思いますけれども、そういうものをつくって総合戦略会議の先生にも御意見を伺うというようなことになるんだろうと想定して今、作業を行っております。
 その後は、どういうプロセスでどういうふうに展開していくのかはまだ決まっておりませんが、来年度のODAの予算要求とかということで7月にはシーリングの問題だとか、8月中には通常の例年の予算プロセスと同じだということだとすれば、8月中には外務省としての来年度ODAを含む予算要求というものをまとめて財務省の方に提出したりとかということもありますので、そういった作業とも連携というか、平仄を合わせながら作業をしていって、そんなに簡単にはできないと思いますので、それなりの時間をかけてさまざまな人たちの御議論なども伺いながら策定をしていくことになるのかと思っております。
 現時点で私の方から申し上げられることは以上ですけれども、何か御質問等があれば伺いたいと思います。
城所室長: ありがとうございました。今の和田課長の御説明に関連して御質問のある方はどうぞ。


<質問と提案(1)>
神田氏: 関西NGO協議会提言専門委員の神田です。このことに関しまして、今日も議題にしたいということで提案したのですが、議題が多数ありますので御報告というふうな形でお話を伺って若干質問をさせていただくということになったと思っておりますので、2つ質問と、1つ提案ということでお話をいたしたいと思います。
・1つは、ここでお配りいただきました3枚のODA中期政策の評価に関する概要版の全文がたしか今日ホームページに出たというふうに東京に来てから聞きまして、私などのように朝早く出てきている者にしてみれば見ることができずに残念で、これで見ているところなんですけれども、こういうことをこの5人の方々がやられた途中経過がいろいろあると思うんです。会議資料ですとか、あるいは5人の先生方がつくられたような資料類などが恐らく外務省の方にはあると思うんですけれども、そういった資料類に関する情報開示ということは考えておられるのかどうかを伺いたいということです。
 というのは、こういうことをやるための政策資料ということが明らかにされるのは大事なことであろうと思っておりますので、もし積極的にホームページで開示されるということならばそこで出てくるのを期待して待ちますし、されない場合にはどうしたらいいのかということを考えてみる必要があるかと思いますので、確認したい点です。それが1点目です。
・2つ目の質問は、ODA中期政策というのは99年につくられるときにもNGO・外務省定期協議会の下に小委員会がつくられていまして、NGOと外務省との間で政策協議を行っていた。今のようなオープンな形ではなくてクローズドの形で行っていて、そこに私も参加していたんですけれども、その中で、13省庁にまたがることなんですよというふうな話を外務省の方からいつもされていました。それで、外務省の一存でこれが動かせるものではないので、NGOからいろいろな提案や意見を受けても、そのことは外務省では聞いておくというふうなところでとどまる。最終的には13省庁の調整でもってこの文章ができていくんだよということを何度も聞かされた思いがあります。それで、13省庁の連絡調整会議などにNGOであったり、一般の市民がオブザーバー参加することができないのかなどという話もしていたんですけれども、それは困難な話だということで当時は言われていたということがあるんです。
 今の和田課長のお話を伺っていますと、相当今回は状況が変わったのか、外務省がイニシアティブを取ってこれの改定作業を進められるようにお見受けしたんですけれども、その辺りの状況は変わっているのかどうか。たまたまこれを見ますと、連携というところでNGOとの連携はうまくいっているというふうに評価されているのに、他省庁との連携はうまくいっていないと書かれているのが印象的な内容でもありますので、その辺は私たちも外務省の方々とこういうところで議論をしていくというふうなことが中期政策に対して意見を言う中で最善の方法なのか、それ以外の方法があるのかということを検討する上でも重要ですので、現状を教えていただきたいということが2つ目です。
・3つ目は提案なんですけれども、恐らくこれが改定あるいは不要というふうな意見も出てくるのかもしれませんが、ODA総合戦略会議がどういうふうな役割をされるのかということに関しまして、いろいろな意味で注目しているところでもあります。ちょうどODA総合戦略会議のメンバーの改定というふうなことが課題として挙がっていると聞きますし、NGOの側にもどう対応しようかというふうな話にもなってきております。
 これに関しまして、NGOの間でもいろいろな意見があります。ODA総合戦略会議自体が非常に不透明な会合なので参加すべきではないという極端な意見もありますし、一方ではNGOは積極的にそういうところに参加して意見を言うべきではないかということなどもあったりします。一体ここが何を扱うのかによって私などは対応が変わってくると思っていますし、ここの性格がどうなっているのかということもすごく重要なポイントだというふうには思っております。
 と申しますのは、去年のODA大綱の改定というのは外務省の調査計画課の方で公開プロセスというのを進められたということはあったんですけれども、原案作成段階がODA総合戦略会議にゆだねられた結果、原案に対してNGOが意見を言えない、あるいはNGOから2人、人は出ていましたけれども、伊藤さんにしろ、磯田さんにしろ、別にNGOを代表して行かれているわけではないですから、その2人の委員を介して意見を言うということがせいぜいの作業でしたから、ODA大綱自体、原案段階で私たちにとってみたら余りに問題が多いのではないかという思いがあったのですが、その後の公開プロセスでいろいろな形で意見を申し上げましたけれども、おおよそ反映されたというふうなことが見受けられずに、調査計画課の方で努力された割にはその公開プロセスというものが評価されないという事態を招いていると思います。
 ですから、ODA中期政策に関して私自身、力を入れたいというふうに考えるのは、やはり公開プロセス、政策立案に関する市民参加ということがきちんと根付く、あるいはそれが多くの方々に評価されるというふうな意味合いからは、原案作成の段階から透明にしていくことが重要ではないかと思います。ですから、先ほど伺いました13省庁の関与いかんもあるでしょうし、ODA総合戦略会議がどういう性格でもってこのことに対処されるのかということも絡む話ではありますけれども、いずれにしても最初の段階からオープンにされるということを一緒に考えていきたいと思うのが提案事項でもあります。
城所室長: これについて何かございますか。


<質問と提案(2)>
高橋氏: 私からは1つ提案と3つの質問があります。まず、提案に関しては今の神田さんと同じ点で、私も報告概要を読ませていただいて、やはりどうしてこのような判断結果になったのかが分かりません。質の定性的判断というんでしょうか、量の判断ではないので、判断基準が書かれていないので今一つ見えにくいところがあるので、神田さんの情報公開の提案に加えて、どういった基準でどういった資料を使ってこういう判断をされたのか、是非公開していただきたいという提案です。
 質問は3つです。
・1つ目は、この英語版をつくられる予定があるのかどうかということです。海外の援助関係者や住民にどういうふうな説明内容になるのかに関心があります。
・2つ目は、特に提言の中の「選択と集中」と、MDGsを中心テーマにという部分での話です。「選択と集中」といった場合の判断基準は何でしょうか?これはJICAの緒方理事長がやはり「選択と集中」ということを同じように言っていると思うのですけれども、そこで言っていらっしゃるのは「現場主義」、そして今の国際的な貧困問題ということをきちんと考えたときにアフリカに集中すべきだろうということを言っているのかと思います。それと同じ観点で、外務省はODAを今、どこに「選択と集中」をするべきと考えているのか。それから、MDGsへの言及が提案されていますけれども、そこら辺をどういうふうに考えていらっしゃるのか、教えていただきたいと思います。この問題は今後も議論が続くと思いますけれども、今の時点で答えられる範囲内で教えていただければと思います。
・3つ目は、この中期政策の位置付けに関してです。ここの提言にあるようにODA大綱との関係が少しわかりづらいと私も思います。報告書概要の3ページ目最後の方には、「我が国の考え方、取り組み方針を中期政策の中で具体的に明示する」と書かれているのですが、もし我が国の基本的な考え方や取り組みがこの中期政策で書かれるのであれば、大綱は一体何になるんだろうという疑問です。
 私たちから見ると、大綱はむしろ原則の部分が大事で意味があると思っています。今、和田課長からの話で中期政策が必要かどうかという議論がODA総合戦略会議の中であったという話がありました。それで大胆な提案なのですけれども、大綱と中期政策が同じようなものならば、私はむしろ大綱はなくてもいいのかなと思っています。中期政策で基本的な方針や考え方をきちんと書き込むのであれば、むしろ大綱は原則の部分だけを残して別のものに変える。実際、大綱は原則が書かれていても拘束力を持たないので十分に機能していません。そこで別の形、例えば原則を基本法に書き落としていくとか、そういった方向に整理し直すということもあり得るのかなと思いますが如何でしょうか?その辺りの外務省のお考えを教えていただければと思います。けれども、私はむしろ大綱はなくてもいいのかなと。中期政策できちんとそこら辺を書き込むのであれば、むしろ大綱は原則の部分だけを残して別のものに変える。でも、原則は結局今は拘束力はないので、もしかしたら別の形、例えば基本法ですとか、そういった方向に整理し直すということもあり得るのかなと。その辺りも外務省のお考えを教えていただければと思う次第です。
城所室長: 問題が大分出てきたので、まず和田課長からお願いします。


<質問への応答>
和田課長: 私で答えられる範囲で申し上げます。
・まず第1番目の、検討過程の資料の開示でどういう資料を用いたのかということです。これは、基本的に報告書の方に検討過程で何をやってどういうふうにしたかということは書いてあると思います。私の記憶では、要するに基本的に過去の白書や、外務省のホームページや、いろいろな政府機関のホームページなどで見ることのできる資料をベースに中期政策の評価を行っています。今日お配りした資料の1ページ目の下の方にも「評価の限界」ということで書いてありますけれども、本評価の限界の(イ)で外務省の活動を中心に評価を行ったということ、他の関係府省、実施機関、国際機関については部分的な情報収集を行っていないため情報量の限界があると書いてあります。
 要は、何かすごく秘密の情報にアクセスして評価をしたということではなくて、一般に公開されている資料をベースに先生方で御議論をして、それから先生方のこれまでの蓄積とか、御自身の御経験とかを踏まえて議論をしていただいたということでございますので、大綱もそうかもしれませんけれども、中期政策を本当に精密に過去5年間どういうふうに働いてきたかということを、実際に1年弱の時間で5回の会合しかないというような状況で、そこまで突っ込んで評価検討ができていない部分もあります。要するに、一般に公開されている資料をベースに公開をしているということなので、開示してくれとか何とかというほどのものはないということでございます。
 もし評価報告書本体を見ていただいて、実際にどういう資料で議論されたのか教えてほしいという御質問があれば、私の方に聞いていただければ御説明してもいいんですけれども、過去5年間の白書の記述などを参考にしつつ評価をしたということだったと思います。
・それから、99年の中期政策の議論のときに、外務省の方から各省との関係があるのでなかなか自分だけでは決められないというお話があって、その状況は今、変わっているのか、変わっていないのかという御質問があったんですけれども、日本政府の政策決定のプロセスというのは基本的に今もコンセンサス方式で各省庁のコンセンサスで決めています。そして、この中期政策につきましても前例に則せば対外経済協力関係閣僚会議での決定を経るということになっていまして、対外経済協力、ODAに関係する各省庁の大臣が参加する会議で原則というか、基本的に全会一致で決定をするものですから、各省庁との調整といったことは昔も今も全く変わっておりません。その意味で、状況はそんなに変わっていないというのが私の理解です。
・いただいた順にお話をしますと、3点目にODA総合戦略会議の役割はどうなるのかとか、最初の原案作成の段階からプロセスをオープンにしてほしいという御意見だったと思います。総合戦略会議についてはODAの重要な政策、特に国別計画の策定に関して我々はいろいろ御意見を伺っているんですけれども、中期政策についても我々の検討状況を御報告して御意見を伺うということになるんだろうと思います。その御意見の伺い方が具体的にどういう形になるのかは、まさに総合戦略会議とも御相談をしながら今後決められていくと思いますので、今の段階でどうなるかはわかりませんけれども、大綱のようなプロセスと似たようなことになるのかもしれませんし、そこはまだよくわかりません。
 政策の立案について、関係各省庁との議論とかいろいろあるわけですけれども、やはり政府の意思決定のODAに限らずあらゆる問題において、すべてのプロセスを透明公開の場でやるということは余り例がないと思います。大綱のプロセスにいろいろ御不満、御批判があることは十分理解しておりまして、私自身もできるだけ早いタイミングで関心を持っておられる方の意見を聞くやり方としてどんなやり方があるかについてはこれからも考えていきたいと思っていますけれども、ものすごくオープンな場ですべて公開ディスカッションみたいな形でやるということは、通常霞ヶ関のルールから言ってなかなか想定し難いのかと思っております。
・それから、この評価の結果がどうしてこういうことになっているのか、その判断基準等が見えにくい。どういう基準、どういう資料に基づいてやったのか。若干似ていると思いますけれども、これも是非報告書の本文を読んで、また更に御質問等があればその段階で聞いていただければ、私の方からできる限り御説明をしたいと思いますし、今の時点では余り申し上げられないんですけれども、こう言うと言い訳っぽくなりますが、限られた情報と限られた時間の中で御議論をいただいた点はあるということは率直に認めざるを得ないと思っております。これは先生方のせいということではなくて、非常に大きな話をなかなか精密に評価して分析するのは非常に難しいという面があることは御理解いただけるのではないかと思います。
・それから、英語版についてはどういうことになっていたのか、今、承知をしていないので確認させていただきたいのですが、通常は例えば国別援助政策などの評価を行った場合には相手国に視察に行って相手国政府との意見交換などもやっていますので、そういったものは英語版をつくってその関係する政府に送ったり、相手国の方に英語版を提示したりしておりますけれども、今回の中期政策については基本的に日本国内での調査というか、議論しかしておりませんし、英語版をつくる予定になっていたかどうかは、私自身確認をとらないとわかりません。
・それから、今後の話として選択と集中の判断基準をどこに置くのかとか、MDGsについてどう考えるのかということです。これは今後、議論をすることだと思いますけれども、現場のニーズということも大事な要素だと思いますが、それだけでもないような気もしますし、余り私は今の段階で判断基準ということで明確にお答えできないです。
 それから、MDGsについては来年の国連におけるミレニアム宣言のレビューなどもありますし、MDGsは重要な課題だと認識しておりますので、中期政策でどう扱うかも含めて考えなくてはいけませんが、中期政策における扱いいかんにかかわらず来年に向けてはMDGsに向けての日本政府としての考え方をいずれにせよまとめていって対外的にも発表していくということは必要不可欠だと考えております。
 それから、大綱は不要なのではないかとか、いろいろ言われたのですけれども、御意見として承りましたが、そう言われてもという感じです。余りちゃんとした回答でなくて、すみません。
城所室長: では、総合戦略会議についてお願いします。
渡辺課長: ODA総合戦略会議につきましては、最近開かれた総合戦略会議の場におきまして継続性の観点から、各委員の先生方には可能な限り継続して関わっていただきたいというお願いをしておりますが、個別の先生方には個別に御相談させてくださいということで今、打診をしている段階です。
・中期政策等にODA総合戦略会議がどう関わるかにつきましては、和田課長の説明とダブってしまいますが、この会議の重要性、それから大綱を策定した際のこの会議の関わり方から見て、この戦略会議が中期政策に関わらないということはそもそもまず考えられない、何らかの形で当然重要な役割を演じていくのであろうと思いますが、具体的にどのような関わり合いを演じていくかにつきましては、恐らく次の総合戦略会議の場で皆さん御議論があるのではないかと思います。


<質問(3)>
田辺氏: 1点だけ確認させて頂きたいのですけれども、先ほど和田さんの方からレポートの中に書いてあるから読んでいただきたいという話だったのですが、具体的に1点だけレポートの中で重要な点だと思われるのでお聞きしたいと思います。
 評価方法で評価の中の有効性に関して、その中期政策とその下部の政策であるイニシアティブ、それから案件を比較して有効性を評価するというような書かれ方がその評価方法の中でされているのですが、実際にレポートの中で案件と中期政策を比較された形跡が見られないんです。特にインフラに関して莫大な、もっともインフラに関しては割合が大きいかと思うのですが、そこに関しても案件と中期政策を比較した形跡が見られなかったんです。例えば、総務省の政策評価などでも85件に課題があるというような報道も先月か先々月になされておりますし、やはりその案件と中期政策を評価すべきなのではないかと思われるのですが、その点はいかがでしょうか。


<質問への応答>
和田課長: 中期政策の評価に当たっては、これも報告書に書いてあると思いますけれども、・中期政策の概要の1ページ目の評価の方法の有効性のところは、中期政策が分野別イニシアティブにどの程度ちゃんと反映されているのか。あるいは、国別の援助政策にどの程度反映されているのかという観点から評価がなされておりまして、個々の案件、プロジェクトベースにどういうふうになっているかというところまでは議論はされていなかったと思います。
 ただ、もちろん投入された予算の総額とか、そういったものは検討の対象になっていましたので、要は大綱、中期政策、その下に国別援助方針とか、援助計画とか、分野別のイニシアティブという政策レベルで3段階の構想になっているということを前提にして、その中期政策というものが昔の大綱をきちんと反映したものであったのかということと、更に中期政策を踏まえてその下にあるさまざまな政策がきちんとつくられていたのか。あるいは、実際の日本の援助のいろいろな政策が中期政策を踏まえて行われて進められていたと判断されるのか否かという観点で評価でなされていますので、個々のプロジェクトがどうのこうのという観点での評価にはなっていなかったと思います。
田辺氏: ということは、具体的には分厚い方の本文のレポートの1の3の(イ)になるんですが、その有効性は政策案件にどれだけ反映されたかを基準として評価することとしたという、その案件というのは実際には評価していないということですね。
和田課長: 今、手元に持っていないので申し訳ありませんが、個々の案件ベースの評価はしていないと思います。


<報告2:アフガニスタン復興支援の現状について>
城所室長: よろしいですか。
 では、次に「アフガニスタン復興支援の現状について」を国別開発協力課の松澤首席からお願いします。
松澤首席: 国別開発協力課の松澤と申します。
 この後、重要な議題が残っている一方で、ちょっと押していますので、ポイントを絞ってご説明申し上げます。手短にやらせていただきます。お手元に2種類、読み物を用意させていただきました。1つが、「我が国のアフガニスタン支援」という紙と、もう一つが「アフガニスタンに関する国際会議の概要と評価」、これはこの間のベルリン会議の概要でございます。この資料に沿って御説明させていただきたいと思います。
 初めの方の資料、「我が国のアフガニスタン支援」でございますが、余りプロパガンダにならない程度に上品にやりたいと思います。アフガニスタンというのは当初より、我が国は平和の定着構想に基づいて明確なコミットメントをしておりまして、非常に明確な証左、表れが2002年1月のアフガン復興支援国際会議東京会議であり、またその真ん中くらいに書いてございますが、アフガン平和の定着東京会議であり、この間のベルリン会議についても共同議長ということで、セッションにおいては場合によっては比較的イニシアティブをとって切り盛りさせていただいた次第でございます。具体的な数字の表れとしては、今まで合計すると8億ドル弱の支援を行っております。
 めくっていただきますと2つの項目に分けて整理してございますが、2.で「ODAを活用した紛争後の国家復興への支援」と、更にめくっていただいて3.で「大きな成果を挙げ国際的に評価の高いプロジェクト」ということで整理させていただいていますが、目玉案件を並べてございます。(1)としていわゆるDDRを入れまして、(2)で「移行政権の行政経費支援」ということで、そこのくだりにいろいろ政府内でも苦しい判断をしたんですとか書いてございますが、結果として緊急ロヤ・ジェルガ支援として270万ドル、移行政権行政経費として500万ドル出しました。
 (3)のカンダハル・カブール間の幹線道路整理プロジェクト、これは無事にKK間で工事が完了してございます。現在はカンダハルからヘラートに向けた道路の修復支援に着手してございまして、これは2006年3月の完成めどで頑張っております。
 3.の方に入りますが、目玉としていわゆる緒方イニシアティブ、地域総合開発支援ということで優先3地域、カンダハル、ジャララバード、マザリシャリフと選んで、3ページの下の方でございますが、4つの柱を立てて支援を考えている。これは国際機関経由でやっております。
 その次は、さっきの道路のところにも絡みますが、地雷対策も行い、なおかつ最後の4ページの下の方の(3)でございますが、メディア支援ということで、その中の目玉としては2002年6月の緊急ロヤ・ジェルガの際のアフガン全土に向けた衛星放送実現という支援をしたということが書いてございます。細かいところはるる読み上げませんが、読み物としてごらんいただければと思います。
 もう一つの資料の方の、ベルリン会議の概要と評価でございます。タイミング的に3月の末から4月の頭にかけて行った会議で少し時間がたってございますが、我が国からは緒方さんと、当時のアフガン支援担当大使、現在の本村の前任でございますが、堀村アフガン担当大使と、アフガンに駐在しております大使の駒野、その他もろもろが参加しまして、アメリカからはパウエルか出てきて、ドイツはホスト国でございますのでシュレーダーが出てきて、アフガンからはカルザイが出てきた。
 それで、(3)の方にその他もろもろが書いてございますが、何をやったかというと、政治プロセスであるボン・プロセスと、復興支援プロセスである東京プロセスと、今回ベルリンでその両プロセスを総括したという位置付けの会議でございまして、総括をし、過去結構進みましたねと、そこは自画自賛の評価をしてございます。
 あとは支援の意図表明ということで、全体枠で申しますと1枚目の(2)の真ん中くらいに書いてございますが、今後1年で44億ドル、3年間で82億ドルの支援表明だった。日本分についてはめくっていただいた真ん中くらいですが、これまでの支援の実施を説明した上で、今後2年で4億ドル支援をするという意図表明をしてございます。繰り返しになりますが、総括し、評価し、支援の意図表明をし、今後の課題は何ですかと、課題を少し確認したという会議でございます。
 私どもの評価としては、タイミング的にこの春先にやった会議でございますが、世の中はどちらかというとイラクの復興支援に目がいってしまっていて、政府間でもそうですし、メディア上も何となくそうですし、一般の関心がイラクはいろいろな意味で大変だなということになってしまっているところで、国際社会が閣僚レベルで、いやいやアフガンだってちゃんとやらなくちゃいけないんだということを確認した意味では非常に重要な会議だったと認識してございます。
 評価はこの資料の2ページ目に入っているんですが、支援額についてもアフガン側の期待を上回る額の意図表明があったということで、そこも一応初期の成果を果たしたと思っております。
 (4)などには、日独の緊密なパートナーシップを象徴する会議であったなどということを書いてございます。
 めくっていただいて、「今後の課題」でございます。そこは、るる読んでいただくとして、ポイントだけ4項目挙げさせていただくと、9月に大統領選挙、議会選挙があるものですから、その円滑な実施をしないといけません。あとは、麻薬対策、治安対策が大事です。DDRは本格的に更に推進させる必要があります。政府は必ずしも盤石でないものですから、行政府の人材育成が必要です。それで、経済がああいう状況でございますので民間投資の活発化が行われて、なおかつそれを確保するための環境整備が必要です。最後に、経済活動において女性を含む市民の役割が重要だということが今後の課題ということで確認されてございます。
 取り急ぎ、簡単でございますが、以上でございます。
城所室長: 今の関連で、御質問のある方はどうぞ。質問されるときは必ずお名前と組織を述べられてからお願いします。


<質問>
高橋氏: 先ほど名前を言い忘れました。ODA改革ネットの高橋と言います。個人としては日本国際ボランティアセンター(JVC)に所属していますが、JVCもアフガニスタンで活動をしています。質問は2つあります。1つはDDRについて、もう一つはベルリン会議についてです。
・DDRに関しては、いただいた資料の2ページ目にパイロットフェーズで一定の成果を示すことができたという評価をしつつ、他方で9月に行われる大統領選挙、議会選挙との絡みの中での本格DDRの重要性ということが認識されています。私たちも、選挙はアフガンの平和のために大事なものだと思っています。なぜかといえば、この国の紛争はいわゆる和平合意が交わされて終了しているものではありません。ボン・プロセスで規定されたところの選挙を経ることで、きちんと国民の中で平和がきていることが実感、認識されるのだろうと思います。そういう意味で、選挙というのは極めて大事な平和に向けた政治プロセスだろうと考えています。
 ですから、問題はこの選挙をどういうきちんと行うかということが大事だと思います。しかし、私たちの理解する限り、たしか選挙を正しく進めるためには二つのベンチマークがあったと思います。ひとつは、正統性をもたせるためにどれだけ多くの住民がちゃんと有権者登録をされるかということです。そしてもう一つが、安全に選挙を実施するために、DDRで武装解除が一定程度行われるというベンチマークです。具体的には10万人目標の40%の4万人を7月上旬までだったと思いますけれども、ターゲットとして達成するものと決めていたと聞いています。しかし、現時点では約9,000人と全く達成がおぼつかない状況です。
 それで、このベンチマークが達成されていない状況で、DDRにイニシアチブを持つ日本の外務省が選挙をやはりこの日程どおり進めていくべきと考えているのかどうか。そして、選挙をどうしてもいろいろな外交政治の関係上やらざるを得ないと考えているのであれば、更なる治安悪化を防ぐためにどのような対応策を考えているのか?例えば、今度の選挙には大統領と議会選挙と2つありますが、これを分けて時間差をおいてやるとか。例えば、象徴的重要な大統領選挙は先に行って、議会選挙はDDRの進捗を見ながら進めるなど、そういうふうな柔軟的なやり方というものが可能かどうか?それを日本政府から関係諸国にお願いしていくという考え方があるのかどうかを教えてください。
 この問題に合わせて、DDRそのものが難しいが大事なプロセスであり、選挙が終了した後でどういうふうに推進していこと考えているのでしょうか。例えば、国防軍の改革とか、いろいろ難しい問題はあると思いますけれども、今、日本政府として考えていらっしゃることを教えていただきたいということです。
・2つ目はベルリン会議についてです。ベルリン会議で作成された“セキュアリング・アフガニスタン・フューチャー”というペーパーを読ませていただいて、すごいアンビシャスだなと思ったのは、7年間で80%の人々を貧困から脱却させる。そして、経済成長率を9%維持するというふうに書かれていることです。アフガニスタンの主要産業は、御存じのように農業です。それで、その農業の中で何が中心かというとケシの栽培です。
 しかし一方で、イギリス政府が中心になってケシの栽培を縮小させていくことが合意されています。しかしそれも、まだ軍閥の問題があって、DDRも進まず、治安が確保されないなかでなかなか進まない。そういう状況中で、経済成長率9%、7年間で80%を貧困から脱却させるというシナリオが本当に可能なのでしょうか?どうしてこのような野心的な結果になったのか、正直言ってペーパーを読むだけではわかり得なかったものですから、そこら辺の外務省の御理解はどうなのか教えていただきたいということです。


<質問への応答>
松澤首席: 1点目の御質問ですが、私は経協局の人間なものですから、言い訳がましいですが、率直に言って今、最新の状況はわかりません。それで、個人的な考えを述べさせていただくと、余り選挙は後ろ延ばしにしない方がいいのかなとは思いますが、ここはうちの政務の者とも話した上でどこかでお返しさせていただきいと思います。
山田課長: DDRは無償資金が出ておりますので、お答えいたします。
・DDRは非常に日本外交にとって大きなチャレンジであると同時に、アフガニスタンにおける非常に重要であるけれども、非常に難しいことだと思います。かなり野心的なベンチマーク、あるいは目標を置いてやっておりますが、これは国際社会も、あるいはアフガニスタン政府自身もかなり野心的だと考えているのだろうと思います。
 日本が初めにこれをリーディングカントリーとして打ち出したとき、こんなに大変だろうとは正直言って思っていなかったかもしれません。ただ、その非常に大変な目標にひるむのではなくて、少しずつ前進するということできていると思います。いろいろなアイデアも出してきていますし、日本も追加的な資金も出しました。
 選挙のプロセスについては、恐らくDDRのベンチマークというのは少しでも前進させるためにそういう目標を置いていますけれども、DDRが進まないから選挙を後ろ倒しにするというのは得策ではなかろうかと思います。選挙は選挙として、例えば選挙登録に対する支援を既に日本は行っていますし、国際社会も応援しています。それから、選挙そのものに対する支援も国際社会は行っていまして、日本は今、検討中で具体的な支援を近々に発表できるかと思います。選挙それ自体はDDRが起ころうが、起こるまいが、アフガニスタンの国民にとっては必要なことですし、これは行うべきだと考えております。
 議会選挙で大統領選挙をどういうふうにするかというところまで私の方から申し上げることはできませんけれども、DDRも恐らく現実的なことを言えば目標どおりにはなかなか進まないと思います。ただ、目標どおりに進まないから失敗なのではなくて、目標に向かって前進しているということは言えると思いますし、これから動員解除、武装解除より更に難しい社会復帰というものが始まる。これは恐らく短期の話ではなくて、中長期にそういう人たちは手に職をつけて社会に戻ってもらうという息の長いプロセスですので、短期的に当初の目標よりはうまくいっていないということよりも、中長期にそれを少しでも進めていくという努力が必要なのではないかと思います。
 ベルリン会議の方は私も詳しくは知らないのですが、ただ、アフガニスタンの成長といいますか、発展は戦争の後を考えますとかなり順調に来ている。これはたまたま天候がよかったとか、そういう状況もあるんだろうと思います。ですから、この目標もあえて高い目標を掲げて、国際社会及びアフガニスタン政府自身のいわば発展への決意を表明したものではないかと思います。
 ただ、私はアフガニスタンについてはいろいろな意味で前進が見られると思いますけれども、麻薬はかえって悪くなっている。ただ、これはアフガニスタン政府や国際社会が少々あるいはかなり努力をしてもそう簡単にすぐには転換しないのではないかと客観的には見られるのではないかと思います。これも相当長期の取り組み、アフガニスタン全体の経済が向上して、ケシをつくっている人たちが、もうこれをつくらなくても生活できると思うようにならない限り、あるいはその中央の意向が地方に本当の意味で届くようにならない限り、まだまだなかなか時間がかかるのではないかと考えています。
高橋氏: ベルリン会議に関しては、高い目標を掲げることで国際的に一緒に頑張りましょうというものだということは、私も理解しました。
 1点目のDDRに関して少し追加的なコメントなんですけれども、日本は結構Rの部分に力を入れていると理解しています。ただ、そのRの部分も社会復帰をさせるということと同時に、どうやって国としての中立的な警察ですとか、軍隊というか、民兵を正規の国の治安部隊に変えていくある種の転換も含まれています。これは、これまでの軍閥みたいなものをちゃんとした国の中立な治安部隊に変えていくというプロセスだと思うんですが、そこには当然再トレーニングが入ってくるんだと思います。その問題で私が思うのは、何らかの中立性を確保するためにはプロセスに透明性が必要で、そのためには、やはり市民社会というか、NGOも含めてですが、インターナショナル・オブザーバー・グループみたいなものできちんとそのプロセスを監視していくということが大事なのではないかと思います。その点について、何かお考えがあれば教えていただきたいと思います。
松澤首席: 「インターナショナル・オブザーバー・グループ」というのは、国際NGOが集まって組織されるものというご理解でしょうか。
高橋氏: 国連なども一緒になってもいいと思います。
松澤首席: 国連の傘の中でということですか。そこは、考え方としてはいい案だと思いますが、そこは御意見として承らせていただきたいと思います。


<協議1:危険地域におけるODAとNGOの協力関係について>
城所室長: よろしいですか。
 では、次の議題にいきます。次は協議事項として「危険地域におけるODAとNGOの協力関係について」ということで、これは私の方から簡単に御報告します。
・まず基本的な認識ですけれども、これは従来どおりのラインだと思うんですが、NGOによる国際協力活動というのは開発途上国の住民の多様なニーズに応じたきめの細かい、それからまた効果的な援助や、迅速かつ柔軟な緊急人道支援活動の実施という観点から極めて重要だ。これは全く従来どおりです。外務省としては、現地の治安情勢やNGO側の安全対策等を十分に勘案しつつ、従来よりNGOの支援活動に対してできる限りの支援を行っております。ですから、NGOは国際協力の重要なパートナーとの認識にはいささかの変わりもありません。これは従来と全く同じでございます。
 御質問のポイントだと思うんですが、そこは他方、せっかくの国際協力活動もスタッフがテロ等に巻き込まれてしまうということでは台無しなってしまいます。このような観点から、退避勧告が出されているような危険な地域において緊急人道支援活動を行うNGOに対して、政府として資金供与、資金援助を行う場合には、その時点での当該地域の治安状況を慎重に判断した上で、我々は安全確保のためのいろいろな留意点がございますけれども、そういうものが確保されるということを条件にしてNGOへの支援を行うということにしておるわけです。
 ただし、そうは言っても、このような場合にも支援活動の実施に当たっては邦人スタッフの立入りの必要性の有無、是非、活動期間、そういうことについて十分に考慮すべきことはもちろんだと思います。また、邦人スタッフが当該国、地域へ立ち入る場合であっても、だっと入ってくるのではなくて必要最小限のスタッフに限るということが望ましいということだと思います。
 また、昨今もありましたけれども、治安状況が悪化した場合には先ほどもお話をした安全確保の5原則について今まで皆さんに随分留意していただきましたけれども、そういうものについては確保されていても邦人のスタッフの退避を求めることもありました。ですから、この前、熊岡さんとも随分連絡を取って、ただ、出国するタイミングについても安全確保を最優先にしつつ、そして退避してくださいよということを朝、昼、携帯電話で連絡しつつやったことがあります。その意味では、退避をお願いするということもあり得ますよということだと思います。
 それから、自己責任の話がありましたけれども、政府としてはイラク全土に対して昨年2月より退避勧告が出ています。それ以降、数で計算したら26回出ていますが、そういうスポット情報を発出しています。それでも、先般イラクにおいて邦人人質事件が発生したということは誠に残念なことだと考えておりますけれども、海外渡航される方については事前の情報収集を含めて、私も毎朝海外の安全情報、スポット情報をチェックしております。そこに必ず出てくるのは、「自らの安全については自らの責任でお願いします」ということがあるわけで、それは別にイラクでなくてもいろいろな地域でも同じことが出ているわけですから、そういう自覚を持っていただいて、そして自らの行動を律せられるということを改めて強くお願いしたいということでございます。
熊岡氏: この項目は、NGOからの問題提起で始まっているので。
石田氏: 今回司会が外務省の方だったので少し混乱があったかと思いますが、質問の順番としてはNGOの方からまず最初に質問の趣旨を説明してお答えいただくという方がよかったかと思います。
城所室長: 申し訳ありません。
石田氏: ここに書かせていただいたとおり、最近自己責任論というものが結構メディアなどでも取り上げられていまして、しかもこの間の全体会でそれについてNGOからも質問が挙がっていたのですが、十分議論のないまま一方通行で終わってしまったので、ここの場ではやはり現場にいてODAを行っているNGOもたくさん関わっておりますので、是非意見交換をさせていただければと思った次第です。
 もちろんNGOに自己責任がないということはなくて、これは必ず自己責任があるという認識だと私は思っています。
 ただ、一方で、世の中というか、メディアの風潮の話ではあるのですが、では全く自己責任で、しかも退避勧告が出ていて、向こうでやっているのはあの人たちの勝手なんだといった見方も出ているのかなと私は受け取ってしまうわけです。こういった協議の場も持ち、途上国の貧困をなくしたりとか、そういった国際協力といったものに対して私たちはどういうふうにしたら改善できるか、いろいろ知恵を絞りながら一緒にやっている中で、それはあの人たちがただ勝手に好きにやっているんだというふうな見解を持たれるとしたら、それは非常に残念なことです。
 そこで、是非こういった協議会に出ていらっしゃる、特に開発担当の外務省の方の御意見をお伺いしたいと思った次第です。さっき城所さんのコメントで、国際協力の重要なパートナーだと認識していらっしゃるという発言があったのでそれは理解したのですが、ほかにNGOの方でコメントのある方がいらっしゃればと思います。
西井氏: 名古屋NGOセンターの西井です。自己責任ということが前回の全体会の席上でも審議官の方が回答されて、事務次官の方が一応示された見解が最終的な判断だとおっしゃいました。そこで示されたのは、退避勧告を出しているところには極力入っていただきたくないということ。それから、日本政府として邦人保護の責任の持てないところには入ってほしくないということですね。入るからにはちゃんとした情報収集をして、自分で責任を取れるようにして入ってほしいということだったと思います。
 そこから私たちが受けるメッセージというのは、自分で責任を取れないようなNGOはそこに入るな。それから、そういう情報収集能力のない、言ってみればできたばかりのNGOだとか、小さいNGOとか、そういったものは入ってくれるなというようなメッセージが伝わってくると思います。
 御存じのようにNGOというのはすごく幅が広くて、そのときに審議官の方もおっしゃっていましたように、例えばオックスファムという名前を出して、オックスファムが入る場合には十分な情報収集をした上で危険かどうかの判断をして入っていくという危機管理能力のこともおっしゃっていましたけれども、NGOというのは自分の責任で自分で課題を見つけて入っていくところがありますから、そういったことを飛び越えて行ってしまうということがあると思います。そのときに、場合によってはあの4月のように予期せぬ事態に巻き込まれるということは十分あり得ると思いますし、そのときに外務省は何もせずに今後放置するのかというような問題があると思います。
 ですから、私たちの認識としては、やはり外務省なり、日本政府としては邦人保護の義務といいますか、責務といいますか、それはやはりあるだろうと思っておりまして、先ほどもおっしゃいました自己責任で入ってくれというようなおっしゃり方を聞きますと、仮にまた今度こういう事件が起こった場合には、もう知らないというような受け取り方もできるのではないかと思っております。
 ですから、そこをNGOはNGO側として責任の取り方は考えなければいけない問題ですし、外務省及び日本政府の責任といったものはやはり明確に区別した上で、それぞれの責任を考えるべきではないかと思います。ですから、逆に外務省なり行政機関の人たちから、NGOはこうすべきだ、ああすべきだというような一種の精神論みたいなもの、あるいは心構えみたいなものを言われたというふうに我々は受け止めていて、そこが今までこの定期協議会の中で培ってきたNGOとODA、外務省との関係が揺らいでいるのかなという印象を私は持っています。そのことについて御意見をお願いします。
森氏: 農業・農村開発NGO協議会から来ました森と申します。
 私もNGOの方々と話をしていなくて申し訳ないんですけれども、今の御意見では私も実際に現場の方でどれだけ人道活動をされておられるのかという御経験について疑問に思ったのですが、少なくとも私が今まで過去十数年、人道分野で活動をしてきました。AMDA及びJENで事務局長をやっておりまして、ジャパン・プラットホームをピース・ウィンズ・ジャパンの大西氏と一緒につくってきましたが、少なくとも緊急事態で現場に入るときにはそれなりのNGOは準備をしなければなりません。それで、実際に今まで余り報道もされていませんけれども、現地の日本のNGOのスタッフが現場で殺されたり、または拉致されたりしたことは実はございます。ゲリラとかではなくて、たまたま現地の軍などに捕まったこともあるんですが、そういったときに日本の外務省がどういった対応をとってくれたかというと、非常にきちんとしたいい対応をとってくれております。
 アフリカで、例えばルワンダの紛争のときにタンザニアの方で、今のコンゴですね。ああいったところで非常に危険が及んだときに、現地の日本大使館は常に日本のNGOに対してきちんと退避勧告を出しておりますし、今、何人邦人がいるのかといったことについてもつかんでおります。JENのスタッフが一度セルビアの国境で拘束されましたときにも、空爆のすぐ後でしたけれども、ユーゴスラビアにいました日本大使が自らきちんと現地政府に対応してくださいまして釈放を要求してくれたといったようなことがございました。
 実際に現場で働いて、きちんと情報収集をし、日本の機関、大使館とか、そういったところと連絡を取り合って自己責任を果たして一応それなりにやっているところに関しましては、日本政府は今まで私の少なくとも経験する限りにおいてはきちんとした対応をしてくれていると思います。情報の遅れとか対応の遅れというのは若干はお互いにはありますけれども、少なくともそういった意味で現場の方でそういった対応をしてくれたという経験はございます。そういったところを踏まえて、ひとつよろしくお願いいたします。
山田課長: 今回、この問題で実はJANICが設けられた場でNGOの方と私は座談会もしまして、むしろNGOの方々から今、森さんがおっしゃったような意見が出されました。NGOとしてやはり事前の情報収集を含めて、自分で安全を守るためにいかに工夫、あるいは注意を払うかということをしっかりしなければいけないということだと思います。そこを外務省も強調したのであって、外務省あるいは日本政府が持っている外国における邦人保護の責任を放棄するということは今までもなかったし、今回においてもイラクにおいて在イラクの大使館員は、ある意味では自らを危険にさらして可能な範囲での救援のための活動を行っていたと承知しております。
 ただ、その退避勧告が出ているような土地では日本政府ができることもある意味では限界があるわけであって、そういう意味でNGOの方にとどまらず、自分の命を守るという観点から十分な情報収集であるとか、連絡体制であるとか、事前の準備をしっかり行っていただいて、こういう事態が再度起こらないようにしていただきたいということが外務省からのメッセージだったわけであって、二度と起こったら知らないということではなくて、自分の安全を守るために万全の対策をとっていただくことが大事だということが言いたかったのではないかと思います。
城所室長: 私の方からは、私の関心事はいつもNGOの方が現場に出ている区域、国ですね。前任地はモスクワにいたんですけれども、そういうものを見ていますと、モスクワには別にODAが出ているわけではないんですが、しょっちゅう地下鉄とかバスの中で物が盗まれたり爆発事故があるんですけれども、そういうときに必ず出てくる言葉は、「自分の身は自分で守りなさい。」ということがあって、それからどこそこでこういう事故があったので気をつけてくださいと。私はそういう意味での自己責任というのは全く同じだと思っているものですから、別にイラクで初めて出たわけではないので、我々が通常フォローしている話だなというふうに御理解いただければいいと思います。
 あとは、やはり運悪くというか、現場に遭遇せざるを得ない場合、さっきもお話ししたように、我々としては最大限努力していますし、ざっくばらんにお話をしますとJVCさんのケースは主管で言えば邦人保護課なんでけれども、私の方が邦人保護課より皆様のことを承知していますので携帯で電話をかけた方が早い。もちろんそれは中同士で連絡していまして、こういうことになっておりますということでうちもやっていますので、結果的にはセーフになった。私は、そういう意味ではNGOの方とも連絡はいつでもしたい。
 もちろん一晩中というか、枕元にはいつも携帯を置いていますから、どんな場合でも連絡できる体制はとっているわけですが、こちらが心配して夜に電話をかけても携帯に出ないNGOの方がいらっしゃる。私は逆にそちらの方が心配でして、そういう団体は実は来週注意しようと思っているんですけれども、そういうことがないようにしていただきたいと感じております。
熊岡氏: 今日は司会の補助ということでお話ししないつもりだったのですが、この観点でいろいろな問題が出て混ざっていたためによけいわかりにくかったと思うんですけれども、1つは退避勧告との関係です。
 例えばイギリスでオクスファムほど有名で大きくない団体でも、私の理解では例えばイギリス政府外務省と戦争をあえて取材するジャーナリストと、紛争地であえて活動するNGOというのは必ずしも直接的な、つまりツーリスト、ビジネスマン、一般国民を対象にした退避勧告に強い形で入れていないのではないかと思っています。報道も含め、それから人道支援も含め、政府にできないことをやっているというような理解も一部あると思います。
 それから、私たちも含めて安全管理というか、情報を集めて、その中にはNGOの情報、地元の情報、国連の情報、政府の情報、その他多種類あるんですけれども、それをきちんと集め分析しても、なお危険に遭遇することがあると思います。1、2週間前ですか、アフガンで緊急救援のプロの中のプロと言えると思いますけれども、MSFですね、「国境なき医師団」の国際スタッフ3名、地元スタッフ2名が残念ながら武装集団によって殺害されてしまいました。
 何が言いたいかというと、安全管理はもちろん心掛けているし、深く行っているという認識もあるんですけれども、それでもなおかつそういうことが起き得るという中で、一般的にはそこは起きたら、例えは違うんですけれども、海洋上でスポーツ、冒険のためのヨット、気球などで動いている人も、何かあれば助ける。それは民も官もということがあると思うので、そこは確認したいと思います。
 それから、今回も含めてNGO、この場合は危険地域というよりは広く言えば紛争地域における人道支援という枠で語った方が一般的かと思うし、紛争地域の中には危険度の高いところからそれほどでもないところまであると思うんですけれども、そこで働く場合には今、言った情報の分析も含めて自分で判断し、これはNGOの場合、自分個人という面と団体という二重性があると思いますが、判断し、責任を取るということで、事件、事故、けが、病気、場合によっては命を失う可能性も含めて自分で受け止めているので、その自己責任はそこで既に果たされています。それと、政府の義務の中にどういうものがあるかというところを混ぜて話すと非常に混乱するかと思います。
 別の観点ですけれども、イラクに関しては私たちはサダム・フセイン政権下でも動いていました。サダム・フセイン政権は人権上いろいろな問題があった政権だとは思いますけれども、一般的にボーダーコントロールは、相当しっかりしていて、あそこに入ること自体が大変で、また入ったら入ったで一応守られていたというのか、だからここで責任が出てくるとすると戦力行政といいますか、それが本来の義務である治安を守れなかったという部分の話とか、いろいろなものが派生してくるかと思います。
 最後に、これは意見の分かれるところかもしれませんけれども、私たちもも個人ボランティア出身で個人として動いて、結果的にグループとか運動体に入ったんですが、そういう意味でやはり高遠さんみたいな活動を否定する気にはなれません。そこをやはり大事にすること抜きには、全体としての国際ボランティア、国際NGOの活動を助けるとか、それらと政府、公的機関との連携というものもあり得ないかと思います。
 最後に、今回の「自己責任論」のところである種ゆがんだ形でヒートした部分は、イラクの中においても、日本の中においても、非常に政治的な課題である自衛隊派遣の問題と直結してしまったということで、それをカウンターする意味も含めて政治家・政府の側から、「自己責任論」が、過度にまた歪んだ形でフォーカスされたと思っています。とりあえず以上です。
城所室長: その関連で御質問はよろしいですか。
渡辺氏: 邦人保護の責任があって、先ほどの比較で国内でも山に登って遭難するとか、海で遭難するとか、そういうときでも同じように助けるじゃないかということはありますけれども、そことやはり違いがあると思うのは、山に行く、海に行く、これはある意味では自分のあくまでも楽しみのためだけに行くわけです。
 ただ、NGOとか個人のボランティアで行く場合、それは広い意味での公益といいますか、そのために行っているので、ある意味では同列には論じられなくて、むしろ政府と少し考え方は違うところがあるかもしれませんけれども、公益目的のために活動をしている個人であり、団体であり、そういう人たちを保護する責任といいますか、政府側もこういう報道があったり、指摘を受けたときに、NGOが政府とは考え方が違っても、やはりこの個人、団体というのは公益目的で活動をしている。そういうことをある意味では政府もそれを確認して、そういうことを一般国民、市民、これは感情的な議論があると思うんですけれども、そういう面で政府側もそういう点をむしろ伝えてほしいということをお願いしたいと思います。
城所室長: そこは邦人保護という観点からしますと、邦人保護課も来られていますが、この人はいないんじゃないかというときに、結果的にいますということが一番困るので、そこは大使館とかいろいろなところと緊密な連携、連絡体制をとっておられればかなり解決していく。もちろん我々としては最大限努力していますし、今回のあの事件のときでも本当に寝ずに皆さん頑張っておられて、私たちも週末に出勤しましたけれども、そういう意味では外務省としては最大限努力をしていますので、そこは御了解いただきたいと思います。


<協議2:イラク復興支援について>
  それでは、次の議題は「イラク復興支援について」です。これはNGOさんから何か提起がありますか。
西井氏: 名古屋NGOセンターの西井です。
 イラク復興支援については、3つほどの論点から質問をさせていただきます。もう既に御存じのように、無償資金の部分に関しては日本政府は15億ドルの援助を行うということを表明されていまして、順次実施されているところです。それで、それに関して外務省のホームページに4月の時点だと思いますが、JICAを通じて予備調査を実施するということが載っていました。それで、4月に実施しているはずですから、順調にいけばその結果は既に出ているのかどうかということをお聞きしたいということで、もし出ていなければその進捗状況などをお聞きしたい。
 2点目が、その15億ドルのうち直接支援するものと、国際援助機関に出すものと、それからNGO経由というふうな形に分かれていますけれども、直接支援などは例えばサマワの給水車とか、消防車ですとか、警察車両という形でわかりやすいことはありますが、例えば国際機関経由ということになりますと、その国際機関に任せたお金がどういうふうに使われるのか。それから、どういう効果を上げているのか。
 例えば、小学校の普及のために使われたお金によって100万人の小学生に使役するということも書いてありますし、雇用を創出するというようなことも書いてありますけれども、そういった援助の効果をどういうふうに評価されているのかというようなことをお聞かせいただきたい。援助を実施するその中で見えてきた問題点といいますか、こういう紛争地、まだ戦闘状態が続いているところにおける援助活動の問題点についてお聞かせいただきたいと思います。
 それから、これはちょっと先の方のことになると思いますけれども、6月末日で政権が移譲されて主権を確立していくという認識でいますけれども、その長期的な展望に立って外務省としてはどういうような復興支援のデザインを描いているのかということを、予備調査もされていることですし、そういったことも含めて復興支援に関わるグランドデザインをお聞かせいただきたいと思います。
城所室長: わかりました。それでは、ただいまの質問について、最初に山田課長からお願いします。
山田課長: 予備調査については、3月くらいまで現地調査をしておりまして、それから今、国内の解析、引き続き現地の人たちと連絡を取りながらやっておりまして、JICAの方での調査のチェックも行っています。7月上旬にはその報告書が完成して公表できるのではないかと思います。最初はJICAの図書館で閲覧できて、ホームページに載せるのはその後2、3週間かかるのではないかと思いますけれども、そういう形で公表したいと考えています。
 それから、2番目の質問と3番目の質問は先に渡辺課長に総論的なことを説明してもらって、私の方からは日々考えている各論的な話をさせていただきたいと思います。
渡辺課長: 政策課長の渡辺です。15億ドルのうち、約8.5億ドル相当の支援が決定あるいは発表されております。これらは直接支援、イラク復興信託寄金経由などの国際機関経由、そしてNGOといったさまざまなチャネルで実施してきております。
 それで、実際の裨益効果といった御質問だったと思いますけれども、これは一部を除いていずれについても現在、調達手続であるとか、あるいは準備段階にあって、今この場でこのプロジェクトについて、例えば人口がどれぐらい、あるいは患者数でどれぐらいといったような具体的なデータをお出しすることは難しいのですが、これは順次御紹介できるような機会があるかと思います。
 今のイラクの現地の情勢にかんがみて、我々もイラクの復興支援というのは平和構築の一つの大きな、しかもハードルの高いチャレンジだと思っていまして、一方で援助要員の安全第一に考えなければならない、他方で、テロリストの存在はあるものの、現地には非常に多くの住民が援助を必要としているという大きな構図の中で、いかにして早く必要な援助を届けるかということは日々、我々が悩み、苦しんでいる問題です。
 そういった中で、我々がこれまでやってきたことは、特に昨年の12月以降、日本人の援助要員を基本的にはイラクの中に入れないというような考え方の下で、電話やメールなどの通信手段をできるだけ使って、普通の国に援助をするとき以上にまめに緊密に連絡を取り合うとか、あるいは周辺地域、あるいは周辺国、例えばヨルダンを一つの拠点にして、そこに我が方から援助要員が頻繁にでかけ、イラク側からもそこに無理のない範囲で出てきてもらって、そこで接触を重ねて案件の発掘なり形成に結び付けていくといったようなことをしたり、現地事情に通じているイラク人をできるだけ活用して案件の調査をするといったようなさまざまな工夫をかさねながら、今までやってきているということです。我々は迅速に援助をやらなければならないという要請がある一方で、要員の安全を犠牲にしてはいけないという要請もあるわけで、これは本当にケース・バイ・ケースで注意しながらやっております。
 サマワにおける経済協力につきましては、今年の1月から自衛隊と連携しながら、もちろん安全には十分注意しながら実施しています。その際、援助の受け皿を確認し、現場の関係者と頻繁に接触しながら調査をしたり、既に実施している幾つかの案件についてはきちんとそれが使われているかどうかということをモニターしているというのが現状です。
 サマワの経済協力についてはイラク全体の中では自衛隊が展開しているという意味でございますけれども、日本にとり特徴的なケースではないかと思います。自衛隊と連携してODAを進めるということで、車の両輪という言い方をすることもありますが、一つのケースとして今後とも注目される例ではないかと思います。
 イラク復興支援の理念ということですけれども、これはなかなか非常に難しい御質問です。今、考えていることと、それから多分1年後、2年後、復興支援が進んでいく中で我々が学んでいくことというのは相当変わっていく可能性もあるのではないかと思いますが、我々が考えているのは今のイラクの現状にかんがみて、とにかく日本を含めた国際社会が結束して復興支援に取り組むんだという姿勢をイラクの人たちに見せること、これは非常に大事なことだと思っています。それを裏付けるものとして、ODAというのが欠かせない役割を演じているものだと思っています。
 他方で、ではどうやって援助を実際に必要としている社会、人に手を差し伸べていくか。これはまた別の次元の問題です。一面では手法の問題でもあり、一面では政治プロセスとどうやってリンクさせていくかという戦略的な問題です。ここでもODAが重要な役割を演じることは間違いないんですけれども、そこをどういうふうに理論づけていくかというのは今、実践を積み重ねながら形成していくべき問題だと思っております。この辺についてはNGOの皆さん方の考え方、あるいはその印象、感想というものも我々としては非常に関心を持っておりますので、この場に限らず是非いろいろな場で意見交換をしていきたいと思っています。
山田課長: 実地の経験から学んだこと、問題点、課題、日々どういうことを考えているかというと、これはイラクに限らず、また当たり前のことなんですけれども、現場の声にいかに我々が耳を傾けることができるか。イラクの場合は特にそれが重要だという考えを持ちます。
 現場の声というのは、現場の住民の声であり、イラクの地方公共団体とか、そういう自治体、広い意味でのそうしたイラクの関係者の声であり、現地、現場に立っている大使館員、サマワであれば外務省員、国際機関、サマワで言えば陸上自衛隊で支援、復興活動をしている、それらの一人ひとりの声をできるだけ聞かなければならないということです。特にイラクの場合は、我々は戦前ほとんど援助を行った経験がないです。イラク側も援助を受け取ったという経験がありません。これだけイラクが注目されていますので、東京やワシントンから必ずしも現場の声とは違ったいろいろな意見や提案が出てくるものがあるわけですけれども、そういうものが本当に意味があるのかということは常に現場の意見、現場の声に立ち戻って検証しなければいけないということを日々感じております。
 同時に、一番苦労、苦心していることは関係者の安全面でございます。御承知のとおり、昨年の8月の段階で国連の事務所が爆破され、赤十字の事務所も爆破され、11月には日本人外交官が殺害され、先月は日本人ジャーナリスト2人の方が亡くなりました。こうした危険というのはいろいろなところであるわけでして、それは例えば物資の輸送、警備、それから広報をどういうふうにするか。それは現地で働いている日本人の安全はもとより、イラクの関係者一人ひとりの安全に関わるということで、その点についてはほかの国に増して慎重な対応が要請されていますし、いろいろな意味で非常に通信状況が厳しくて現地と連絡するのもままならないところもあるんですけれども、できるだけ連絡をよく取ってやっていかなければいけない。同時にできるだけ早く支援を届けたいということで、我々が持っている援助スキームをできるだけ柔軟に活用してやっていきたいと考えています。 それから、一つの例としてはUNハビタットは例えばサマワ及びほかの都市でも学校の修復活動を行っています。我々はそのUNハビタットのレポートを読む以外に現場で見られる、あるいは検証できるのはサマワの状況だけです。サマワについては現にUNハビタットのイラクの現地職員がイラクの人たちを雇い、それから入札を行って、イラクの人たちを使って修復活動が始まっています。そういう意味では、成果は少しずつ見えていると思います。これも国連機関の多くの場合、国際職員はほとんど引いていますので、現在行われているのはイラクの現地職員の人たちが中心となった活動です。
 また、彼らにとってもいろいろ難しいことがありまして、UNハビタット関係者がサマワにやってきたときも初めは現地の人、すなわちイラクのサマワ、ムサンナ県の人、あるいは何とか市、何とか市、何とか市とそれぞれたくさん市があるわけですけれども、その人たちとの協議は必ずしも十分でなくてヒッチーが起きまして、そこは日本の方がお金を出しているので、UNハビタットのイラク人職員よりは日本側外務省職員の方がムサンナ県についてはベテランだったので、この人たちの意見をちゃんと聞かないと後でしこるよという話をしまして、ちゃんと教育関係の会合などに出てきて、そこで調整をやりなさいというようなことも行いました。
 その結果、初めは若干そういう問題もあったのですが、現在はそうしたいろいろな関係者との連携を行いつつ、教育、いろいろな学校の修復等も行われています。ただ、いずれにせよ皆さん御承知のとおり、こうした支援の活動はまだまだ時間がかかることだろうと思います。
 それから、中長期的なデザインというイラン支援について私が思っておりますことを3点、基本的には同じことだと思うんですけれども、申し上げます。
 1つは、中長期的な視点の必要性だろうと思います。すなわち、今は緊急の支援ということで今日必要なこと、明日必要なことに焦点が向かいがちなんですけれども、では今、支援を決定して、これが本当に1年先あるいは5年先、10年先のイラクにとって意味があるものになるのだろうか。今は役に立ってもすぐまた無駄にならないだろうかということを考えなければいけない。これはイラクの人とか、あるいはCPUの人たちと話したときも、ある人から自戒を込めてそういう発言があったことを覚えております。
 それから、物資の支援のみならず組織づくり、人材育成の必要性、もちろん現在の戦後の混乱の状況の中でいろいろな形で、機材をあげるとか、あるいは発電所のリハビリをするということも必要ですけれども、イラク人自身が言っているのは、自分たちは経済制裁の中で10年あるいは20年国際社会から取り残されてきた。人材を育成しなきゃいけないんだ、あるいは新しい組織をつくっていかなければいけない。それに協力してくれということを言われるわけです。
 したがって、無償資金協力も重要ですし、同時にこうした組織づくり、人材育成というのは多くは技術協力を通じて行われることになると思うんですけれども、そうした中長期的な観点からの人材育成というのは非常に重要だなと。これはもちろん日本だけではなくて各国が一緒になってやることですけれども、現在日本から専門家を出すということは御承知のような事情で難しいわけですが、日本あるいはその周辺国で研修を行う。ヨルダンで電力の研修を行う、エジプトで医療の研修を行う、いろいろな形での研修を行ってきておりまして、これからだんだんそういうものは増えると思います。そういう中長期的な観点からの組織づくり、人材育成の必要性というものを感じております。
 それからもっと難しい問題は、イラク人のある種のメンタリティを変えてもらう必要があるのではないか。つまり、フセインの独裁政権の下で多くのサービスといいますか、例えば水であるとか、電気であるとか、保健医療というのは上からの恩恵として与えられていて、自分たち自身が維持管理して、自分たち自身がつくり上げていく、あるいは守っていくという意識が非常に乏しかったのではないかと思います。
 それはどういうことに表れるかというと、例えば水と保健医療、それから電気、そういうものはただでやってくる。政治的に黙っていれば、フセインからある日突然やってくる。自分たちでお金を払って維持をするという発想は非常に乏しかったのではないかと思います。もちろんイラクは石油があったからある程度そういうことはできたんだと思うんですが、国際社会はもちろん最初の段階で電力の復旧とか、あるいは水の施設を供与するということはできますけれども、未来永劫それを国際社会が負担するわけにはいきません。自分たち自身が必要であれば維持管理費は払い、自分たち自身で技術を持ってそれを維持管理していく。言ってみれば、イラク人自身が自分たちの力でイラクの国家社会をつくり上げていく。そういうふうに変わっていかなければならないと思います。
 イラクの人もそういうことを自覚し始めているとは思うんですけれども、戦争が終わって自分たちの生活が一挙に変わってしまって、これからそういうことをやらなければいけない。なかなか先は長いなというのがイラク人自身の感じでもあると思いますし、イラクに行って支援に携わっている人の思いでもあろうかと思います。そういう意味で、15億ドルの無償資金協力は基本的には2004年をめどとしておりますけれども、日本の支援あるいは国際社会との支援というのは、中長期的な観点から取り組んでいくべきものであろうと考えております。
熊岡氏: 3点あります。
 1つは、イラクで活動をし、出入りをして、特にイラク国内でJICAの方にほとんど会っていません。この治安の状況の中で大部分の人がヨルダンで待機したり、ヨルダン側にイラクの医師、専門家を呼んだりして訓練などを行っていて、この状況では非常に難しいと思います。言い換えればきめ細かい調査や実施ができにくいところだと思います。そういう意味で、15億ドルというのはいわば国際約束なのかもしれませんけれども、その数字に追われることなく、1つは安全のため、1つは適切な支援、援助という意味で数字を無条件に目的とした支援というものを無理に行う必要はないと思います。
 それから、復興支援です。緊急状態の人道支援というのは一般的に成り立ちますけれども、復興というからにはカンボジアもアフガンも東チモールもある一定の安定とか、敵対勢力の和解があっての復興、初めてそこで復興支援を考え行う状態になるんですが、イラクの場合は私たちが動いてみて、その基礎条件自体がまだ成り立っていないのではないかというところで大きな不信不安を覚えています。
 3点目は、JICAあるいは日本外務省の情報収集あるいは分析の基になる情報として、サダム・フセイン政権の後期から、バグダッドも含めてイラク中南部中心に、(これは歴史的、政治的経緯がありますが)、フランス、ドイツのNGOで5年以上活動しているところが10から15団体くらいあります。そこを中心にイラク各地で活動するNGOネットワーク「イラクにおけるNGO調整委員会(NCCI)」というものがあって、100団体以上が参加しています。バグダッドに一つ大きなユニットがありまして会議、情報収集・分析を行っています。もう一つはアンマンに拠点があり、NCCIの情報は過去5~10年の蓄積もありますし、分析も詳細・正確であると思うので、是非NCCIともコンタクトしながら長期的な方向を見定めてほしいと思います。以上です。
神田氏: 関西NGO協議会の神田です。
 山田さんのお話の中で3つポイントを挙げられていました。1つ目、2つ目に関しましては私も同感というところで、中長期的支援の必要性ですとか、それを踏まえた上の組織づくり、人づくりの重要性はわかりますけれども、3つ目におっしゃっていましたメンタリティの転換というふうな中での公共サービスは上からやってくるよということから脱却する必要があるのではないかということですね。このことは、実は私どもは逆の意味で懸念している面でもありまして、特にアメリカの方針としてエネルギーのみならず水に関しても市場化、民営化というふうなことを徹底させる方針があると伺っております。
 五月女大使などと御一緒いたしましたけれども、昨年の水フォーラムでも多くのNGOから懸念として出されているのは、水の民営化、自由化ということの問題点で、命の根源である水というものを水サービスまで自由化してもいいのか、民営化してもいいのかということに関して、これまで社会主義的な政策をとってきたバース党の下ですべて政府から供給されていたものに関して必要な費用を負担するといったことの段階は必要でしょうし、それから民営化や自由化というものがどういう意味を持つのかということの情報がきちんと伝わった上で地元の方々が判断されるというふうなプロセスが大事ではないかとも思うんです。
 ですから、外部から見ていて確かに今のイラクの在り方というのは公共サービスは降ってくるもの、国から与えられるものというメンタリティがあると山田さんなどは判断されると思うんですけれども、一気にだからといってそこを自己負担でもってどうするのか、あるいはどういうふうにやっていくのかということに関することは途中の情報であったり、地域の方々の自主的な判断をするためのメカニズムができていくということとの抱合せでもってやっていかないことには、上からの押しつけでの民営化というものが進んでいったときには今以上の新たな懸念が出てくるのではないかと思いますので、その辺は日本の政府としても十分に留意してほしいと思います。
城所室長: 何か関連した質問などはございますか。
山田課長: 今のことについて一言申し上げますと、私が申し上げたのはもちろん民営化、自由化ということを支持しているものでも、示唆しているものでもないです。一挙に民営化というのは私はまず無理だろうと思います。
 私が申し上げたのは、いろいろな途上国でも同じですけれども、例えば水の施設を日本が供与したとして、住民自身が維持管理していく。住民組合をつくるとか、そういうふうに住民自身が水というのは自分たちで維持管理していかなければいけないんだという意識を持って、住民の人たちが住民の意思でもってやっていく姿勢ですね。これはもちろん言うのは簡単で行うのは非常に難しいんですが、成功例もあるわけであって、イラクの人たちがそういう気持ちになることは必要であって、民営化というのが具体的に必ずしもイラクでうまくいくかどうかというのは私は個人的に疑問に思っていますし、今はそういう方向のことを日本政府として言っているわけではありません。
城所室長: ほかにありませんか。
 若干時間がありますので、今日のテーマと関係ないことでもあればどうぞ。
五月女大使: 先ほどの例の自己責任の話で、私はマスメディアの影響というのはすごく大きかったと思うんです。それで、国民の反応も、政府の反応も、それから議員さんの反応も、180度ぱっぱっと変わるような非常な危険性を感じたんです。報道ぶりがある一点だけを非常にとらえて大きく報道してしまうということで、例えば高遠さんの発言も一部だけ取って報道をしてしまった。それで、それに対する反応があった。政府側の言っていることも、NGOの人たちが言っていること、あるいはボランティアの人たちが言っていることについても、ある一点だけをとらえて報道してしまって、それによって国民が大きく反応してしまうということがどうも繰り返されたような気がするんです。
 ですから、私は最近の報道ぶりを見ていて、やはりメディアの責任というのは大きいなと実は思ったんです。それによって、本質が何であるかということがよくわからないうちに流されていってしまうというか、それは双方ともあるんです。国民もそうだし、政府側もそうです。
 そういうことを考えますと、何か事件が起こったり、何かを判断するときに一歩下がって冷静に考えた方がいいなということを実は非常に感じたんです。私も講演などに行くと必ずいろいろなところで自己責任の話の質問を受けるんですけれども、質問をしている人が非常に2つに分かれてしまうんですが、両方ともその報道ぶりを見て言ってしまっている。その根本にあるものがよくわからないで発言してしまう。あるいは、反応して自分の意見として言ってしまうということが非常に多かったことを感じました。
 ですから、今の時代は情報過多なんです。いろいろたくさん流れるんだけれども、果たしてそれが正しいのか。本当に正しく伝えられているのか、あるいは一部だけをとらえて報道されているのか。そこを判断する、きめ細かく本当はどうなんだろうということを考えて行動しないと、非常に大きく左右に振れてしまうようなことが起こる時期になっていると感じました。
 ですから、ますます紛争地域における援助活動というのは政府がやらなくてはならないこともあるし、NGO側の人たちもやらなくてはならないことはたくさんあるんだけれども、一体本当にどういう状況になっているのか、どういう状況でこういう事件が起こったのかということをとらえるために、メディアが、極めて厳正な判断を国民ができるような情報を流してほしいと願っています。ちょっと今、感じたことを申し上げたわけです。
石田氏: 今の五月女さんのお話に私も同感するところはいろいろありまして、先ほどのお話の繰り返しですけれども、もちろんNGO側も自己責任があるという部分はそうですが、それだけではなくてNGOはある程度公益みたいなところを考えてやっているとか、やはり政府の手が届かないところをNGOがやっている部分もあるということを是非コメントする機会に説明していただければありがたいと思います。
 それで、中期政策のところで時間の関係でコメントできなかったので少し話が戻るのですが、中期政策の評価をフルテキストで出ていた分をざっと見た感じ、特に一番気になった点がもともとの中期政策で実施運用上の留意点というところで、環境配慮とか実施段階ではモニタリング及び自己評価という部分があるんですね。ここでどういうふうに環境ガイドラインを充実していくかといった点が言及されているのですが、今回出てきた評価の中では、私の見落としでなければ一言もそれに対する言及がないのです。
 ほかの部分は割とそれなりに項目的にカバーされていると思うのですが、なぜかここの部分がありません。私はJICAの環境社会配慮ガイドラインなどにも関わっていますけれども、援助をする際にどれだけ環境配慮とか社会配慮をきちんとやるかというのは非常に重要な点だと思います。ですので、まずそういった評価という点で、この5年間で前進した部分があると思います。JBICの環境ガイドラインもできましたし、それはODA白書も書いてあったと思うのですが、そういった点は是非評価で含めていっていただきたいと思います。
神田氏: 今の点で石田さんの言われたことに同感というか、私自身フルテキストを見ていませんので何とも言えませんけれども、99年のことを思い出しますと、あの当時発表されたODA中期政策をもって、当時の政策課長のホボさんなどと議論をしていたときに出てきた文書で、政府が出されたODA関係の文書で初めて環境影響評価をもって事業を中止、停止するということが文言として入っていたんです。今回のODA中期政策というのはそういった意味ですごく大事な政策文書であろうというふうに見たことがあって、それと直接関係があってJICAやJBICの環境ガイドラインの見直しが進んでいったらどうかというところは検証する必要があると思います。
 ただ、そういったつながりなどはこういった政策評価という中で検証することは、すごくポジティブな意味で大事かなと思います。
城所室長: あとはほかにありますか。
 なければちょうど終了時間の前なのですが、次回の協議会の開催の時期について何か御希望はありますか。
高橋氏: 今回の協議会の中身というよりは全体的な運営というか、進め方なんですけれども、今回、実は私も2つほど議題を出させていただきましたが、実施要綱の関係で外務省側と議題調整をした上で最終的に共通のものを決めるということになっていて、アフガニスタンDDRの話と開発目標の2つの提案議題は両方とも議題とはなりませんでした。
 その理由は、経済協力局という枠の中で扱える話以外の部分について議論が難しいのではないかということと、時期尚早ということだったと思いますしかし、私もコーディネーターの一人としてNGO側でいろいろ話しているのですが、この理由に掲げられた2つの点は、特に今後のODAの在り方を議論していく上で極めて大事な点かと思っているんです。
 つまり、ODAの問題はだんだん経協局が扱う以外の側面も関わるようになっている。それを外務省が組織上扱えない状況だから議論できないのではなくて、そういう新しい状況に向けてどういうふうにここで、議論をできるように変えていくかということを考えるのが重要かと思っているんです。日本も平和構築ですとか国際平和協力ということを対外的にも国内的にも打ち出していますが、平和構築の場合は特に経済社会分野だけではなくて、文化的な側面や政治的な側面、法制度整備などいろいろな部分が関わってくると思います。そこをどういうふうにODAを通して日本としてアプローチしていくのかを考える上で経協局だけでは済まない問題になっています。また、平和構築では、日本だけではなくて、ほかの関係諸国がどういうアプローチをしていて、その中でどういうふうに共同歩調をとっていくのかというようなことも含めて、開かれた広いインターセクトラルな形での議論というのは必要なのではないかと思っているんです。だから、何度も私たちの方から、国際平和協力のビジョンというものを抽象的な問題提起とは私たちも思いつつも、出させていただいているということなのです。
 そこで1つの御提案は、このODA政策協議という枠を超えるのが難しければ、たしか去年の1回目のときに私がイラク関係で議論させていただいたときに国際平和協力室の方にも来ていただきましたが、そこで開かれた議論の場というものを別につくっても構わないというか、つくることもあり得るではないかというお話があったと思うんです。これまで1年間やってきて、イラクやアフガニスタンの問題もそうですし、やはり国際平和協力、平和構築の在り方というのは極めて大事なので、広く市民の参加を得て議論でやるべき問題だと思っていますので、何かそういう枠組みをつくれないでしょうか。例えば、カナダなどでは、NGOと外務省が共同議長となって平和構築年次会合というものを毎年やっています。そこでは、いろいろな分科会を設けて、イラクなどの国別の分科会ですとか、イシューごとの分科会みたいなものがあって、2日間から3日間くらいかけて350人とか400人位集めて議論をしているんです。そこで、この国際平和協力のあり方に関して、せっかく1年間ここで議論を行った成果として、次にそういう場をつくることを積極的に考えてもいいのではないかというのが一つの提案です。
 もう一点がMDGs関係です。この中期政策レビューの報告書の中でもMDGsで達成度ですとか、達成の貢献度を議論される可能性があるというふうに言及されていますけれども、この問題を考えていくには、やはり前広にというか、市民やNGOの参加を得て、どういう評価インデックスで評価をしていいのかという辺りを早い段階から一緒に議論をしていてもいいのではないかと思います。来年もう既に評価に関しては今年の9月の国連総会では来年の中間レビューのための評価が大体決まるというふうに私は聞いていますので、そういう意味で時期尚早で議題を扱えないということではなく、早い段階からこういう場でNGOと開かれた議論をしていくのは意味があると考えています。
城所室長: わかりました。次回の会議は恐らく10月ごろだと思うんですけれども、そうするとタイミング的にずれてくるという話もあるので、今、言われた点について関係の課にも相談してみて、なるべく意向に沿うようなことでやっていきたいと思います。
渡辺課長: 我々外務省がそういった問題についてNGO側と意見交換をすること自体慎重だということは決してなくて、例えば先月ノルウェー外務省と一緒にJICAにおいてスリランカを例にとって、平和構築における市民社会の役割というようなテーマでパネルをやりましたし、それから近くまたJICAが同じような公開のシンポジウムをやるような話も聞いています。
 こういったテーマについてなかなか議題に入りにくかったというのは開催の頻度と時間、それからそこで議論すべきほかのテーマとの調整ということだったと思うんです。その辺の調整の問題さえつけば、我々は全くその辺についてはオープンですし、こういった政策、協議会の場以外でもこういったテーマで議論するということについても、御提案があれば我々も受けますし、こちらから先月のケースのように開催することもありますので、そこはこの場に限らずいろいろ御相談していきたいと思っています。
神田氏: 今年度の第1回目ですので御相談申し上げたい点なんですけれども、これは4か月に1回で年3回となっていますね。そうなると次回は10月くらいになるだろうというふうに城所さんがおっしゃってくださいましたけれども、3回のうち1回を東京以外で開催するというふうなことが可能や否か。
 NGO側の希望としては、東京以外で開催していただきたいという希望が強くある。というのは、東京のNGOの方々でODA政策に関心がある、あるいは精通されている方も多くこうやって集まっておられますけれども、現実に東京で開催して東京以外から来ているのは西井さんと私、あとは事務局の榛木さんということですごく限られているということがあります。私のベースにしています京都や大阪にも、非常にODA政策に関心の高いNGOが多くあります。あるいは名古屋でも福岡でもそういうNGOは幾つもありますので、試金石として一回今年度どのタイミング、次回がいいのか、次々回がいいのかということはあると思いますし、連携推進委員会に比べて多くの方々に動いていただかなければいけないという問題はあるのかもしれませんけれども、是非外務省の方で御検討いただきたいということでお願いしたい点です。
城所室長: いつもそれは私たちも関心はあるんですが、経協局の幹部クラスの方に1日出張して頂くというのは難しいのですが。
神田氏: ミーティングみたいなものとセットでやるというふうな方策ですとか、あるいは連携推進委員会を名古屋でやられるとしたらその足でもって翌日大阪まで運んでいただくということですとか、方策はいろいろと。
城所室長: NGO大使に1日空けていただくというのは非常にきついのですが。
五月女大使: 場合によっては、実務的なことをフォローしている担当官に行っていただいてもいいと思うんです。ラインの人、課長が全部そろって行くというのはなかなか難しいと思うんです。その場合だったら、例えば担当の人、あるいは首席事務官に行っていただければ、それでもいいのではないかという気がします。
城所室長: わかりました。あとは、旅費は政策課長のところで。
神田氏: 是非また相談させてください。
城所室長: わかりました。それでは、とりあえず10月をめどに事務的にまた詰めていこうと思います。
 どうも本当に今日は長い時間、ありがとうございました。
以上
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